「正直に答えたら高ストレスになりそう。低めに答えておこうかな」「逆に、しんどさを分かってほしいから高めに答えたい」——ストレスチェックの前に、こんなふうに迷う方は少なくありません。
先に結論です。ストレスチェックでいちばん大事なのは、ありのままで答えることです。嘘をついても罰はありません。ただ、わざと低く答えても、わざと高く答えても、あなたにとって良いことは起こりません。そして、正直に答えて損をすることは、仕組みの上で本当にありません。
この記事では、顧問先で実施者と面接指導を担当している産業医として、嘘をつくとどうなるか、わざと低く・高く答えたときに起こること、正直に答えて損をしない理由、あなたの回答が何に使われるのかをお話しします。
嘘をついたらバレる?罰はある?

罰はありません。ストレスチェックは自己申告の質問票で、回答が事実と違っていても、それを調べたり処分したりする仕組みはありません。
「面談や普段の様子で、嘘だと分かりますか」と聞かれることがあります。答えはこうです。分かったところで、産業医や実施者があなたに何か言うことはありません。回答を疑って問い詰めるのは、私たちの仕事ではないからです。ストレスチェックは本人が自分の状態に気づくための道具で、取り調べではありません。
わざと低く(元気なふりで)答えるとどうなる?

- 結果が「問題なし」と出る。本当はしんどくても、高ストレスと判定されません。
- 面接指導の案内が来ない。医師に相談して、残業の制限や業務の調整につなげる公式のルートが開きません。
- 職場の数字も「問題なし」になる。あなたの部署の負担が集団分析に表れず、改善の優先順位が下がります。
低く答える理由のほとんどは「会社に知られたくない」「評価が下がりそう」という不安です。この不安は、後で説明するとおり、仕組みを知れば解けます。
わざと高く答えるとどうなる?

わざと高く答えても、良いことはありません。悪いことが起こるわけでもありませんが、期待しているような効果は出ません。
| 期待 | 実際 |
|---|---|
| 高ストレスなら会社が何かしてくれる | 結果は会社に届きません。会社が動くのは、あなたが面接指導を申し出て、医師が意見を出したときです |
| 高ストレスなら休める・異動できる | ストレスチェックの結果だけで休職や異動は決まりません。医師の面談で実際の状態を確認して判断します |
| 上司への不満を伝えたい | 個人の回答は上司に見えません。職場の問題は、集団分析の数字として部署単位で表れます |
本当にしんどいなら、わざと高く答える必要はありません。ありのままに答えれば高ストレスと出ますし、面談を申し出れば医師が話を聞きます。面談で何を話すかはストレスチェックの面談で何を話す?、判定の仕組みは高ストレス者の判定基準とは?をご覧ください。
正直に答えて損をしない理由——守秘義務と、不利益取扱いの禁止

「正直に答えたら損をするのでは」という不安に、はっきり答えます。正直に答えて損をすることは、本当にありません。理由は3つあります。
- 同意しなければ、結果は会社に渡らない。実施者(医師・保健師など)は、あなたの同意なしに結果を会社へ提供することを法律で禁じられています(労働安全衛生法66条の10第2項)。
- 扱う人には守秘義務がある。実施者と実施事務従事者が秘密を漏らせば、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。人事権のある人は、個人の結果に触れる事務に関わること自体ができません。
- 結果を理由にした不利益な取扱いは禁止。もし会社があなたに損をさせれば、責任を問われるのは会社や担当者のほうです。
同意の仕組みはストレスチェックの同意・プライバシー保護、「会社にバレるのでは」という不安への答えは高ストレス者面談のデメリットは?にまとめています。
あなたの回答は、職場を良くするデータの礎になる

もう一つ、知っておいてほしいことがあります。あなたの回答は、個人が特定されない形で部署ごとに集計され、集団分析として職場環境の改善に使われます。
集団分析は原則10人以上の単位で行い、個人が分からない方法で集計することが決められています。仕組みはストレスチェックの集団分析とは?で説明しています。
迷ったときの答え方——3つのコツ

- 「最近1か月」を思い出して答える。今日の気分だけで答えない。質問票は直近1か月の状態を聞いています。
- 考え込まず、直感で選ぶ。5〜10分で終わるくらいの速さがちょうどよい。
- 「どう見られるか」ではなく「実際どうか」で選ぶ。誰かに見せるための回答ではありません。
受けること自体を迷っている方は、ストレスチェックは意味ない?も参考にしてください。
まとめ:ありのままがいちばん得
- 嘘をついても罰はない。分かったとしても、産業医や実施者が何か言うことはない。
- わざと低く答えると、面談や業務調整につながる機会を逃す。
- わざと高く答えても、良いことも悪いことも起こらない。会社が動くのは、面談を申し出て医師が意見を出したとき。
- 正直に答えて損はしない。同意なしに会社へ渡らず、守秘義務と不利益取扱いの禁止で守られている。
- 正直な回答は、集団分析を通じて職場を良くするデータの礎になる。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェック制度とは?目的・法的根拠・流れ・会社の義務を現役産業医が解説
- ストレスチェックは拒否できる?受けないとどうなるかを産業医が本人向けに解説
- ストレスチェックの同意・プライバシー保護|小規模事業場の実務ポイント
- 高ストレス者面談のデメリットは?会社にバレる不安に保健師が回答
- ストレスチェックの集団分析とは?見方・活用法・職場環境改善につなげる手順
- ストレスチェックの結果の見方|点数・レーダーチャート・高ストレス判定と「結果がおかしい」とき
よくある質問
Q1. ストレスチェックで嘘をつくと、罰則や処分はありますか?
ありません。自己申告の質問票で、回答の真偽を調べたり処分したりする仕組みはありません。ただし、正確な結果が出なくなるので、困るのは本人です。
Q2. わざと高ストレスになるように答えると、休職や異動ができますか?
できません。結果は会社に届かず、ストレスチェックの点数だけで休職や異動が決まることはありません。就業上の配慮は、本人が面接指導を申し出て、医師が実際の状態を確認したうえで意見を出し、会社が判断します。
Q3. 正直に答えて高ストレスと出たら、会社に知られますか?
同意しなければ知られません。実施者は本人の同意なしに結果を会社へ提供できません。面接指導を申し出た場合は、申出をしたことが会社に伝わりますが、それを理由にした不利益な取扱いは法律で禁止されています。
Q4. 適当に答えてしまいました。やり直せますか?
実施期間中であれば、実施事務の窓口に相談すると再回答できることがあります。期間が過ぎている場合は、厚生労働省「こころの耳」のセルフチェックで同じ57項目を匿名で受け直し、気になる結果なら産業医や保健師に相談してください。

