産業保健師は普段何をしている?1日の業務を公開します!
従業員の健康づくりに取り組む企業が年々増加し、健康管理の徹底や新たな健康施策導入のために産業保健師を採用を検討する企業も増えてきています。
しかし、実際に産業保健師を採用したことのない企業にとっては、産業保健師が日々会社で何をしてくれているのか分かりにくいという声を聞きます。
この記事では、そんな人事総務など職場担当者のために、企業に勤める産業保健師のとある1日を公開します!
実際に行っているお仕事を具体的にご紹介しますので、採用する際のイメージや採用後の活用についての検討にお役立ていただければと思います。
産業保健師は何をする?
産業保健師は従業員の健康づくりを推進することで、企業のリスク管理や生産性の向上に寄与しています。具体的な例を見てみましょう。
- 従業員の健康管理サポート
産業保健師は、従業員が健康に働くことができるよう支援を行います。健康診断の結果を分析し必要なフォローアップを行うことで、従業員が長期的に健康を保てるようサポートします。 - メンタルヘルスの支援
近年、メンタルヘルスの重要性が高まっています。背景には労災申請の請求件数、認定件数の増加や働く世代の自殺者数が高いことがあります。産業保健師は従業員のメンタルヘルスケアを担当することが多くあります。面談で困りごとを整理したり、職場上司との橋渡しや外部専門家との連携を行い、従業員の心の健康を守るための支援を行います。 - 労働災害や疾病予防
労働災害や業務起因の疾病を予防するために、会社や職場へ安全対策のアドバイスを行うこともあります。産業保健師は第一種衛生管理者資格を保有していることが多く、職場の衛生管理者としての役割を担うことも多くあります。 - 従業員の健康相談窓口
産業保健師は従業員の健康相談窓口となり、様々な健康相談に日々対応します。従業員との密なコミュニケーションを通じて、健康に関する悩みや不安を早期に把握し、適切なサポートを提供する役割を果たします。従業員と職場上司、双方と信頼関係を築き健康支援をスムーズに行います。
産業保健師の所属部署は?
産業保健師を採用する際にはいくつか所属部署の候補があります。
- 人事部
健康管理を行う上で個人情報を取り扱う場面もあり、人事部に保健師を置く場合があります。 - 経営企画部
健康づくりを経営戦略として捉え推進していく健康経営という考え方が広がっています。そのため、経営企画部に保健師を配置し、日々の対従業員の業務だけでなく、施策の立案や計画を経営企画部の産業保健師が重点的に行っていく場合もあります。 - 健康推進部門
健康管理や健康推進の専門部署がある、規模の大きな企業ではその部署に配属されることが多いです。
産業保健師は企業で何をしている?とある一日を公開!
それでは、産業保健師のとある一日を見てみましょう。
午前のお仕事
スケジュール、面談予定の確認
まずはパソコンを立ち上げて、スケジュールとメールの確認から一日がスタート。社員さんからの相談や問い合わせがないかを確認します。
長時間労働者の体調確認面談
今日は長時間労働の方の体調確認面談を予定しています。面談前に必要な情報を確認しておきます。健康診断の結果、残業時間や就業のデータを確認。
人事、総務部や面談対象者の職場上司に、現在の業務の繁忙状況や今後の見通しを確認しておくこともあります。
約束の時間になり、面談対象の従業員が面談室にみえました。体調を確認しつつ、生活状況や業務の状況、職場の環境など、対象者を取り巻く環境を聞き取ります。面談で体調を把握するのはもちろんですが、困りごとやニーズを引き出すのも保健師の得意技です。
この方は残業が多くなってから疲労がたまりがちで、プレッシャーから寝つきも悪くなっているとのことでした。
このまま働くことで体調を悪化させてしまわないか心配な状態でしたので、上司を呼んで産業医面談につなぐことにしました。上司へ状況を説明し面談室へご案内します。産業医にも面談内容の申し送りを行い、面談がスムーズに行えるよう場を整えます。
産業医面談の結果、1か月後に再面談となったので日程を調整します。面談までの間に何かあれば、早めに教えていただくようお声がけし、職場へお帰りいただきました。
本人了承のもと人事・総務部へも情報共有を行い、本日の対応は終了です。
対応がスムーズに行えるように本人、職場、産業医、職場担当者と連携するのも、保健師の大事な役割です。
午後のお仕事
午後からは事務仕事と打合せがあります。
安全衛生委員会の資料作成
まずは定期健康診断の確認の整理から。安全衛生委員会で報告する内容なので資料にまとめます。受診率や結果を確認し、グラフなどの資料を作成し問題を分かりやすく提示できるようにします。
メンタルヘルス対策の打合せ
次は職場担当者と社内のメンタルヘルス対策について打ち合わせです。
社内では大きなプロジェクトが進んでおり負荷が高くなる職場があることが分かっているため、対応について職場担当者から相談がありました。
これを機に対象部署の管理監督者へメンタルヘルスケア研修を保健師が行うことに。日々行ってほしい部下のケアや、健康相談窓口の周知を行っていこうと話がまとまりました。
打合せ後は明日の業務の準備。面談対象者のカルテを準備し内容を確認しておきます。
産業保健師をうまく活用するためのコツ
産業保健活動のしくみづくり
産業保健活動の年間計画を立てておきましょう。計画を立てることで、職場担当者と産業保健師の役割と動きが明確になり、連携がとりやすくなります。
年間計画は産業保健師が立案する場合もあります。その際も職場担当者に共有するような体制をとっておくと、運用がスムーズになりやすいです。
日々のコミュニケーション
とある一日でお分かりいただけたように、産業保健師は不調者、職場担当者、産業医、職場上司の橋渡しを担うこともよくあります。日頃からコミュニケーションを大切にし信頼関係を構築しておくことで、情報伝達がスムーズに行えるようになり、迅速な対応に繋がります。
また、職場の繁忙状況など健康リスクに影響する状況を日頃から産業保健師と共有しておくことで、不調者が発生しないような未然防止活動を検討することができることがあります。
個人情報が守られる範囲で日頃から職場担当者と産業保健師がコミュニケーションをとることが、産業保健師をうまく活用しよりよい産業保健活動を展開するカギになります。
産業保健師を採用する際にも、人当たりやコミュニケーション能力、必要なことを的確に伝える力があるかどうかを見るとよいですね。
まとめ
産業保健師は何をしているのか、中々伝わりにくい部分があります。
とある一日を見ていただき、産業保健師の具体的な一日の業務がイメージできたかと思います。産業保健師が何をしているのかを知っていただき、貴社での活用の検討材料としていただければ幸いです。
企業の規模や困りごとの内容によっては、常勤ではなく月に数回の来社でよい場合もあります。そのような時には開業している保健師を活用する手もあります。ニーズに合わせて訪問回数や支援内容を提案してくれます。
産業保健師が何をしているのかを知り、うまく活用してよりよい職場づくりを展開していってくださいね。