産業医は薬の処方をしない?理由は?従業員へのサポート内容は?
「産業医って薬を処方しないの?」
産業医の存在を知っていてもその役割や具体的な活動内容について疑問に思っているかもしれません。
産業医は病院のお医者さんのように薬を処方することはありません。
では一体何をやっているのでしょうか?
この記事では、産業医の仕事内容や、薬を処方できない理由、相談できる健康問題について詳しく解説します。
「産業医って、どんな時に役立つんだろう?」と疑問に思っている方は、ぜひ読み進めてみてください。
産業医とはどんな仕事?法令、実務、活用方法に関して徹底解説。
産業医の役割と薬の処方が行えない理由
産業医は職場を守る医師ですが基本的には従業員に薬の処方を行いません。
産業医の職務内容と業務範囲
産業医の仕事は、働く人たちが安心して健康に働けるように会社と協力して職場環境を整えたり健康に関するアドバイスをしたりすることです。
ポイントは労働者が安全に働くことができるかどうかの判断をすることです。その人が現在持っている病気や、過去の病気、仕事内容などを総合的に判断します。
例えば、重いものを運ぶ仕事をしている人がいたとします。その人が腰痛持ちであれば、重いものを運ぶ作業をさせると症状が悪化し、長期間仕事を休まなくてはいけなくなる可能性があります。
このような事態を防ぐために、産業医はその人に重いものを運ばせるべきではないと判断し、会社側に業務内容の変更を提案します。
その他にも、
- 仕事で疲れている人がいたら、休むようにアドバイスしたり、
- 腰を痛めやすい仕事をしている人がいたら、道具の使い方を改善したり、
- ストレスを感じやすい職場環境であれば、上司に相談して改善を促したりします。
つまり、産業医は、病院で患者さんを診察する医師は少し役割が違うのです。
薬を処方しない理由とは
産業医は医師の資格を持っていますが、会社で働く従業員に対する主治医というわけではありません。
会社で働く従業員が健康上の理由で仕事に支障をきたしている場合、産業医はその従業員が安全に働くことができるかどうかを判断します。
そもそも会社は病院ではないので検査器具を使って検査を行ったり、その結果をもとに診断を付けることはできません。処方する機関でないためお薬を処方する処方箋を発行することも不可能です。
ですので産業医は従業員に健康上の問題があるとわかった場合は専門的に診断・処方・治療が可能な病院やクリニックへの受診を勧めることになります。
産業医に相談できる健康問題
基本的には診断・治療・処方を行わない産業医ですが健康問題に対する相談に関してはきちんと対応可能です。ここでは、産業医がどんな健康問題をサポートしてくれるのか、具体的に見ていきましょう。
職場環境やストレスに関する相談
職場環境が原因で体調を崩してしまうことや、仕事量の多さや人間関係でストレスを感じるこがあります。特に、近年増加傾向にあるのが、精神的なストレスからくる不調です。
例えば、
- 毎日残業が続いている
- 上司との関係が悪く、毎日出社するのが辛い
- 仕事の責任が重く、プレッシャーを感じ続けている
このような状態が続くと、自律神経のバランスが乱れ、様々な体の不調につながることがあります。
具体的には、
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 不眠
- 食欲不振
といった症状が現れることがあります。
産業医は、働く人がより健康的に働くために、職場環境の改善やストレス対策についても相談に乗ることができます。
例えば、長時間労働が常態化している職場であれば、会社側に労働時間の短縮や業務分担の見直しなどを提案します。
また、職場の人間関係で悩んでいる場合、相談内容に応じて、本人へのアドバイスや上司への働きかけなどを行います。場合によっては、医師の診察が必要と判断し、医療機関への受診を勧めることもあります。
労働災害や業務上の病気の予防
仕事中にケガをしてしまったり、病気になってしまったりすることを労働災害と言います。重い荷物を持つ仕事で腰を痛めたり、騒音のある環境で仕事を続けていたら難聴になってしまったりするケースなどが挙げられます。安全方面では転落事故や転倒事故なども存在しています。
産業医は、職場での事故や病気のリスクを減らすためのアドバイスや指導を行います。
例えば、工場で働く人たちに向けて腰痛予防のための正しい姿勢やストレッチの方法を教えたり定期的な休憩を促したりします。
また、オフィスワークが多い職場であれば目の疲れや肩こり対策としてパソコンの画面設定や椅子の高さ調整などをアドバイスします。
労働災害は適切な対策を講じることで予防できるもの存在しています。そのため日頃から産業医とコミュニケーションを取り、職場の安全衛生について相談しておくことが重要です。
健康診断の結果についてのアドバイス
健康診断の結果、メタボリックシンドロームや高血圧などを指摘されたことはありませんか?産業医は健康診断の結果に基づいて一人ひとりの健康状態に合わせた具体的なアドバイスを行います。
例えば、健康診断で血圧が高いと指摘された場合、放置しておくと脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こすリスクが高まります。産業医は、そのような重大な病気のリスクを減らすために減塩を心がけた食生活や適度な運動を習慣づけるようにアドバイスします。
また、必要に応じて、専門の医療機関への受診を勧めることもあります。産業医は、会社員にとって身近な健康の相談相手となりえます。
産業医へのアクセス方法と選び方
産業医に相談するにはどうすればいいか
産業医に相談したいと思った時、まずは自分の会社に産業医がいるかどうかを確認しましょう。会社の規模によっては、産業医がいない場合や、嘱託の非常勤産業医が定期的に訪問をしている場合があります。
自分の会社に産業医がいる場合は人事部や総務部などに担当者や相談窓口が設けられているはずです。相談窓口がどこかわからない場合は、直属の上司や同僚に聞いてみましょう。
産業医への相談は通常は勤務時間内に行われます。非常勤の場合は定期の訪問時に合わせて行われることが一般的です。
相談内容は、職場環境の改善やストレスに関すること健康診断の結果や病気やケガの治療と仕事の両立など、仕事に関する健康上の問題であれば何でも相談できます。
例えば、職場での人間関係の悩みや、仕事量の多さからくるストレス、あるいは、健康診断で指摘されたメタボリックシンドロームや高血圧の改善方法など、産業医は幅広い相談内容に対応しています。
産業医がいる企業の特徴と規模
法律では、従業員が50人以上の事業場には、産業医を選任することが義務付けられています。そのため、従業員数が50人以上の企業であればほとんどの場合産業医がいます。
しかし、従業員数が50人未満の企業でも労働者の健康管理の重要性が高まっていることから産業医を選任しているケースが増えています。特に肉体労働者が多い職場や深夜業など健康リスクの高い業務がある職場では従業員数が少なくても産業医を選任していることもあります。
産業医がいる企業は、従業員の健康管理に積極的に取り組んでおり従業員が安心して働ける環境づくりに力を入れていると言えるでしょう。
例えば、定期的な健康診断の実施や、ストレスチェックの実施、健康相談窓口の設置、健康に関するセミナーや研修の実施など、従業員の健康増進のために様々な取り組みを行っています。
まとめ
産業医は、会社で働く人々の健康を守る専門家です。病院の医師のように薬を処方することはできませんが、職場環境の改善や健康に関するアドバイスを提供することで、従業員が安全に働けるようにサポートします。
産業医は、長時間労働によるストレスや、仕事内容による身体的負担など、職場環境に起因する健康問題に対処するために、会社側に改善策を提案したり、従業員に適切なアドバイスを提供したりします。また、健康診断の結果に基づいて、生活習慣の改善や専門医への受診を促すこともあります。
従業員が安心して働けるよう、産業医は会社と協力して、健康的な職場環境づくりに貢献しています。