「ストレスチェックって何月にやるのが正解?」「うちは決算が3月だから避けたいけど、法律で時期は決まっている?」「4月入社の新人にはいつ受けさせる?」——年度計画を組む時期に、人事の方から必ず聞かれる質問です。
先に結論です。法律上のルールは「1年以内ごとに1回、定期に」だけで、何月に実施するかの指定はありません。実務のおすすめは、健康診断のシーズンに重ねた春か秋のうち、繁忙期でも閑散期でもない「ちょうどいい時期」を選び、毎年同じ月に固定することです。受検期間は2週間程度で区切り、新入社員はその人のために時期をずらさず、次回の定期実施で受けてもらえば十分です。
この記事では、現役産業医として顧問先のストレスチェックの年間計画に毎年関わっている立場から、法律上のルール、避けるべき時期とその理由、おすすめの月、受検期間の長さ、新入社員の扱い、年間スケジュールの組み方を解説します。 制度の全体像(目的・会社の義務・年1回の流れ・役割分担)は、ストレスチェック制度とは?目的・義務・流れにまとめています。
法律上のルールは?——「1年以内ごとに1回、定期に」。月の指定はない

労働安全衛生規則第52条の9は、ストレスチェックを「1年以内ごとに1回、定期に」実施するよう定めています。定めているのはこれだけで、何月に行うか、受検期間を何日にするかは事業者が決めます。厚生労働省のQ&Aでも、実施時期は事業者が自由に決定できるとされています。
| 項目 | 法律上のルール | 実務での目安 |
|---|---|---|
| 頻度 | 1年以内ごとに1回、定期に(安衛則第52条の9) | 前回の実施月から1年を超えない。毎年同じ月に固定 |
| 実施する月 | 指定なし(事業者が決める) | 健診シーズンに重ねた春か秋 |
| 受検期間 | 指定なし | 2週間程度 |
| 結果通知 | 実施者から本人へ遅滞なく | 受検終了から1〜2週間 |
| 面接指導の申出 | 結果通知後おおむね1か月以内(指針) | 申出窓口と期限を案内文に明記 |
| 面接指導の実施 | 申出からおおむね1か月以内(指針) | 実施月の翌々月までに医師の枠を確保 |
| 労基署への報告 | 遅滞なく(50人以上の事業場) | 面接指導まで終わった実施後3か月以内 |
避けるべき時期は?——繁忙期にやると結果が歪み、PDCAが回らなくなる

時期の選び方で失敗する会社の典型は、繁忙期に実施してしまうことです。忙しい時期にストレスチェックをすると、結果が実態以上に悪く出ます。それ自体は当然なのですが、問題はその後です。「あの時はちょうど忙しかったからね」で結果が片付けられ、正しい評価として職場改善のPDCAを回せなくなります。そもそも「それどころじゃない」と受検されないことも多く、受検率も落ちます。
| 避けたい時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| 繁忙期(決算期・納期集中・年度末) | 受検率が落ち、結果が極端に悪く出る。「忙しかったから」で片付けられ、改善につながらない |
| 人事異動・組織改編の直後 | 新しい部署の負荷か前の部署の負荷か分からず、集団分析の単位が崩れる |
| 年末年始・お盆をまたぐ期間 | 受検期間が休みで分断され、面接指導の1か月期限が休暇にかかる |
| 大型連休の直前・直後 | 受検の案内が埋もれ、期間内に受け切れない |
| 極端な閑散期 | 普段の負荷が反映されず、実態より良く出る。これも比較の邪魔になる |
おすすめの月は?——健診シーズンに重ねた春か秋、毎年同じ月に固定

私の顧問先で多いのは、健康診断のシーズンに重ねた春(5〜6月)か秋(10〜11月)です。健診とストレスチェックを同じ時期にまとめると、従業員への案内が1回で済み、実施の段取りも一度に組めます。産業医の側でも、健診の事後措置とストレスチェックの面接指導を同じ流れで受けられるので、対応が速くなります。 実施時期を決めたら、案内文・リマインド・勧奨メールの文例はストレスチェックの案内文・受検勧奨メール・面接指導勧奨の文例集へ。
| 時期 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|
| 春(5〜6月) | 4月入社・異動が落ち着いた後に「新体制の状態」を測りたい会社。春健診の会社 | 4月直後は避ける。新入社員は入社1〜2か月では本来の状態が出にくい |
| 秋(10〜11月) | 上期の繁忙が落ち着いた会社。秋健診の会社。2028年義務化の初回実施にも向く | 12月にかかると面接指導が年末年始にぶつかる。11月中に受検を終える |
| 夏(7〜8月) | お盆前に受検を終えられる会社 | お盆をまたぐと受検率が落ちる |
| 冬(1〜2月) | 年度末の繁忙がない会社 | 3月決算の会社は繁忙期と重なる。年度末の異動前に面接指導まで終える必要がある |
新入社員・中途入社はいつ受ける?——その人のために時期をずらさず、次回の定期実施でよい

「4月入社の新人に、入社直後のストレスチェックを受けさせるべきか」という質問もよく受けます。法令上、新入社員の実施時期に特別な定めはありません。「1年以内ごとに1回、定期に」を会社として満たしていればよく、年度の途中で入社した人は、会社の規程どおり次回の定期実施で受けてもらえば問題ありません。その人のために実施時期をずらす必要はありません。
- 4月入社で実施月が5〜6月: そのまま受けてもらってよい。ただし入社1〜2か月は環境の変化そのものがストレスとして出るので、結果は「入社直後の状態」として読む。
- 4月入社で実施月が10〜11月: 半年たって本来の状態が出やすく、ちょうどよい。
- 実施直後に入社した中途社員: 次回の定期実施まで待ってよい。気になる場合は産業医面談や上司の面談で個別にフォローする。
- 新入社員向けの別サーベイ: 入社3か月時点などに新入社員向けの簡易サーベイを行う会社もある。ストレスチェックとは別の任意の取り組みとして有効。
そもそも誰が義務の対象か(パート・派遣・休職者・役員)はストレスチェックの対象者は誰?で判定表にしています。
受検期間はどのくらい?——2週間で区切る。長くしても受検率は上がらない

受検期間は2週間程度で区切るのがおすすめです。「1か月あれば全員受けるだろう」と長く取る会社がありますが、経験上、受けない人は期間を延ばしても受けませんし、受ける人は最初の数日で受けます。期間を長くしても受検率は上がらず、締切がぼやけて全体が間延びするだけです。
| 受検期間 | 実態 | 判定 |
|---|---|---|
| 2週間 | 締切が明確で、リマインド1回で受け切れる | おすすめ |
| 1週間 | 出張・シフト勤務の人が受け損ねる | 短すぎる |
| 1か月以上 | 締切が意識されず、受検率は変わらないまま間延び。面接指導の日程も後ろ倒しになる | 長すぎる |
受検率を上げるのは期間の長さではなく、「期間内に受けましょう」という案内の質と、結果が職場改善に使われていることを従業員が実感できるかどうかです。具体策はストレスチェックの受検率を上げるには?で解説しています。
年間スケジュールの例——秋実施なら、9月に決めて12月に報告まで終える

10月実施の場合のスケジュール例です。ポイントは、受検開始の2か月前に衛生委員会で審議し、受検終了の翌月に面接指導の枠を押さえておくことです。実施月を決めるときは、この一連の流れが繁忙期や年末年始にかからないかを確認してください。
| 時期 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 8月 | 衛生委員会で実施計画を審議(時期・対象者・実施者・委託先・結果の取扱い) | 事務局・産業医 |
| 9月 | 委託先と日程確定、案内文の準備、面接指導の医師の枠を仮押さえ | 人事 |
| 10月上旬〜中旬 | 受検期間(2週間)。中間でリマインド1回 | 人事・実施者 |
| 10月下旬 | 結果通知(実施者→本人)。面接指導の申出受付開始(通知後おおむね1か月) | 実施者・人事 |
| 11月 | 面接指導(申出からおおむね1か月以内)。集団分析の報告を衛生委員会へ | 医師・事務局 |
| 12月 | 就業上の措置の実行、記録の保存、労基署への報告書(50人以上) | 人事 |
面接指導の期限の考え方は面接指導はいつまで?1か月以内の社内フロー、報告書の書き方はストレスチェック報告書の書き方と提出期限を参照してください。
実施月を変えたいときは?——衛生委員会で共有し、「意味のある月」に移す

組織改編や決算期の変更で、実施月を動かしたくなることがあります。動かすこと自体は問題ありませんが、前回の実施から1年を超えないように、変更する年は間隔を短くして(例: 10月→翌年6月)つなぎます。1年を超えて空けるのは避けてください。
実施月を決めたら同時に決めること——高ストレス者の面接指導を頼む医師
実施月が決まれば、面接指導が発生する時期も決まります(受検の翌月〜翌々月)。産業医がいない会社や、顧問産業医の面談枠が足りない会社は、実施月を決めた段階で「面接指導を頼む医師」も押さえておくと、高ストレス者の申出が来てから1か月以内に慌てずに済みます。
まとめ:ちょうどいい時期を決めて、毎年動かさない
- 法律上は「1年以内ごとに1回、定期に」だけ。月の指定はなく、事業者が決める。
- 繁忙期も閑散期も避け、健診シーズンに重ねた春か秋の「ちょうどいい時期」を選ぶ。
- 毎年同じ月に固定する。それで初めて集団分析を前年と比較できる。
- 受検期間は2週間。長くしても受検率は上がらない。
- 新入社員・中途入社は次回の定期実施でよい。その人のために時期をずらさない。
- 実施月を変えるなら1年を超えず、衛生委員会で共有してから。
- 実施月を決めたら、面接指導の医師も同時に決める。
「いつやるか」で大事なのは受けやすさよりも、繁忙期でも閑散期でもない、その会社の平均的な時期に、毎年定期的にやり続けることです。1回の結果より、毎年の推移が職場を守ります。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェック義務化はいつから?50人未満は2028年4月1日から|準備ガイド
- ストレスチェックの受検率を上げるには?社内定着の実務ポイント
- ストレスチェックの対象者は誰?パート・派遣・休職者・役員の扱いと50人の数え方
- ストレスチェックの産業医面接指導はいつまで?高ストレス者は1か月以内に面談を
- ストレスチェックの集団分析とは?見方・活用法・職場環境改善につなげる手順
- ストレスチェック制度とは?目的・法的根拠・流れ・会社の義務を現役産業医が解説
- ストレスチェックの案内文・受検勧奨メール・面接指導勧奨の文例集
よくある質問
Q1. ストレスチェックの実施時期は法律で決まっていますか?
決まっていません。労働安全衛生規則第52条の9が定めるのは「1年以内ごとに1回、定期に」実施することだけで、何月に行うかは事業者が決めます。前回の実施から1年を超えないように、毎年同じ月に固定するのが実務の基本です。
Q2. ストレスチェックは何月にやるのがおすすめですか?
健康診断のシーズンに重ねた春(5〜6月)か秋(10〜11月)が多く、案内や段取りを1回にまとめられます。決算期などの繁忙期と、年末年始・お盆をまたぐ期間は避けてください。その会社にとって繁忙期でも閑散期でもない平均的な時期を選び、毎年動かさないことが大切です。
Q3. 繁忙期に実施するとどうなりますか?
「それどころじゃない」と受検率が落ち、受けた人の結果も実態以上に悪く出ます。そして終わった後に「あの時は忙しかったから」で片付けられ、正しい評価として職場改善につながりません。毎年の比較もできなくなるため、繁忙期の実施は避けてください。
Q4. 新入社員はいつストレスチェックを受けますか?
法令上、新入社員のための特別な時期の定めはありません。会社の規程どおり、次回の定期実施で受けてもらえば問題なく、その人のために時期をずらす必要はありません。入社直後は環境の変化がストレスとして出やすいので、4月入社なら秋の実施のほうが本来の状態を測りやすいです。
Q5. 受検期間は何日くらいが適切ですか?
2週間程度がおすすめです。受けない人は期間を延ばしても受けず、受ける人は最初の数日で受けるため、1か月以上に延ばしても受検率は上がらず、締切がぼやけて全体が間延びします。2週間で区切り、中間で1回リマインドし、「期間内に受けましょう」と案内するのが効果的です。

