「高ストレス者への面接指導、オンラインでやってもいいのだろうか」——結論から言うと、要件を満たせばオンライン(テレビ電話等)での実施が認められています。ただし、電話(音声のみ)は不可です。私自身、ストレスチェックの面接指導は基本オンラインで実施していますが、進め方も質も対面と変わりません。むしろ、全国の拠点や在宅勤務者に対応でき、日程が早く組める分、「申出からおおむね1ヶ月以内」という期限に間に合わせやすいのがオンラインの強みです。この記事では、厚生労働省通達の要件と、会社側の準備、当日の実際をまとめます。
オンライン面接指導は認められている——ただし電話はNG

面接指導(労働安全衛生法第66条の10)は対面が原則とされてきましたが、厚生労働省の通達「情報通信機器を用いた医師による面接指導の実施について」により、要件を満たせばテレビ電話等のオンラインでの実施が認められています。テレワークの普及した現在では、オンライン実施はごく一般的になりました。
満たすべき要件——5つのポイント

通達で求められている要件を、実務の言葉に直すと次の5点です。
- 表情・顔色・声・しぐさを確認できる——映像と音声の品質が、医師が心身の状況を把握するのに十分であること
- 円滑に会話できる——常時双方向でやりとりでき、通信が安定していること
- セキュリティが確保されている——面談内容は機微な健康情報。第三者に閲覧・傍受されない仕組みであること
- 労働者が操作しやすい——複雑な機器操作を求めず、誰でも参加できること
- 緊急時に対応できる体制——症状が深刻で直接の対応が必要と判断された場合に、近隣の医療機関等と連携して速やかに対応できること
加えて、オンラインでの実施方法については、衛生委員会等で調査審議したうえで、あらかじめ労働者に周知しておくことが望ましいとされています(50人未満で衛生委員会がない事業場は、関係労働者の意見を聴く場を活用します)。また、面接指導を担当する医師は、その事業場の産業医であるか、日常的な健康管理の担当や職場巡視の経験など事業場の状況を把握している医師が望ましいとされています——外部の医師にスポットで依頼する場合は、事前に勤務状況・職場環境の情報をしっかり共有することで、ここを補うのが実務です。
当日の実際——オンラインでも、面談の中身は変わらない
【筆者の現場から】私はストレスチェックの面接指導を基本オンラインで行っていますが、進め方は対面とまったく同じです。時間は30分ほど。冒頭に「この面談の内容が会社に漏れることはない」というルール説明(口上)から入り、体調(睡眠・食欲)→仕事の状況→周囲のサポート、と順に伺って、最後に見立てと今後のことを一緒に整理します。画面越しでも表情や声のトーンは十分に分かりますし、「オンラインだから浅くなる」ということは、やり方さえ間違えなければありません。むしろ本人が自宅などリラックスできる場所から参加できる分、話しやすくなる方もいるというのが実感です。
面談で実際に何を聞かれるのか(本人向けの詳しい解説)はストレスチェックの面談で何を話す?聞かれること・当日の流れをご覧ください。対象の従業員の方に事前に共有しておくと、安心して面談に臨んでもらえます。
オンラインの実務メリット——「1ヶ月以内」に間に合う

オンライン実施の価値は「便利」だけではありません。実務で効くのは次の3点です。
- 場所を問わない——全国に点在する拠点、在宅勤務者、出張の多い社員にも同じ品質で対応できる。拠点ごとに医師を探す必要がない
- 日程が早く組める——医師・本人双方の移動が不要なため、日程調整の自由度が段違い。「申出からおおむね1ヶ月以内」という実施の目安に間に合わせやすい
- 本人の心理的ハードルが下がる——「会議室に呼ばれて面談」より、自席や自宅から参加するほうが申出しやすいという声は実際にあります
【筆者の現場から】スピード感の実例として、筆者の事務所では申出から最短3営業日以内に実施できる体制で運用しています。日程だけならご依頼当日に確定することもあり、実績ではご依頼の翌営業日に実施したケースもあります。これはオンラインだからこそ出せるスピードです。地域産業保健センターの予約が埋まっていて期限に間に合わない——という場面でも、オンラインの外部委託なら十分にリカバリーできます。
会社側の準備チェックリスト

- 静かな個室を確保する——社内から参加する場合、周囲に会話が聞こえない場所を。プライバシー確保はオンラインでも最優先です(自宅からの参加も問題ありません)
- 機器と接続の事前テスト——カメラ・マイク・回線を面談前に確認。当日のトラブルは限られた面談時間を削ります
- 資料の事前共有——ストレスチェック結果票・勤務状況などを医師へ事前に送付。医師が状況を把握したうえで面談に臨めるため、30分を本題に使えます
- 実施方法の審議・周知——オンラインで実施することを衛生委員会等で審議し、従業員に周知しておく
対面が必要になるケース——「二段構え」で備える

オンラインで面談した結果、症状が深刻で直接の診察や対応が必要と医師が判断した場合は、対面での対応や医療機関への受診につなぎます。これが要件にある「緊急時の対応体制」の意味です。実務では、面談を行う医師が受診勧奨まで含めてフォローの方針を示してくれるか——つまり「面談やって終了」ではない委託先かが、ここでも効いてきます(委託先の見極め方は外部委託先の選び方で解説しています)。
まとめ:オンラインは「手抜き」ではなく「速い正攻法」
- 面接指導はテレビ電話等のオンラインで実施可能。電話(音声のみ)は不可
- 要件は5つ——表情等の確認・円滑な会話・セキュリティ・操作性・緊急時対応体制。実施方法は衛生委員会等で審議し周知が望ましい
- 面談の中身は対面と同じ(約30分)。会社の準備は個室・機器テスト・資料の事前共有でほぼ足りる
- オンラインの本当の価値はスピード——「申出から1ヶ月以内」に確実に間に合わせられる
- 深刻なケースは対面・受診につなぐ二段構え。そこまで見てくれる医師・委託先を選ぶ
一次情報は厚生労働省(情報通信機器を用いた医師による面接指導の実施についての通達、小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル)やこころの耳(面接指導の解説)で確認できます。より詳しい実務は、代表産業医・角田拓実の著書『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社/紹介記事)でも解説しています。
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ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェック面接指導の医師がいない|外部委託・スポット依頼を解説
- ストレスチェック面接指導の費用相場|スポット外部委託は1件1.5万〜3万円
- ストレスチェックの面談で何を話す?聞かれること・当日の流れを産業医が解説
よくある質問
Q. 面接指導は電話でもいいですか?
電話(音声のみ)での面接指導は認められていません。医師が表情・顔色・しぐさなどを確認できることが必要なため、映像と音声を双方向でやりとりできるテレビ電話等を使用してください。
Q. 従業員が自宅から面談を受けてもいいですか?
問題ありません。在宅勤務者はもちろん、プライバシーが確保できる場所であれば自宅からの参加はむしろ話しやすいという方もいます。社内から参加する場合は、周囲に会話が聞こえない個室を用意してください。
Q. 使用するツールに指定はありますか?
特定のツールの指定はありませんが、映像・音声の品質、セキュリティ、労働者が操作しやすいことが要件です。一般的なWeb会議ツールで要件を満たせます。面談内容は機微な健康情報のため、第三者が閲覧・傍受できない設定(パスワード付き会議室など)で実施してください。
Q. オンラインで対応できない場合はありますか?
症状が深刻で、直接の診察や緊急の対応が必要と医師が判断した場合は、対面での対応や医療機関への受診につなぎます。オンライン面接指導では、こうした場合に速やかに対応できる体制(近隣の医療機関等との連携)を整えておくことが要件とされています。

