「労働基準監督署の調査で、産業医を選任していないと指摘されました。期日までに見つかるでしょうか」——指導票や是正勧告書を手に、急いで相談してくる会社は、実際にあります。
先に結論です。やることは「医師を探す → 契約する → 選任報告を出す → 是正報告書を出す」の4つで、この順に進めます。法令の期限は、産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内(労働安全衛生規則第13条第1項第1号)。是正勧告書や指導票には、監督署が定めた期日が書かれているので、まずその日付を確かめます。急いでいても、訪問の頻度・支援の中身・面談が料金に含まれるか・面談になったときの対応の4つは確かめてから決めてください。間に合わないときは、まず契約して産業医に指摘された内容をできることから始め、その後に選任する順番もあります。
私は名古屋で産業医をしている角田拓実です。監督署に指摘されて急いで探す会社は「まさに産業医難民」で、何度もご相談を受けてきました。この記事では、指摘された日から期日までに何をどの順でやるか、急ぐときに失敗しない確かめ方を書きます。
労基署に何を言われたのか?——是正勧告書と指導票の違い、期日の読み方

最初に確かめるのは、何を指摘されたのかと、これまで何をしてきたのかです。監督署から渡される書類は、おもに2種類あります。
| 書類 | 意味 | 会社がすること |
|---|---|---|
| 是正勧告書 | 法令違反があると判断されたときに交付される。違反の中身と是正の期日が書かれている | 期日までに直し、是正報告書を出す |
| 指導票 | 法令違反とまでは言えないが、改善したほうがよい点があるときに交付される | 書かれた期日までに改善し、報告する |
常時50人以上の労働者を使う事業場で産業医を選任していない状態は、労働安全衛生法第13条第1項の違反です。この条文の違反には、50万円以下の罰金が定められています(同法第120条第1号)。是正勧告そのものは行政指導で、無視しただけで直ちに罰せられるわけではありません。ただ、未選任の状態が続けば、再度の調査や、より重い対応につながります。罰則の中身は産業医を選任しないと罰則50万円?未選任・名義貸しのリスクに詳しく書いています。
監督署は、産業医だけを見ているわけではありません。衛生管理者の選任、衛生委員会、健康診断の事後措置、長時間労働の面接指導も、あわせて確認されます。指摘された項目をすべて書き出してから、期日の近いものから手を付けてください。
期日から逆算した手順——14日以内の選任、選任報告は電子申請


法令上の期限は、産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内です(労働安全衛生規則第13条第1項第1号)。常時50人以上になった日や、前の産業医が辞めた日が、その「事由が発生した日」にあたります。監督署の期日とこの14日の両方を見て、次の順に進めます。
- 指摘の中身と期日を確かめる: 是正勧告書・指導票の写しを手元に置き、産業医に関する項目と期日を書き出す
- 人数と「事由が発生した日」を確かめる: 常時50人の数え方と、いつから選任義務があったのかを整理する(産業医の選任義務とは?50人の数え方・14日の期限)
- 医師を探して契約する: 探し方は5つのルートがある(産業医の探し方と選び方)。急ぐときは、連絡から契約までの速さも頼み先を選ぶ基準になる
- 選任報告を出す: 選任したら遅滞なく、所轄の労働基準監督署長へ電子申請で報告する(同規則第13条第2項)。書き方は産業医の選任報告(選任届)の書き方|様式第3号の記入例・電子申請の手順
- 是正報告書を出す: 違反していた項目、直した内容、直した日を書き、期日までに提出する。都道府県労働局が様式を公開している
14日以内でできるなら、それが一番です。ただ、医師を探すにも、条件を比べるにも、調べることがあります。期日に追われて条件を見ずに決めるより、優先順位を決めて順に進めるほうが、結果として早く片づきます。
間に合わないときは?——まず契約して産業医にできることから、その後に選任する順番


指摘を受ける会社には、健康診断で所見のある社員や、残業の多い社員がいて、すぐに就業判定や面接指導が必要なことが少なくありません。産業医を探すにしても、その判断は待ってくれません。そこで、まず産業医を紹介する企業と契約して、内部の産業医がチェックし、できることから始め、その後に選任報告を出す、という順番もあります。
- 健康診断の所見がある社員の就業判定を、先に産業医に見てもらう(就業制限とは?中身と強制力、会社の対応)
- 月80時間を超える残業の社員がいれば、面接指導を先に組む
- 衛生委員会がまだなら、産業医が決まった時点で設置と初回の日程を決める
- 並行して、顧問として選任するかどうかを決め、選任報告を出す
1件から頼める形は産業医のスポット契約とは?面談の費用相場・頼める業務・最短当日で依頼する方法にまとめています。サンポチャートでは、スポットは1件3万円(税別・意見書込み)で、資料がそろえば最短3営業日でお受けしています。長時間労働の面接指導を外部の医師に頼む手順は、長時間労働の面接指導を外部に頼むには?に書いています。
期日に間に合わせるために、名前だけ借りて選任報告を出す「名義貸し」はしないでください。実際に職務を行わない産業医の選任は、未選任と同じ扱いになり、会社の責任が重くなります。
急いで決めて失敗しないために——契約前に確かめる4つ


急いで情報を集めずに、言われるがままに契約して、訪問の頻度などの自社のニーズをつかめないまま決めてしまった——そういう会社は、実際にあります。急ぐときほど、次の4つだけは確かめてください。
| 確かめること | 聞き方 |
|---|---|
| どのくらいの頻度で来てくれるか | 「毎月ですか、隔月ですか。訪問1回は何時間ですか」 |
| 何を支援してくれるか | 「職場巡視・衛生委員会・健診の就業判定・面談のうち、どれが含まれますか」 |
| 面談は料金に含まれるか | 「休職・復職の面談や長時間労働の面接指導は、顧問料の中ですか、別料金ですか」 |
| 面談になったら、どう対応する先生か | 「社員が不調になったとき、訪問日以外でも相談できますか。意見書はどこまで書いてもらえますか」 |
料金だけで比べると、この4つが抜けます。相場と「金額で決めない選び方」は産業医の費用・報酬相場|月3万円〜の実態と金額で決めない選び方、紹介会社を使うときの比べ方は産業医紹介会社の比較|手数料の割合・切り替えの縛り・連絡の速さにあります。前の先生が辞めて後任を探す場面での確かめ方は、産業医に辞めると言われたら?にあります。
よくある質問
Q1. 産業医の未選任には罰則がありますか?
あります。常時50人以上の事業場で産業医を選任しないことは労働安全衛生法第13条第1項の違反で、50万円以下の罰金の対象です(同法第120条第1号)。是正勧告は行政指導ですが、放置すれば再度の調査や、より重い対応につながります。
Q2. 是正の期日までに医師が見つからないときは?
進めている状況を、期日の前に監督署へ伝えてください。並行して、まず産業医を紹介する会社と契約し、就業判定や面接指導など急ぐ仕事から始めることができる場合があります。名前だけ借りて報告を出すことはしないでください。
Q3. 指導票なら、対応しなくてもよいですか?
対応してください。指導票は「違反とまでは言えないが改善が必要」という書類で、書かれた期日までに改善と報告が求められます。産業医に関する指摘なら、選任の義務そのものは法令で決まっています。
Q4. 従業員50人未満でも、産業医のことを言われますか?
50人未満の事業場に選任の義務はありません。ただ、医師などに労働者の健康管理の全部または一部を行わせるよう努める義務があり(労働安全衛生法第13条の2)、健康診断の事後措置や長時間労働の面接指導は人数にかかわらず必要です。地域産業保健センターやスポットの産業医で対応できます。
Q5. 選任報告は、どこにどう出しますか?
選任したら遅滞なく、所轄の労働基準監督署長へ、電子申請で報告します(労働安全衛生規則第13条第2項)。産業医の氏名、選任年月日、資格の区分、専属かどうかなどを書きます。是正報告書は別の書類なので、両方を出します。
まとめ
- 最初に、何を指摘されたか(是正勧告書か指導票か)と、期日を確かめる
- 順番は「探す → 契約 → 選任報告(電子申請) → 是正報告書」。法令の期限は14日以内
- 急ぐ就業判定や面接指導があれば、まず契約して産業医にできることから始め、その後に選任する順番もある
- 急いでも確かめるのは4つ——訪問の頻度・支援の中身・面談は料金に含まれるか・面談のときの対応
- 名義貸しはしない。未選任と同じ扱いになる
出典: 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)第13条・第13条の2・第120条、労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)第13条。










