「ストレスチェックの受検率が上がらない」——このお悩み、案内文の書き方やリマインドのタイミングを工夫すれば解決する、と思っていませんか。結論から言うと、受検率が伸びない最大の原因は告知不足ではなく「やっても意味がない」という不信感です。私はこれまで複数の会社でストレスチェックに関わってきましたが、初めて訪問した時点で受検率30〜40%という会社もあれば、90%近くまで定着している会社もあります。この記事では、その違いがどこから生まれるのか、現場で見てきた実例をもとに解説します。
ストレスチェックの受検率、実際どのくらいが目安?
ストレスチェックの受検率に法律上の下限はありませんが、実務上は60%を下回ると集団分析の精度が落ち、職場改善のデータとして使いにくくなると言われています。私が実際に関わってきた会社の受検率は、うまく運用できている会社で90%前後、一方で初めてご相談を受けた時点で30〜40%という会社も複数ありました。
受検率30〜40%だった会社に共通していたのは、従業員だけでなく、担当者自身も「やっても意味がない」と感じてしまっていたことです。制度が形骸化してしまうと、案内文をどれだけ工夫しても数字は動きません。
受検率が低い会社に共通する原因——「意味がない」という空気

受検率が伸びない会社を見ていくと、共通しているのはストレスチェックそのものへの信頼が失われているという点です。「結局ただやっているだけでしょう」「クイズや問題を解かされているだけなんじゃないか」——従業員がそう感じている状態では、いくら受検を呼びかけても響きません。
本来ストレスチェックは、①自分のストレスへの気づき、②職場環境の改善、③高ストレス者の早期発見という目的のための制度です。しかし「受検した結果、自分や職場に何かいいことがあった」という実感がなければ、従業員にとっては「毎年やらされる謎のアンケート」でしかありません。この「実感の欠如」こそが、受検率が伸びない根本的な原因です。
受検率を上げるために効果があった施策

実際に受検率が改善した会社に共通していたのは、案内文の工夫そのものより「信頼を取り戻すための行動」でした。
- 「秘密は守られる」「結果を活かして本当に変えていく」と繰り返し発信する——1回の告知で終わらせず、実施のたびに伝える
- 発信した内容を実際にやり切る——ここが最も重要です。「秘密は守る」と言いながら結果が漏れる、「改善する」と言いながら何も変わらない、では逆効果になります
- 安全衛生委員会の議事録に上げて可視化する——集団分析の結果や改善の取り組みを、社内の公式な場で継続的に共有する
- 面接指導・面談を通じて「実際に良い変化があった」実例をつくる——本人の同意が取れる範囲で、面談を受けたことで配慮や改善につながった、という実感が社内に口コミレベルで広がっていくことが、受検率を底上げする一番の近道です
逆に、効果がなかった・そもそもやっていなかったこと
正直にお伝えすると、受検率が低い会社の多くは「受検率を上げるための工夫」自体をほとんどしていません。「法律で決まっているから、とりあえず毎年実施する」で止まっており、案内文を練る・リマインドの頻度を変える・目的を説明し直す、といった働きかけそのものが行われていないケースが大半でした。
裏を返せば、何らかの働きかけを始めるだけでも、他社との差はつきやすいということです。まずは「うちは今、受検率を上げるための工夫を何もしていない」と認識することが、最初の一歩になります。
2028年4月、50人未満も義務化——今から準備すべきこと

私自身、義務化に向けた社内説明用の資料づくりをお手伝いすることが増えていますが、初回から受検率を高く保つために、今のうちに決めておきたいことは次の3つです。 義務化の確定スケジュールと準備の進め方は50人未満の義務化はいつから?準備ガイド(2028年4月1日確定)にまとめています。
- 誰が担当するか——実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者を誰にするか。詳しくはストレスチェックの実施者とは?保健師も担当できる理由と要件で解説しています
- 実施方法をどうするか——紙で配布・回収するのか、Webシステムで回答してもらうのか
- 委託先をあらかじめ決めておく——義務化の施行が近づくほど、外部委託先の予約は埋まりやすくなります。後回しにすると、いざ必要になったときに自社だけ対応してもらえない、という事態になりかねません
まとめ:受検率は「告知の工夫」より「信頼の回復」で動く
- 受検率は60%を下回ると集団分析の精度が落ちる。目安は60%以上、理想は90%前後
- 受検率が低い会社の共通点は「やっても意味がない」という不信感。案内文の工夫だけでは解決しない
- 効果があるのは「秘密は守る」「結果を活かして変える」という発信と、それを実際にやり切ること。安全衛生委員会での可視化、面談後の実例づくりも有効
- 多くの会社は受検率を上げるための工夫を何もしていない。何か始めるだけでも差がつく
- 2028年4月の50人未満義務化に向けて、担当者・実施方法・委託先を早めに決めておく
一次情報は厚生労働省(ストレスチェック制度導入マニュアル)やe-Gov法令検索(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律)で確認できます。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェックの実施者とは?保健師も担当できる理由と要件
- 高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務
- ストレスチェック義務化はいつから?50人未満は2028年4月1日から|準備ガイド
よくある質問
Q. ストレスチェックの受検率はどのくらいが目安ですか?
法律上の下限はありませんが、実務上は60%を下回ると集団分析の精度が落ちるとされています。現場の実感では、うまく運用できている会社で90%前後、初めて相談を受ける段階では30〜40%という会社も少なくありません。
Q. 受検率が低いとどんな問題がありますか?
回答者が少ないと集団分析の信頼性が下がり、部署ごとのストレス傾向を正確に把握できなくなります。また、本来なら早期に把握できるはずの高ストレス者を見落とすリスクも高まります。
Q. 受検率を上げるには何をすればいいですか?
案内文の工夫やリマインドも大切ですが、それ以上に「秘密は守られる」「結果を活かして本当に変えていく」ことを繰り返し発信し、実際にやり切ることが重要です。安全衛生委員会での可視化や、面談を通じた良い変化の実例づくりも効果的です。
Q. 匿名性への不安にはどう対応すればいいですか?
ストレスチェックの結果は実施者から本人に直接通知され、本人の同意なく事業者に提供されることはありません。この仕組みを社内に繰り返し周知し、実際にその通りに運用することが、不安の解消につながります。
Q. 2028年の義務化に向けて、今から何をすればいいですか?
実施者・実施事務従事者を誰にするか、紙かWebかの実施方法、外部委託先をあらかじめ決めておくことをおすすめします。施行が近づくほど委託先の予約が埋まりやすくなるため、早めの準備が受検率の維持にもつながります。

