「顧問先の小さな会社から『うちもストレスチェックをやらないといけなくなるの?』と聞かれます。社労士としてどこまで関われて、医師にはどう頼めばいいのでしょうか」——社労士事務所の方から、実際によくきかれる質問です。
先に結論です。社労士はストレスチェックの「実施者」にはなれません。実施者になれるのは、医師・保健師と、研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です(労働安全衛生規則第52条の10)。顧問先の分は、実施者になる医師側と組んで頼む形になります。私のおすすめは、顧問先が医師側と直接契約して直接支払い、社労士の先生は窓口と段取りを受け持つ形です。
私は名古屋で産業医をしている角田拓実です。ストレスチェックの実施者と高ストレス者の面接指導を受け持っていて、社労士の先生とも、健康の問題や労務の問題でよくやり取りをします。この記事では、医師の側から見た「顧問先の分の頼み方」をまとめます。顧問先が自社で進める場合のやり方は50人未満・中小企業のストレスチェックのやり方で、制度の全体はストレスチェック制度とはで解説しています。
社労士はストレスチェックの実施者になれる?——なれない。受け持てるのは段取り

ストレスチェックでは、誰が何をできるかが法令で決まっています。社労士の先生が関わるときに押さえておきたいのは、次の5つです。
| 役割 | 誰が | 根拠 |
|---|---|---|
| 実施者(検査をして、高ストレス者を判定する) | 医師・保健師、研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師。社労士はなれない | 労働安全衛生規則 第52条の10第1項 |
| 実施の事務(受検の案内・回収・通知の手配など) | 実施者の指示のもとで行う人。解雇・昇進・異動に直接の権限を持つ人は従事できない | 規則 第52条の10第2項 |
| 個人の結果を会社に渡す | 本人の同意がなければ、実施者は会社に渡せない | 労働安全衛生法 第66条の10第2項 |
| 秘密を守る | 実施の事務に従事した人は、知った秘密を漏らしてはならない | 法 第105条 |
| 面接指導 | 医師 | 法 第66条の10第3項 |
社労士の先生が受け持てるのは、顧問先への制度の説明、医師側との窓口、受検の段取り、社内の決まりづくり(結果や面接指導の申し出を理由に不利益な扱いをしない、など)です。
「社労士がやってしまいがちで、医師から見て困ることはありますか」と聞かれることがあります。正直なところ、特別に困ることは、あまりありません。社労士の先生は段取りはされますが、判定をどうするかには関与されないからです。
逆に、社労士の先生が高ストレス者の面談までしてしまうと、それはやりすぎだと思います。面接指導は医師の仕事です。高ストレス者への面接指導の案内は、実施者を通して行う形にしておいてください。
顧問先の分はどう頼む?——直接契約・社労士事務所の取りまとめ・面接指導だけの3つの形

社労士事務所と組むとき、私がいちばん分かりやすいと思っているのは、顧問先の事業所から直接ご連絡をいただき、事業所から直接お支払いいただく形です。間に人を挟みすぎると、誰が何をするのかが分かりにくくなりますし、お金の流れや税の扱いも分かりにくくなります。事業所ごとに別々に契約するほうが分かりやすい、と個人的には思っています。
ただ、どの形にしても、仕事の中身が変わるわけではありません。社労士事務所が取りまとめる形でも対応できます。実際、面接指導だけ、という頼まれ方もありますし、実施から面接指導まで全部、という形もあります。やり方は本当にいろいろです。
| 頼む形 | 流れ | よいところ | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 顧問先が医師側と直接契約(おすすめ) | 社労士が紹介・段取り → 顧問先が契約・支払い | お金の流れと、誰の責任かがはっきりする | 顧問先ごとに契約の手続きが要る |
| 社労士事務所が取りまとめる | 社労士が窓口になり、複数の顧問先の分をまとめて頼む | 顧問先の手間が少ない | 誰が何をするか、お金の流れを最初に決めておく |
| 面接指導だけ頼む | 実施は別の仕組みで行い、高ストレス者の面接指導だけ医師に頼む | すでに実施の仕組みがある顧問先に合う | 実施者(医師など)は別に用意が要る |
先に決めておくとよいのは、次の4つです。
- 実施者になる医師と、契約・支払いの相手(顧問先か、社労士事務所か)
- 受検の案内と、受けていない人への声かけを誰がするか
- 高ストレス者への面接指導の案内を、誰がどう出すか(実施者を通す)
- 結果のうち、会社と社労士が見るのはどこまでか(個人の結果は本人の同意なしに見ない)
社労士の先生とは、健康の問題や労務の問題でやり取りすることがしばしばあり、組むと仕事がうまく進むことが多いです。最近は、社労士の資格を取る産業医の先生もいて、活発な領域だと感じています。
少人数の顧問先の費用は?——最低料金があり、10人未満でも変わらない

ストレスチェックの外部委託は「1人あたりの料金」に最低料金を設けている委託先があり、少人数の会社ほど1人あたりは高くなります。委託の相場はストレスチェックの費用はいくら?にまとめています。サンポチャートの場合は次のとおりです(税別)。
| 項目 | 料金・中身 |
|---|---|
| 実施(ストレスチェック実施パック) | 1人1,000円・最低2万円。10人未満でも2万円です。受検の準備や結果の通知など、人数にかかわらず手続きに人手がかかるためです |
| 含むもの | Webでの受検、実施者(産業医)の名義と高ストレス者の判定、高ストレス者の人数の通知、面接指導の予約(サンポマッチ) |
| 含まないもの | 集団分析(別途ご相談)、労働基準監督署への報告書の作成(報告に必要な数値はお渡しします) |
| 面接指導 | 1件3万円(意見書込み)。対象者本人が空き枠から予約(最短3営業日) |
| 受検のしかた | 紙の調査票での受検はなし。Webで実施し、受検の案内はメールで送ります。QRコードを載せた紙の案内は出せます |
申し込みは電話(0561-50-2644・平日9:00〜17:00)でもかまいません。契約の前に、オンラインで流れをご説明します。準備にそれほど手間はかからないので、実施したい時期の数か月前に申し込んでいただければ、十分間に合います。パックの中身は料金プラン(ストレスチェック実施パック)に載せています。
面接指導はどこが受ける?——地域産業保健センターとの併用もできる

50人未満の事業場は、地域産業保健センターで、高ストレス者への医師の面接指導を無料で受けられます(厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」)。
お電話で「面接指導は地域産業保健センターに依頼してもいいですか?」と聞かれることがありますが、全くかまいません。実施はサンポチャート、面接指導は地域産業保健センター、という使い方もできます。
ただ、地域産業保健センターは予約制で、日程は窓口が決めます。申し出から面接までの間があきやすいので、急ぐときの2本目を決めておくと安心です。使い方と限界は地域産業保健センターで面接指導は足りる?で解説しています。
| 面接指導の行き先 | 費用(税別) | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 地域産業保健センター | 無料 | 急がない・対象者が少ない |
| サンポマッチ(面接指導の予約) | 基本料金 1人200円で3か月使える(最低2万円)+面接指導1件3万円(意見書込み) | 本人が自分で空き枠から予約したい・早く受けたい(最短3営業日) |
| 実施パックの中で | 面接指導1件3万円(意見書込み) | 実施から面接指導までまとめて任せたい |
面接指導だけを頼む場合はサンポマッチ(面接指導の医師を1件から手配)をご覧ください。委託先を比べるときの見方はストレスチェックの外部委託先の選び方にまとめています。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- 50人未満・中小企業のストレスチェックのやり方|自社実施か委託か・面接指導の頼み先
- ストレスチェックの費用はいくら?相場・内訳・50人未満の総額を産業医が解説
- ストレスチェックの外部委託先の選び方|失敗例と5つの比較ポイント
- ストレスチェックの実施者とは?保健師も担当できる理由と要件
- 地域産業保健センターで面接指導は足りる?無料の範囲と限界
- ストレスチェック義務化はいつから?50人未満は2028年4月1日から|準備ガイド
- ストレスチェック制度とは?目的・法的根拠・流れ・会社の義務を現役産業医が解説
よくある質問
Q1. 従業員が10人未満の顧問先でも、最低料金の2万円ですか?
はい。サンポチャートのストレスチェック実施パックは、人数が少なくても最低料金が2万円(税別)です。受検の準備や結果の通知など、人数にかかわらず手続きに人手がかかるためです。
Q2. 面接指導は、地域産業保健センターに回してもいいですか?
かまいません。50人未満の事業場は、地域産業保健センターで高ストレス者の面接指導を無料で受けられます。予約制で日程は窓口が決めるので、急ぐときの頼み先も決めておくと安心です。
Q3. いつまでに申し込めば間に合いますか?
準備にそれほど手間はかからないので、実施したい時期の数か月前に申し込んでいただければ十分間に合います。50人未満の事業場の義務は2028年4月1日からです。
Q4. 電話で申し込めますか?
はい。電話(0561-50-2644・平日9:00〜17:00)でも受け付けています。契約の前に、オンラインで流れをご説明します。
Q5. 紙の調査票で受検できますか?
紙の調査票での受検は行っていません。Webで実施し、受検の案内はメールでお送りします。パソコンを使わない職場向けに、QRコードを載せた紙の案内を出すことはできます。
Q6. 社労士が、顧問先の社員のストレスチェックの結果を見てもいいですか?
個人の結果は、本人の同意がなければ、実施者から会社に渡せません(労働安全衛生法第66条の10第2項)。社労士の先生が実施の事務に加わる場合も、知った秘密を守ること(同第105条)が前提です。個人の結果を見なくても回る段取りにしておくのが安全です。
まとめ:社労士は窓口と段取り、実施と面接指導は医師。形は先に話して決める
- 社労士はストレスチェックの実施者になれない。受け持てるのは、説明・窓口・段取り・社内の決まりづくり
- 高ストレス者の面談まで社労士がするのはやりすぎ。面接指導は医師に
- 頼む形は、直接契約(おすすめ)・社労士事務所の取りまとめ・面接指導だけの3つ。仕事の中身はどれも同じ
- 少人数は最低料金に注意。サンポチャートは1人1,000円・最低2万円(10人未満も同じ)+面接指導1件3万円(税別)
- 面接指導は地域産業保健センター(無料)と併用できる。急ぐときの2本目を決めておく
- 2028年4月1日の義務化に向けて、数か月前に申し込めば間に合う。始める前に、産業医と社労士で役割を決める

