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うつ病・適応障害は産業医に相談していい?会社に伝わること・してくれること

2026 10/10
メンタルヘルス 産業医関連
2026年10月7日2026年10月10日
うつ病・適応障害のとき産業医に相談していいか、会社に伝わること・してくれることを解説する記事のサムネイル

「心療内科で適応障害と言われました。会社の産業医に相談したほうがいいのは分かっているけれど、話したら上司に病名が伝わるのでは、評価に響くのでは、休職させられるのでは……と思うと、なかなか申し込めません」——こういう迷いを抱えたまま働いている方は少なくありません。

先に結論です。うつ病・適応障害と言われたとき、またはそうかもしれないと感じたときも、産業医に相談して大丈夫です。産業医がまず確かめるのは、病名よりも「いま、どのくらい働けるか」という体調の状況です。会社に伝えるのは、残業の制限などの就業上の配慮で、病名を伝える必要があるときは本人に確認をとってから伝えます。そして、限界まで我慢してから来るより、早めに相談したほうが、休まずに働き続けられる選択肢が残ります。

私は名古屋で産業医をしている角田拓実です。この記事では、うつ病・適応障害(またはその疑い)で、まだ働いている方が自分から産業医に相談するときに、面談で何を聞かれるか、会社に何が伝わって何が伝わらないか、どんな配慮を頼めるかを、産業医の側からお話しします。

目次

うつ病・適応障害で産業医に相談していい?——最初の面談で確かめる4つ

うつ病・適応障害で産業医に相談したとき、最初の面談で産業医が確かめる4つの図。1 気持ちと体の症状(気分の落ち込み・不安と、体に出ている症状)、2 きっかけ(仕事の量・異動・人間関係)、3 生活リズム(睡眠・食事・運動)、4 仕事がどのくらいできるか(産業医がいちばん大事にするところ)。主治医は病気を診断し治療する、産業医は体調に合わせて仕事をどう続けるか・休むかを考える。重要ポイント: 病名より、いまどのくらい働けるか。

相談していいです。診断がついていなくても、「うつかもしれない」「眠れない日が続いている」という段階で来ていただいてかまいません。うつ病や適応障害と言われた方、あるいはそうかもしれない方が自分から相談に来たとき、私が最初の面談で確かめるのは次の4つです。

  1. 気持ちと体の症状——気分の落ち込みや不安といった気持ちの部分と、体に出ている症状。心と体の両方の症状を確認します。
  2. きっかけ——どんなきっかけがあったのか。仕事の量なのか、異動なのか、人間関係なのか。このヒアリングも大事です。
  3. 生活リズム——睡眠、食事、運動といった、一般的な生活の質問です。
  4. 仕事がどのくらいできるか——実際に、いまの仕事をどのくらいこなせているか。産業医や産業保健の分野では、ここがすごく大事なので、必ず確認します。

4つ目が、病院の診察とのいちばん大きな違いです。主治医は病気を診断して治療します。産業医は治療をしない代わりに、「この体調で、いまの仕事をどう続けるか・休むか」を職場の側から考えます。主治医の診断書と産業医の意見書の役割の違いは産業医意見書と診断書の違いで解説しています。

主治医(心療内科・精神科など)産業医
役割病気を診断し、治療する体調に合わせて、仕事をどう続けるか・休むかを考える
主に見ること症状・診断・薬の効き方症状・きっかけ・生活リズム・いまの仕事ぶり
会社とのかかわり診断書を書く会社に就業上の配慮の意見を出す
相談のしかた受診(予約)会社の窓口(人事・保健師など)を通して面談を申し込む

まだ病院にかかっていないときは、面談のあとで受診をすすめることもあります。そのとき職場の状況を主治医に伝えたほうがよければ、産業医が手紙を書くこともあります(産業医は紹介状を書ける?)。面談の申し込み方や、面談の一般的な流れは産業医面談とは?呼ばれる理由・何を話すにまとめています。

産業医に話すと、会社に何が伝わる?——病名より「働けるか」。伝えるときは本人に確認してから

産業医に相談したとき会社に伝わること・伝わらないことの図。本人から産業医、産業医から会社へ情報が流れ、産業医のところで病名などを除いて配慮の内容に置き換える。会社に伝えること: 働けるか・休んだほうがいいか、就業上の配慮の内容(残業の制限・夜勤を外す など)、配慮をいつまで続けるか。本人の了解なしには伝えないこと: 病名・診断名、面談で話したことの中身、飲んでいる薬・通院の細かい内容。伝える必要があるときは本人に確認をとってから。重要ポイント: 休職のときも、むやみに病名を広げる必要はない。根拠は刑法第134条と労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針。

「上司には病名を知られたくない」とおっしゃる方は多いです。私の考えをはっきり書くと、産業医として大事なのは、病名がどうこうよりも、働けるか・働けないかという体調の状況です。ですから、ご本人にも会社にも、「病名いかんではないですよ」とお伝えしています。

逆にいえば、病名がどうであろうと、体調が悪ければお休みして、しっかり療養したほうがいい。無理を続ければ、悪化してしまう可能性もあります。会社にとって必要なのは「何という病気か」ではなく、「どのくらい働けて、どんな配慮が要るか」です。

会社に伝えること本人の了解なしには伝えないこと
働けるか・休んだほうがいいか病名・診断名
就業上の配慮の内容(残業の制限・夜勤を外す など)面談で話したことの中身(きっかけ・家庭のこと・人間関係の詳しい事情)
配慮をいつまで続けるか・いつ見直すか飲んでいる薬・通院の細かい内容

配慮を頼むうえで、どうしても病名や事情を伝える必要がある場合は、ご本人に確認をとってから伝えます。たとえば「特定の人との関係がきっかけになっている」ことを上司に伝えないと配置を調整できない、といった場面です。そのときも、何を・誰に・どこまで伝えるかを、ご本人と一緒に決めます。

本当に休職になるときは、会社に主治医の診断書を出す必要があります。それでも、むやみやたらに病名を広げる必要はありません。上司や同僚に必要なのは、「いつから休むか」「いつごろ見直すか」「仕事を誰が引き継ぐか」です。診断書を受け取った人事の方がしてはいけないことはメンタル不調の休職診断書を渡された日、人事担当者がやってはいけない3つのことで解説しています。

決まりの上でも、産業医が相談の内容を勝手に会社へ伝えることはできません。医師には刑法第134条の守秘義務があり、厚生労働省の「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針」では、健康相談の結果は、会社があらかじめ本人の同意を得て取り扱う情報に分類されています。会社に渡すときは、診断名や記録そのものではなく、就業上の措置についての医師の意見に置き換える(情報の「加工」)のが原則です。加工のしかたは産業医の意見書で職場に渡していい情報は「就業制限の内容」だけで解説しています。

同じ指針は、心身の状態の情報の内容を理由に、解雇・退職勧奨・不当な動機による配置転換などをしてはならない、とも定めています。ただし、体調に合わせて残業を制限するなど、配慮のために仕事の内容が変わることはあります。それは不利益な取扱いではなく、体調を守るための措置です。

我慢して働き続けると、どうなる?——休職の診断書を持ってくるころには選択肢が減っている

早めに相談した人と限界まで我慢した人の経過の比較図。早めに相談: 眠れない・気分が晴れない(仕事はまだできる)、産業医に相談、受診・残業を減らす・人間関係の調整、休まずに働き続ける。本人の言葉「悪化する前に相談できてよかった」。限界まで我慢: 無理して働き続ける、もう働けない、休職の診断書を持って相談、休みが数か月に長引くことも。重要ポイント: いちばん悪くなってから来るのは、もったいない。

産業医をしていて、いちばん「もったいない」と思うのは、休職の診断書を持ってきて、はじめて相談に来られるケースです。休職の診断書が出るのは、もう働けない状況になってから。もう少し早く相談していただいていれば、就業制限など何かしらの就業上の配慮をしたうえで、仕事を続けるという選択肢もあったかもしれません。

いちばん悪くなってから来ると、結果として数か月、休みが長くなることもあります。ご本人にとっても、会社にとっても、損失はとても大きいです。

逆に、早めに相談して休まずに済んだ、というケースは結構あります。病院を受診してもらう、残業時間を減らす、人間関係が原因であればそこを話し合う——職場の側で配慮できることがあるからです。そうして「悪化する前に相談できてよかったです」と言っていただくことは、しばしば経験します。

早めに相談した限界まで我慢して働き続けた
相談したときの状態眠れない・気分が晴れないが、仕事はまだできているもう働けない。休職の診断書を持って相談に来る
産業医ができること受診をすすめる・残業を減らす・人間関係の調整を相談する休職の手続きと療養の支え
その後休まずに、配慮を受けながら働き続けられることも多い休みが数か月に長引くこともある

朝起きられない、仕事に集中できない、涙が出る、眠れない日が続く——そうした状態で「まだ大丈夫」と思って働き続けるのがいちばん危ないパターンです。主治医から「休んだほうがいい」と言われたときの考え方はドクターストップとは?仕事を休む基準・診断書・会社への伝え方を参考にしてください。

治療しながら働き続けるために、産業医が会社に頼む配慮

治療しながら働き続けるために産業医が会社に頼むことが多い3つの配慮の図。残業時間の制限(いちばん多い配慮、睡眠と休む時間を確保する)、夜勤などへの配慮(シフトのある人は生活リズムを崩さない)、特定の人間関係への配慮(相手に注意・配慮をしてもらう、毎日顔を合わせない調整を相談)。流れ: 産業医が意見を出す、会社が決める、1か月後などに面談で見直す。重要ポイント: どんな配慮があれば続けられそうか、思っていることをそのまま話す。

正直にいうと、産業医ができることは限られています。それでも、治療しながら働き続ける方のために、会社に頼むことが多い配慮はあります。

  • 残業時間の制限——いちばん多い配慮です。治療中は、睡眠と休む時間を確保することが回復の土台になります。
  • 夜勤などへの配慮——夜勤やシフトのある方は、生活リズムを崩さないように、その部分を配慮してもらいます。
  • 特定の人間関係への配慮——社内の特定の人との関係が原因であれば、会社からその人に注意をしてもらう・配慮をしてもらう、毎日顔を合わせずに済むようにうまく調整できないか、を会社と相談することがあります。

産業医は、こうした配慮を「意見」として会社に出し、実際にどうするかは会社が決めます。主治医の意見があれば、それも参考にします。配慮は一度決めたら終わりではなく、体調を見ながら、1か月後などに面談で見直します。就業上の配慮(就業制限)の決まり方は産業医の就業制限とは?基準・強制力・会社対応で解説しています。

「どんな配慮があれば続けられそうか」は、ご本人にしか分からない部分もあります。面談では、残業が減れば楽になりそうか、特定の業務がつらいのか、人がつらいのか、思っていることをそのまま話してください。

休職することになった場合の、休職中の会社との連絡や復職後のフォローは休職中の社員への連絡はどこまで?で解説しています。

会社に産業医がいないときは、どこに相談する?

会社に産業医がいないときの相談先の図。産業医の選任義務は50人以上の事業場。相談先: 人事・総務(相談先を確かめる、病名まで言わなくていい)、地域産業保健センター(50人未満の事業場は無料で相談できる)、主治医(仕事の続け方も相談してよい)。重要ポイント: 体調のことで相談したい、とだけ伝えればよい。

産業医の選任が義務になるのは、働く人が50人以上の事業場です。50人未満の会社では、産業医がいないことも珍しくありません(労働安全衛生法第13条・労働安全衛生法施行令第5条)。その場合の相談先は次のとおりです。

  • まず人事・総務に、相談先を確かめる——保健師や契約している医師がいる会社もあります。「体調のことで相談したい」とだけ伝えれば、病名まで言う必要はありません。
  • 地域産業保健センター——50人未満の事業場の方は、無料で医師などに健康相談ができます。申し込み方はセンターによって違うので、人事に確かめるか、センターに問い合わせてください。
  • 主治医——仕事の続け方も含めて、主治医に相談してかまいません。会社に配慮を頼みたいときは、その内容を診断書や意見に書いてもらう方法もあります。

産業医がいない会社でメンタル不調の社員にどう対応するかは、人事の方向けに産業医がいない会社はどうする?でまとめています。

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よくある質問

Q1. まだ診断されていなくても、産業医に相談していいですか?

相談していいです。「うつかもしれない」「眠れない日が続く」という段階で相談していただくほうが、配慮で働き続けられる選択肢が残ります。必要なら、産業医が受診をすすめます。

Q2. 産業医に話したことは、上司に伝わりますか?

病名や話した中身は、本人の了解なしには伝えません。会社に伝えるのは、働けるかどうかと、残業の制限などの配慮の内容です。病名や事情を伝える必要があるときは、本人に確認をとってから、何を・誰に・どこまで伝えるかを決めます。

Q3. 産業医に相談すると、休職させられますか?

相談したからといって、休職になるわけではありません。早めの相談なら、残業を減らすなどの配慮で働き続けられることも多いです。ただ、体調が悪ければ、病名に関係なくお休みしてしっかり療養したほうがよく、そのときは休むことをおすすめします。

Q4. 相談したことで、評価や異動に響きませんか?

厚生労働省の指針は、心身の状態の情報を理由にした解雇・退職勧奨・不当な動機による配置転換などをしてはならないとしています。ただし、体調を守るために残業を制限するなど、配慮として仕事の内容が変わることはあります。

Q5. 主治医がいるのに、産業医にも相談する意味はありますか?

あります。主治医は病気を治療し、産業医は職場の側から「仕事をどう続けるか」を考えます。残業の制限や人間関係の調整など、会社に配慮を頼むときは、職場の事情を知っている産業医が間に入ると進めやすくなります。

Q6. 会社に産業医がいない場合は、どこに相談すればいいですか?

まず人事・総務に相談先を確かめてください。50人未満の事業場の方は、地域産業保健センターで無料で医師などに相談できます。仕事の続け方は主治医に相談してもかまいません。

まとめ:うつ病・適応障害の相談は「悪くなる前」に

  • うつ病・適応障害と言われたとき、そうかもしれないときも、産業医に相談していい
  • 最初の面談で確かめるのは、気持ちと体の症状・きっかけ・生活リズム(睡眠・食事・運動)・仕事がどのくらいできるか
  • 産業医が大事にするのは病名より「働けるか」。会社に伝えるのは配慮の内容で、病名を伝える必要があるときは本人に確認してから
  • 休職のときも会社に出すのは診断書で、むやみに病名を広げる必要はない
  • 休職の診断書を持ってくるころには選択肢が減っている。早めの相談なら、残業の制限・夜勤への配慮・人間関係の調整で働き続けられることも多い

参考: 労働安全衛生法 第104条・第105条(e-Gov) / 刑法 第134条(e-Gov) / 労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針(厚生労働省・PDF) / 治療と仕事の両立について(厚生労働省)

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この記事を書いた人

角田拓実のアバター 角田拓実

産業保健解説メディア「さんぽちゃーと」編集長。株式会社サンポチャート代表取締役。株式会社豊田自動織機専属産業医の後、東海地方を中心に50事業所以上の職場健康管理に関わっている。資格:日本医師会認定産業医/博士(医学)/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/健康経営エキスパートアドバイザー。著書に40代から始めるあなたの予防医学(自由国民社)、図解入門ビジネス職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本(秀和システム新社)がある。

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