産業保健師はテレワークで稼働できる?メリットとデメリットを保健師が解説します。

産業保健師はテレワークで稼働できる?メリットとデメリットを保健師が解説します。

コロナ禍をきっかけにテレワークが普及し、現在では多くの企業が柔軟な働き方を導入しています。そのような背景から、産業保健師をテレワークで稼働させたいと考えている方もいらっしゃる担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

一方で、テレワークで産業保健師を稼働させることに関して、疑問や不安をお持ちの方もいらしゃると思います。

この記事では、産業保健師をテレワークで稼働させるメリット・デメリット(注意点)について解説します。

そもそも「テレワーク」とは?

テレワークとは、オフィスに出勤せず、自宅やカフェなどの別の場所で仕事をする働き方のことです。

インターネットを使って仕事を行い、コミュニケーションや業務の進行はオンライン上で行います。

通勤の時間やコストを削減できるとともに、仕事と生活のバランスが取りやすくなります。

産業保健師の仕事にはどんなものがあるのか?

「産業保健師の仕事」と聞いて、どんな仕事を思い浮かべますか?

保健指導や健康相談など、社員の方との面談を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?

私自身、会社員時代に「健康診断と面談がない時は何しているの?」と聞かれたことがあるように、多くの方には産業保健師の業務はイメージがしにくいものかもしれません。

産業保健師の業務には具体的には、以下のような業務があります。

  • 保健指導などの面談
  • 健康だよりなど社員向けコンテンツの企画・作成
  • 健康診断の運営、結果分析
  • 社内向けセミナーなどの企画や実施
  • 衛生委員会の運営

企業によって産業保健師が担当する仕事に幅はありますが、意外とデスクワーク主体の仕事もあると感じた方が多いのではないでしょうか?

テレワークで稼働できる保健師の仕事にはどんなものがある?

産業保健師の仕事には面談形式のものだけでなく、デスクワーク主体のものも多くあります。

テレワーク上で稼働可否だけで言えば、ほとんどの業務はテレワークで実施することが可能ですが、テレワークに向いているものとそうでないものがあります。

ここでは、テレワークに向いている業務と向いていない業務に分けて見てみましょう。

テレワークに向いている業務

産業保健師の仕事でテレワークに向いている業務は、面談形式では”ない”業務です。

具体的には、健康診断結果の集計や分析、健康だよりなどの資料の作成などがあります。

健診結果は集計や分析のため、健診機関からデータ化されたもをもらいます。データを取り扱う環境があればできるので、テレワークに向いています。

健康だよりなどの資料の作成も、資料にアクセスできる環境があればできるので向いています。

デスクワーク主体の仕事はテレワークと相性が良いでしょう。

テレワークに向いていない業務

保健指導や健康相談など、面談形式の業務はどうでしょうか?実施そのものは可能ですが、テレワークには向いていません。

会社以外の場所で保健指導や健康相談を実施する場合には、機微な情報を扱っていることや相談者が安心して話ができる環境作りが必要です。対面かつプライバシーが保たれる場所を用意する必要があります。

必ずしもプライバシーが保たれる場所であるとは限らないテレワークは、面談形式の業務には向きません。

産業保健師をテレワークで稼働させるメリットとデメリット(注意点)

産業保健師の業務のある程度はテレワークでも実施可能です。ここからは、産業保健師をテレワークで稼働させるメリットとデメリット(注意点)を紹介します。

メリット

社員皆が健康相談をしやすい環境づくり

支店や営業所が多いと、対象者が保健師のいる場所まで来るのが難しいケースも多いかもしれません。

オンラインで保健指導や健康相談ができる環境を整えることで、保健師の常駐していない支店や営業所の社員への保健指導が容易になります。結果として、社員皆が健康相談をしやすい環境となります。

実際に保健師との面談を案内しても、「保健師のいるところに行くのが大変」「営業先への移動の時間がとれなくなる」などの理由で面談をキャンセルしたいとの申し出を受けるケースもありました。

テレワークをはじめとするオンラインでの面談であれば、対象者が保健師のいる場所へ移動するための時間を考慮しなくて良いので、より保健指導や健康相談へのアクセスがよくなる効果が期待できます。

採用アドバンテージの獲得

産業保健師は子育て中のママも多く、働き方の柔軟性を重要視しているケースが多くあります。

産業保健師に限ったことではありませんが、テレワークができることが採用のアドバンテージになるでしょう。

実際に私自身も子育て中のママでもありますが、子供の発熱時やインフルエンザに罹患した際の出席停止期間など、感染症テレワークで業務ができることで助かったことが何度もあります。

デメリット(注意点)

プライバシーの確保

特にテレワークで面談を実施する場合に注意が必要になります。

保健指導や健康相談では、非常に機微な情報を扱うため、テレワークと言っても「どんな場所でも大丈夫」というわけではありません。

健康情報は個人情報にあたり、労働者の権利として厳格に保護されるべきであると考えられています。

人の往来があるカフェなど内容が筒抜けになってしまうような環境は面談に適していません。

保健師には、保健指導や健康相談を受ける人が安心できる環境でテレワークを行うよう、ルールやガイドラインを作成しておくのが良いでしょう。

特にプライバシーに配慮できるよう、相談対応については個室など人の往来が気にならない場所で実施する、など、オンライン面談を実施する際に求められる環境について決めておくと良いでしょう。

面談対象者の情報の取りにくさ

特にメンタル不調に関する相談では、部屋に入ってきた様子や面談中のボディランゲージなども重要な情報になります。

テレワークをはじめとするオンラインでの面談では、そのような情報が取りにくく的確な判断につながりにくくなる可能性もあります。

コロナ禍でやむを得ずオンラインでメンタル不調の相談を受けた事もありますが、相談にいらした方からも、「オンラインだと話していいのかわからない場面があるので、面談は対面の方がありがたい」という声がありました。

このように、対応にあたる保健師だけでなく相談にくる対象者共にオンラインでの面談にやりにくさを感じるケースもあるということを知っておきましょう。

まとめ

産業保健師をテレワークやオンラインで活用するのは、従業員が健康相談しやすい環境を作るという意味でもお勧めです。
しかし、保健師が面談の場で受け取れる情報量や対象者との信頼関係の構築という部分では、やはり対面での対応に勝るものはないでしょう。

以下のようにテレワークを活用してはいかがでしょうか。

メンタルヘルスに関する相談・・・言葉以外の情報を多く必要とするため、対面での実施を原則とする

健診結果に基づく保健指導や、投薬治療中でコントロール良好な方の状況確認など・・・面談対象者の体調や健康に関する状況などが概ね対話で取得可能であるため、テレワークの活用を可とする

対面とテレワークをはじめとするオンラインでは、各々にメリットとデメリットがあります。

デメリットはルールやガイドラインで解決するものもあります。組織としてオンラインを活用することによる利便性の向上をどこまで望むか、バランスを考慮したうえでオンライン対応の導入是非を検討しましょう。