「ストレスチェックが終わったけれど、労基署への報告書って何をいつまでに出すの?」「様式第6号の2の産業医の欄、うちは外部委託なのに誰の名前を書けばいい?」——毎年この時期に、人事の方から同じ質問をいただきます。
先に結論です。常時50人以上の労働者を使用する事業場は、ストレスチェックを実施した年ごとに「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」(労働安全衛生規則 様式第6号の2)を、事業場ごとに所轄の労働基準監督署へ提出します。法律上の期限は「遅滞なく」で、実務では面接指導まで終わった時点、実施からおおむね3か月以内に出すのが目安です。2025年1月からは電子申請が原則になりました。
この記事では、現役産業医として毎年顧問先の報告書を確認している立場から、報告書の対象と根拠、様式の各欄の書き方、受検者数の数え方、提出時期と電子申請の手順、出し忘れたときの扱い、そして「面接指導を受けた労働者数 0人」の報告を毎年続けている会社に知ってほしいことを解説します。
ストレスチェックの報告書とは?——誰が・いつ・どこに出すのか

ストレスチェックの報告書は、正式名称を「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」といい、労働安全衛生規則の様式第6号の2で定められています。根拠は労働安全衛生法第100条(報告等)と労働安全衛生規則第52条の21で、検査を行ったときは遅滞なく、所轄労働基準監督署長に提出すると定められています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出義務がある事業場 | 常時50人以上の労働者を使用する事業場(ストレスチェックの実施義務がある事業場) |
| 提出の単位 | 事業場ごと(本社でまとめて1枚にはできない) |
| 頻度 | ストレスチェックを実施した年ごと(年1回) |
| 時期 | 「遅滞なく」(法令上の日付の定めはない)。実務は面接指導まで終わった時点、実施から3か月以内が目安 |
| 提出先 | 事業場の所在地を管轄する労働基準監督署 |
| 提出方法 | 電子申請(e-Gov)が原則(2025年1月1日〜)。電子申請が困難な場合は書面 |
| 様式 | 様式第6号の2(厚生労働省・PDF)。独自様式は不可 |
| 根拠 | 労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第52条の21 |
50人未満の会社も報告が必要?——2028年の義務化後も「報告」は50人以上だけ

ここは混同が多いので先に整理します。2028年4月1日から、ストレスチェックの実施は従業員50人未満の事業場にも義務化されます。しかし労基署への報告義務は、これまでどおり常時50人以上の事業場のみです。50人未満の会社は、実施はするが報告書は出さなくてよい、という関係になります。
様式第6号の2の記入項目——各欄に何を書くか
様式は1枚で、記入する内容は次のとおりです。人事が数字を集めて書き、産業医が内容を確認する、という分担が実務では一般的です。受検者数は委託事業者が、面接指導の人数は社内の実施事務従事者が把握しているので、そこから転記します。
| 欄 | 書くこと | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 対象年 | 報告対象の年(暦年) | 年度ではなく暦年で書く。実施が年をまたいだときは実施月を基準に |
| 検査実施年月 | ストレスチェックを実施した年月 | 複数月に分けた場合は主な実施月 |
| 事業の種類・名称・所在地 | 事業場単位の情報 | 本社ではなく報告する事業場の情報 |
| 在籍労働者数 | その事業場の労働者数 | パート・アルバイトも含めた在籍数。派遣労働者は派遣元でカウント |
| 検査を受けた労働者数 | 実際に受検した人数 | 対象者ではなく受検者。対象者の数え方は次章 |
| 面接指導を受けた労働者数 | 高ストレス者のうち医師の面接指導を受けた人数 | 「0人」でも正直に書く(後述) |
| 集団ごとの分析の実施の有無 | 有・無 | 部署別などの集団分析を行ったら「有」。努力義務なので「無」でも受理される |
| 検査を実施した者 | 区分をチェック(事業場選任の産業医/事業場所属の医師・保健師等/外部委託先の医師等) | 産業医が実施者でない場合は、実際に実施した専門職の区分を選ぶ |
| 面接指導を実施した医師 | 区分をチェック(事業場選任の産業医/事業場所属の医師/外部委託先の医師) | スポットで外部の医師に頼んだ場合は「外部委託先の医師」 |
| 産業医の氏名・所属 | 事業場に選任している産業医 | 実施者でなくても選任産業医を記載。押印は不要(2020年の様式改正で廃止) |
| 事業者職氏名 | 代表者または事業場の責任者 | 押印不要 |
記入で迷うポイント——受検者数の数え方・複数事業場・産業医の欄
人事の方から実際に質問される順に整理します。
- 受検の対象者は誰か。ストレスチェックの実施義務があるのは「常時使用する労働者」で、期間の定めのない契約(または1年以上の契約)で、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上の人です。それ未満のパート・アルバイトは義務の対象外ですが、受検させることは望ましいとされています。報告書の「検査を受けた労働者数」には、実際に受検した人数を書きます。
- 派遣労働者はどちらで数えるか。ストレスチェックの実施義務は派遣元にあるため、派遣先の報告書の受検者数には含めません。在籍労働者数も派遣元でカウントします。
- 事業場が複数あるとき。報告は事業場ごとです。50人以上の事業場が3つあれば3枚、それぞれの所轄労基署に出します。本社でまとめて1枚にはできません。
- 産業医の欄に誰を書くか。「産業医の氏名」には、その事業場に選任している産業医を書きます。ストレスチェックの実施者が外部委託先の保健師や医師であっても、産業医欄は選任産業医のままで、「検査を実施した者」の区分で外部委託を選ぶことで実態を表します。
- 集団分析「有」の条件。部署や職種などの集団ごとに結果を集計・分析していれば「有」です。委託先のレポートに部署別集計があれば、それで「有」にできます。
高ストレス者の判定基準や、受検者に占める高ストレス者の割合の目安は高ストレス者の判定基準とは?何点から・割合の目安で解説しています。
提出期限と提出方法——「遅滞なく」の実務と電子申請の手順

法令上の期限は「遅滞なく」で、具体的な日付は定められていません。年1回の実施義務があるので、前回の提出から1年以内に次の報告を出すのが最低ラインです。ただし私は顧問先に「可能な限り早めに」とお伝えしています。高ストレス者の面接指導は申出から1か月以内に行うので、実施からおおむね3か月で面接指導まで含めた数字がすべて出そろいます。そこで提出するのが自然な流れです。年度末にまとめて出す運用は、面接指導の人数が翌年分と混ざりやすく、お勧めしません。
電子申請(原則)の手順
- e-Gov電子申請にログインする。GビズIDなどのアカウントが必要。産業医の選任報告を電子申請している会社は、同じアカウント・同じ流れで出せる。
- 手続を検索する。「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告」を選ぶ。
- 様式に入力する。数字の集計はあらかじめ済ませておく(受検者数は委託先、面接指導数は実施事務従事者から)。
- 提出し、控えを保存する。受付番号と提出データをPDFで保管。次年度の入力の土台になる。
出し忘れ・未提出だとどうなる?——罰則と、実際の労基署の対応

報告を怠ったり虚偽の報告をしたりした場合、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象になります。ただし、現場の実感としては、未提出や記載ミスで労基署からすぐに連絡が来ることは多くありません。だからといって放置してよいわけではなく、監督指導や労災の調査で「ストレスチェックの実施状況」を確認されたときに、報告書の控えがあるかどうかが会社の説明の根拠になります。
「面接指導を受けた労働者数 0人」を毎年提出していませんか

報告書を確認していて、いちばん気になるのがこの欄です。面接指導を受けた労働者数が毎年「0人」の会社は、実際に少なくありません。労基署がそれを指摘することはまずありませんし、法令違反でもありません。高ストレス者からの申出がなければ、面接指導は発生しないからです。
私は衛生委員会や社内セミナーで、「面接指導を受けることはあなたが損をすることではなく、医師と話せるチャンスです。申し出たことで不利益を受けることは法律で禁止されています」と繰り返し伝えています。
会社側にできることは2つで、申し出やすい案内の仕方(高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務)と、申出が来たときにすぐ動ける医師の受け皿です。産業医がいない、あるいは顧問産業医の枠が足りない場合は、外部の医師にスポットで依頼できます。
提出前チェックリスト
- 事業場ごとに1枚になっている(本社でまとめていない)
- 在籍労働者数にパート・アルバイトを含め、派遣労働者は除いている
- 「検査を受けた労働者数」は対象者数ではなく受検者数になっている
- 面接指導の人数は、申出→実施まで終わった件数で確定している
- 「検査を実施した者」「面接指導を実施した医師」の区分が実態と合っている
- 産業医の欄は選任産業医の氏名・所属になっている(押印は不要)
- 電子申請の受付番号・提出データの控えを保存した
- 次回実施日の目安と担当者をカレンダーに入れた
まとめ:報告書は労基署のためではなく、自社の制度の通信簿
- 報告書(様式第6号の2)は50人以上の事業場が事業場ごと・年1回、所轄労基署に提出。50人未満は2028年以降も報告不要。
- 期限は「遅滞なく」。面接指導まで終わった実施後3か月以内に出すのが実務の目安。
- 2025年1月から電子申請が原則。産業医選任報告と同じ流れで出せる。押印は不要。
- 受検者数は実際の受検者、派遣は派遣元、産業医欄は選任産業医、実施者の区分で実態を表す。
- 未提出は50万円以下の罰金の対象だが、気づいた時点で出せば受理される。
- 「面接指導 0人」が続くなら、制度が形だけになっているサイン。案内の仕方と医師の受け皿を見直す。
報告書は、提出して終わりの書類ではありません。受検者数・高ストレス者数・面接指導の件数を毎年並べれば、自社のストレスチェックが機能しているかどうかが数字で見えます。報告義務のない50人未満の会社も、この3つの数字だけは毎年記録しておいてください。
よくある質問
Q1. ストレスチェック報告書の提出期限はいつですか?
法令上は「遅滞なく」で、日付の定めはありません。年1回の実施義務があるため、前回の提出から1年以内が最低ラインです。実務では、高ストレス者の面接指導(申出から1か月以内)まで終わった時点、実施からおおむね3か月以内に提出するのが目安です。
Q2. 従業員50人未満の会社も報告書を出す必要がありますか?
ありません。労基署への報告義務は常時50人以上の労働者を使用する事業場のみです。2028年4月から50人未満にもストレスチェックの実施が義務化されますが、報告義務は引き続き50人以上だけです。ただし、受検者数・高ストレス者数・面接指導件数の記録は社内に残しておくことをお勧めします。
Q3. 報告書は電子申請できますか?紙でも出せますか?
2025年1月1日から電子申請(e-Gov)が原則です。産業医の選任報告と同じアカウント・同じ流れで提出できます。電子申請が困難な場合は書面でも提出でき、その場合は厚生労働省の入力支援サービスで作成した様式を白色度80%以上の用紙に印刷して、所轄労基署に持参または郵送します。
Q4. 産業医の押印は必要ですか?実施者が外部委託の場合、産業医欄は誰を書きますか?
押印は不要です(2020年の様式改正で廃止)。産業医の欄には、その事業場に選任している産業医の氏名と所属を書きます。実施者が外部委託先の医師や保健師であっても産業医欄は選任産業医のままで、「検査を実施した者」の区分で外部委託先を選ぶことで実態を表します。
Q5. 面接指導を受けた人が0人でも、そのまま報告していいですか?
0人であればそのまま正直に記載します。申出がなければ面接指導は発生しないため、法令違反ではなく、労基署が指摘することもほとんどありません。ただし毎年0人が続く場合は、高ストレス者が申し出にくい環境か、面接指導を頼める医師の受け皿がない可能性が高く、制度が形だけになっているサインです。

