「高ストレス者は毎年一定数出るのに、面接指導の申出はほとんどない」「申し出なかった人に、会社は何もしなくていいの?」——ストレスチェックの担当者から、実施後に必ず出る相談です。
先に結論です。面接指導は本人の申出が前提なので、申し出ない人に面談を強制することはできません。会社にできるのは、「窓口はちゃんとある。いつでも相談できる」と見せ続けること、セルフケアの研修で相談の目安を伝えること、そして契約している外部の相談窓口(EAP)を定期的に周知することです。
この記事では、顧問先で実施者と面接指導を担当している産業医として、申し出ない高ストレス者に会社が最低限やっておくこと、相談窓口の種類、セルフケア研修の効き目、EAPが使われる会社と使われない会社の違いをお話しします。
高ストレス者の大半は、面接指導を申し出ない

高ストレスと判定される人は、おおむね受検者の1割前後です。そのうち医師の面接指導を申し出る人は、多くの事業場でごく一部にとどまります。理由は「会社に知られたくない」「そこまでではない」「忙しい」などさまざまです。
つまり、面接指導だけを用意しても、高ストレス者の大多数には届きません。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアル(令和8年2月)も、面接指導を選ばなかった人が高ストレスのまま放置されないよう、面接指導以外の相談窓口を案内することが重要としています。申出を増やす工夫は高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務、放置した場合の会社のリスクは高ストレス者を放置するとどうなる?で解説しています。
会社が最低限やっておくこと——「窓口はある、いつでも相談できる」を見せ続ける

- 結果の通知に、相談先の一覧を必ず同封する。面接指導の申出先だけでなく、面接指導以外の窓口も並べる。
- 申出の期限が過ぎても相談できると明記する。「期限を過ぎたら終わり」と思われないようにする。
- 会社に知られずに相談できる窓口を、少なくとも一つ入れる。社外の窓口や、匿名で使える公的な窓口。
- 年に何度か、同じ案内を繰り返す。ストレスチェックの直後だけでなく、繁忙期や異動の時期にも。
個人の結果は会社に届かないので、会社は「誰が高ストレスか」を知りません。だから案内は全員に向けて出します。そのまま使える案内の文面はストレスチェックの案内文・受検勧奨メール・面接指導勧奨の文例集にあります。
用意しておきたい相談窓口——社内・社外・公的の3層

| 窓口 | 相談できる相手 | 向いている人 | 会社に知られるか |
|---|---|---|---|
| 医師の面接指導(法定) | 産業医・面接指導担当の医師 | 残業の制限や業務の調整まで進めたい人 | 申出をしたことは会社に伝わる。不利益な取扱いは禁止 |
| 産業医・保健師の健康相談 | 産業医、保健師 | 面接指導ほど構えずに話したい人 | 相談の内容は守られる。仕組みを周知しておく |
| 外部の相談窓口(EAP) | 公認心理師、臨床心理士などのカウンセラー | 社内の人には話しにくい人、家庭や人間関係の悩みもある人 | 個人の利用は会社に伝わらないのが一般的 |
| こころの耳の相談窓口(厚生労働省) | 電話・SNS・メールの相談員 | 匿名で、無料で相談したい人。高ストレスでない人も使える | 伝わらない |
| 地域産業保健センター | 登録産業医、保健師 | 50人未満の事業場の従業員と事業者 | — |
産業医がいない会社でも、外部の窓口と公的な窓口の2つは案内できます。医師の面接指導を頼む先がない場合は面接指導の医師がいないときの外部委託・スポット依頼をご覧ください。
セルフケア研修が効く理由——「隠れ高ストレス者」に相談の目安を渡せる

窓口の案内と並んで効くのが、セミナーやセルフケア講習です。実際に開いてみると、申し出ていなかった「隠れ高ストレス者」の方が、「こういう対処もあるんだ」「こういうこともできるんだ」と気づいてくれます。
研修で必ず伝えてほしいのは、対処法だけではありません。「ここまで重くなったら相談しなければいけない」という目安です。目安を知らない人は、限界まで一人で抱えます。
| 研修で伝えること | 内容の例 |
|---|---|
| ストレスの気づき方 | 睡眠、食欲、イライラ、ミスの増加など、自分の変化のサイン |
| 自分でできる対処 | 睡眠時間の確保、休憩の取り方、相談する習慣、運動 |
| 相談の目安 | 眠れない・食べられない・仕事がうまく回らない状態が1〜2週間続いたら、産業医・保健師か医療機関へ |
| 相談先と使い方 | 社内・社外・公的窓口の連絡先、匿名で使えること、費用 |
| 結果の扱い | 個人の結果は同意なしに会社へ渡らないこと、不利益な取扱いの禁止 |
本人向けの説明は高ストレスで「うつ病かも」と不安なときの相談先とセルフケア、上司の関わり方は高ストレス者に上司はどう関わる?が参考になります。
外部EAPは使われている?——使われる会社と、お金だけ払っている会社の違い

| 使われない会社 | 使われる会社 | |
|---|---|---|
| 周知 | 契約時に一度だけメールで案内 | 定期的に周知する(ストレスチェックの時期、繁忙期、入社時) |
| 接点 | 連絡先が社内ポータルの奥にある | セミナーや勉強会でEAPの担当者が顔を出し、使い方を説明する |
| 伝え方 | 「困ったら使ってください」 | 「会社には伝わりません」「家族の悩みも相談できます」「無料です」まで伝える |
| 振り返り | 利用件数を見ていない | 個人が分からない形の利用状況を衛生委員会で確認する |
使われている会社は、セミナーや勉強会をうまく組み合わせているところが多いです。定期的に周知しなければ「知らない」という状況が必ず生まれます。衛生委員会での進め方はストレスチェックは衛生委員会で何を決める?をご覧ください。
まとめ:申し出ない人にこそ、窓口を見せ続ける
- 高ストレス者の大半は面接指導を申し出ない。面接指導だけでは届かない。
- 会社が最低限やるのは、「窓口はある、いつでも相談できる、時間が経っても大丈夫」と見せ続けること。
- 窓口は社内(産業医・保健師)、社外(EAP)、公的(こころの耳・地産保)の3層で案内する。
- セルフケア研修では、対処法に加えて「相談の目安」を必ず伝える。
- EAPは定期的に周知しないと使われない。セミナーや勉強会と組み合わせる。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェック制度とは?目的・法的根拠・流れ・会社の義務を現役産業医が解説
- 高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務
- 高ストレス者を放置するとどうなる?会社のリスクと今すぐやるべき対応
- 高ストレスで「うつ病かも」と不安なときの相談先とセルフケア
- 高ストレス者に上司はどう関わる?結果は見られない前提で管理職が知れること・やること・NG
- ストレスチェックの案内文・受検勧奨メール・面接指導勧奨の文例集
よくある質問
Q1. 面接指導を申し出なかった高ストレス者に、会社から声をかけてもいいですか?
会社は誰が高ストレスかを知らないので、個別に声をかけることはできません。申出の勧奨は、結果を知っている実施者(産業医・保健師など)から行います。会社は全員に向けて、相談窓口の案内を繰り返し出してください。
Q2. 産業医も保健師もいない会社は、どこを案内すればいいですか?
厚生労働省「こころの耳」の相談窓口(電話・SNS・メール、無料・匿名)と、50人未満の事業場が無料で使える地域産業保健センターを案内します。医師の面接指導は、ストレスチェックの委託先やスポットの外部産業医に依頼できます。
Q3. EAPの利用状況を会社が知ることはできますか?
個人が分からない形の件数や相談の傾向であれば、報告を受けられる契約が一般的です。誰が利用したかは会社に伝えない仕組みにし、そのことを従業員に明示してください。匿名性が信頼されないと使われません。
Q4. セルフケア研修は、いつ実施するのが効果的ですか?
ストレスチェックの結果が返る時期に合わせるのが効果的です。結果を見た直後は関心が高く、研修で伝えた相談先がそのまま使われやすくなります。新入社員研修や管理職研修に組み込むのもよい方法です。

