愛知県弁護士会主催のセミナーで、「法律事務所のメンタルヘルス」をテーマに60分お話ししました。弁護士の先生方に加え、事務局の方々も多くご参加くださいました。

法律事務所は、高い要求度と小さな裁量、感情労働、守秘による孤立が重なる職場です。それは弁護士だけでなく、荒れた電話を最初に受け、期限管理を担う事務局も同じ。そこで今回は、事務所全体を主語にして、不調が生まれる構造、ストレスの生理学、「疲れ」と「受診すべき状態」の境目、根性ではなく設計で守るセルフケア、そして孤立を防ぐピアサポートまでをお伝えしました。

小規模な事務所ほど産業医の選任義務がなく、外部の目が入りにくい。だからこそ弁護士会という単位で予防に取り組む意義は大きいと感じています。
貴重な機会をくださった愛知県弁護士会の皆さま、ご参加くださった皆さまに心より感謝申し上げます。
ストレスチェックで高ストレスと判定され、面談(面接指導)を勧められたものの、「受けたら評価に響くのでは」「会社にバレるのでは」「レッテルを貼られるのでは」——そんな不安から一歩を踏み出せずにいませんか。先に結論をお伝えすると、面談を受けたことを理由にした不利益な取り扱いは法律で禁止されており、話した内容がそのまま会社に伝わることも基本的にありません。一方で、就業上の配慮が必要な場合には、健康を守るために必要最小限の情報が本人と相談のうえで会社に伝わることもあります。この記事では、現役の産業保健師が、実際によく聞かれる不安一つひとつに、現場でのやりとりをもとに具体的に答えます。
「会社にバレるのでは」という不安
面談前に、「面談を受けたことや話した内容が会社に知られるのではないですか」と聞かれることはあります。
その際は、面談で話した内容が本人の同意なく、そのまま会社へ伝えられるわけではないことを説明しています。一方で、勤務上の配慮が必要な場合には、「残業を減らす」「業務量を調整する」など、健康を守るために必要な範囲の情報を本人と相談したうえで会社へ伝えることがあります。
「何を、誰に、どこまで共有するのか」を面談の最初に具体的に説明すると、安心して話してくださることが多いです。
「評価に響くのでは」という不安
責任感が強い方や管理職、今後の昇進を意識している方、人事評価の時期が近い方などは、「面談を受けると評価に影響するのではないか」と心配される傾向があります。また、休まず働くことが当然という雰囲気の職場では、年代や職種にかかわらず不安を持たれやすいと感じます。

ただし、「絶対に会社の誰にも何も伝わらない」と断言するのではなく、就業上の配慮が必要な場合には、本人の健康を守るために必要最小限の情報が会社に伝わる可能性があることも説明します。そのうえで、病名や家庭事情などをどこまで共有するかは、できる限り本人と確認しながら進めます。
「レッテルを貼られるのでは」という不安

「メンタルヘルスに問題がある人と思われるのではないか」「今後も要注意人物として見られるのではないか」と心配される方はいます。
私が関わる際には、高ストレス者であることと、精神疾患があることは同じではないと説明しています。高ストレス判定は、その時点で心理的・身体的な負担が高まっている可能性を示すものであり、診断そのものではありません。
また、会社へ共有する必要がある場合も、「精神的に不安定」といった曖昧でレッテルにつながりやすい表現ではなく、「一定期間、時間外労働を減らすことが望ましい」など、具体的な就業上の措置に絞って伝えることが重要です。
本人の同意なく情報が広がると、その後の相談行動そのものを妨げる可能性があるため、情報共有の範囲は特に慎重に扱っています。
「プライベートなことまで聞かれるのでは」という不安
面談を受ける前は、「家庭のことや過去のつらい経験まで詳しく聞かれるのではないか」と身構えている方もいます。しかし実際には、現在の仕事内容や労働時間、睡眠、食欲、疲労、気分の変化、休日の過ごし方、相談できる人の有無など、今の健康状態と仕事との関係を確認することが中心です。
ただし、自傷や自殺に関する考えなど、生命・安全に関わる可能性がある場合には、必要な確認を行います。単に話を聞くだけではなく、安全を確保するための面談でもあるからです。
「30分で意味があるのか」という疑問
面談によって、すべての問題が30分で解決するわけではありません。ただ、本人が現在の状態を整理し、「このまま働き続けてよいのか」「受診が必要なのか」「会社に配慮を求めてもよいのか」を判断するきっかけにはなります。
睡眠や心身の状態、勤務状況を一緒に整理すると、個人の問題だけではなく、業務負荷を調整したほうがよい状態であることもあります。その後、必要な配慮につなげることで、悪化する前に対応できます。
30分の面談の意味は、その場で症状を治すことではなく、「何もしないまま働き続ける状態」から、受診や業務調整、セルフケアなど、次の具体的な行動へつなげることにあると考えています。
「結局、会社の味方では」という不信感

「会社から依頼されて面談しているのであれば、結局は会社側の人ではないですか」と聞かれることがあります。このような場合、すぐに「大丈夫です」と否定するだけでは、かえって不信感が残ることがあります。
まずは、産業医や保健師には守秘義務があり、本人の健康情報を無制限に会社へ伝える立場ではないことを説明します。そのうえで、会社に伝える必要が生じた場合も、原則として本人と内容を確認し、就業上必要な範囲に限定することを具体的に伝えます。
関係が変わるきっかけになるのは、実際の情報共有を本人と一緒に決めることです。例えば、「上司には体調の詳しい内容ではなく、当面は残業を控える必要があることだけを伝えましょう」と相談すると、「自分の知らないところですべて伝えられるわけではない」と理解してもらえます。
一度の説明だけで完全に信頼してもらおうとするのではなく、本人の意向を確認し、約束した範囲を守って対応することが、その後の信頼関係につながると感じています。
面談で実際に何を聞かれるのか、当日の流れ全体を知りたい方はストレスチェックの面談で何を話す?聞かれること・当日の流れを産業医が解説、そもそも面談を受けるべきか制度自体に疑問がある方はストレスチェック面談は意味ない?高ストレス者が面談すべき理由、義務化の背景や制度全体の仕組みはストレスチェック面接指導の完全ガイドもあわせてご覧ください。
まとめ:デメリットより先に、共有範囲を確認しよう
- 面談を受けたことを理由にした不利益な取り扱いは法律で禁止されている(労働安全衛生法第66条の10)
- 話した内容がそのまま会社に伝わることは基本的にないが、就業上の配慮が必要な場合は必要最小限の情報を本人と相談のうえで共有することがある
- 高ストレス判定と精神疾患は同じではなく、会社への共有も曖昧な表現ではなく具体的な就業上の措置に絞って行われる
- 聞かれる内容は仕事と体調の関係が中心で、話せる範囲で答えればよい(安全に関わる場合のみ踏み込んだ確認をすることがある)
- 30分で全てが解決するわけではないが、次の具体的な行動(受診・業務調整・セルフケア)につなげるきっかけになる
- 不安なときは「何を、誰に、どこまで共有するのか」を面談の最初に確認するのがいちばんの安心材料になる
一次情報は厚生労働省・ストレスチェック制度、法令はe-Gov法令検索(労働安全衛生法第66条の10)で確認できます。
よくある質問
Q. 高ストレス者面談を受けると、会社での評価に影響しますか?
面談を受けたこと、または面接指導を申し出たことを理由にした不利益な取り扱いは、労働安全衛生法で禁止されています。責任感の強い方や管理職の方ほどこの不安を持ちやすい傾向がありますが、制度上は評価を下げる根拠にはなりません。
Q. 面談の内容は上司や同僚に知られますか?
本人の同意なく、話した内容がそのまま会社へ伝えられることは基本的にありません。ただし、残業を減らす・業務量を調整するなど就業上の配慮が必要な場合には、健康を守るために必要な範囲の情報を、本人と相談したうえで会社へ伝えることがあります。
Q. 「高ストレス者」と判定されたことは周囲に知られますか?
高ストレス者であることと精神疾患があることは同じではなく、判定そのものが周囲に共有されることはありません。会社へ共有が必要な場合も、「精神的に不安定」といった曖昧な表現ではなく、「時間外労働を減らすことが望ましい」など具体的な就業上の措置に絞って伝えるようにしています。
Q. 面談ではプライベートなことまで聞かれますか?
中心となるのは仕事内容や労働時間、睡眠、食欲、気分の変化など、今の健康状態と仕事の関係です。すべてを無理に話す必要はなく、本人が話せる範囲で確認します。ただし、生命・安全に関わる可能性がある場合には必要な確認を行います。
Q. 30分の面談だけで何か変わりますか?受ける意味はありますか?
面談だけで問題がすべて解決するわけではありませんが、「このまま働き続けてよいのか」「受診が必要か」を整理し、受診や業務調整、セルフケアといった次の具体的な行動につなげるきっかけになります。何もしないまま働き続ける状態から一歩動く意味があります。
ストレスチェックで高ストレスと判定されて、「もしかして自分はうつ病なのでは」と眠れない夜を過ごしている——そんな方へ。まず伝えたいのは、その不安を感じることは、まったくおかしなことではないということです。高ストレスの判定は病名の告知ではありませんが、それでも心配になるのは自然な反応です。この記事では、現役産業保健師が、不安なときに今すぐできるセルフケア、一人で抱え込まないための相談先の探し方、そして受診を考えるタイミングについて、あなた自身に向けて解説します。
「うつ病かも」と不安になるのは、あなただけではない
高ストレスの結果通知を受け取った方から、「これって、うつ病の一歩手前ということですか」と聞かれることは現場でよくあります。結果を見て急に不安になったり、それまで気にしていなかった体調の変化が急に気になり始めたりするのは、決して珍しいことではありません。
高ストレスの判定そのものは、うつ病かどうかを決めるものではありません(この点はストレスチェックでうつ病と診断される?精神科受診との違いを保健師が解説で詳しく説明しています)。ただ、「自分では気づいていなかった負担に、検査を通じて気づかされた」という状態でもあるので、不安になること自体は自然な心の動きです。不安を感じたということは、それだけ自分の状態と向き合おうとしているサインでもあります。
不安なときに、まず自分でできる3つのこと

いきなり「病院に行くべきか」を考える前に、今日から自分でできることがあります。どれも小さなことですが、心身の状態を整える土台になります。
- 睡眠のリズムを整える——寝る前のスマホを控える、起きる時間を一定にするなど、できる範囲でかまいません。不調のサインが最も出やすいのが睡眠です
- 今の状態を紙やスマホに書き出してみる——「何にストレスを感じているか」「いつからつらいか」を言葉にすると、頭の中だけで不安が膨らむのを防げます。誰かに相談するときの整理にもなります
- 一人の時間と、誰かと話す時間の両方を意識してつくる——無理に元気に振る舞う必要はありません。気を張らずにいられる時間を、意識して確保してください
一人で抱え込まないで——話せる相手の探し方

不安なときほど、一人で抱え込んでしまいがちです。ですが、誰かに話すこと自体に、気持ちを軽くする効果があります。いきなり専門的な場所でなくてもかまいません。段階的に考えてみましょう。
- 家族・友人——診断や解決を求めなくてよい相手です。「最近ちょっとしんどくて」と話すだけでも違います
- 会社の産業医・保健師——いる場合は、面接指導を申し出る前の段階でも相談できることがあります。守秘義務があるため、話した内容が会社に伝わることは基本的にありません
- 外部の相談窓口——会社に知られたくない場合は、厚生労働省のこころの耳で電話・SNS相談の窓口が案内されています
- かかりつけ医——精神科や心療内科が身構えるようなら、まずは普段通っている内科などで「眠れない」「食欲がない」と相談するところから始めても構いません
「大げさに思われないか」「相談するほどのことじゃないかも」と感じるかもしれませんが、その判断は相談してみてから決めても遅くありません。話してみて「思ったより大丈夫そう」と分かることも、専門家につながるきっかけになることも、どちらも意味のある結果です。
それでも不安が消えない・つらさが強いときは、受診の目安を
セルフケアや身近な人への相談を試しても状態が変わらない、あるいは気分の落ち込みや眠れない状態がほぼ毎日・2週間以上続いている場合は、医療機関への相談を検討するタイミングです。うつ病かどうかを判断できるのは医師だけであり、自己判断で様子を見続ける必要はありません。目安の詳細はストレスチェックでうつ病はわかる?診断との違いを保健師が解説にまとめています。
まとめ:不安は自然な反応。小さな一歩から始めて大丈夫
- 高ストレス判定を受けて「うつ病かも」と不安になるのは、よくあること。異常なことではない
- まずは睡眠リズムを整える、状態を書き出す、話す時間をつくるなど、できることから始める
- 相談先は家族・友人から始めて、産業医・保健師、外部の相談窓口、かかりつけ医まで段階的でよい
- 気分の落ち込みなどが2週間以上続くなら、自己判断せず医療機関への相談を検討する
- 「死にたい」と感じるときは様子を見ず、すぐに相談窓口や医療機関につながる
よくある質問
Q. 誰にも相談できません。どうすればいいですか?
身近な人に話しにくい場合は、厚生労働省の「こころの耳」など匿名で使える相談窓口があります。会社に産業医・保健師がいる場合は、守秘義務があるため会社に知られる心配なく相談できます。まずは話してみることから始めてください。
Q. 会社に「うつ病かも」と思っていることを知られたくありません。
産業医や保健師には守秘義務があり、相談内容が本人の同意なく会社に伝わることは基本的にありません。それでも不安な場合は、会社を通さない外部の相談窓口や、直接かかりつけ医・心療内科を受診する方法もあります。
Q. どのくらいつらかったら病院に行くべきですか?
気分の落ち込みや眠れない状態が、ほぼ毎日・2週間以上続いている場合は受診を検討する目安です。ただし、これより早い段階でもかまいません。迷っているなら、まず相談してみることをおすすめします。
Q. 家族にどう伝えればいいか分かりません。
詳しく説明しようとしなくてかまいません。「最近ストレスチェックで高ストレスと判定されて、少し不安なんだ」と、感じていることをそのまま伝えるだけで十分です。解決策を求める必要はなく、聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。
Q. セルフケアを試しても不安が消えません。
セルフケアは状態を悪化させないための土台であり、不安を完全に消すためのものではありません。試しても改善しない、あるいはつらさが続く場合は、次の段階として身近な人や専門職への相談に進んでください。それは失敗ではなく、正しい対応です。
「ストレスチェックで高ストレスと判定された。もしかしてうつ病なのでは」——こうした不安を口にする方に現場でよく出会います。先に結論をお伝えすると、ストレスチェックはうつ病かどうかを診断する検査ではありません。あくまで、心身の負担が大きくなっていないかを「ふるい分ける」ためのスクリーニング検査であり、病気の有無を判定するものではないのです。この記事では、現役産業保健師が、ストレスチェックと医師によるうつ病の診断が何が違うのか、そして高ストレスと判定されたときに実際にすべきことを解説します。
ストレスチェックは何を調べる検査なのか

ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場に実施が義務づけられている検査です(2028年4月からは50人未満の事業場にも義務が拡大されます)。多くの現場では、職業性ストレス簡易調査票と呼ばれる57項目の質問に「あてはまる/あてはまらない」で回答する形式が使われています。
質問は大きく3つの領域に分かれています。①仕事の量や裁量権など「職場のストレス要因」、②イライラ・疲労感・不安・抑うつ感といった「心身のストレス反応」、③上司や同僚からの支援など「周囲のサポート」です。これらの点数を組み合わせて、心身の負担が高い状態にある人を「高ストレス者」として拾い上げます。
「高ストレス」の判定と「うつ病」がイコールではない理由

ストレスチェックはスクリーニング検査です。スクリーニングとは、病気の可能性がある人を広く「ふるい分ける」ための検査で、精密に病気の有無を判定する「診断」とは役割がまったく異なります。
スクリーニング検査は、見逃しを減らすために、あえて広めに網をかける設計になっています。そのため、高ストレスと判定されても実際にはうつ病などの精神疾患ではない人の方が多いのが実情です。逆に、低ストレスと判定されても、実は体調を崩し始めている人がいる、という限界もあります。また、自己記入式の検査であるため、回答した日の気分や体調、記入時の心理状態によって点数が変わりうる点も、診断とは性質が異なる理由の一つです。
つまり、「高ストレス=うつ病」でも「低ストレス=健康」でもありません。高ストレスの判定は「一度、自分の心身の状態と向き合ってみるタイミングが来ている」というサインであって、病名の告知ではないのです。
うつ病の診断は、誰が・どうやって行うのか
うつ病の診断は、精神科・心療内科の医師による問診と診察を通じてのみ行われます。国際的な診断基準(DSM-5やICD-11)では、次のような要素を総合的に確認します。
- 抑うつ気分や興味・関心の減退などの症状が、ほぼ毎日・2週間以上続いているか
- その症状によって、仕事や日常生活に実際に支障が出ているか
- 甲状腺機能の異常など、他の身体疾患や薬の影響が原因ではないか(除外診断)
- 生活歴や既往歴、現在の状況を対話の中で丁寧に聴き取れているか
この通り、診断には対話を通じた丁寧な評価が不可欠で、質問票への回答だけで完結するものではありません。ストレスチェックの57項目だけでは、症状がいつから続いているか、日常生活にどう影響しているかまでは分かりません。だからこそ、ストレスチェックの結果だけで自分自身を「うつ病かもしれない」と決めつける必要はないのです。
高ストレスと判定されたら、次にすべきこと
高ストレスと判定されると、医師による面接指導(面談)を申し出ることができます。ただし、この面談も「うつ病かどうかを診断する診察」ではありません。目的は、ストレスで心身に負担がかかっていないかを医師が確認し、必要なら働き方の調整を提案することです。面談で何を話すのか、会社にどこまで伝わるのかについてはストレスチェックの面談で何を話す?聞かれること・当日の流れを産業医が解説で詳しく解説しています。
こんな状態が2週間以上続いていたら、医療機関への相談を

次のような状態が、ほぼ毎日・2週間以上続いている場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関に相談することをおすすめします。
- 気分の落ち込みや、憂うつな気持ちがほぼ毎日続いている
- これまで楽しめていたことに、興味や関心が持てなくなった
- 眠れない、あるいは逆に眠りすぎてしまう
- 食欲が明らかに落ちた、または増えた
- 疲れやすく、気力が湧かない
- 物事に集中できない、決断ができない
- 自分を必要以上に責めてしまう
まとめ:ストレスチェックは「気づくきっかけ」、診断は医師が行う
- ストレスチェックは57項目の質問票によるスクリーニング検査であり、うつ病の診断ではない
- 目的は病気の発見ではなく、不調になる前に気づく一次予防
- 高ストレスの判定は「うつ病」を意味せず、逆に低ストレスでも安心とは限らない
- うつ病の診断は医師の問診・診察によってのみ行われ、症状の持続期間や生活への支障などを総合的に評価する
- 高ストレスと判定されたら面接指導の申出、心配な症状が続くなら医療機関への直接受診も選択肢
- 「消えてしまいたい」と感じるときは様子を見ず、すぐに相談窓口や医療機関につながる
面接指導で実際に何を聞かれるのかはストレスチェックの面談で何を話す?聞かれること・当日の流れを産業医が解説、制度そのものの義務化スケジュールはストレスチェック義務化はいつから?50人未満は2028年4月1日から|準備ガイドもあわせてご覧ください。一次情報は厚生労働省・ストレスチェック制度、うつ病を含むこころの健康については厚生労働省・こころの耳、法令はe-Gov法令検索(労働安全衛生法第66条の10)で確認できます。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
よくある質問
Q. ストレスチェックで「高ストレス」と出たら、うつ病ということですか?
いいえ、そうとは限りません。ストレスチェックは心身の負担が高まっていないかをふるい分けるスクリーニング検査であり、うつ病の診断ではありません。高ストレスと判定されても、実際にはうつ病ではない人の方が多いのが実情です。気になる場合は面接指導の申出や医療機関の受診を検討してください。
Q. ストレスチェックの点数が低かった(良好)なら、うつ病の心配はないですか?
そうとは言い切れません。ストレスチェックは自己記入式の検査のため、回答した日の気分や体調によって結果が変わることがあります。点数が低くても、気になる症状が続いているなら、結果にかかわらず相談や受診を検討してよいでしょう。
Q. うつ病かどうかは、どうすれば分かりますか?
精神科や心療内科の医師による問診・診察を受けることでのみ判断できます。抑うつ気分などの症状がほぼ毎日2週間以上続いているか、日常生活や仕事に支障が出ているかなどを、対話を通じて総合的に評価します。質問票への回答だけで診断がつくことはありません。
Q. ストレスチェックの面接指導を受ければ、うつ病かどうか診断してもらえますか?
面接指導も診察ではありません。目的はストレスによる心身の負担を医師が確認し、必要なら働き方の調整を提案することです。うつ病の診断が必要と医師が判断した場合は、精神科や心療内科の受診を勧められることがあります。
Q. 高ストレスと判定されて不安です。何をすればいいですか?
まず、高ストレスの判定だけで病気が確定するわけではないと知っておいてください。そのうえで、面接指導を申し出て医師に相談する、または気になる症状があれば直接かかりつけ医や心療内科を受診する、という選択肢があります。産業医や保健師がいる会社なら、受診すべきか迷う段階で先に相談するのもおすすめです。
Q. 「死にたい」と感じることがあります。どうすればいいですか?
様子を見ずに、すぐに医療機関や相談窓口につながってください。厚生労働省の「こころの耳」では電話・SNSでの相談窓口が案内されています。会社に産業医や保健師がいる場合は、すぐに相談することもできます。一人で抱え込まないでください。
サンポチャートでは、衛生委員会の年間計画を簡単に作成できる「衛生委員会 年間計画ジェネレーター」を公開しました。
業種や働き方、健康診断月、ストレスチェック月などを選択するだけで、4月から翌年3月までの衛生講話・審議テーマ案を自動で作成できます。
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※作成される内容は計画案です。各事業場のリスク、実施状況、産業医・衛生管理者等の意見を踏まえて調整してください。

株式会社サンポチャートは、2026年8月6日付で「小牧市SDGs登録制度」に、こまきSDGs推進パートナーとして登録されました。小牧市長・天野正基氏より登録証を授与いただき、地域の一員として持続可能な社会づくりに取り組んでいくことになります。
登録の背景 — 地域とのつながりを大切にしたい
サンポチャートは、愛知・岐阜・三重の東海3県を中心に、全国の企業を対象として、産業医・保健師による専門的な支援やクラウドサービスを活用した産業保健体制づくりを行っています。小牧市を含む各地域で事業を展開するなかで、地域との結びつきをより深め、地域企業で働く人々の健康に貢献したいという思いから、今回の登録を申請しました。
「働く人の健康を支える」という私たちの本業そのものが、地域の企業や、そこで働く一人ひとりの生活を支えることにつながっている——そのことを改めて意識する機会にもなりました。
重点的に取り組む3つの目標
数あるSDGsのゴールの中でも、サンポチャートは事業内容と特に関わりの深い3つの目標を重点テーマとして掲げています。
- 目標3「すべての人に健康と福祉を」——本業である産業保健サービスを通じて、働く人一人ひとりの心身の健康を支えます。
- 目標8「働きがいも経済成長も」——健康経営の支援を通じて、従業員が安心して働き続けられる職場づくりと企業の持続的な成長の両立を後押しします。
- 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」——小牧市や地域の企業、産業医・保健師といった専門職と連携しながら、一社だけでは実現できない取り組みを広げていきます。
具体的な取り組み — 健康経営支援を通じた貢献
サンポチャートにとって最も直接的なSDGsへの貢献は、産業保健に関する専門的な支援を通じて、企業の健康管理体制づくりと健康経営を支えるという本業そのものにあります。産業医・保健師による支援や、クラウドサービスを活用した産業保健業務の効率化・体制整備を通じて、一社でも多くの企業が「働く人の健康」を重要な経営課題として捉え、継続的な取り組みにつなげられるよう支援していきます。
代表コメント

産業医として多くの企業や働く方々と関わるなかで、働く人の健康を守ることは、その人自身だけでなく、企業の持続的な成長や地域の活力にもつながると感じてきました。
今回、「こまきSDGs推進パートナー」として登録いただけたことを大変うれしく思います。
SDGsというと大きなテーマに感じられますが、私たちにできることはとても明確です。産業医・保健師による支援やテクノロジーを活用し、地域の企業がより安心して働ける職場をつくること。そして、一人でも多くの働く方が健康に働き続けられる環境を増やしていくことです。
今回の登録を一つのきっかけとして、小牧市や地域企業の皆さま、医療・産業保健に携わる専門職の皆さまと連携しながら、「働く人の健康」から持続可能な地域づくりに貢献してまいります。
株式会社サンポチャート
代表取締役・産業医 角田 拓実
ストレスチェックで高ストレス者となった従業員から面接指導の申出があったら、申出から概ね1か月以内に医師の面接指導まで実施するのが実務上の目安です。結論から言うと、これは罰則付きで定められた法律上の期限ではなく、本人の状態悪化と会社対応の停滞を防ぐための実務ラインです。この記事では、なぜ1か月以内の対応が重要なのか、早く動けたときにどんな効果があるのか、逆に初動が遅れるとどうなるのかを、現役産業保健師が現場の実例を交えて解説します。
「1か月以内」とは何か——法律の期限ではなく実務上の目安
高ストレス者から面接指導の申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務を負います(労働安全衛生法第66条の10)。厚生労働省のストレスチェック制度導入マニュアルでは、この面接指導について「申出から概ね1か月以内」に実施することが望ましいとされています。ただし、これは健康診断の事後措置などと違って日数が罰則付きで明記された期限ではありません。
なぜ1か月なのか——遅れが本人と会社にもたらす変化

「1か月」という期間は、法令上の一律の期限というより、状態の悪化や対応の先送りを防ぐための実務上の目安だと感じています。高ストレス者の状態は、時間の経過とともに動きます。不眠や食欲低下、集中力の低下といった不調が続くと、本人が面談の日程を調整したり、申出そのものを行ったりすること自体が難しくなっていきます。「そのうち良くなるはず」と様子を見ているうちに、動く力そのものが落ちていくのです。
会社側にも同じことが起きます。欠勤や業務上のミスが目立つようになってから動こうとすると、業務調整や代替要員の確保が急に難しくなります。症状や就業への影響がまだ小さい段階であれば、勤務時間の調整や業務量の見直しといった軽い手当てで済んだはずのものが、後手に回るほど選べる対応の幅が狭くなっていきます。
初動が遅れてしまったケースでは、担当者が対応方法を決められないまま時間が過ぎ、その間に欠勤が増えて、最終的に休職に至ったことがあります。逆に、高ストレス者への通知後、会社が早めに面接指導の案内を行い、1か月以内に産業医面談までつなげられたケースでは、本人の不眠や気分の落ち込みが深刻化する前に、業務量の調整や上司との関わり方を見直すことができました。明暗を分けたのは、相談先と対応手順が事前に決まっていたかどうかだったと感じています。
1か月以内に動けたときのメリット
1か月以内に面談まで進められた場合、本人にとっては、今の状態を専門職と一緒に整理し、受診・休養・業務調整といった具体的な選択肢を早い段階で検討できるという利点があります。状態が軽いうちほど、選べる手当ての幅は広く、負担も小さく済みます。
これは高ストレス者を放置した場合の法的・医学的リスクを裏返した効果とも言えます。放置が「安全配慮義務」の観点で会社に不利に働くのに対して、早期の面談は逆に「対応のしくみを整え、実際に動いた」という事実を積み重ねることになります。
初動が遅れる会社に共通する「詰まりポイント」

初動が遅れる会社を見ていると、担当者の怠慢というより、準備不足からくる「詰まりポイント」がいくつかのパターンに集約されることに気づきます。
- 面接を担当する医師が決まっていない——申出が来てから探し始めるため、そこで時間を失う
- 社内の担当者や承認手順が不明確——「誰が判断するのか」が決まっておらず、確認のやり取りだけで日数が過ぎる
- 本人への案内方法が決まっていない——申出の窓口や連絡手段がその場しのぎになり、本人も何をすればいいかわからない
- 本人が「もう少し様子を見たい」と先延ばしにする——会社側も強く勧められず、双方が動かないまま時間だけが経過する
高ストレス者から面接指導の申出があってから医師を探し始めても、短期間で日程を確保することは容易ではありません。産業医は複数の事業場を担当していることが多く、また臨床業務と兼務している場合もあります。さらに契約内容が月1回の定期訪問に限られ、訪問日以外の面接指導に対応できる体制が整っていないケースもあります。産業医以外の医師に依頼する場合も、通常の診療や担当患者への対応が優先されるため、産業保健に関する面接指導を急遽引き受けてもらうことは簡単ではありません。そのため、申出があってから依頼先を探すのではなく、あらかじめ担当の医師、連絡方法、実施場所、オンライン対応の可否、申出から面接までの手順を決めておくことが重要です。
この4つに共通しているのは、「高ストレス者が出てから」一から対応を考えていることです。相談先、担当者、連絡方法、面談までの流れを事前に決めておくかどうかが、1か月という目安に間に合うかどうかを大きく左右します。本人が申出をためらう背景については高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務で詳しく解説しています。
「1か月」に間に合わせるための社内フロー

詰まりポイントの裏返しとして、あらかじめ次の4つを決めておくと、申出から1か月以内に面談まで進めやすくなります。
- 申出の受付窓口を1つに決めておく——誰に、どうやって申し出ればいいかを本人が迷わない状態にする
- 面接指導を頼む医師・委託先を事前に確保しておく——顧問産業医がいない会社は、外部の医師へのスポット依頼先を先に決めておく(医師がいないときの外部委託の解説・委託先の選び方)
- 社内の承認ルートを簡略化しておく——申出があったときに「誰の判断で進めてよいか」を事前に決め、都度の確認待ちをなくす
- 「早く動くほど選べる対応の幅が広い」ことを本人にも伝える——先延ばしを責めるのではなく、早期の面談が本人にとっても利点があることを説明する
この4点を紙1枚のフローにまとめておくだけで、担当者は申出が来た瞬間に迷わず動けるようになります。面接指導そのものの進め方や当日の流れはストレスチェック面接指導の完全ガイドもあわせてご覧ください。
まとめ:「1か月」は期限ではなく、早く動くための目安
- 「申出から概ね1か月以内」は罰則付きの法定期限ではなく、状態悪化と対応の先送りを防ぐための実務上の目安
- 不調は時間とともに進み、放置するほど本人が動く力も、会社が選べる対応の幅も狭くなっていく
- 1か月以内に面談まで進めると、本人は選択肢を早く検討でき、会社も医師の意見を根拠に判断できる
- 初動が遅れる会社の詰まりポイントは「医師未定・承認手順不明確・案内方法未定・本人の先延ばし」の4つに集約される
- 受付窓口・医師の手配先・承認ルートを事前に決めておけば、申出後に迷わず動ける
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- 高ストレス者を放置するとどうなる?会社のリスクと今すぐやるべき対応
- 高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務
- ストレスチェック面接指導の医師がいない|外部委託・スポット依頼を解説
一次情報は厚生労働省・ストレスチェック制度(ストレスチェック制度導入マニュアル)やe-Gov法令検索(労働安全衛生法第66条の10)で確認できます。より詳しい実務は、代表産業医・角田拓実の著書『職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(紹介記事)でも解説しています。
よくある質問
Q. 面接指導は必ず1か月以内に実施しなければならないのですか?
「概ね1か月以内」は厚生労働省のマニュアルが示す実務上の目安であり、日数超過そのものに罰則が科される法定期限ではありません。ただし、申出への対応自体は労働安全衛生法上の義務であり、目安を大きく超えて放置すれば安全配慮義務の観点でリスクが高まります。
Q. 1か月を過ぎてしまったら、面接指導はできなくなりますか?
できなくなるわけではありません。1か月はあくまで目安のため、超過した場合も速やかに面接指導を実施すべきです。「間に合わなかったからもうやらない」という判断ではなく、気づいた時点ですぐ動くことが重要です。
Q. 社内の承認に時間がかかります。どう短縮すればいいですか?
申出があったときに「誰の判断で面接指導の手配を進めてよいか」を事前に決めておくことが有効です。都度上長の判断を仰ぐ運用だと確認待ちだけで日数が過ぎるため、担当者や実施者にあらかじめ一定の権限を持たせておくと初動が速くなります。
Q. 本人が「まだ大丈夫」と面談を先延ばしにする場合はどうすればいいですか?
無理に受けさせることはできませんが、「早く動くほど選べる対応の幅が広い」ことを丁寧に伝えることは有効です。面談を受けても不利益はないこと、状態が軽いうちの方が負担の少ない選択肢が多いことを説明し、本人のタイミングで申し出やすい雰囲気を作ることが実務上のポイントです。
Q. 顧問産業医がおらず、1か月以内に医師の手配ができません。どうすればいいですか?
外部の医師や産業保健サービスへ依頼できます。50人未満の事業場では、地域産業保健センターを利用できる場合もあります。ただし、予約状況によっては速やかに実施できないため、まずは複数の依頼先へ相談しましょう。今後に備え、ストレスチェック実施前に依頼先や手順を決めておくことが重要です。
「ストレスチェックを受けたら、結果が社長に伝わってしまうのでは」——小規模の会社ほど、従業員からこの不安の声を聞きます。結論から言うと、結果は本人の同意なく会社へ提供することはできません(労働安全衛生法第66条の10)。ただし、面接指導の申出に関する同意と、結果を会社へ提供することへの同意は別物であり、混同したまま運用している会社が少なくないのも実情です。この記事では、現役保健師が、小規模事業場でとくにプライバシーへの不安が強まる理由と、実施者が実務で使っている同意の取り方・情報管理のルールを解説します。
小規模事業場でプライバシー不安がとくに強まる理由

ストレスチェックのプライバシー保護のルール自体は、会社の規模にかかわらず同じです。それでも小規模事業場では、従業員同士や経営者との距離が近いために「誰が高ストレス者に該当したか」が推測されやすいという構造的な難しさがあります。部署の人数が少なければ、面接指導のために外出した、いつもと様子が違う、といった些細な変化だけで周囲に伝わってしまうことがあります。
さらに、人事担当者を置く余裕がなく、社長自身が労務管理を兼ねているケースも珍しくありません。この場合、従業員からすると「結果を見られる人=社長」という構図になりやすく、「正直に答えたら経営者に知られてしまうのでは」という不安が、受検そのものへの抵抗や、高ストレス者になった後の面接指導の申出控えにつながります。私自身、実施者として複数の小規模事業場に関わってきましたが、体制上の懸念よりも「知られたらどうしよう」という心理的な不安の方が、実務上はよほど大きな障壁になっているという印象があります。
だからこそ小規模事業場では、法令で定められたルールを守るだけでなく、「守られている」ということを従業員に具体的に伝える工夫が、大企業以上に重要になります。50人未満の事業場は2028年4月からストレスチェックが義務化されますが、義務化への準備と同時に、この同意・プライバシーの運用まで整えておくことをおすすめします(50人未満の義務化はいつから?準備ガイド)。
面接指導の申出と結果提供、同意は別々に取る

実務でまず整理しておきたいのが、「面接指導を申し出ること」への同意と、「ストレスチェックの結果を会社へ提供すること」への同意は、法律上まったく別の同意だという点です。前者は本人が面接指導を利用したいという意思表示、後者は個人の検査結果という機微な情報を事業者に渡してよいかという意思表示であり、性質が異なります。
実務では、Webシステムのチェックボックスや同意書面で、それぞれ個別に同意を取得するのが一般的です。多くのストレスチェックシステムでは、受検時点での結果提供への同意と、高ストレス者に該当した後の面接指導申出への同意を、画面上で別のステップとして分けています。
結果を見られるのは「実施者」と「実施事務従事者」だけ

個人のストレスチェック結果を閲覧できるのは、実施者(医師・保健師など)と、実施者の指示のもとで検査の実務を担う実施事務従事者など、必要最小限の者に限定されます。ここには例外がありません。社長であっても、直属の上司であっても、本人の同意がなければ個人の結果を見ることはできないのが原則です。
実施者・実施事務従事者には法律上の守秘義務が課されており(労働安全衛生法第104条)、業務上知り得た秘密を漏らすことは認められていません。小規模事業場のように「結果を見られる立場の人」が実質的に1〜2人しかいない会社では、この「限定された人しか見られない」という線引きを、抽象的なルールとしてではなく、誰が実施者で誰が実施事務従事者なのかを名指しで従業員に周知することが実務では効果的です。「〇〇さん(保健師)と□□さん(実施事務従事者)以外、社長を含めて誰も個人の結果は見られません」と具体的に伝えるだけで、従業員の受け止め方は変わります。
個人結果を見られる人を限定するというルールは、社内の申し合わせではなく法令に基づく要請です。医師・保健師など専門職から法令や守秘義務の観点から説明すると、会社側にも「制度を適切に運用するために必要なことだ」と理解していただきやすいという実感があります。
社内に実施者を担える人材がいない場合は、外部の保健師・産業医に実施者業務そのものを委託する選択肢もあります。実施者の要件についてはストレスチェックの実施者とは?保健師も担当できる理由と要件で詳しく解説しています。
集団分析は10人未満だとプライバシーが守れない
ストレスチェックの結果を職場環境改善に活かす「集団分析」も、小規模事業場ではプライバシー上の注意が必要です。集団の人数がおおむね10人未満の場合、結果を平均化しても個人が特定されやすくなるため、原則として対象者全員の同意がなければ会社へ結果を提供できません。部署単位で見ると数人しかいない、というケースは小規模事業場では珍しくなく、集団分析そのものがネックになりがちです。
「守られている」と伝わることが受検率・申出率を左右する

プライバシー保護のルールをどれだけ整えても、それが従業員に伝わっていなければ不安は解消されません。「会社に結果が知られるのでは」と感じている職場では、受検率や面接指導の申出率が低くなる傾向があります。正直に回答すると不利益があるかもしれないという疑念があれば、そもそも正確に回答してもらうこと自体が難しくなります。
実務では、「医師には少し話しづらいけれど、保健師になら相談しやすい」と言われることが少なくありません。仕事の悩みだけでなく、家庭や介護、不妊治療、人間関係など、健康の背景にある生活のことまで話していただけることがあり、そうした情報が支援につながる場面は実際に多くあります。これは職場に限らず、医療現場でも同じように感じてきたことです。
健診後の保健指導や職場巡視では、いきなり指導から入るのではなく、まず日頃の体調や仕事の様子を伺うことを意識しています。「お話しいただいた内容は、本人の同意なく会社へ伝えることはありません」と最初に説明することも、安心して相談していただける雰囲気づくりの一つです。こうした積み重ねが、プライバシーのルールを「守られている」と実感してもらうことにつながります。
一方で、「結果は本人の同意なしに会社へ提供されることはない」と繰り返し周知している職場では、健康相談につながりやすくなる印象があります。1回の案内文で説明して終わりにするのではなく、受検の案内・結果通知・面接指導の勧奨といった節目ごとに、同じメッセージを繰り返し伝えることが、時間をかけて安心感を積み上げることにつながります。ストレスチェックを社内に定着させる考え方は受検率を上げるには?社内定着の実務ポイント、勧奨そのものの実務は高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務でも解説しています。
小規模事業場が決めておきたい4つのルール
ここまでの内容を踏まえ、小規模事業場で最低限決めておきたい同意・プライバシー保護の実務ルールをまとめます。
- 個人結果を閲覧できる人を、実施者・実施事務従事者など必要最小限に限定する——社長や上司であっても、本人の同意がなければ結果を見られないことを明確にする
- 面接指導の申出への同意と、結果を会社へ提供することへの同意を分けて取得する——「面談を受ける=結果が伝わる」という誤解が生まれないよう、それぞれ個別に説明する
- 結果は本人の同意なく会社へ提供しないことを、案内のたびに繰り返し周知する——1回の説明で終わらせず、受検案内・結果通知・面接指導の勧奨のたびに同じメッセージを伝える
- おおむね10人未満の集団分析は慎重に行う——部署をまとめる・会社全体で集計するなど単位を広げるか、個人が特定されるおそれがあるなら無理に実施しない
まとめ:ルールを決めるだけでなく、伝え続けることが大切
- 結果は本人の同意なく会社へ提供できない(労働安全衛生法第66条の10)。小規模事業場ほど距離の近さから不安が強まりやすい
- 面接指導の申出への同意と、結果提供への同意は別物。混同されないよう個別に説明する
- 個人結果を見られるのは実施者・実施事務従事者のみ。社長・上司も本人の同意なしには見られない
- 10人未満の集団分析は個人が特定されやすいため、単位を広げるか無理に実施しない判断も必要
- 「守られている」という周知を繰り返すことが、受検率・面接指導の申出率を底上げする
50人未満の義務化に向けた準備全体はストレスチェック義務化はいつから?準備ガイド、社内に医師がいない場合の面接指導の進め方は医師がいないときの外部委託・スポット依頼の解説もあわせてご覧ください。一次情報は厚生労働省・ストレスチェック制度、個人情報の取り扱いは医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(個人情報保護委員会)で確認できます。
よくある質問
Q. ストレスチェックの結果は、同意なく会社に伝わりますか?
伝わりません。個人のストレスチェック結果を事業者へ提供する場合は、本人の同意が必要です(労働安全衛生法第66条の10)。同意していない結果が会社に共有されることはありません。
Q. 面接指導を受けると、それだけで結果が会社にわかってしまいますか?
面接指導を申し出た事実自体は会社に伝わりますが、面談の内容や検査結果の詳細が自動的に共有されるわけではありません。「申出への同意」と「結果提供への同意」は別のものです。
Q. 個人の結果は誰が見られるのですか?社長も見られますか?
個人の結果を見られるのは実施者(医師・保健師など)と実施事務従事者など、必要最小限の者に限られます。社長や上司であっても、本人の同意がなければ結果を見ることはできません。
Q. 小規模事業場では集団分析はできないのですか?
できないわけではありませんが、おおむね10人未満の集団では個人が特定されやすいため、原則として対象者全員の同意が必要です。部署をまとめて集計する、会社全体で集計するなど単位を広げるか、無理に実施しないという判断も選択肢になります。
Q. 実施者や実施事務従事者が結果を漏らした場合、罰則はありますか?
実施者・実施事務従事者には労働安全衛生法第104条により守秘義務が課されており、業務上知り得た秘密を漏らすことは認められていません。違反した場合は罰則の対象になり得ます。
Q. 従業員にプライバシー保護をどう周知すればいいですか?
1回の案内で終わらせず、受検の案内・結果通知・面接指導の勧奨など節目ごとに「結果は同意なく会社へ提供されない」ことを繰り返し伝えることが効果的です。誰が実施者・実施事務従事者なのかを具体的に名指しで伝えると、より安心感につながります。
Q. 人事担当者がいない小規模事業場では、誰が結果を管理すればいいですか?
社内に実施者・実施事務従事者を担える人材がいない場合は、外部の保健師・産業医に実施者業務そのものを委託する方法があります。社長や少人数の担当者が個人結果を直接扱わずに済むため、プライバシーを守りやすい体制を作れます。
ストレスチェックを始めるにあたって、社内の実施規程(ルール)をどう作ればいいのか——最初にお伝えしたいのは、ゼロから書く必要はないということです。厚生労働省が規程のひな形(実施規程例)を公開しており、委託先からも叩き台をもらえます。会社が本当に頭を使うべきは、実は数カ所だけ——「結果を誰が見られるか・どこに誰が保存するか」と「高ストレス者が出たときの面接指導の段取り」です。この記事では、規程に入れる項目の全体像と、実務で揉めやすいポイントの決め方を、企業の規程づくりを支援している現役産業医が解説します。
なぜ規程が要るのか——「審議して定める」が制度の建て付け

ストレスチェックの実施方法(時期・体制・結果の取り扱いなど)は、衛生委員会等で調査審議したうえで、社内規程として定め、従業員に周知する——これが制度の基本的な建て付けです(50人未満で衛生委員会がない事業場は、関係労働者の意見を聴く場を活用します)。つまり規程は「あると丁寧」ではなく、制度運用の前提となる文書です。
規程に入れる項目——標準セット一覧

厚生労働省の実施マニュアルに付属する規程例をベースにすると、盛り込む項目はおおむね次のとおりです。
- 目的・位置づけ——メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)が目的であること
- 実施体制——実施者(医師・保健師等)、実施事務従事者、委託先。誰が何を担うか(実施者のしくみ)
- 対象者と実施時期——年1回いつ実施するか、パート・アルバイトの扱い
- 調査票と判定基準——57項目標準調査票か、高ストレス者の基準(判定基準の解説)
- 結果の通知と取り扱い——本人への通知方法、会社は同意なく見られないこと、保存の場所・担当・期間(5年)
- 高ストレス者への対応——申出の窓口、勧奨の方法、面接指導の実施体制と期限(おおむね1ヶ月以内)
- 集団分析と職場環境改善——実施する場合の単位・活用方法(努力義務)
- 不利益取扱いの禁止・周知方法——受検しないこと・申出したことを理由とする不利益禁止の明記
項目数は多く見えますが、大半はひな形の文面をほぼそのまま使えます。会社ごとに「決め」が必要なのは、次の2つです。
揉めるのはここ——「誰が見る・どこに保存・誰が保存」

【筆者の現場から】規程づくりで会社が一番頭を悩ませるのは、間違いなく情報の取り扱いです。結果データを誰が見られるのか、どこに保存するのか、誰が保存を担当するのか——意外なほどここで止まります。しかも、ストレスチェック事業者に委託していても、事業者側から「そこは御社はどうしますか?」と聞かれるのです。「じゃあ、それ誰が本当に決めるの?」で宙に浮いたまま、なかなか決まらない——この光景を何度も見てきました。委託は実務を肩代わりしてくれますが、「決め」だけは会社に残る。ここを知っておくだけで、規程づくりの心構えが変わります。
決め方の指針はシンプルです。
- 見られる人は最小限に——個人結果に触れるのは実施者と実施事務従事者だけ。人事権を持つ人(役員・人事部長など)は実施事務従事者になれません
- 保存は「本人同意なく会社が開けない場所」に——委託先システム内での保存、またはアクセス制限をかけた保管。保存期間は5年が目安
- 担当者名ではなく「役割」で書く——「実施事務従事者(総務課の担当者のうち人事権を持たない者)」のように書けば、異動のたびに規程改定が要りません
作り方の現実解——叩き台は外部からもらう

【筆者の現場から】「規程は誰が作るんですか?」への私の答えは、「外部委託しているなら、委託先や実施者の先生に叩き台をお願いするのが一つの手」です。ゼロから社内で起案するより、実務を知っている側が作った叩き台をもらい、そこから「会社としてどう運用するか」を決めていくほうが早く、抜けもありません。そしてもう一つ大事なのは——めちゃくちゃ複雑にしたり、特別なルールを作る必要はないということ。凝った独自制度より、一般的な内容を正しく、大きな失敗なく運用することのほうがずっと価値があります。
流れとしては: ①委託先・実施者から叩き台をもらう → ②「情報の取り扱い」と「面接指導の段取り」の2点を社内で決める → ③衛生委員会等で審議 → ④規程として確定し、従業員に周知。委託先を選ぶ段階で「規程の叩き台までサポートしてもらえるか」を確認しておくと、この流れが最初から敷けます(委託先の選び方)。
面接指導の段取りは「先延ばしできない座組」で書く

規程の中で、情報の取り扱いと並んで悩ましいのが「高ストレス者が出たとき、面接指導をどう実施するか」です。高ストレス者から申出があったら、おおむね1ヶ月以内に医師による面接指導を実施する必要があります。この期限があるため、規程には「申出が来てから考える」ではなく、先延ばしが起きない座組——申出窓口・担当医師(または外部委託先)・実施方法(オンライン可)——をあらかじめ書き込んでおくことが重要です。
産業医がいない50人未満の会社は、外部の医師へのスポット依頼を受け皿として規程に位置づけておけば、「医師がいないから止まる」を制度的に防げます。2028年4月の義務化に向けた準備全体は義務化準備ガイドをご覧ください。
作ったら終わりではない——審議と「大丈夫だよ」の周知
規程が固まったら、衛生委員会等での審議を経て、従業員に周知します。このとき、規程の条文を配るだけでなく、「秘密は守られる」「受けても不利益はない」ことを、担当者の言葉で伝えてください。ルールの中身と同じくらい、「このルールであなたは守られている」と従業員に伝わることが、受検率と申出率を左右します(受検率を上げる実務)。規程は作文ではなく、従業員との信頼の約束——ここまでやって、初めて機能します。
まとめ:ひな形+叩き台で作り、「決め」は2点に絞る
- 規程はゼロから書かない。厚労省のひな形+委託先・実施者の叩き台をベースにする
- 会社が本当に決めるのは「情報の取り扱い(誰が見る・どこに誰が保存)」と「面接指導の段取り」の2点。委託しても「決め」は会社に残る
- 複雑にしない・特別ルールは不要。一般的な内容を正しく、大きな失敗なく運用する
- 面接指導は「申出から1ヶ月以内」。先延ばしが起きない座組(窓口・医師・方法)を規程に書き込む
- 衛生委員会等での審議を忘れない。周知は条文配布でなく「秘密は守られる」を伝えるところまで
一次情報は厚生労働省(ストレスチェック制度実施マニュアル・実施規程例、小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル)で確認できます。より詳しい実務は、代表産業医・角田拓実の著書『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社/紹介記事)でも解説しています。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェック義務化はいつから?50人未満は2028年4月1日から|準備ガイド
- ストレスチェックの外部委託先の選び方|失敗例と5つの比較ポイント
- 高ストレス者の判定基準とは?何点から・割合の目安を産業医が解説
よくある質問
Q. 規程のひな形はどこで手に入りますか?
厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」に実施規程例が付属しており、無料で利用できます。2026年2月には50人未満向けの「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」も公表されています。外部委託している場合は、委託先や実施者から自社向けの叩き台をもらうのが実務的です。
Q. 50人未満で衛生委員会がない場合、審議はどうすればいいですか?
衛生委員会の設置義務がない50人未満の事業場では、関係労働者の意見を聴く機会(安全衛生懇談会や社内ミーティングなど)を活用して実施方法を決め、その内容を記録に残したうえで従業員に周知します。「決めた経緯の記録」と「周知」がポイントです。
Q. 結果のデータは誰が保存すればいいですか?
個人結果は本人の同意なく会社が見られない情報のため、実施者または実施事務従事者の管理下で、アクセス制限のある形で保存します(保存期間は5年が目安)。外部委託している場合は委託先システム内で保存するのが一般的です。人事権を持つ人は実施事務従事者になれない点に注意してください。
Q. 一度作った規程は毎年見直すべきですか?
毎年の全面改定は不要ですが、実施時期の変更・委託先の変更・組織変更(担当部署の変更)・法改正(2028年の50人未満義務化など)のタイミングでは見直しと再審議が必要です。担当者名ではなく役割で書いておくと、異動のたびの改定を避けられます。
「高ストレス者って、何点から該当するの?」——結論から言うと、厚生労働省が示す標準的な数値基準(57項目の調査票・合計点数方式)では、①心身のストレス反応(B領域)が77点以上、または②仕事のストレス要因(A)+周囲のサポート(C)の合計が76点以上かつBが63点以上のいずれかで高ストレス者と判定されます。目安は受検者のおおむね10%。ただしこの基準は「国が全社一律に決めたもの」ではなく、各社が実施者の意見を聴いて自社で決めるものです。この記事では、数値基準の中身・2つの判定方式の違い・割合の考え方・会社としての決め方を、現役産業医が整理します。
判定基準は「国が決める」のではなく「会社が決める」
意外に知られていませんが、高ストレス者の判定基準は法律で一律に固定されているわけではありません。しくみとしては、実施者(医師・保健師など)の提案・意見を踏まえ、衛生委員会等で調査審議したうえで、事業者が決定し、社内規程に明記する——という流れです(50人未満で衛生委員会がない事業場は、関係労働者の意見を聴く場を活用します)。
とはいえ、ゼロから独自基準を作る必要はありません。厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」が標準的な数値基準を示しており、実務ではこの標準基準をそのまま採用するのが一般的です。実施者のしくみはストレスチェックの実施者とは(保健師も担当できる)で解説しています。
標準の数値基準——合計点数方式(何点から高ストレスか)
標準の「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」は、3つの領域で構成されます。各設問は1〜4点の4段階です(点数が高いほどストレスが高い向きで集計)。
| 領域 | 内容 | 設問数 | 最高点 |
|---|---|---|---|
| A | 仕事のストレス要因(仕事量・裁量・人間関係など) | 17問 | 68点 |
| B | 心身のストレス反応(イライラ・疲労感・不安・抑うつ・身体愁訴など) | 29問 | 116点 |
| C | 周囲のサポート(上司・同僚・家族) | 9問 | 36点 |
このうち、高ストレス者と判定されるのは次のいずれかに該当する場合です。
- 基準①: B領域(心身のストレス反応)の合計が77点以上——すでに心身に反応が出ている人
- 基準②: A領域+C領域の合計が76点以上(最高104点)、かつB領域が63点以上——ストレス要因が強く支えが乏しいうえに、反応も出始めている人
ポイントは、基準②の存在です。「まだ症状は基準①ほどではないが、置かれた環境が厳しい人」を先回りで拾う設計になっています。症状が完成してからではなく、環境要因の段階で網にかける——予防の思想が入った基準です。
素点換算表方式——より精密だが「点数の向きが逆」に注意
マニュアルにはもう一つ、素点換算表を使う方法が示されています。尺度ごとの素点を5段階の評価点に換算して判定する方式で、性別による感じ方の差などを補正できるため、より精密な判定ができます。この方式では「B領域の評価点合計が12点以下」または「A+Cの評価点合計が26点以下かつBが17点以下」が高ストレスの目安です。
高ストレス者の割合は「約10%」——なぜ10%なのか
標準基準は、高ストレス者が受検者のおおむね10%程度になるよう設計されています。「うちは12%だった。多すぎるのでは?」と心配される担当者もいますが、業種・職場環境・その年の繁忙で数%の振れは普通にあります。逆に大きく外れる場合(20%超・3%未満など)は、職場環境そのものか、回答のされ方(正直に答えられていない可能性)を疑うサインです。受検率や回答の質の上げ方は受検率を上げる実務ポイントをご覧ください。
【筆者の現場から】「10%」という数字の意味を、面談する側から補足します。高ストレス判定された方が全員メンタル不調というわけではありません。実際に面接指導でお会いする方の主訴は「ストレスと一度向き合いたかった」「話を聞いてほしかった」という比較的軽いものが多く、本当に危ない状態の方は面談に来る方の10〜20人に1人ほどです。つまり判定基準は「病気の人を探す網」ではなく、「危ない1人を確実に拾うために、少し広めに張った網」。10%が多く感じられても、それは設計どおりです。
基準を自社で動かしてもいいのか——実務の答え
制度上、衛生委員会等の審議を経れば基準の調整は可能です。ただし実務の答えはシンプルで、「迷ったら標準基準のまま」です。
- 基準を緩める(該当者を減らす)と——拾うべき人を拾えなくなる。もし漏れた人が後に不調で倒れれば、「基準を意図的に狭めていた」ことが安全配慮義務の観点で会社に不利に働きかねません
- 基準を厳しくする(該当者を増やす)と——面接指導の対象候補が増え、医師の面談体制が追いつかなくなる。体制が回らない基準は絵に描いた餅です
標準基準は「拾い漏れの少なさ」と「運用可能な人数」のバランスで設計されています。変えるなら、実施者(医師・保健師)と相談のうえ、理由を衛生委員会の記録に残してからにしてください。
判定された後の流れ——基準決めとセットで考える
判定基準を決めることは、ゴールではなく入口です。高ストレスと判定された人には結果が通知され、本人が申し出れば医師による面接指導につながります(全体像は面接指導の完全ガイド)。実務では申出率が低いため申出の勧奨のしくみが重要で、そして申出が来たときに面接指導を行う医師が確保されているかが最後の関門になります。10%の高ストレス者のうち誰かが手を挙げたとき、動ける体制——基準の議論は、そこまでセットで初めて意味を持ちます。
まとめ
- 標準基準(合計点数方式)は「B領域77点以上」または「A+C 76点以上かつB 63点以上」のいずれか
- 素点換算表方式はより精密だが点数の向きが逆(低いほど悪い)。自社の方式は委託先・実施者に確認
- 高ストレス者は受検者の約10%になる設計。多少の振れは正常、大きな外れは職場環境か回答の質のサイン
- 基準は衛生委員会等の審議を経て会社が決める。迷ったら標準のまま——緩めるのはリスク、厳しくするのは体制が持たない
- 基準決めの先にある「申出→医師の面接指導」の体制までセットで設計する
一次情報は厚生労働省「数値基準に基づいて高ストレス者を選定する方法(実施マニュアルの解説)」(PDF)および厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルで確認できます。より詳しい実務は、代表産業医・角田拓実の著書『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社/紹介記事)でも解説しています。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェックの面談で何を話す?聞かれること・当日の流れを産業医が解説
- 高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務
- ストレスチェックの実施者とは?保健師も担当できる理由と要件
- ストレスチェック実施規程の作り方|必須項目と決め方を産業医が解説
- ストレスチェックでうつ病と診断される?精神科受診との違いを保健師が解説
よくある質問
Q. 高ストレス者は何点から該当しますか?
標準の合計点数方式では、①心身のストレス反応(B領域・29問)の合計が77点以上、または②仕事のストレス要因(A)と周囲のサポート(C)の合計が76点以上かつBが63点以上、のいずれかに該当すると高ストレス者と判定されます。素点換算表方式を採用している場合は基準値が異なり、点数の向きも逆(低いほど悪い)です。
Q. 高ストレス者の割合はどのくらいが普通ですか?
標準基準は受検者のおおむね10%が該当するよう設計されています。業種や繁忙状況により数%の振れは正常範囲です。20%を超える・3%を下回るなど大きく外れる場合は、職場環境の問題か、従業員が正直に回答できていない可能性(匿名性への不信など)を確認するサインです。
Q. 判定基準は会社ごとに変えてもいいのですか?
可能です。実施者の意見を踏まえ、衛生委員会等で調査審議したうえで事業者が決定し、社内規程に明記します。ただし実務では標準基準をそのまま採用するのが一般的で、基準を緩めることは拾い漏れのリスク、厳しくすることは面談体制の負荷につながるため、変更する場合は理由を記録に残すことをおすすめします。
Q. 高ストレスと判定されたことは会社に知られますか?
知られません。ストレスチェックの結果(高ストレス判定を含む)は本人に直接通知され、本人の同意なく会社に提供されることはありません。会社が知るのは、本人が面接指導を申し出た場合など、本人の意思に基づく場面に限られます。
ストレスチェックを実施して、高ストレス者が何人か出た。結果のリストは手元にある。でも——そこから何もできていない。「申出も来ないし、こちらから動くべきなのか」「面接指導を頼む医師もいないし」。この「結果は出たが、動けていない」状態こそ、ストレスチェック制度でいちばん危険な状態です。結論から言うと、高ストレス者の放置には罰則の有無とは関係なく、会社が逃げられないリスクが3方向(法律・お金・人)にあります。この記事では、放置が起きる典型パターンと、今日から打てる手を現役産業医が解説します。
「放置」はどう起きるか——よくある3つのパターン

高ストレス者の放置は、担当者の怠慢で起きるのではありません。実際には、体制の穴から自然に発生します。よくあるのは次の3パターンです。
- ①申出が来たのに、頼む医師がいない——面接指導を行えるのは医師だけ。産業医のいない50人未満の会社や、顧問産業医が面談まで手が回らない会社で、申出が「塩漬け」になる
- ②高ストレス者に勧奨せず、結果を寝かせている——会社は本人の同意なく個人結果を見られないため、「こちらからは何もできない」と思い込み、実施者からの勧奨のしくみも作らないまま時間が過ぎる
- ③「高ストレス者が出た後」の段取りをそもそも決めていない——チェックの実施だけ委託して、申出の受付窓口・面接指導の手配・就業措置の流れが白紙のまま
【筆者の現場から】ご相談を受けていて多いのは、まさに①です。「申出が来てしまったんですが、誰に頼めばいいですか」——申出には「おおむね1ヶ月以内に実施」という目安があるので、ここから医師を探し始めると時間との勝負になります。地域産業保健センター(無料)の予約が埋まっていて間に合わない、というご相談も珍しくありません。放置は「サボり」ではなく、受け皿を決めていなかったことの結果として起きるのです。
法的リスク——罰則がなくても、逃げ場はない

「面接指導をやらなくても罰則はないんでしょう?」——半分正しくて、半分危険な理解です。整理します。
- 面接指導は法律上の義務——高ストレス者から申出があった場合、医師による面接指導の実施は労働安全衛生法第66条の10に定められた事業者の義務です。直接の罰則がないことと、義務でないことは別の話です
- 不利益取扱いの禁止——申出をしたことを理由とする解雇・減給・不当な配置転換などは法律で明確に禁止されています。「申出してきた人」への対応を誤ると、それ自体が違法になります
- 安全配慮義務(労働契約法第5条)——ここが本丸——会社は労働者の心身の健康に配慮する義務を負っています。「高ストレスという結果を把握できる立場にありながら、対応のしくみを整えず放置した」という事実は、その後メンタルヘルス不調が深刻化した場合、損害賠償請求や労災の場面で会社に不利に働きます
つまり、罰金がないことは「リスクがない」ことを意味しません。リスクは「その時」ではなく、誰かが本当に倒れた「後」にまとめて請求される——これが安全配慮義務の怖さです。罰則の正確な整理はストレスチェック義務化の解説記事でも詳しく書いています。
医学的リスク——放置が見逃す「1割」

【筆者の現場から】面接指導を行っている実感として、9割ほどの方は「面談を実施して、通常勤務で大丈夫」で完了します。だから「どうせ大ごとにならない」と思われがちなのですが——残りの1割ほどは、医療機関への受診や継続的なフォローが必要な方です。そして本当に状態の悪い方は、待てません。「予約が1ヶ月先」では間に合わないことがあるのです。放置とは、この1割を見逃すこと。面接指導の最大の価値は、通常どおり働ける9割に安心してもらうことではなく、手当てが要る1割を確実に拾い上げることにあります。
メンタルヘルス不調は、早く手を打つほど軽く済みます。高ストレスの段階で働き方を少し調整すれば済んだはずの人が、放置の末に長期休職に至る——本人にとって不幸であるだけでなく、会社にとっても、給与補填・代替要員・復職支援まで含めれば、面接指導の費用(1件1.5万〜3万円)の何十倍ものコストになります。「安く済ませた」つもりの放置が、いちばん高くつくのです。
「申出がなければ放置でいい」わけでもない

「面接指導は本人の申出が要件。申出が来ないなら、うちは何もしなくていいのでは?」——これも半分だけ正しい理解です。たしかに面接指導の実施義務は申出が起点です。しかし実務では、高ストレス者の申出率は決して高くありません。「言い出しにくい」「受けたら不利になりそう」と本人がためらうからです。だからこそ、実施者(医師・保健師)からの申出の勧奨というしくみが用意されています。勧奨のしくみを作らず「申出ゼロ」を放置の言い訳にしていると、②のパターン(結果を寝かせる)に陥ります。勧奨の具体的な進め方は高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務で詳しく解説しています。
今日からできる3つの手

- 申出・勧奨の流れを決める——申出の窓口(誰に・どうやって)を明確にし、実施者からの勧奨をしくみに組み込む。紙1枚の社内フローで十分です
- 面接指導の受け皿を確保する——申出が来てから医師を探すのでは遅い。産業医がいない会社は、外部の医師へのスポット依頼先を「事前に」決めておく(医師がいないときの外部委託の解説・委託先の選び方)
- 「申出から1ヶ月以内」を全員が知っておく——期限の存在を担当者・上司が知っているだけで、塩漬けは大幅に減ります。間に合わないときはオンラインの外部委託でリカバリーできます(最短3営業日)
まとめ:放置は「何もしていない」ではなく「リスクを積んでいる」
- 放置は体制の穴(医師がいない・勧奨がない・段取り未定)から自然に起きる。担当者の怠慢ではない——だから、しくみで防ぐ
- 法的リスクの本丸は罰則ではなく安全配慮義務。「知りながら対応しなかった」事実は、不調が深刻化した後に重くのしかかる
- 9割は面談で完了する。しかし放置は、受診・フォローが必要な「1割」を見逃す。本当に悪い人は待てない
- 長期休職1人のコストは、面接指導1件(1.5万〜3万円)の何十倍。放置がいちばん高くつく
- 打つ手は3つ——申出・勧奨の流れ/面接指導の受け皿/期限の共有。すべて今日から動ける
一次情報は厚生労働省(ストレスチェック制度導入マニュアル)やe-Gov法令検索(労働安全衛生法第66条の10、労働契約法第5条)で確認できます。より詳しい実務は、代表産業医・角田拓実の著書『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社/紹介記事)でも解説しています。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- 高ストレス者が面接指導を申し出ないときの対応と勧奨の実務
- ストレスチェック面接指導の医師がいない|外部委託・スポット依頼を解説
- 高ストレス者の判定基準とは?何点から・割合の目安を産業医が解説
よくある質問
Q. 面接指導を実施しないと罰則はありますか?
面接指導を実施しないこと自体への直接の罰則は設けられていません。ただし、申出があった場合の実施は労働安全衛生法上の義務であり、放置したままメンタルヘルス不調が深刻化した場合には、安全配慮義務違反として損害賠償を問われるリスクがあります。罰則の有無とリスクの有無は別の問題です。
Q. 本人から申出がなければ、会社は何もしなくていいですか?
面接指導の実施義務は申出が起点ですが、高ストレス者の申出率は実務では高くありません。実施者(医師・保健師)からの申出の勧奨をしくみに組み込むことが推奨されており、勧奨のしくみを作らずに「申出がないから」と結果を寝かせるのは、実質的な放置です。不調が深刻化すれば安全配慮義務の観点で会社に不利に働きます。
Q. 会社は個人の結果を見られないのに、どう対応すればいいのですか?
会社がやるべきは「個人の結果を把握すること」ではなく、「高ストレス者が動ける環境を整えること」です。具体的には、申出の窓口を明確にする、実施者からの勧奨をしくみ化する、申出が来たときの面接指導の受け皿(医師)を事前に決めておく——この3点です。個人結果が見えなくても、体制は作れます。
Q. 申出が来てしまったのに医師がいません。どのくらい急ぐべきですか?
申出からおおむね1ヶ月以内の実施が目安とされています。産業医がいなくても、外部の医師にスポット(単発)で依頼すれば義務を果たせます。オンライン対応の委託先なら最短数営業日で実施できるため、今からでも十分間に合います。
「高ストレス者への面接指導、オンラインでやってもいいのだろうか」——結論から言うと、要件を満たせばオンライン(テレビ電話等)での実施が認められています。ただし、電話(音声のみ)は不可です。私自身、ストレスチェックの面接指導は基本オンラインで実施していますが、進め方も質も対面と変わりません。むしろ、全国の拠点や在宅勤務者に対応でき、日程が早く組める分、「申出からおおむね1ヶ月以内」という期限に間に合わせやすいのがオンラインの強みです。この記事では、厚生労働省通達の要件と、会社側の準備、当日の実際をまとめます。
オンライン面接指導は認められている——ただし電話はNG

面接指導(労働安全衛生法第66条の10)は対面が原則とされてきましたが、厚生労働省の通達「情報通信機器を用いた医師による面接指導の実施について」により、要件を満たせばテレビ電話等のオンラインでの実施が認められています。テレワークの普及した現在では、オンライン実施はごく一般的になりました。
満たすべき要件——5つのポイント

通達で求められている要件を、実務の言葉に直すと次の5点です。
- 表情・顔色・声・しぐさを確認できる——映像と音声の品質が、医師が心身の状況を把握するのに十分であること
- 円滑に会話できる——常時双方向でやりとりでき、通信が安定していること
- セキュリティが確保されている——面談内容は機微な健康情報。第三者に閲覧・傍受されない仕組みであること
- 労働者が操作しやすい——複雑な機器操作を求めず、誰でも参加できること
- 緊急時に対応できる体制——症状が深刻で直接の対応が必要と判断された場合に、近隣の医療機関等と連携して速やかに対応できること
加えて、オンラインでの実施方法については、衛生委員会等で調査審議したうえで、あらかじめ労働者に周知しておくことが望ましいとされています(50人未満で衛生委員会がない事業場は、関係労働者の意見を聴く場を活用します)。また、面接指導を担当する医師は、その事業場の産業医であるか、日常的な健康管理の担当や職場巡視の経験など事業場の状況を把握している医師が望ましいとされています——外部の医師にスポットで依頼する場合は、事前に勤務状況・職場環境の情報をしっかり共有することで、ここを補うのが実務です。
当日の実際——オンラインでも、面談の中身は変わらない
【筆者の現場から】私はストレスチェックの面接指導を基本オンラインで行っていますが、進め方は対面とまったく同じです。時間は30分ほど。冒頭に「この面談の内容が会社に漏れることはない」というルール説明(口上)から入り、体調(睡眠・食欲)→仕事の状況→周囲のサポート、と順に伺って、最後に見立てと今後のことを一緒に整理します。画面越しでも表情や声のトーンは十分に分かりますし、「オンラインだから浅くなる」ということは、やり方さえ間違えなければありません。むしろ本人が自宅などリラックスできる場所から参加できる分、話しやすくなる方もいるというのが実感です。
面談で実際に何を聞かれるのか(本人向けの詳しい解説)はストレスチェックの面談で何を話す?聞かれること・当日の流れをご覧ください。対象の従業員の方に事前に共有しておくと、安心して面談に臨んでもらえます。
オンラインの実務メリット——「1ヶ月以内」に間に合う

オンライン実施の価値は「便利」だけではありません。実務で効くのは次の3点です。
- 場所を問わない——全国に点在する拠点、在宅勤務者、出張の多い社員にも同じ品質で対応できる。拠点ごとに医師を探す必要がない
- 日程が早く組める——医師・本人双方の移動が不要なため、日程調整の自由度が段違い。「申出からおおむね1ヶ月以内」という実施の目安に間に合わせやすい
- 本人の心理的ハードルが下がる——「会議室に呼ばれて面談」より、自席や自宅から参加するほうが申出しやすいという声は実際にあります
【筆者の現場から】スピード感の実例として、筆者の事務所では申出から最短3営業日以内に実施できる体制で運用しています。日程だけならご依頼当日に確定することもあり、実績ではご依頼の翌営業日に実施したケースもあります。これはオンラインだからこそ出せるスピードです。地域産業保健センターの予約が埋まっていて期限に間に合わない——という場面でも、オンラインの外部委託なら十分にリカバリーできます。
会社側の準備チェックリスト

- 静かな個室を確保する——社内から参加する場合、周囲に会話が聞こえない場所を。プライバシー確保はオンラインでも最優先です(自宅からの参加も問題ありません)
- 機器と接続の事前テスト——カメラ・マイク・回線を面談前に確認。当日のトラブルは限られた面談時間を削ります
- 資料の事前共有——ストレスチェック結果票・勤務状況などを医師へ事前に送付。医師が状況を把握したうえで面談に臨めるため、30分を本題に使えます
- 実施方法の審議・周知——オンラインで実施することを衛生委員会等で審議し、従業員に周知しておく
対面が必要になるケース——「二段構え」で備える

オンラインで面談した結果、症状が深刻で直接の診察や対応が必要と医師が判断した場合は、対面での対応や医療機関への受診につなぎます。これが要件にある「緊急時の対応体制」の意味です。実務では、面談を行う医師が受診勧奨まで含めてフォローの方針を示してくれるか——つまり「面談やって終了」ではない委託先かが、ここでも効いてきます(委託先の見極め方は外部委託先の選び方で解説しています)。
まとめ:オンラインは「手抜き」ではなく「速い正攻法」
- 面接指導はテレビ電話等のオンラインで実施可能。電話(音声のみ)は不可
- 要件は5つ——表情等の確認・円滑な会話・セキュリティ・操作性・緊急時対応体制。実施方法は衛生委員会等で審議し周知が望ましい
- 面談の中身は対面と同じ(約30分)。会社の準備は個室・機器テスト・資料の事前共有でほぼ足りる
- オンラインの本当の価値はスピード——「申出から1ヶ月以内」に確実に間に合わせられる
- 深刻なケースは対面・受診につなぐ二段構え。そこまで見てくれる医師・委託先を選ぶ
一次情報は厚生労働省(情報通信機器を用いた医師による面接指導の実施についての通達、小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル)やこころの耳(面接指導の解説)で確認できます。より詳しい実務は、代表産業医・角田拓実の著書『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社/紹介記事)でも解説しています。
あわせて読みたい:ストレスチェックの面接指導と運用
ストレスチェックの面接指導や実施・運用について、あわせてご覧ください。
- ストレスチェック面接指導の完全ガイド|義務・流れ・就業措置
- ストレスチェック面接指導の医師がいない|外部委託・スポット依頼を解説
- ストレスチェック面接指導の費用相場|スポット外部委託は1件1.5万〜3万円
- ストレスチェックの面談で何を話す?聞かれること・当日の流れを産業医が解説
よくある質問
Q. 面接指導は電話でもいいですか?
電話(音声のみ)での面接指導は認められていません。医師が表情・顔色・しぐさなどを確認できることが必要なため、映像と音声を双方向でやりとりできるテレビ電話等を使用してください。
Q. 従業員が自宅から面談を受けてもいいですか?
問題ありません。在宅勤務者はもちろん、プライバシーが確保できる場所であれば自宅からの参加はむしろ話しやすいという方もいます。社内から参加する場合は、周囲に会話が聞こえない個室を用意してください。
Q. 使用するツールに指定はありますか?
特定のツールの指定はありませんが、映像・音声の品質、セキュリティ、労働者が操作しやすいことが要件です。一般的なWeb会議ツールで要件を満たせます。面談内容は機微な健康情報のため、第三者が閲覧・傍受できない設定(パスワード付き会議室など)で実施してください。
Q. オンラインで対応できない場合はありますか?
症状が深刻で、直接の診察や緊急の対応が必要と医師が判断した場合は、対面での対応や医療機関への受診につなぎます。オンライン面接指導では、こうした場合に速やかに対応できる体制(近隣の医療機関等との連携)を整えておくことが要件とされています。
