「ストレスチェックって、結局いくらかかるの?」「見積もりを3社取ったけれど、何が違うのか分からない」——2028年4月の50人未満への義務化を前に、費用の相談が一気に増えています。
先に結論です。ストレスチェックの費用は、受検そのものが1人あたり500〜700円前後、高ストレス者への医師の面接指導が1件3万円前後の2つでほぼ決まります。受検費は人数に比例して読みやすい一方、総額を左右するのは面接指導の件数です。従業員50人の会社なら受検5万円+面接指導2件6万円=年11万円(税別)程度で収まることが多く、100人でも年16万円ほどが目安です。
この記事では、現役産業医として毎年ストレスチェックの実施と面接指導を担当している立場から、費用の内訳、1人あたりの相場、見積もりで差がつく項目、規模別の総額シミュレーション、費用負担のルール、助成金と無料枠の現状を、これから実施する会社の目線で解説します。
ストレスチェックの費用は何で決まる?——4つの内訳

見積書の項目は業者ごとに違いますが、中身は次の4つに分解できます。①受検費(調査票の配布・回収・結果通知)、②高ストレス者への面接指導費、③集団分析などのオプション費、④実施者(医師・保健師)の関与にかかる費用です。このうち①は人数で決まり、②は「高ストレス者が何人出て、何人が面談を申し出るか」で決まります。
| 内訳 | 相場の目安 | 何で変わるか | 義務か |
|---|---|---|---|
| ①受検費 | 1人500〜700円前後(Web) | 設問数(57項目/80項目)、紙かWebか、最低料金の有無 | 義務(50人以上。2028年4月から全事業場) |
| ②面接指導費 | 1件3万円前後(意見書込み) | 申出件数、産業医の有無(顧問の業務内か、スポットか) | 申出があれば義務 |
| ③集団分析・レポート | 無料〜数万円 | 部署別の分析の深さ、報告会の有無 | 努力義務 |
| ④実施者の関与 | 受検費に含む業者が多い | 実施者を業者の医師・保健師に頼むか、自社の産業医が担うか | 実施者は必須 |
1人あたりの受検費の相場はいくら?——Web・紙・設問数で変わる

私が関わっている範囲では、Web受検で1人あたり500〜700円が中心の価格帯です。市場全体ではWebで200〜700円、紙で400〜1,000円と幅がありますが、極端に安い単価には「最低料金」や「初期費用」が別建てになっていることが多く、少人数の会社ほど単価だけで比べると失敗します。
| 方式 | 単価の目安 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Web受検 | 500〜700円前後 | PC・スマホが使える職場。拠点が分散している会社 | メールアドレスがない従業員の受検方法 |
| 紙(マークシート) | Webより高め(回収・入力費が乗る) | 製造・現場職で端末がない職場 | 回収・封入・返送の手間が社内に発生。個人情報の取り扱い |
| Web+紙の併用 | 両方の費用が乗る | 本社はWeb、工場は紙など | 併用は割高になりやすい。まず片方に寄せられないか検討 |
設問数も単価に影響します。標準は厚生労働省推奨の職業性ストレス簡易調査票(57項目)で、職場環境の改善まで踏み込みたい会社は80項目版(新職業性ストレス簡易調査票)を選びます。80項目は集団分析の情報量が増える分、費用が上がる業者が多いです。初めて実施する会社は57項目で十分です。
面接指導の費用は?——1件3万円前後、件数は「100人で0〜2件」が肌感覚
高ストレス者から申出があった場合の医師の面接指導は、外部にスポットで頼むと1件3万円前後(意見書作成込み)が相場です。顧問産業医がいる会社は顧問料の範囲で行うことが多く、追加費用が出ないケースもあります。
件数の見込みは、現場の感覚をそのままお伝えします。100人の会社なら高ストレス者は10人前後、そのうち面接指導を申し出るのは0〜2人というのが実態です。ですから面接指導費は「100人なら年10万円」を見ておけば、ほとんどの年は収まります。高ストレス者の割合や判定基準は高ストレス者の判定基準とは?何点から・割合の目安にまとめています。
面接指導の費用の内訳(顧問・スポット・無料枠の比較、見積もりチェックリスト)はストレスチェック面接指導の費用相場で詳しく解説しています。
見積もりで差がつく5項目——単価以外を見る

顧問先の見積もりを見比べていると、単価が同じでも総額が数万円違うことがあります。差が出るのは次の5項目です。逆に言えば、この5つを確認しておけば「めちゃくちゃ高くなる」ことはありません。
- 最低料金・初期費用。「1人300円」でも最低料金3万円なら、30人の会社は実質1人1,000円。少人数ほど要確認。
- 集団分析の範囲。部署別の基本レポートは無料でも、詳細分析や報告会は別料金の業者がある。努力義務なので初年度は基本レポートで十分。
- 紙とWebの併用。両方に対応させると回収・入力費が二重に乗る。片方に寄せられないか先に検討する。
- 面接指導が含まれているか。「面接指導の医師の手配は別途」という業者が多い。含まれていない場合、1件3万円前後を別に見込む。
- 労基署への報告書・結果通知の形式。50人以上に必要な「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」の作成支援や、本人への結果通知(紙郵送か画面か)が別料金のことがある。
金額以外の比較軸(乗り換えの失敗例、委託前に聞くべき質問、部分委託)はストレスチェックの外部委託先の選び方をご覧ください。
規模別の総額はいくら?——30人・50人・100人・300人のシミュレーション

受検費を1人600円、面接指導を1件3万円、高ストレス者を受検者の10%、申出をその1〜2割として計算した目安です。実際には最低料金や集団分析の有無で前後しますが、予算取りの出発点として使ってください。
| 従業員数 | 受検費 | 面接指導(件数×3万円) | 年間総額の目安(税別) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 30人 | 1.8万円(最低料金があれば2〜3万円) | 0〜1件(0〜3万円) | 約2〜6万円 | 2028年4月から義務化。面接指導は地域産業保健センターも選択肢 |
| 50人 | 約5万円 | 多くて2件(6万円) | 約11万円 | 私が相談を受けたときに伝えている現実的な数字 |
| 100人 | 約6万円 | 0〜2件(年10万円を確保) | 約16万円 | 高ストレス者10人前後。労基署への報告書が必要 |
| 300人 | 約18万円 | 3〜6件(9〜18万円) | 約27〜36万円 | 集団分析を部署別に活用する価値が出る規模 |
費用は誰が負担する?——会社負担が原則、受検時間は労働時間
ストレスチェックは労働安全衛生法第66条の10で事業者に義務づけられた検査なので、費用は会社が負担します。受検費や面接指導の費用を従業員に負担させることはできません。面接指導を外部の医師に依頼する場合の交通費や通信費も同様です。
受検にかかる時間については、厚生労働省のQ&Aでは「労使で協議して決める」とされていますが、事業者の義務として行う検査なので、就業時間内に受検させ、賃金を支払うのが普通です。面接指導の時間も同じ考え方で、私の顧問先では業務時間内に設定しています。「休憩時間に受けておいて」という運用は、受検率が下がるうえに従業員の不信を招くのでお勧めしません。
| 項目 | 負担・扱い |
|---|---|
| 受検費・結果通知・集団分析 | 会社負担 |
| 面接指導の費用(医師の報酬・意見書) | 会社負担 |
| 受検にかかる時間 | 就業時間内・賃金支払いが原則的な運用 |
| 面接指導にかかる時間 | 就業時間内・賃金支払いが原則的な運用 |
| 面接指導後に医療機関を受診する費用 | 本人の健康保険(会社負担ではない) |
助成金や無料枠で安くできる?——旧助成金は廃止、地域産業保健センターには限界がある

「ストレスチェック助成金」を調べている方は注意してください。50人未満の事業場が個別に申請できたストレスチェック助成金は令和4年度末で廃止されました。現在は事業主団体(商工会議所や同業組合など)を通じて申請する「団体経由産業保健活動推進助成金」に統合されていますが、年度予算の上限に達すると受付が早期に終了する年もあり、個社が確実に当てにできる制度ではありません。
50人未満の事業場は、地域産業保健センター(地さんぽ)で面接指導を無料で受けられます。ただし現場で見ている限界が2つあります。ひとつは予約枠で、2028年の義務化で需要が増えれば、いまの体制では受けきれません。もうひとつは時間です。申出から面談まで日数が空きすぎて、本人の状態が変わってしまい、面接指導が「意味のない儀式」になりがちです。無料枠は「使えたら使う」程度に考え、確実に動ける受け皿を別に用意しておくのが安全です。
費用を抑えながら「高ストレス者が出た後」に強くする——面接指導の受け皿を先に決める
費用の相談を受けていて感じるのは、多くの会社が受検の単価に注目しすぎて、高ストレス者が出た後の費用と段取りを決めていないことです。ストレスチェックの目的は面接指導と職場改善につなげることで、受検して終わりでは1人500円でも高い買い物になります。
産業医がいない会社でも、面接指導は外部の医師に1件単位で依頼できます。サンポチャートのスポット面接指導「サンポマッチ」は、待機している外部産業医の空き枠から従業員本人が日時を選ぶ仕組みで、基本料金は月1万円(税別・3か月単位)、面接指導は1件3万円(税別)・意見書込み。
ストレスチェックの実施時期に合わせて契約しておけば、高ストレス者が出た週に面談まで進められます。医師がいない場合の手配の流れはストレスチェック面接指導の医師がいない会社はどうする?もご覧ください。
まとめ:単価ではなく「面接指導まで含めた総額」で予算を組む
- ストレスチェックの費用=受検1人500〜700円前後+面接指導1件3万円前後。総額を左右するのは面接指導の件数。
- 目安は50人で年11万円、100人で年16万円(税別)。面接指導は「100人で0〜2件・年10万円」を確保しておく。
- 見積もりは最低料金・集団分析・紙とWebの併用・面接指導の有無・報告書の5項目で比べる。単価だけで選ばない。
- 費用は会社負担、受検・面接指導の時間は就業時間内・賃金支払いが原則的な運用。
- 旧ストレスチェック助成金は廃止。地域産業保健センターの無料面接指導は予約枠と時間差に限界がある。
- 受検費を削るより、高ストレス者が出た後の受け皿を先に決める方が、結果として安くつく。
最後に一言。ストレスチェックの予算で本当に怖いのは「高すぎる」ことではなく、面接指導の枠を削りすぎて、不調に気づいた従業員を待たせることです。受検費の数百円の差より、面談1件3万円の枠を確保しておく方が、休職者を1人出したときの損失に比べればはるかに安い投資です。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェック面接指導の費用相場|スポット外部委託は1件1.5万〜3万円
- ストレスチェックの外部委託先の選び方|失敗例と5つの比較ポイント
- ストレスチェック義務化はいつから?50人未満は2028年4月1日から|準備ガイド
- ストレスチェック面接指導の医師がいない|外部委託・スポット依頼を解説
よくある質問
Q1. ストレスチェックの費用は1人あたりいくらですか?
Web受検で1人あたり500〜700円前後が中心の価格帯です。市場全体では200〜1,000円と幅がありますが、単価が安い業者ほど最低料金や初期費用が別建てになっていることが多く、少人数の会社は総額で比較する必要があります。設問数(57項目か80項目か)や集団分析の範囲でも変わります。
Q2. 従業員50人未満の会社だと総額はいくらくらいですか?
50人なら受検費約5万円に、高ストレス者の面接指導を多くて2件(6万円)見込んで、年11万円(税別)程度が現実的な目安です。30人なら受検費2〜3万円に面接指導0〜1件で、年2〜6万円ほどです。2028年4月から50人未満も義務化されるため、この規模の予算取りの相談が増えています。
Q3. ストレスチェックの費用を従業員に負担させてもいいですか?
できません。ストレスチェックは労働安全衛生法で事業者に義務づけられた検査なので、受検費も面接指導の費用も会社が負担します。受検や面接指導にかかる時間も、就業時間内に設定して賃金を支払うのが原則的な運用です。面接指導のあとに医療機関を受診する費用は、本人の健康保険で負担します。
Q4. ストレスチェックの助成金は使えますか?
50人未満の事業場が個別に申請できた旧「ストレスチェック助成金」は令和4年度末で廃止されました。現在は事業主団体を通じて申請する「団体経由産業保健活動推進助成金」に統合されていますが、年度予算の上限で受付が早期終了する年もあり、個社が確実に当てにできる制度ではありません。地域産業保健センターの無料面接指導は使えますが、予約枠と日数に限界があります。
Q5. 高ストレス者の面接指導は別料金ですか?
多くの委託業者では受検費に面接指導は含まれておらず、医師の手配は別途です。外部の医師にスポットで依頼する場合は1件3万円前後(意見書作成込み)が相場です。顧問産業医がいる会社は顧問料の範囲で行うことが多く、追加費用が出ないこともあります。件数は100人の会社で年0〜2件程度が実態です。

