「産業医の紹介会社を比べたくて調べたら、どの比較記事も書いている会社が1位でした。結局、紹介会社に何のお金を払っていて、医師と直接契約するのと何が違うんですか」——産業医を探している人事の方から、よくいただく質問です。
先に結論です。紹介会社の月額は「医師の報酬」と「紹介会社の取り分」でできていて、取り分は私の見てきた範囲では多くが30〜70%です。最初に払う紹介料は無料のところから月額の数か月分・10万円前後まで、会社によってばらばらです。比べるときは料金表の安さだけでなく、①直接契約への切り替えの縛り、②急ぎの相談が医師に届くまでの日数、③規約でどこまで融通がきくかを必ず確かめてください。
私は名古屋で産業医をしている角田拓実です。紹介会社に登録して企業を担当する立場と、企業から直接頼まれる立場の両方で仕事をしています。紹介会社はサービスとしてよくできている部分も多く、使うこと自体は悪いことではありません。この記事では、両方の側から見える「お金の流れ」と「使ってから困る点」、そして選ぶときに聞く質問をまとめます。
産業医紹介会社の手数料はいくら?——月額の30〜70%が紹介会社の取り分

紹介会社に払う月額は、そのまま産業医に渡っているわけではありません。紹介会社のいろいろなサービスの中の一部として、産業医に報酬が支払われているというのが実情です。産業医は紹介会社に手数料を払っていませんが、会社が払うお金のうち、かなり大きな部分が紹介会社の取り分になっています。
| 項目 | 中身 | 幅(角田の実感・社名は伏せる) |
|---|---|---|
| 月額 | 医師の報酬+紹介会社の取り分(事務・連絡の取り次ぎ・書類の支援など) | 取り分は月額の30〜70%が多い |
| 紹介料(初期費用) | 医師が決まったときに1回払う | 無料〜月額の1〜3か月分、または10万円前後。会社によってばらばら |
| 医師の交代 | 合わなかったときの再紹介 | 無料の会社も有料の会社もある(契約前に確認) |
産業医の報酬そのものの相場(月3万円〜、訪問の回数でどう変わるか)は産業医の報酬相場にまとめています。
紹介会社経由と直接契約、何が違う?——料金・縛り・連絡の速さ・融通・探す手間の5つで比べる

紹介会社経由にするか、医師(産業医事務所)と直接契約するかで、変わるのは次の5つです。どちらが正解ということはなく、会社が何を重く見るかで選び方が変わります。
| 比べる点 | 紹介会社経由 | 医師と直接契約 |
|---|---|---|
| 料金 | 医師の報酬+紹介会社の取り分(30〜70%)。紹介料がかかることも | 医師の報酬だけ。紹介料なし |
| 契約の縛り | 紹介された医師と一定期間(例: 1年)直接契約しない条項があることが多い | 医師との契約書だけ |
| 急ぎの相談 | 担当者経由が原則。医師に届いて返ってくるまで数営業日かかることがある | 医師に直接連絡できる |
| 融通 | 規約で対応範囲が決まっている。決まっているので迷いにくい面もある | 医師と話して決められる |
| 探す手間 | 候補を出してもらえる。経歴書を見て選べる | 自分で探す。事前の情報集めが要る |
直接契約に切り替えられる?——「1年間は切り替え禁止」の条項と、損害賠償の可能性

紹介会社の契約には、紹介された医師と、会社が一定期間(例えば1年間)直接契約してはいけないという条項が入っていることがよくあります。これに反して直接契約に切り替えると、民法上の損害賠償を求められる可能性があります。具体的な条項の読み方は、顧問の弁護士に相談してください。
そして、産業医を1年間空けておくことは、ほとんどの会社でできません。従業員50人以上の事業場は、産業医を選任すべき事由が生じてから14日以内に選任する義務があるからです(労働安全衛生規則第13条)。つまり「今の医師とは続けたいが、紹介会社は外したい」は、事実上できないと考えておいてください。紹介会社を使うかどうかは、最初に決めるのがいちばん確実です。
医師そのものを変えたい場合の手順と時期は産業医を変えたいときの手順、契約書に入れておく条項は産業医契約書の書き方で解説しています。
現在の契約書にこうした条項があるかどうかは、乗り換えパックで無料で確認しています。料金と対応内容は6つのパックにまとめています。
使ってから困るのはどんなとき?——連絡の往復・医師の定着・規約の壁

紹介会社を使っている会社から「困っている」と相談を受けて、いちばん多いのが連絡の遅さです。紹介会社からは「医師への連絡は担当者を通してください」と言われることがよくあります。会社と医師が直接やりとりして親しくなり、頭越しに直接契約されると、紹介会社は売上がなくなるからです。仕組みとしては当然のことです。
ただ、担当者を通すと、やりとりが何往復にもなります。例えば次のような流れです。
- 会社から担当者へ相談する(1営業日)
- 担当者から医師へ伝わる(1営業日)
- 医師の返事が担当者へ戻る(1営業日)
- 担当者から会社へ届く(1営業日)
これで1往復に約4営業日です。メンタルヘルス不調のように急ぎで判断が要る場面で、「もう早く対応してほしい」と困って、私たちに相談に来られる会社が時々あります。
2つ目は医師が定着しにくいことです。取り分が大きいと、医師の側が気持ちの上で「取られすぎている」と感じて、早くやめてしまうことがあります。産業医が1〜2年で代わると、会社は職場や社員のことを一から説明し直すことになり、面談や復職の判断も続けて見てもらえません。候補の医師が長く続けている会社がどれくらいあるかも、聞いておくとよい点です。
3つ目は規約の壁です。紹介会社は大きな会社が多く、ルールが決まっています。会社が「こういう対応をしてほしい」と細かく頼んでも「そういうサービスはしていません」となることがあり、医師本人も「規約なのでできません」と答えるしかない場面があります。一方で、対応の手順(プロトコル)が決まっているぶん、会社も医師も迷いにくいという良さもあります。
紹介会社のよいところは?——候補から選べる・経歴書が見られる・医師の質は落ち着いてきた

- 何人かの候補から選べて、経歴書も見られる。自分で探すより早い
- 医師の質のばらつきは、かなり落ち着いてきた。以前は「アルバイトとして登録しただけ」という医師もいましたが、最近はしっかり取り組む医師が増えています
- 担当者は定期的に代わることが多いが、医師が同じで、担当者が一度に全部代わるのでなければ、大きな問題にはなりにくい
紹介会社を選ぶときに何を聞く?——見積もりの前に確かめる5つの質問

ランキングの順位より、次の5つの答えを並べたほうが、自社に合う紹介会社が分かります。聞きにくいことも、契約の前なら普通に聞いて大丈夫です。
- 月額のうち、医師の報酬はいくらですか(内訳を出せるか、産業医のモチベーション・コミット感)
- 紹介料はいくらで、医師が合わなかったときの交代の条件と費用は
- 直接契約への切り替えの制限(期間・違約金)はありますか
- 急ぎのとき、医師に直接連絡できますか。担当者経由なら、返事まで何営業日ですか
- 担当者の産業保健の知識(衛生管理者など)と、規約で決まっている対応の範囲は
候補の医師そのものを見極めるポイント(面談の経験、職場巡視の見方、意見書の書き方)は産業医の探し方と選び方にまとめています。
紹介会社を使わずに直接契約するには?——産業医のホームページと取引先の口コミで事前情報を集める

直接契約の探し方でよく挙がるのは医師会と健診機関ですが、どちらも注意が要ります。医師会の開業医の先生が、必ず時間を作って産業医ができるとは限りません。健診機関も、健診をする医師が産業医に活発に従事しているとは限りません。(医師会経由の詳しい話は医師会経由で探すメリットとデメリット)。
私が勧めているのは次の2つです。
- 産業医や産業医事務所のホームページを見る。どんな会社を担当し、何を大事にしているかが分かる
- 取引先に「いい産業医の先生はいますか」と聞く。実際に担当している会社の口コミがいちばん確か
大事なのは、事前に情報を集めてから決めることです。なんとなく決めると、会社が求めていることと、医師が考えていることがずれやすくなります。契約書や報酬の払い方については、最近は請求書払いが多く、医師の側で契約書のひな形を持っていることも多いので、それほど大変ではありません。複数の会社を担当している産業医事務所の先生なら、たいてい準備ができています。契約の形(業務委託・非常勤)は産業医の派遣は可能?で整理しています。
サンポチャートは何が違う?——医師と直接話せる・急ぎに対応できる

「現役産業医が運営するサンポチャート、何が違うの」と聞かれたら、正直に言うと大きくは変わりません。そのうえで、次の点は違うとお答えしています。
| サンポチャート | |
|---|---|
| 医師との連絡 | 担当の産業医と直接連絡して大丈夫です |
| 急ぎの対応 | 事務局は保健師(看護師)のような専門職も常駐、代表(角田)も産業医なので、急ぎの相談にその場で答えられます |
| 医師 | 労働衛生コンサルタント(国家資格)を持つ、または目指して研鑽しているレベルの産業医 |
| 範囲 | メンタルヘルスや労務の問題も押さえ、職場のトラブルへの対策まで一緒に考えます |
| 料金(税別) | 顧問料 月3万円〜+訪問1回5万円(毎月訪問で月8万円〜)。電話・メールの相談は顧問料に含みます |
| 得意・不得意 | 得意: 実地での職場支援、急ぎのスポット対応、保健師の訪問(レンタル産業保健室)、DX化。不得意: 型通りで対応が少ない事業所での格安対応。 |
人数と訪問の回数から料金の目安を出したいときは、料金シミュレーターで人数を入れるとその場で分かります(1分・名前やメールの入力なし)。
よくある質問
Q1. 産業医紹介会社の手数料はいくらですか?
決まった相場はありません。月額のうち紹介会社の取り分は、私の見てきた範囲では30〜70%が多く、最初に払う紹介料は無料のところから月額の1〜3か月分、10万円前後までばらばらです。見積もりのときに、月額のうち医師の報酬がいくらかを聞いてみてください。
Q2. 紹介会社から紹介された産業医と、あとで直接契約できますか?
多くの紹介会社は、一定期間(例えば1年間)は直接契約しないという条項を契約に入れています。反すると損害賠償を求められる可能性があるので、条項の読み方は弁護士に相談してください。産業医は14日以内に選任する義務があり1年空けられないので、事実上は切り替えにくいと考えておくのが安全です。
Q3. 紹介会社経由だと、なぜ相談の返事が遅いのですか?
医師への連絡を担当者経由にしている紹介会社が多いからです。会社→担当者→医師→担当者→会社と伝わるので、1往復で数営業日かかることがあります。急ぎの相談が多い会社は、契約前に「急ぎのときに医師へ直接連絡できるか」を確かめてください。
Q4. 紹介会社と直接契約、どちらが安いですか?
同じ医師の同じ働き方なら、紹介会社の取り分がないぶん直接契約のほうが安くなることもあります。一方で、実力のある医師を探す場合は契約料が高くなるケースももちろんございます。ただし、探す手間、契約書、代わりの医師の手配を自分でする必要があります。複数の会社を担当している産業医事務所なら、契約書などの準備はたいてい整っています。
Q5. 医師会や健診機関に頼めば、紹介会社を通さずに済みますか?
頼めることもありますが、医師会の開業医の先生が必ず産業医をしているとは限らず、健診機関も健診をする医師と産業医が同じとは限りません。産業医事務所のホームページや、取引先の口コミで事前に情報を集めてから決めるのが確実です。
まとめ:紹介会社は「医師に渡る額・縛り・連絡の速さ」で比べる
- 紹介会社の月額は医師の報酬+紹介会社の取り分。取り分は多くが30〜70%、紹介料は無料〜数か月分とばらばら
- 紹介された医師との直接契約には、1年などの制限があることが多い。産業医は14日以内に選任する義務があるので、事実上は切り替えにくい
- 急ぎの相談は担当者経由で1往復に数営業日かかることがある。メンタルヘルス不調の対応が多い会社は要確認
- 取り分が大きいと医師が「取られすぎ」と感じて早くやめ、定着しにくいことがある
- 候補から選べる・経歴書が見られる・手順が決まっていて迷いにくいのは紹介会社のよいところ
- 見積もりの前に5つの質問(医師の報酬・紹介料と交代・切り替え制限・急ぎの連絡・担当者の知識)をして並べる

