産業医に衛生講話をお願いする際の注意点は?費用は別途かかるの?どうやって頼む?
結論からお伝えすると、私の顧問先では、衛生委員会の中でする5〜10分の講話は訪問時間内に行い、顧問料の中です。訪問時間とは別に場を設ける30分〜1時間のセミナーは別料金で、契約書にもそう書いています。頼み方は「5〜10分で、テーマを1つ話してもらえますか」の一言で十分です。
産業医が講話をする意味は、外部の講師と違って、その会社の状況に合わせて話を調整できることにあります。現役の産業医として顧問先で実際にしている講話の形と、効いた講話・効かなかった講話の違いを、最初の章でお伝えします。
この記事では、産業医衛生講話を依頼する際の注意点や費用について解説します。具体的な事例やデータも交えながら、分かりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてください。
産業医とはどんな仕事?法令、実務、活用方法に関して徹底解説。
産業医講話とは?外部講師と違うのは「その会社の状況に合わせて話せる」こと

産業医講話は、その会社の産業医が、衛生委員会や社員教育の場で健康や衛生のテーマを話すことです。外部の講師の講演と違うのは、その会社の状況に合わせて、話の中身を調整できるところにあります。
「衛生講話」という言葉そのものを定めた法律はありません。ただ、労働安全衛生規則第14条第1項は、産業医の職務として「健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置」(第7号)と「衛生教育」(第8号)を挙げています。会社の側にも、健康教育などを継続的・計画的に行う努力義務があります(労働安全衛生法第69条)。産業医講話は、この健康教育・衛生教育を産業医が受け持つ形です。
産業医講話の3つの形——いちばん多いのは衛生委員会の5〜10分
私が顧問先でしている講話は、大きく分けて次の3つです。
| 形 | 聞く人 | 時間の目安 | 中身 | 費用(サンポチャートの場合) |
|---|---|---|---|---|
| 衛生委員会の中の講話 | 衛生委員会のメンバー | 5〜10分(スライド5〜10枚) | 毎月のテーマか、会社から頼まれたテーマ | 訪問時間内なら顧問料の中 |
| 全従業員向けの教育 | 教育の日などに集まった従業員全体 | 20〜30分 | メンタルヘルス・睡眠・食事など | 場を設けて訪問時間外に行うなら別料金 |
| 管理職向けの研修 | 管理職 | 30分〜1時間(セミナー) | 打ち合わせをして作り込む | 別料金 |
いちばん多いのは、衛生委員会の中の短い講話です。スライド5〜10枚で、5〜10分ほど。毎月のテーマを私の側で用意していることもあれば、会社から「今月はこれを話してほしい」と頼まれることもあります。全従業員を集める教育の日や管理職の研修は、事前に打ち合わせをして、しっかり作り込んでから臨みます。テーマは、いまはメンタルヘルス・睡眠・食事が多いです。季節に合わせた1年分のテーマの組み方は衛生委員会のメンバー・進め方・年間テーマで紹介しています。
外部講師と違うのは「この職場のどこがつらいか」を分かっていること
スライドのもとになる型は、外部の講師でも産業医でもそれほど変わりません。違うのは、その会社の状況に合わせて、中身を適切に調整できることです。
産業医は、職場巡視や面談を通して、その職場のどんなところがつらいのかを分かっています。「いまこの部署ではここがトラブルになっているから、こう伝えよう」という調整ができる。そこが、外部の講師との一番の違いだと思います。
効いた講話・効かなかった講話——分かれ目は「自分ごと」になるか
反対に、職場に関係のない話をすると、聞く人は他人事になり、自分ごとにしてくれません。一般的なメンタルヘルスの話ばかりをしすぎると、「この人は、うちの職場のことをあまり考えていないんだな」と思われてしまいます。
衛生委員会の講話は顧問料の中、セミナーは別料金——契約書で確かめる
衛生委員会の中の5〜10分の講話は、訪問時間内にいちばん多くしていることで、顧問料の中で受けています。顧問料と訪問の費用の全体はサンポチャートの料金プランにまとめています。
一方で、訪問時間とは別に場を設ける講習や、30分〜1時間のセミナーの形になると、別に費用をいただくことが多いです。弊社では契約書に、訪問時間内の衛生委員会以外でセミナーをお願いされるときは別に検討(お見積もり)します、と書いています。頼む前に、自社の産業医との契約書で講話がどう扱われているかを確かめておくと、あとで食い違いません。
産業医がいない会社がスポットで頼む場合、講話やセミナーは1時間5〜10万円が目安です(産業医のスポット契約の費用相場と頼める業務)。
頼み方は一言でいい——「5〜10分で、テーマを1つ話してもらえますか」
「産業医に講話を頼みたいけれど、何を頼めばいいか分からない」という人事の方には、まずこう聞いてみてください、とお伝えしています。
多くの先生は講話の準備をしていますから、これで十分に伝わると思います。講話の資料を先に自分たちで使ってみたい場合は衛生講話資料「長時間労働・時間外労働の削減」(無料)、毎月のテーマ選びには安全衛生委員会のネタ12か月分も使えます。
産業医衛生講話の目的と効果を知ろう

皆さんの職場では、従業員の健康を守る取り組みはどれくらい行われていますか?
心身ともに健康でいることは、従業員一人ひとりの幸せだけでなく、企業の成長にとっても欠かせません。
そこで、今回は産業医衛生講話を通して、従業員の健康意識を高め、より働きやすい職場環境を作る方法について考えていきましょう。
職場の健康意識を高める重要性
健康は、私たちが幸せに暮らすための土台となるものです。しかし、仕事に追われる忙しい日々の中で、自分の健康について深く考える機会はなかなか持てないという方も多いのではないでしょうか?
職場は、私たちが多くの時間を過ごす場所であり、健康に影響を与えやすい環境でもあります。長時間労働や夜勤などが続くと、睡眠不足や疲労が蓄積し、心身のバランスを崩してしまうリスクが高まります。
また、職場の人間関係のストレスや、仕事内容に対するプレッシャーなども、心の健康に影響を与える可能性があります。
産業医衛生講話は、従業員一人ひとりが自身の健康について見つめ直し、健康的なライフスタイルを意識するきっかけとなります。
例えば、食生活の改善や運動習慣の重要性を学ぶことで、生活習慣病の予防に繋がります。
また、自分の体の状態を把握し、健康診断の結果をきちんと理解することの大切さを知ることで、早期発見・早期治療に繋がる可能性もあります。
ストレス管理や労働安全の向上
ストレスは、私たちが生きていく上で避けることのできないものです。適度なストレスは、私たちにやる気を与え、成長を促す効果もあります。
しかし、過剰なストレスは、心身に悪影響を及ぼし、様々な病気の原因となることがわかっています。
職場におけるストレスの原因は、長時間労働や過重な労働、人間関係のトラブル、職場環境の問題など、多岐にわたります。
これらのストレス要因を放置すると、従業員のメンタルヘルスの悪化や、労働災害の発生リスクが高まる可能性があります。
産業医衛生講話では、ストレスのメカニズムや、効果的なストレス対処法について学ぶことができます。
産業医衛生講話では、心のゴミ箱を定期的に空にする方法、つまりストレスと上手に向き合い、適切に対処する方法を学ぶことができます。
また、労働安全の観点からも、産業医衛生講話は重要な役割を担っています。
職場における危険予知やリスクアセスメント、事故防止のための対策などを学ぶことで、労働災害のリスクを減らし、安全な職場環境を築くことができます。
従業員のモチベーションを引き出す
従業員一人ひとりが、自分の仕事に誇りを持ち、意欲的に業務に取り組める環境を作ることは、企業の成長にとって非常に大切なことです。
しかし、健康上の問題や、職場環境に対する不満を抱えた状態では、従業員のモチベーションは低下し、生産性も落ちてしまう可能性があります。
産業医衛生講話では、従業員の健康増進だけでなく、働きがいのある職場環境作りにも貢献することができます。
例えば、職場におけるコミュニケーションの活性化や、チームワークを育むための研修などを実施することで、従業員同士の絆を深め、より働きやすい環境を築くことができるでしょう。
また、従業員が自身のキャリアプランについて考える機会を提供することも、モチベーション向上に繋がります。
産業医衛生講話は、従業員の健康意識の向上、ストレス管理や労働安全の向上、従業員のモチベーションを引き出すなど、様々な効果が期待できます。
これらの効果を通じて、企業全体の活性化、生産性の向上、より働きやすい職場環境の実現を目指します。
特に、近年、職場におけるメンタルヘルス問題は深刻化しており、企業は従業員の心の健康に配慮した職場環境作りが求められています。
厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス不調により休職した労働者数は年々増加傾向にあり、企業にとっても大きな損失となっています。
産業医は、医学的な専門知識に基づき、企業の健康管理体制の構築や、従業員の健康相談、メンタルヘルス対策など、幅広い業務を行っています。
しかし、産業医の役割や重要性については、まだ十分に理解されていないケースも見られます。
企業は、産業医を積極的に活用し、従業員の健康を守るための体制を構築することで、企業全体の活性化、生産性の向上、より働きやすい職場環境の実現に繋げることが重要です。
産業医衛生講話を依頼する手順と流れ
産業医衛生講話の実施が決まったら、いよいよ具体的な準備に入ります。スムーズに講義を進めるために、依頼先探しから、内容の相談、そして当日を迎えるまでの準備を、いくつかのステップに分けて考えていきましょう。
依頼先の選定と相談のポイント

産業医衛生講話の依頼先は、大きく分けて「自社の産業医」と「外部の専門機関」の2つがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合わせて最適な選択をすることが大切です。
1. 自社の産業医に依頼する場合
- メリット: 普段から従業員の健康状態や職場環境を把握しているため、より実情に沿った、的を射た内容の講話にしてもらえる可能性が高い点が魅力です。
- デメリット: 産業医の専門分野によっては、外部の専門機関に比べて、特定のテーマに関する知識や経験が不足している場合があります。
- ポイント: 依頼する前に、産業医の専門分野や経験について確認し、自社のニーズに合致しているか、希望する内容の講義が可能かどうかをしっかりと見極めることが重要です。
2. 外部の専門機関に依頼する場合
- メリット: 特定の分野に特化した、専門性の高い講師から、最新の知識や情報を提供してもらうことができます。
- デメリット: 企業の状況を詳しく把握していないため、講義内容が抽象的になり、従業員にとって「他人事」のように感じられてしまう可能性があります。
- ポイント: 企業の規模や業種、講話で特に伝えたい内容を明確に伝え、自社のニーズに合致する適切な講師を選定してもらうようにしましょう。専門機関に依頼する場合でも、事前に職場環境のヒアリングなどを実施してもらうことで、より具体的な内容の講義にすることができます。
これらの点を踏まえ、まずは複数の候補に問い合わせを行い、料金や講義内容、講師の対応などを比較検討することが大切です。
講話内容のカスタマイズ方法

多くの場合、企業の規模や業種、従業員の年齢層などに合わせて、講話内容をカスタマイズすることができます。
例えば、デスクワーク中心の企業であれば、長時間労働やVDT作業による眼精疲労、腰痛や肩こり予防のストレッチ、運動不足解消のための軽い運動などを講話に取り入れてみましょう。
立ち仕事が多い職場であれば、足のむくみ対策や適切な靴の選び方、適切な姿勢の保持、腰への負担を軽減する運動などを解説するなど、具体的な内容にすることで、従業員の理解度や関心を高めることができます。
講話内容を検討する際には、従業員からのアンケートや、職場環境のヒアリングなどを実施し、課題やニーズを事前に把握しておくことも重要です。
実際に、ある企業では、従業員からのアンケート結果を元に、「メンタルヘルス対策」や「ワークライフバランス」に関する内容を盛り込んだ講話を実施したところ、従業員から「自分のこととして考えることができた」「具体的な対策方法がわかってよかった」といった声が寄せられ、高い評価を得ることができました。

スケジュール調整と実施準備
依頼先が決まったら、講義の日程や時間、場所などを調整します。従業員の業務に支障が出ないよう、昼休みの時間や、終業後の時間を活用するなど、柔軟に対応してくれるかどうかも確認しておきましょう。
産業医が衛生委員会で効果的な活動を行うためには、積極的に参加し、情報収集を行い、関係者とコミュニケーションを取れる場作り、適切な調整、そして委員会での発言という行動が重要となります。これらの要素を意識することで、より実りのある産業医衛生講話を実施できるでしょう。
産業医衛生講話の費用と料金体系
「従業員の健康のために産業医衛生講話を依頼したいけど、費用はどれくらいかかるんだろう?」
そう悩んでいませんか?
実は、講話の内容や講師の先生、会社の規模によって費用は大きく変わります。
この章では、費用の仕組みや注意点をわかりやすく解説していきますので、安心して講話を依頼できるように、一緒に見ていきましょう。
産業医の衛生講話には大きく分けて二つのパターンがあると考えられます。
衛生講話のパターン
衛生委員会で短時間に行われるパターン
時間を設けて講演としてしっかりと行うパターン
経費計上の観点からの費用設定
二つの衛生講話はタイプが大きく異なります。当然費用も大きく変わってきます。
衛生委員会内で短時間に行われるパターン
産業医が短時間で行う産業医衛生講話の費用は、あまりかからないケースが多いです。委員会の出席という産業医報酬の基本料に含んで計算する産業医も多いようです。
時間を設けて講演としてしっかりと行うパターン
時間をしっかり確保し講演として衛生講話を実施するパターンでは通常のセミナー講師と同様に報酬が発生する場合が多いです。
社内の規定や講師料と相談しながら産業医とすり合わせを行うようにしていきましょう。
- 講師料: これは、先生への謝礼であり、専門性や経験、講話の内容や時間によって異なります。
例えば、大学教授や専門性の高い医師に依頼すると、費用は高くなる傾向があります。
これは、専門性の高い先生は、難しい内容を小学生にもわかるように説明したり、最新の研究結果を踏まえた話をしてくれるためです。
- 交通費: 講師の先生が会社まで来るための交通費も忘れてはいけません。
遠方からの場合は、新幹線代や宿泊費が発生する場合もあります。
- 資料作成費: 講義で使う資料の作成にかかる費用も発生します。
会社の規模や業種に合わせた資料を作成すると、費用は高くなる傾向があります。講演料の中にこちらの資料作成代や打ち合わせの料金を含めて調整を行う場合も多いです。
例えば、従業員50人の会社で、メンタルヘルスに関する講話を依頼した場合、費用は5万円〜15万円程度が相場です。
異なる企業規模による価格差
企業規模が大きいほど、費用は高くなる傾向があります。
これは、従業員数が多いほど、会場費や資料作成費などの費用がかさむためです。
また、大企業は、より専門性の高い内容の講話を求める傾向があり、講師料も高くなる傾向があります。
| 企業規模 | 費用相場 |
|---|---|
| 50人未満 | 5〜15万円 |
| 50〜100人 | 10〜20万円 |
| 100人以上 | 20万円〜 |
上記はあくまでも目安であり、講義内容や講師の先生によって費用は異なります。
小規模な会社は、少人数制の塾のようなイメージで、大規模な会社は、大人数の予備校のようなイメージです。
支払方法と契約時の注意点
支払方法は、銀行振込や当日現金払いが一般的です。
契約時には、費用に何が含まれているのか、キャンセル料は発生するのかなどをしっかり確認しましょう。
合わせて産業医衛生講話の費用は、内容や規模によって大きく異なります。
事前に見積もりを取り、契約内容を確認しておくことで、安心して講話を依頼することができます。
また、費用対効果を意識し、自社のニーズに合った講話を選ぶことが重要です。
まとめ
産業医衛生講話は、従業員の健康意識向上やストレス管理、労働安全、モチベーション向上に効果的な取り組みです。
自社の産業医や外部専門機関への依頼、内容のカスタマイズ、スケジュール調整など、準備段階から丁寧に進めることが重要です。
費用の目安は、講師料、交通費、資料作成費などを考慮し、企業規模や講義内容によって5万円〜20万円以上と幅広く、事前に見積もりを取り、契約内容をしっかり確認することが大切です。
参考文献
- 永田昌子, 森晃爾, 永田智久, 金子鉱明, 井上愛. 職場での課題解決につながりうる衛生委員会における産業医の行動の類型. 日衛誌 (Jpn. J. Hyg.) 2019; 74: 18022. doi: https://doi.org/10.1265/jjh.18022
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