「休職中の社員が、来月で休職期間の満了です。このまま自然退職にしていいのでしょうか」——人事の方から、こうした相談をいただくことがあります。
先に結論です。休職期間の満了が近い社員の件は、遅くとも満了の3か月前に産業医へ相談してください。最初に確かめるのは「具体的に何日まで休めるか」(満了日)です。3か月あれば、主治医とやりとりし、復職できるか、どんな条件なら戻れるかを、会社と本人で一緒に探せます。1か月前や2週間前では、主治医とのやりとりが間に合わず、適切な対処をしきれないまま退職まで行ってしまうことがあります。
最初に確かめるのは「何日まで休めるか」——満了日と就業規則の3つの決まり

満了が近い社員について人事から相談を受けたとき、私がいちばん大事にしているのは、具体的に何日までお休みできるのかです。ここがあいまいなまま話を進めると、主治医への確認も、本人への説明も、すべて後手に回ります。
休職は法律で決まった制度ではなく、会社ごとに就業規則で決めるものです(就業規則に定める場合は労働基準法第89条第10号)。そのため、満了日を確かめるときは、就業規則の次の3つを一緒に見ます。
| 確かめる決まり | 見るところ | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 休職期間 | 勤続年数などで何か月か、いつから数えるか(欠勤が何日続いたら休職か) | 満了日がこれで決まる |
| 通算の定め | 復職したあと、同じ・似た病気で再び休んだとき、前後の休職期間を合算するか | ないと、休職と復職を繰り返すたびに期間がリセットされる |
| 満了時の扱い | 満了までに復職できないときは「自然退職」か「解雇」か、復職を判断するのは誰か | 手続きと、本人に伝える内容が変わる |
仕事が原因の病気やけが(労災)が疑われる場合は、扱いがまったく違います。業務上の療養のために休んでいる期間とその後30日間は、原則として解雇できません(労働基準法第19条)。この場合は、満了の手続きに入る前に必ず専門家に相談してください。
相談は満了の3か月前に——1か月前では主治医とのやりとりが間に合わない

復職できるかどうかは、産業医だけでは決められません。主治医に今の状態や見通しを確かめ、必要なら手紙(情報提供書)でやりとりし、そのうえで産業医が会社に意見を出します。この往復には時間がかかります。
2〜3か月前に相談をいただければ、主治医の先生とやりとりをして、いちばん最適な形で対応できます。1か月前だと主治医とのやりとりが切迫してしまい、ご本人にとって不利益なことが非常に増えてしまいます。2週間前では本当にぎりぎりで、適切な対処をしきれないうちに、最終的に退職まで行ってしまうことがあります。
| いつ | 会社(人事) | 産業医 |
|---|---|---|
| 満了の3か月前 | 満了日と就業規則を確かめ、産業医に相談する。本人に「このままだと満了で退職になる可能性があること」「戻りたいときは連絡してほしいこと」の2つを伝える | 本人の状態を聞き取り、主治医に見通しを確かめる準備をする |
| 2か月前 | 本人の同意をとって、主治医への確認を進める | 主治医とやりとりし、復職の見込みと、戻るならどんな条件かを考える |
| 1か月前 | 復職の申し出・診断書を受け取り、産業医の面談を入れる | 復職面談をして、会社に意見(復職可・条件付きで可・不可)を出す |
| 満了日 | 意見をもとに会社が決め、本人に書面で伝える。経過を記録に残す | 復職するなら、職場での配慮と見直しの時期を決める |
本人への2つの伝え方や、休職中の連絡の取り方は休職中の社員への連絡はどこまで?窓口・頻度・復職後のフォロー面談の間隔で、復職面談で産業医が確かめることは産業医の復職面談で聞かれること・復職判定の基準で解説しています。
満了の直前に「復職可」の診断書が出たら——8割がた働けるなら戻す判断もある

満了の直前に、主治医から「復職可」の診断書が出ることがあります。診断書は病気の状態を示す書類で、会社でどう働けるかを決める書類ではありません。だからといって、診断書を無視して満了にしてよいわけでもありません。
私は、満了の直前であれば、8割がた働けるのであれば戻すという判断もありうると考えています。最初から10割を求めず、時間や業務の制限をつけて戻し、様子を見ながら外していく形です。制限は、2か月・4か月・6か月くらいを目安に段階的に外していきます(たとえば残業を月10時間までから始め、30〜40時間へ)。
元の仕事に戻るのが難しい場合も、それだけで「復職できない」とは限りません。最高裁は、職種や業務を限定せずに雇われている人について、元の業務が十分にできなくても、能力・経験・会社の規模や配置の実情から見て現実に配置できる他の業務で働くことができ、本人もそれを申し出ているなら、労務の提供はあると判断しています(最高裁 平成10年4月9日判決・片山組事件)。自然退職にする前に、他の業務への配置を検討したかどうかは、あとで争いになったときに必ず問われる点です。
主治医の診断書だけで決めず、産業医が本人と面談し、職場で求められる仕事に照らして意見を出す。その経過(面談の日・主治医への確認・検討した配置・会社の判断)を記録に残してください。主治医と産業医の意見が違うときの考え方は主治医の診断書と産業医の意見書が違うとき、意見書の書き方は復職時の産業医意見書の書き方にまとめています。
休職期間や通算の決まりがない会社は、社内ルールを見直す

相談を受けて就業規則を見ると、休職期間の満了や通算の定めがない会社があります。この場合、いつまでも会社に在籍できてしまうことがあります。休職と復職を繰り返すたびに期間が最初から数え直しになり、本人にとっても会社にとっても先が見えない状態が続きます。そういうときは、社内ルール自体を一度見直す必要があります。
- 休職期間が、勤続年数などに応じて具体的に決まっている
- 復職後に同じ・似た病気で再び休んだとき、前後の期間を合算する(通算する)定めがある
- 満了までに復職できないときの扱い(自然退職か解雇か)が書かれている
- 復職の判断に、産業医などの意見を聴くことが書かれている
- 短い時間から始める試し出勤など、段階的に戻す方法が決まっている
ルールの見直しは、いま休職している人に急に当てはめると不利益な変更として争いになりやすいので、社会保険労務士や弁護士と進めてください。復職の段取りは、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が土台になります。休職を繰り返す社員への対応は休職を繰り返す社員への対応で解説しています。
本人には何を伝えるか——休職は退職の代わりに会社がカバーしている制度

満了が近い本人との面談で、私は休職制度そのものの話をすることが実際にあります。本来は私傷病で働けなければ退職しなければいけないところを、休職制度でカバーしてもらっている、ということです。満了を一方的な「打ち切り」と受け取ると、本人は会社への不信だけを抱えて終わってしまいます。
退職の話も、きちんと向き合えば、適切な働き方を探すきっかけになります。まず誠実に情報を共有して、いちばんいい働き方を一緒に目指します。会社の方も従業員の方も、みんなで最適な働き方を探せるようにすること。それが満了前の3か月の使い方です。
会社に産業医がいない場合も、満了前の復職判定は外部の医師に頼めます。進め方は産業医がいない会社の復職判定はどうする?、1件だけ頼む方法は産業医のスポット契約とはをご覧ください。
まとめ:自然退職にする前に、満了の3か月前から産業医と動く
- 最初に確かめるのは「何日まで休めるか」。就業規則の休職期間・通算の定め・満了時の扱いを一緒に見る
- 産業医への相談は、遅くとも満了の3か月前に。1か月前では主治医とのやりとりが間に合わず、本人の不利益が増える
- 満了の直前に「復職可」の診断書が出たら、診断書だけで決めず産業医が面談する。8割がた働けるなら、条件をつけて戻す判断もある
- 元の仕事が難しくても、現実に配置できる他の業務を検討したかが問われる(片山組事件)。経過は記録に残す
- 休職期間や通算の決まりがない会社は、社内ルールを見直す(専門家と)
- 本人には、休職は退職の代わりに会社がカバーしている制度だと誠実に伝え、いちばんいい働き方を一緒に探す
よくある質問
Q1. 休職期間満了で自然退職にするのは、違法ではありませんか?
就業規則に休職期間と満了時の扱いが定められ、満了までに復職できる状態にならなかった場合に退職とすること自体は、一般に認められています。ただし、復職できるかどうかの判断が不十分だった(主治医や産業医に確かめていない、他の業務への配置を検討していない)場合や、仕事が原因の病気の場合は、退職が無効と争われることがあります。手続きに入る前に、社会保険労務士・弁護士に確認してください。
Q2. 満了の何か月前から動けばいいですか?
遅くとも3か月前です。主治医への確認や手紙のやりとり、産業医の面談、配置の検討には時間がかかります。1か月前や2週間前では間に合わず、適切な対処をしきれないまま退職になってしまうことがあります。3か月前の時点で、本人に「このままだと満了で退職になる可能性があること」と「戻りたいときは連絡してほしいこと」を伝えておきます。
Q3. 満了の直前に主治医から「復職可」の診断書が出ました。そのまま復職させるべきですか?
診断書だけで決めず、産業医が本人と面談して、職場で求められる仕事に照らして意見を出します。満了の直前であれば、8割がた働けるのであれば、時間や業務の制限をつけて戻し、2・4・6か月ごとに見直しながら制限を外していく判断もありえます。元の仕事が難しい場合は、現実に配置できる他の業務がないかも検討します。
Q4. 休職期間の「通算」とは何ですか?
復職したあと、同じ病気や似た病気で再び休職したときに、前の休職期間と合算して数える決まりです。この定めがないと、休職と復職を繰り返すたびに休職期間が最初から数え直しになり、いつまでも在籍が続くことがあります。就業規則にない場合は、専門家と相談しながら見直してください。
Q5. 産業医がいない会社は、満了前の復職判定をどうすればいいですか?
外部の医師に、復職面談と意見書をスポットで頼めます。主治医の診断書だけで判断すると、職場で求められる仕事に照らした見立てが抜けやすくなります。満了日から逆算して、遅くとも1か月前には面談ができるよう、早めに依頼先を決めてください。

