「休職中の社員に、会社からどのくらい連絡していいんでしょうか。連絡しすぎても、放っておいても、まずい気がして」——休職者を初めて出した会社の人事の方から、とてもよく聞く悩みです。
先に結論です。休職中の連絡で大事なのは、頻度よりも「窓口を1人にして、それ以外の人は連絡しない」ことです。上司・同僚・人事がそれぞれ善意で連絡すると、本人はそのたびに会社のことを考えてしまい、休めません。窓口の担当者が、診断書の更新にあわせて事務的な連絡をする。これで十分です。
もう一つ、人事が忘れがちなのが休職期間の満了3か月前の連絡です。「このままだと自然退職になる可能性があること」「戻りたいタイミングでちゃんと連絡してほしいこと」を、このタイミングで伝えておきます。そして復職後は、残業禁止などの条件をだいたい2か月・4か月・6か月の段階で見直し、ダラダラ長引かせないのがポイントです。
この記事では、休職者の面談を日常的に行っている産業医の立場から、連絡の窓口と内容の線引き、満了前に伝えること、復職後のフォロー面談と条件解除の目安、条件を長引かせてはいけない理由を順に解説します。休職に入る日の対応は休職診断書を渡された日にやってはいけない3つのことを参考にしてください。
休職中の会社からの連絡、頻度より大事なのは「窓口を1人にする」こと

私が人事の方によく言うのは、いろんな人が連絡しないことが大事、ということです。連絡の担当を1人決めて、それ以外の方はもう連絡しない。これがいちばん効きます。
休職中の本人にとって、会社からの連絡は「休んでいて申し訳ない」「戻れるだろうか」という気持ちを毎回呼び起こします。上司が心配して電話し、同僚がLINEで様子を聞き、人事が書類の件で連絡する、というのが重なると、休職しているのに休めていない状態になります。
| 会社の窓口担当者(1人) | 上司・同僚・その他の社員 | |
|---|---|---|
| 連絡 | する(診断書の更新・手続き・満了前の案内) | しない(心配でも窓口に任せる) |
| 手段 | 本人が負担に感じにくい方法(メール・書面が基本、必要なら電話) | — |
| 内容 | 事務的な連絡と、体調の簡単な確認 | 業務の質問・近況の詮索はしない |
休職中に聞いていいこと・避けたほうがいいこと

線引きはそこまで難しくありません。仕事に関しては、しっかり休ませてあげる。これだけです。
- 診断書を期限ごとにしっかり出し続けてもらう(休職の根拠になる。切れたまま放置しない)
- 手続きの連絡(傷病手当金の申請書、社会保険料の本人負担分の扱い、住民税など)
- 体調の簡単な確認と「戻りたくなったら窓口に連絡してほしい」という一言
休職期間の満了3か月前に、必ず伝える2つのこと

休職中の連絡で、時期が決まっている大事なものが一つあります。休職期間が終わる3か月前くらいになったら、窓口担当者から次の2つを伝えてください。
- このまま復職できないと、就業規則の定めにより自然退職(または解雇)になる可能性があること
- 戻ってきたいタイミングが来たら、ちゃんと会社(窓口)に連絡してほしいこと
これを伝えていない会社が意外に多く、満了の直前になって本人も会社も慌てるケースをよく見ます。3か月あれば、本人は主治医と復職の準備を相談でき、会社は復職面談やリワークを勧めるタイミングの検討ができます。
傷病手当金の支給期間は全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内で確認できます。復職を認めるかどうかの判断の仕組みは産業医の復職面談で聞かれること・復職判定の基準に書いています。
復職後のフォロー面談——条件付き復職の条件を外す目安は2か月・4か月・6か月

残業禁止や時短といった条件付きで復職したあと、条件をいつ外すか。私の場合、だいたい2か月・4か月・6か月の段階で見直すことが多いです。フォロー面談もこの区切りに合わせて入れます。
| 復職からの期間 | 残業の目安(例) | フォロー面談で見ること |
|---|---|---|
| 〜2か月 | 残業禁止〜月10時間程度まで | 勤怠が守れているか、生活リズムが崩れていないか |
| 2〜4か月 | 月30時間程度まで | アウトプットが戻っているか、疲れの持ち越しがないか |
| 4〜6か月 | 月40時間程度まで(解除の段階による) | 通常勤務に戻して問題ないか、残す制限はあるか |
| 6か月〜 | 条件解除(必要な制限だけ残す) | 定期のフォローに切り替える |
フォロー面談の中身は、復職面談と同じく、体調→生活リズム→服薬・受診の順で聞き、仕事のアウトプットは上司の情報で確認します(産業医面談とは)。産業医がいない会社は、地域産業保健センターやスポットの産業医で同じことができます(産業医がいない会社の復職判定)。
なぜ条件を長引かせてはいけないのか——「疾病利得」という落とし穴

条件付き復職を長く続けると、「これって病気だから当たり前なのかな」という感覚になってしまう方が、一定程度いらっしゃいます。医学的には「疾病利得」と呼ばれる状態です。
これはその人が悪い、という話ではありません。仕組みの上で許されてしまうと、人はそこに慣れます。ただ、周りの人のモチベーションが下がりますし、本人にとっても正しいことではないので、注意してくださいと人事の方にはお伝えしています。
- 条件解除の段階と期限を、復職時に本人・上司・人事で共有しておく
- 「仕事をするときは仕事をしてもらう」という割り切りを、会社として持つ
- 条件を延ばすときは理由を明確にし、次の見直し日を必ず決める
復職後に崩れかけたときの対応や、休職を繰り返す社員の考え方は休職を繰り返す社員への対応に書いています。復職時の意見書の書き方は復職時の産業医意見書の書き方を参考にしてください。
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よくある質問
休職中の社員に、会社からどのくらいの頻度で連絡すればいいですか?
頻度より、窓口を1人に決めて他の人は連絡しないことが大事です。窓口担当者が、診断書の更新(1か月ごとなど)に合わせて事務的な連絡と簡単な体調確認をすれば十分です。上司や同僚からの善意の連絡は、本人が休めなくなる原因になります。
休職中の社員に、仕事のことを聞いてもいいですか?
避けてください。「あの案件どうなってた?」といった業務のヒアリングは、本人を仕事モードに戻してしまいます。引き継ぎ漏れは職場の中で回し、業務の質問は本人以外に聞くルールにします。
休職期間の満了前に、会社は何を伝えるべきですか?
満了の3か月前くらいに、このまま復職できないと就業規則により自然退職(または解雇)になる可能性があることと、戻りたいタイミングで会社に連絡してほしいことの2つを伝えます。直前になって本人も会社も慌てるケースが多いので、早めが大切です。
条件付き復職の残業制限は、いつ外せばいいですか?
目安はだいたい2か月・4か月・6か月の段階で、残業禁止〜月10時間、月30時間、月40時間程度と段階的に緩め、フォロー面談で勤怠とアウトプットを確認しながら進めます。数字は一例ですが、期限を切ってダラダラ延ばさないことが大事です。
条件付き復職を長く続けると、何が問題ですか?
制限が長引くと、本人が「病気だから当たり前」という感覚(疾病利得)になってしまうことがあります。本人が悪いのではなく仕組みの問題ですが、周りのモチベーションが下がり、本人にとっても正しくありません。見直しの期限を決め、仕事をするときは仕事をしてもらう割り切りが必要です。
まとめ
- 休職中の連絡は「窓口1人」。上司・同僚は心配でも連絡しない
- 業務の話は本人に聞かない。診断書は期限ごとに出し続けてもらう
- 休職期間満了の3か月前に、自然退職の可能性と「戻りたいときは連絡を」を伝える
- 復職後の条件は2か月・4か月・6か月で見直し、期限を切って解除する
- 条件を長引かせると「疾病利得」に。仕事をするときは仕事をしてもらう割り切りを

