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尿蛋白・尿潜血の就業判定|仕事の制限はほぼない、でも放置しない理由

2026 9/26
健康診断・労災リスク関連
2026年9月26日
尿蛋白・尿潜血の就業判定を解説する記事のサムネイル

「毎年、尿蛋白や尿潜血で『要再検査』になる社員がいます。血圧や血糖と違って、仕事と関係があるのかよく分かりません。放っておいていいんでしょうか」——健診のあとに人事・総務の方からいただく相談です。

先に結論です。尿蛋白・尿潜血の所見で、就業制限をかけることはほとんどありません。私自身、尿検査の所見だけで就業を制限した経験はほとんどありません。ただし、放置してよい所見でもありません。腎臓の機能や膀胱の異常が隠れていることがあるからです。1回受診して調べ、何もなければそれでいい。そのうえで「昔調べたから」で止めず、毎年の健診で見続けてください。

私は名古屋で産業医をしている角田拓実です。この記事では、尿検査の医学的な解説より、結果を受け取った会社が「仕事との関係」をどう考え、社員に何と言えばよいかを中心に書きます。

目次

尿蛋白・尿潜血で就業制限になる?——私は制限したことがない

尿蛋白・尿潜血で就業制限になるかの図。法定の尿検査は尿中の糖及び蛋白の有無の検査(労働安全衛生規則第44条)。尿潜血は法定外だが多くの健診機関が同じ尿で一緒に調べる。医師の意見の3区分(通常勤務・就業制限・要休業)のうち、尿検査の所見だけならほぼすべて通常勤務。働き方の配慮を考えるのは、腎臓の機能がかなり落ちて治療と仕事の両立が必要になってきた段階(両立支援)。重要ポイント: 尿の所見だけで夜勤・残業・重い作業ができなくなるわけではない。

会社が毎年行う定期健康診断の尿検査で、法律が求めているのは「尿中の糖及び蛋白の有無の検査」です(労働安全衛生規則第44条第1項第10号)。尿潜血は法定の項目ではありませんが、多くの健診機関が同じ尿で一緒に調べているため、結果表に並んで出てきます。

健診で異常の所見があった人について、会社は医師の意見を聴き、必要なら就業上の措置をとります(労働安全衛生法第66条の4・第66条の5)。医師の意見は「通常勤務」「就業制限」「要休業」の3区分です。尿蛋白・尿潜血の場合、ほぼすべてが「通常勤務」になります。尿に蛋白や血が混じっていても、それだけで夜勤や残業、重い作業ができなくなるわけではないからです。

就業上の配慮を考えるのは、腎臓の機能がかなり落ちて、通院や治療(食事療法・透析など)と仕事の両立が必要になってきた段階です。その場合は就業制限というより、治療と仕事の両立支援として、主治医・産業医・会社で働き方を相談します(厚生労働省 CKD(慢性腎臓病)患者の治療と仕事の両立支援マニュアル)。

仕事に直結しないのに、なぜ健診で見るのか——生活習慣病と脳・心臓の病気の予防

仕事に直結しない尿検査をなぜ健診で見るのかの図。健康診断の目的の一つは生活習慣病の予防と脳出血など脳・心臓の病気の予防。尿蛋白は腎臓でろ過をする細い血管が傷んでいるサインのことがある。原因として多いのは高血圧と糖尿病。尿蛋白・血圧・血糖の3つが重なると腎臓や血管への影響が始まっているかもしれない。重要ポイント: 尿検査の欄だけでなく、同じ人の血圧・血糖の欄と並べて見る。

尿検査の所見は、すぐに働き方を変える材料にはなりません。それでも健診で見るのは、今の健康診断の目的の一つが、生活習慣病の予防、そして脳出血のような脳・心臓の病気の予防にあるからです。そう考えると、尿検査は所見として十分に役に立ちます。

尿蛋白は、腎臓でろ過の働きをしている細い血管が傷んでいるサインのことがあります。腎臓の血管が傷む原因として多いのは、高血圧と糖尿病です。つまり尿蛋白は、血圧や血糖の所見と重なったときに意味が大きくなる所見です。血圧・血糖が高めの社員に尿蛋白も出ているなら、腎臓や血管への影響がすでに始まっているかもしれません。

人事の方に見てほしいのは、尿検査の欄だけではなく、同じ人の血圧・血糖の欄と並べることです。高血圧・糖尿病の就業上の考え方は高血圧で就業制限になる基準は?と糖尿病は就業制限になる?にまとめています。

尿蛋白・尿潜血の裏に隠れていること——腎臓と膀胱

尿蛋白・尿潜血の裏に隠れていることの表。尿蛋白: 一時的に出ることがある場合=激しい運動のあと・発熱・長く立っていたあと、隠れていることがある病気=慢性腎臓病・高血圧や糖尿病による腎臓の障害・腎炎、受診先の目安=内科・腎臓内科。尿潜血: 一時的=生理中や生理の前後・激しい運動のあと、病気=尿路結石・膀胱炎・腎炎・膀胱や腎臓の腫瘍、受診先=泌尿器科。両方とも陽性: 腎炎など腎臓そのものの病気、腎臓内科。重要ポイント: 腎臓は機能がかなり落ちるまで症状がほとんど出ない。症状のないうちに尿で見つけるのが健診の役割。

尿に蛋白や血が混じる理由はさまざまで、一時的なものも多くあります。だからこそ一度は受診して、一時的なものか、調べておくべきものかを分けてもらうことに意味があります。

所見一時的に出ることがある場合隠れていることがある病気受診先の目安
尿蛋白激しい運動のあと・発熱・長く立っていたあと慢性腎臓病、高血圧や糖尿病による腎臓の障害、腎炎内科・腎臓内科
尿潜血生理中や生理の前後・激しい運動のあと尿路結石、膀胱炎、腎炎、膀胱や腎臓の腫瘍泌尿器科
両方とも陽性—腎炎など、腎臓そのものの病気腎臓内科

腎臓の機能だとか、膀胱の異常だとか、そういったところが隠れていることがあるので、尿検査は決して油断できない所見です。腎臓は、機能がかなり落ちるまで自覚症状がほとんど出ません。症状が出てからでは遅いので、症状のないうちに尿で見つける、というのが健診の役割です。

女性の社員が生理中に健診を受けると、尿潜血が陽性になることがあります。その場合は、生理の時期を外して再検査を受ければ十分です。

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代表産業医 角田拓実
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毎年同じ社員がひっかかるとき——「1回調べて、何もなければそれでいい」

毎年尿検査でひっかかる社員への対応の図。流れ: 毎年要再検査→1回受診して調べる→何もなければそれでいい(本人も会社も安心)→毎年の健診で見続ける→変化があれば再受診(蛋白が増えた・潜血だけだったのに蛋白も出た・血圧や血糖も高くなってきた)。避けたいこと: 昔調べたから大丈夫で止まる。声かけの例: 腎臓や膀胱のことは症状が出にくいので1回だけ調べておいてください、何もなければそれで安心できますから。重要ポイント: 1回だけ、何もなければそれでいい、と伝える。

毎年、尿蛋白や尿潜血で「要再検査」になる社員には、私から一度お伝えすることがあります。言うのは、「1回受診して調べてみてください。それで何もなければ、それはそれでいいですからね」です。受診して異常がないと分かれば、本人も会社も安心して毎年の結果を見られます。

気をつけてほしいのは、「昔調べたから大丈夫」で止まってしまうことです。何年も前に一度調べて異常がなかった人でも、その後に腎臓の機能が落ちてくることはあります。「昔調べたから」で済ませず、毎年の健診で定期的にチェックしてください。特に、蛋白の量が増えた、潜血だけだったのに蛋白も出てきた、血圧や血糖も高くなってきた、という変化があれば、もう一度受診するきっかけです。

尿検査を「どうせ大したことない」と軽く見ている社員に、会社から声をかけるなら、次のような言い方をお勧めします。

声のかけ方の例: 「尿の結果、今年も要再検査になっていました。腎臓や膀胱のことは症状が出にくいので、1回だけ調べておいてください。何もなければ、それで安心できますから」。「1回だけ」「何もなければそれでいい」と伝えると、身構えずに受診してもらえます。

受診の後押しの考え方は、ほかの所見でも共通です。肝機能の異常で仕事に制限は必要?でも、「制限より、受診につなぐ」ことを書いています。

2027年4月から健診に「血清クレアチニン検査」——国も腎臓の機能を見ていく

2027年4月1日から健康診断に血清クレアチニン検査が加わることの図。追加: 雇入時・定期などの健康診断に血清クレアチニン検査、腎臓の働きはeGFRで評価し個人票に記載。省略: 定期健診では40歳未満は医師が必要でないと認めるとき省略可、雇入時は省略不可。変わらない: 尿検査は尿中の糖及び蛋白の有無の検査のまま、尿潜血は加わらない。同じ改正: 喀痰検査の廃止、肝機能の表記がAST・ALT・γ-GTに。会社の準備: ①健診機関との契約で項目に入っているか確かめる ②尿蛋白とeGFRを並べて見て所見があれば産業医へ。根拠: 令和8年厚生労働省令第89号・基発0428第9号。

尿検査を軽く見てほしくない理由は、もう一つあります。2027年(令和9年)4月1日から、会社が行う健康診断の法定項目に、腎臓の機能を調べる「血清クレアチニン検査」が加わります(労働安全衛生規則等の一部を改正する省令・令和8年厚生労働省令第89号、2026年4月28日公布)。国としても、働く人の腎臓の機能をしっかり見ていきたい、という表れです。

項目2027年4月1日からの扱い
血清クレアチニン検査雇入時・定期・特定業務従事者・海外派遣の健康診断に追加。腎臓の働きは、クレアチニンの値から計算するeGFRで評価し、個人票に記載する
省略できる人定期健康診断などでは、40歳未満の人は医師が必要でないと認めるときに省略できる。雇入時の健康診断では省略できない
尿検査変わらない。法定は引き続き「尿中の糖及び蛋白の有無の検査」で、尿潜血は加わらない
同じ改正で変わること定期健康診断などの喀痰検査の廃止。肝機能検査の表記がAST・ALT・γ-GTに

厚生労働省の通達は、血清クレアチニン検査について「長時間労働による発症リスクがある慢性腎臓病を検査するもの」と説明しています(基発0428第9号)。尿蛋白と、血液で見る腎臓の働き(eGFR)は、どちらも慢性腎臓病を見つける手がかりです。2027年度の健診からは、この2つが結果表に並びます。

会社として今から準備しておくことは2つです。①2027年4月以降に行う健診の契約で、血清クレアチニン検査が項目に入っているかを健診機関に確かめる(50人以上の事業場は、労働基準監督署への定期健康診断結果報告にもこの項目の有所見者数が加わります)。②結果が届いたら、尿蛋白とeGFRを並べて見る。どちらか、または両方に所見がある社員は、産業医に回してください。

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代表産業医 角田拓実
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あわせて読みたい:健診の有所見と「働き方の判断」

健康診断で見つかる所見ごとに、就業制限や配慮が必要になるのかを産業医の視点で解説しています。判断の考え方は共通なので、あわせてご覧ください。

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よくある質問

Q1. 尿蛋白・尿潜血で就業制限になりますか?

ほとんどなりません。医師の意見は通常勤務・就業制限・要休業の3区分で出しますが、尿検査の所見だけなら、ほぼすべてが通常勤務です。働き方の配慮を考えるのは、腎臓の機能がかなり落ちて、治療と仕事の両立が必要になってきた段階です。

Q2. 尿潜血は健康診断の法定項目ですか?

法定の項目ではありません。定期健康診断で法律が求める尿検査は「尿中の糖及び蛋白の有無の検査」です(労働安全衛生規則第44条第1項第10号)。多くの健診機関が同じ尿で潜血も調べているため、結果表に並んで出てきます。

Q3. 尿蛋白・尿潜血の再検査は何科を受診すればいいですか?

目安として、尿蛋白は内科・腎臓内科、尿潜血だけなら泌尿器科、両方とも陽性なら腎臓内科です。迷うときは、かかりつけの内科で相談すれば、必要に応じて紹介してもらえます。

Q4. 以前に精密検査を受けて異常がなかった社員は、もう受診しなくていいですか?

「昔調べたから」で止めず、毎年の健診で定期的にチェックしてください。蛋白の量が増えた、潜血だけだったのに蛋白も出てきた、血圧や血糖も高くなってきた、という変化があれば、もう一度受診するきっかけです。

Q5. 生理中に健診を受けて尿潜血が出た場合はどうすればいいですか?

生理中や生理の前後は尿潜血が陽性になることがあります。生理の時期を外して再検査を受け、陰性であればそれで構いません。

Q6. 2027年から健診で腎臓の機能を調べるのは本当ですか?

本当です。2027年(令和9年)4月1日から、雇入時・定期などの健康診断に「血清クレアチニン検査」が加わり、腎臓の働きをeGFRで評価します(令和8年厚生労働省令第89号)。定期健康診断では40歳未満の人は医師が必要でないと認めるときに省略できますが、雇入時は省略できません。尿検査(糖・蛋白)の中身は変わりません。

まとめ:尿蛋白・尿潜血は「制限しない、でも放置しない」

  • 尿蛋白・尿潜血の所見だけで就業制限をかけることは、ほとんどない。医師の意見はほぼすべて通常勤務
  • それでも健診で見るのは、生活習慣病と脳・心臓の病気の予防のため。血圧・血糖の欄と並べて見る
  • 腎臓の機能や膀胱の異常が隠れていることがあり、決して油断できない所見。1回受診して、何もなければそれでいい
  • 「昔調べたから」で止めない。毎年の健診で定期的にチェックし、変化があれば再受診
  • 2027年4月1日から、健診に血清クレアチニン検査(eGFRで評価)が加わる。尿蛋白とeGFRを並べて見て、所見があれば産業医へ

参考: 労働安全衛生法(e-Gov法令検索) / 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索) / 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について(基発0428第9号・厚生労働省) / CKD(慢性腎臓病)患者の治療と仕事の両立支援マニュアル(厚生労働省)

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産業保健解説メディア「さんぽちゃーと」編集長。株式会社サンポチャート代表取締役。株式会社豊田自動織機専属産業医の後、東海地方を中心に50事業所以上の職場健康管理に関わっている。資格:日本医師会認定産業医/博士(医学)/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/健康経営エキスパートアドバイザー。著書に40代から始めるあなたの予防医学(自由国民社)、図解入門ビジネス職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本(秀和システム新社)がある。

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