「3社から見積もりを取りました。月額はどこも似ているのに、書いてある項目がばらばらで、比べられません」——相見積もりをした人事の方から、よくいただくご相談です。
先に結論です。見積もりで最初に見るのは、「その顧問料で、実際に何をしてくれるのか」です。一見安く見えても、最低限の登録料だけで、面談や訪問が発生するたびに料金がかかる見積もりがあります。項目ごとに確かめるのは、訪問の頻度(毎月か隔月か)と1回の時間、面談や意見書が顧問料に含まれるか、困ったときにどうやって相談するのか、相談料はかかるのかの3つ。都度の料金がかかること自体は当たり前なので、そこを確認せずにいちばん安いところで決めると、あとから別の見積もりが出てきます。
私は名古屋で産業医をしている角田拓実です。会社から他社の見積もりを見せていただく機会があり、「ここを確かめてください」とお伝えしている点を、この記事にまとめます。相場そのものは産業医の費用・報酬相場|月3万円〜の実態と金額で決めない選び方、紹介会社の手数料と縛りは産業医紹介会社の比較|手数料の割合・切り替えの縛り・連絡の速さにあります。この記事は、手元の見積書を読むための記事です。
見積もりで最初に見るのは「顧問料で何をしてくれるか」——登録料だけの見積もりに注意

産業医の見積もりは、月額の数字から見始めると比べられません。見るのは、その月額で実際に何をしてくれるのかです。一見安く見える見積もりの中には、月額が「登録料」にあたるだけで、訪問・面談・意見書の作成が発生するたびに料金がかかるものがあります。年間で見ると、月額の高いほうが安かった、ということが起きます。
見積書に「産業医業務一式」としか書いていないときは、一式の中身を項目で出してもらってください。中身が書けない見積もりは、あとで「それは別料金です」が出やすい見積もりです。
項目ごとの確認点——訪問の頻度と時間・面談と意見書・相談の仕方と相談料


各社の見積もりを、次の項目でそろえてください。そのまま各社への質問に使えます。
| 項目 | 確かめること | 聞き方 |
|---|---|---|
| 訪問の頻度と時間 | 毎月か、隔月か。1回は何時間か。月額に含まれる訪問の回数 | 「毎月ですか、隔月ですか。1回は何時間で、超えたらいくらですか」 |
| 訪問で行う業務 | 職場巡視・衛生委員会・健診の就業判定が訪問の中に入っているか | 「巡視と衛生委員会と就業判定は、訪問の時間内ですか」 |
| 面談 | 休職・復職の面談、長時間労働の面接指導、高ストレス者の面接指導が顧問料に含まれるか。件数の上限はあるか | 「面談は顧問料の中ですか。何件までですか。超えたら1件いくらですか」 |
| 意見書 | 就業判定や復職の意見書の作成が含まれるか、1通ごとの料金か | 「意見書は1通ごとに料金がかかりますか」 |
| ストレスチェック | 実施者を引き受けるか。別料金か | 「実施者は顧問料の中ですか」 |
| 訪問日以外の相談 | 困ったときにどうやって相談するのか(電話・メール・事務局)。相談料はかかるのか | 「訪問の日以外に相談したいとき、誰にどう連絡しますか。相談料はかかりますか」 |
| 交通費・そのほか | 交通費の実費、遠方の加算、契約の期間と解約の条件 | 「交通費は別ですか。最低の契約期間はありますか」 |
この中で、見積書に書いていないことがいちばん多いのは、訪問日以外の相談です。先生に直接連絡できるのか、事務局が受けるのか、そもそも相談を受ける契約なのか。ここが書いていない見積もりは、契約のあとで「訪問の日しか話せない」になりがちです。契約書に書いておく項目は産業医契約書の書き方|記載事項12項目・条文例にまとめています。
安く見えたのに、あとで高くついた例——都度の料金を確かめずに最安で決める


安く見えた見積もりが、あとで高くつく例は、しばしばあります。流れはいつも同じです。月額だけを並べて、いちばん安いところで決める。契約のあとに、休職者が出て面談が必要になる。意見書を書いてもらう。そのたびに「面談1件○円」「意見書1通○円」の見積もりが出てくる。年度の終わりに足してみると、月額の高かった会社より多く払っていた、という形です。
都度の料金がかかること自体は、当たり前です。問題は、それを確かめずに決めてしまうことです。見積もりを比べる段階で「面談が年に何件くらい出そうか」「意見書は何通くらいか」を見積もり、都度の料金を足した年間の総額で比べてください。
月額だけを見て決めない。顧問料に含まれるもの、都度の料金がかかるものを分けて、年間の総額でそろえてから比べる。
人数と訪問の頻度で自社の額の目安を出すときは、産業医サービスの料金プランで、人数ごとの顧問料と訪問料、含まれる業務をそろえて見られます。
医師会が出している嘱託産業医の報酬の目安も、同じ読み方をします。愛知県医師会 産業保健部会「嘱託産業医報酬の目安」(令和5年)では100人以下で月5万円以上ですが、これは基本の月額で、ストレスチェックの対応や面接指導は別に書かれています。見積もりを目安表と比べるときも、「含まれないもの」をそろえてからにしてください。目安表の見方は産業医の費用・報酬相場の「医師会が出している報酬の目安表の見方」の章にあります。
高くても納得できるのはどんな場合?——困ったときに相談できる体制があるか


月額が高くても納得できるのは、困ったときに相談できる体制が料金に入っている場合です。産業医のいちばん大事なところは、社員が不調になった、健診で重い所見が出た、労働基準監督署から指摘を受けた、という「困ったとき」に、すぐ相談できることです。訪問の日まで待たないと話せない契約は、安くても困ったときに役に立ちません。
サンポチャートの場合は、顧問料の中に相談が入っています。困ったときは担当の医師に相談でき、事務局の保健師が日々の窓口になり、難しい事例は代表の産業医がバックアップします。顧問料は月3万円〜、訪問は1回5万円(税別)で、訪問の時間内に行う職場巡視・衛生委員会・面談・健診の就業判定・ストレスチェックの実施者業務は顧問料の中です。
見積もりを比べる最後の決め手は、「困ったとき、先生にどこまで助けてもらえるか」です。この1点の確かめ方は産業医の費用・報酬相場の相見積もりの章に書きました。契約の形(個人の医師か法人か)で変わる点は産業医との契約|契約形態・流れ・法人と契約するときの注意点にあります。拠点が複数ある会社は、訪問する拠点と回数で料金が決まります(本社50人以上・支店50人未満の産業医はどうする?)。
見積もりをそろえて比べる手順——同じ条件で、年間の総額に


- 条件をそろえて依頼する: 人数、拠点、訪問の頻度(毎月か隔月か)、面談の見込み件数を各社に同じ条件で伝える
- 項目で分ける: 上の表の7項目で、顧問料に含まれるものと都度の料金を分けて書き出す
- 年間の総額を出す: 月額×12+訪問料×回数+面談・意見書の見込み件数×都度の料金
- 相談の体制を聞く: 訪問日以外にどう相談するか、相談料はかかるか、難しい事例を誰が見るか
- 担当の医師と話す: 見積もりの数字で絞ってから、担当する先生の話し方と対応の速さを確かめて決める
よくある質問
Q1. 月額3万円の見積もりと8万円の見積もり、どちらが安いですか?
月額だけでは決まりません。3万円に訪問が含まれず、訪問のたびに料金がかかるなら、毎月訪問する会社では8万円のほうが安いことがあります。訪問の回数・面談・意見書を足した年間の総額でそろえてください。
Q2. 「産業医業務一式」としか書いていない見積もりは、どう読めばいいですか?
一式の中身を項目で出してもらってください。訪問の頻度と時間、巡視・衛生委員会・就業判定・面談・意見書・ストレスチェックの実施者のどれが含まれるか、です。中身が出てこない見積もりは、あとで別料金が出やすいです。
Q3. 面談が別料金なのは、おかしいですか?
おかしくはありません。都度の料金がかかる契約はよくあります。問題は、それを知らずに決めることです。面談が年に何件くらい出そうかを見積もり、都度の料金を足して比べてください。
Q4. 紹介会社の見積もりと、医師に直接頼む見積もりは何が違いますか?
紹介会社を通すと、月額の一部が紹介会社の手数料になります。直接契約への切り替えに縛りがある場合もあります。手数料の割合と縛りの中身は、見積もりの段階で確かめてください。
Q5. 見積もりの前に、会社で決めておくことはありますか?
人数、拠点、訪問の頻度の希望、面談の見込み件数、ストレスチェックの実施者を頼むかどうか、の5つです。これを同じ条件で各社に伝えると、見積もりがそろいます。
まとめ
- 最初に見るのは「顧問料で実際に何をしてくれるか」。登録料だけの見積もりに注意
- 項目ごとに確かめる: 訪問の頻度と時間・訪問で行う業務・面談・意見書・ストレスチェック・訪問日以外の相談と相談料・交通費と契約期間
- 都度の料金は当たり前。確かめずに最安で決めると、あとから見積もりが出てくる。年間の総額でそろえる
- 高くても納得できるのは、困ったときに相談できる体制が料金に入っている場合
- 同じ条件で依頼し、項目で分け、総額を出し、相談の体制を聞き、担当の医師と話して決める
参考: 愛知県医師会 産業保健部会「嘱託産業医報酬の目安」(令和5年)。料金はすべて税別です。










