「高ストレス者から面接指導の申出が来た。外部の医師に頼むと、いくらかかるのか」——結論から言うと、外部の医師にスポット(単発)で依頼する場合の相場は、1件あたりおおむね1.5万〜3万円です。訪問・対面での実施は上振れすることがあります。ただし実務では、金額そのものより「その料金に何が含まれているか」のほうがずっと重要です。この記事では、スポット面接指導を提供する側の現役産業医が、費用の構造・相場の内訳・見積もり比較のポイントを、実務の目線で解説します。
面接指導の費用は「誰に頼むか」で決まる——3つのパターン
ストレスチェックの高ストレス者への面接指導は、医師が行うと法律で定められています(労働安全衛生法第66条の10)。その医師への費用は、事業者(会社)が負担するのが原則です。実施義務が事業者にあるためです。そして「いくらかかるか」は、誰に頼むかで大きく3パターンに分かれます。
| 依頼先 | 費用の目安 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 顧問の産業医(契約内) | 月額顧問料に含まれる場合と、1件ごとに加算される場合がある | 産業医を選任済みの50人以上の事業場 |
| 外部の医師へスポット依頼 | 1件1.5万〜3万円(オンライン基本・訪問は上振れ) | 産業医がいない50人未満、顧問が対応できない会社 |
| 地域産業保健センター | 無料(50人未満の事業場が対象) | 費用をかけられない小規模事業場(ただし予約・日程の制約あり) |
顧問の産業医がいる会社は、まず契約書の業務範囲を確認してください。面接指導が月額に含まれているのか、訪問回数や面談件数の上限があるのか、超過分は1件いくらなのか——ここが曖昧なまま申出が来て、慌てて契約を確認するケースは少なくありません。産業医の顧問料そのものの相場は産業医の費用相場の調査記事で詳しく解説しています。
一方、産業医がいない50人未満の会社は、外部の医師へのスポット依頼か、地域産業保健センターの二択になります。「そもそも外部に頼めるのか?」という疑問には面接指導を頼む医師がいないときの外部委託・スポット依頼の解説で答えていますが、結論だけ言えば、面接指導は自社の産業医でなくても医師であれば実施でき、外部委託で義務を果たせます。
スポット依頼の相場は1件1.5万〜3万円——差がつく理由

外部の医師へのスポット依頼は、おおむね1件1.5万〜3万円のレンジに収まります。同じ「面接指導1件」でこの差がつく理由は、主に次の3つです。
- 実施形態——オンラインか、訪問(対面)か。訪問は医師の移動・拘束時間が乗るため高くなる
- 成果物の範囲——面談だけか、就業上の措置につなぐ「意見書」や実施後の報告書まで含むか
- 手配のスピードと体制——申出から1ヶ月以内という目安に間に合う手配力、面談後のフォローアップ体制があるか
【筆者の現場から】「面談1回で1.5万〜3万円は高くないか」と聞かれることがあります。この価格には理由があります。面接指導を担う医師は、外来や手術といった病院の業務を止めて時間を確保して対応しています。さらに高ストレス者との面談は、一定の健康リスクを抱えた方と向き合い、就業上の措置という重い判断につながる意見を出す仕事です。単純な時給換算ではなく、医師の時間の確保と、判断への責任がセットになった価格だと考えると、レンジの意味が見えてきます。
金額より中身——見積もり比較のチェックリスト

見積もりを取ったら、金額の前に「何が含まれているか」を確認してください。実務で差が出るのは次の項目です。
- 意見書の作成——就業上の措置につなぐために必須。別料金の場合は総額で比較する
- 事前資料の確認——ストレスチェック結果票・勤務状況などを医師が事前に読み込んだうえで面談に臨むか
- 実施後の報告書——会社として記録に残すための報告があるか(面接指導の記録は5年間の保存義務があります)
- 面談後のフォローアップ——医療機関の受診勧奨や継続フォローが必要になったときの対応まで示してくれるか
- オプションの範囲——紹介状の作成などが別途料金か、事前に明示されているか
【筆者の現場から】実務の感覚では、面接指導の9割ほどは面談を実施して完了します。しかし残りの1割ほどは、医療機関への受診や継続的なフォローが必要な方です。安さだけで選んだ委託先が「面談やって終了」型だと、本当に対応が必要なこの1割で行き詰まります。参考までに、当社のスポット面接指導(1件3万円・税別)には、事前資料の確認・オンラインでの面接指導・意見書の作成・実施後の報告書までを含めています(対面はご相談、紹介状の作成などはオプション)。どの委託先を選ぶにせよ、「面談の後まで見てくれるか」を確認しておくと失敗しません。
無料で実施する方法と、その注意点
常時50人未満の事業場であれば、地域産業保健センター(地さんぽ)で高ストレス者への面接指導を無料で利用できる場合があります。費用を最優先するなら、まず検討すべき選択肢です。
顧問契約とスポット、どちらが得か

「面接指導のためだけに産業医と顧問契約を結ぶべきか」と悩む会社もありますが、費用構造で考えると答えは明快です。嘱託産業医の顧問料は一般に月数万円〜十数万円、年間では数十万円以上になります。高ストレス者の面接指導が年に数件であれば、スポット依頼(1件1.5万〜3万円)のほうが大幅に安く済みます。
一方で、従業員が増えて50人到達が見えている会社なら、話は少し変わります。スポット依頼で相性のよい医師に出会えたら、そのまま顧問の産業医契約に発展させる——実務でも珍しくない流れで、契約前に医師の対応を確かめられる「お試し」としてスポットを使う考え方です。50人を超えると産業医の選任は義務になるため、その前に信頼できる医師を見つけておくのは合理的な備えです。
まとめ:相場より「含まれるもの」で選ぶ
- 面接指導の費用は事業者負担が原則。スポット外部委託の相場は1件おおむね1.5万〜3万円(訪問は上振れ)
- 顧問産業医がいる会社は契約範囲を先に確認。いない会社はスポット依頼か地域産業保健センター(無料・50人未満)
- 比較のポイントは金額より中身——意見書・事前資料確認・報告書・フォローアップが含まれるか
- 無料枠は期限(申出から1ヶ月以内の目安)に間に合わないことがある。外部委託との二段構えが実務的
- 年数件ならスポットが得。50人到達が近いなら「お試し→顧問化」の入り口にもなる
面接指導の制度全体(義務・流れ・就業措置)はストレスチェック面接指導の完全ガイドで解説しています。一次情報は厚生労働省(ストレスチェック制度導入マニュアル)やe-Gov法令検索(労働安全衛生法第66条の10)で確認できます。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェックの外部委託先の選び方|失敗例と5つの比較ポイント
- ストレスチェック面接指導の医師がいない|外部委託・スポット依頼を解説
- ストレスチェック義務化はいつから?50人未満は2028年4月1日から|準備ガイド
よくある質問
Q. ストレスチェック面接指導の費用は誰が負担しますか?
医師への委託費用は事業者(会社)が負担するのが原則です。面接指導の実施義務が事業者にあるためです。なお、従業員が面接指導を受ける時間の賃金の扱いは労使の取り決めによりますが、厚生労働省は賃金を支払うことが望ましいとしています。
Q. 外部委託の相場はいくらですか?
外部の医師にスポット(単発)で依頼する場合、1件あたりおおむね1.5万〜3万円が目安です。訪問・対面での実施は上振れすることがあります。金額の差は、オンラインか訪問か、意見書・実施後の報告書が料金に含まれるか、手配スピードで生まれます。
Q. 無料で面接指導を実施する方法はありますか?
常時50人未満の事業場であれば、地域産業保健センター(地さんぽ)で高ストレス者への面接指導を無料で利用できる場合があります。ただし予約が埋まりやすく日程の選択肢も限られるため、申出からおおむね1ヶ月以内という実施の目安に間に合わないことがあります。間に合わない場合に備えて、外部委託先も決めておくと安心です。
Q. 面接指導のためだけに産業医と顧問契約を結ぶべきですか?
高ストレス者の面接指導が年に数件であれば、顧問契約(一般に月数万円〜)よりスポット依頼(1件1.5万〜3万円)のほうが費用は大幅に抑えられます。従業員50人到達が近い会社は、スポット依頼で相性を確かめてから顧問契約に発展させる方法もあります。

