ストレスチェックで高ストレスと判定されて、医師との面談(面接指導)を受けることになった。あるいは、受けるかどうか迷っている——「いったい何を話すんだろう」「変なことを聞かれたらどうしよう」「会社に筒抜けになるのでは」。その不安、面談を行う側の産業医として、よく分かります。先に結論をお伝えすると、面談はおよそ30分、話すのは「最近の体調」と「仕事の状況」が中心です。あなたを評価したり、問い詰めたりする場ではありません。そして面談で話した内容が、あなたの同意なく会社に伝わることは基本的にありません。この記事では、私が実際に行っている面談を、当日の流れに沿ってそのままお見せします。
面談は「あなたを守る場」——評価や処罰の場ではない

まず大前提から。高ストレス者への面談(正式には「面接指導」)は、労働安全衛生法に基づいて会社があなたのために用意する義務のある、医師との時間です(労働安全衛生法第66条の10)。目的はただ一つ、ストレスで心身に負担がかかっていないかを医師が確認し、必要なら働き方を調整してあなたを守ることです。
誤解されやすいのですが、この面談はうつ病かどうかを診断する「診察」ではありません。高ストレスと判定された人が全員メンタル不調というわけでもありません。また、面談を申し出たことを理由に、会社があなたに不利益な取扱い(解雇・減給・不当な評価など)をすることは、法律で明確に禁止されています。「面談を受けたら目をつけられるのでは」という心配は、制度の設計上、逆なのです——受けたことであなたの立場が守られます。
当日の流れ——約30分で起きることの全部
私が実際に行っている面談は、だいたい次の流れです。対面でもオンラインでも、進め方は変わりません。
- 最初に医師から「この面談のルール」の説明——守秘義務のこと、会社に伝わる範囲のこと(次の章で詳しく)
- 近況の雑談——いきなり核心には入りません。最近の様子を伺いながら、緊張をほぐすところから
- 体調の話——眠れているか、食欲はあるか、気分の落ち込みはないか
- 仕事の話——仕事量、残業、人間関係、繁忙の波、ストレスに感じていること
- 支えの確認——職場や家庭に相談できる相手がいるか
- 医師からの見立てと提案——「今の状態はこう見えます」「こうするといいと思います」を一緒に整理
- 締めくくり——今後のこと(必要な場合のフォローや受診)を確認して終了
時間はトータルで30分程度が目安です。取り調べのような時間ではなく、対話をしながらあなたのストレスを一緒に整理していく時間——受けた方の感想で多いのは「思っていたよりずっと普通に話せた」です。
具体的に何を聞かれる?——質問の実例と、その意図

聞かれることは、難しいことではありません。「夜は眠れていますか」「食事はとれていますか」「仕事の量は最近どうですか」「職場で困っていることはありますか」「相談できる人はいますか」——こうした質問が中心です。上手に答える必要はまったくなく、思っているままを話してもらうのがいちばん役に立ちます。逆に、話したくないことを無理に話す必要もありません。
【面談を行う医師として】一つだけ、驚かないでほしい質問があります。状態が心配なときには、私は率直に「死にたいと感じることはありますか」「消えてしまいたいと思うことはありますか」と伺うことがあります。ぎょっとするかもしれませんが、これは聞くことでしか分からない、あなたを守るためのいちばん大事な確認です。もしそういう気持ちがあるなら、正直に教えてください。責められることは絶対にありません。医師はその気持ちの強さを一緒に確認して、必要なら「まず心身のバランスを整えましょう。働くのはこの先とても長いのだから」と、次の一歩を一緒に考えます。
話した内容は、会社にどこまで伝わるのか

いちばん気になるのはここだと思います。私は面談の冒頭で、毎回必ずこう説明しています——医師には守秘義務があり、面談で話した内容が基本的に会社に漏れることはありません。面談後に医師は会社へ報告を出しますが、そこに書かれるのは「面談を実施した」という事実と、働き方の調整(残業を減らす等)が必要になった場合の必要最低限の内容だけです。愚痴も、人間関係の悩みも、そのまま会社に伝わることはありません。
また、働き方の調整(就業上の措置)が必要になりそうな場合も、医師が勝手に決めて会社に通告するわけではありません。「残業を減らしてもらうよう意見を出そうと思いますが、どうですか」と、本人と相談しながら決めていくのが本来の面談です。あなたの知らないところで何かが決まることはありません。
面談のあとはどうなる?——多くの人は「通常勤務でOK」
面談を受けた人がその後どうなるのか。実感としては、大多数の方は「通常勤務で大丈夫」を確認して、そのまま普段どおりの生活に戻ります。面談に来られる方の動機も、「ストレスと一度きちんと向き合いたかった」「話を聞いてほしかった」という比較的軽いものが多くを占めます。
受ける前に準備しておくといいこと

特別な準備は要りませんが、次の3つがあると30分をより有意義に使えます。
- 伝えたいことを1〜2個メモしておく——「これだけは聞いてほしい」があると、話が散らからず本題に時間を使えます
- ここ2週間の睡眠を振り返っておく——寝つき・夜中に起きるか・朝のだるさ。体調の話の中心は睡眠です
- 会社から事前シートを渡されたら素直に記入する——疲労蓄積度のチェックリストなどがあると、医師が状況を早くつかめて、その分あなたの話を聴く時間が増えます
「そもそも面談を受けるか迷っている」という方は、ストレスチェック面談は意味ない?高ストレス者が面談すべき理由もあわせてどうぞ。制度全体のしくみ(義務・流れ・就業措置)を知りたい方や人事の方はストレスチェック面接指導の完全ガイドで解説しています。
まとめ:身構えなくて大丈夫。30分、思っているままを話すだけ
- 面談は約30分。聞かれるのは体調(睡眠・食欲・気分)と仕事の状況(量・人間関係)が中心
- 評価・処罰の場ではなく、うつ病の診察でもない。申出を理由にした不利益な扱いは法律で禁止
- 話した内容は基本的に会社に伝わらない。伝わるのは実施の事実と、調整が必要な場合の最低限だけ(危険なサインのときのみ、本人に確認のうえ共有)
- 多くの人は「通常勤務でOK」で終了。調整や受診の提案が出るのは、制度があなたを守り始めたサイン
- 準備は「伝えたいことメモ」「睡眠の振り返り」「事前シートの記入」の3つで十分
一次情報は厚生労働省(ストレスチェック制度導入マニュアル)やe-Gov法令検索(労働安全衛生法第66条の10)で確認できます。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 面談の時間はどのくらいですか?
おおむね30分程度です。前半で体調(睡眠・食欲・気分)と仕事の状況(量・人間関係)を伺い、後半で医師の見立てと今後のことを一緒に整理します。対面でもオンラインでも流れは同じです。
Q. 面談を受けると、会社での評価に影響しませんか?
面接指導の申出をしたことを理由に、解雇・減給・不当な評価などの不利益な取扱いをすることは、法律で禁止されています。また、面談で話した内容が本人の同意なく会社に伝わることも基本的にありません。会社に伝わるのは「実施した事実」と、働き方の調整が必要な場合の必要最低限の内容だけです。
Q. 上司に面談の内容を知られたくないのですが。
医師には守秘義務があり、面談での会話がそのまま上司や人事に伝わることはありません。働き方の調整が必要な場合も、「何をどこまで会社に伝えるか」は医師が本人と相談したうえで決めます。唯一の例外は生命に関わる危険なサインが確認された場合ですが、その場合も本人に確認したうえで会社の協力を求める形をとります。
Q. 話したくないことは話さなくてもいいですか?
かまいません。面談は取り調べではなく、無理に聞き出す場でもありません。一方で、睡眠や食欲など体調に関する質問には、できるだけ正直に答えることをおすすめします。あなたの状態を正確に知ることが、あなたに合った調整につながるからです。
Q. 面談は断ることもできますか?
面接指導は本人の申出に基づいて行われるもので、強制ではありません。ただ、高ストレスの判定は「一度きちんと自分のストレスと向き合うタイミング」でもあります。約30分で不利益もありませんから、迷っているなら受けることをおすすめします。多くの方は「話せてよかった」と言って帰られます。

