産業医はフリーランスが増えている?メリット・デメリットを解説します。

産業医はフリーランスが増えている?メリット・デメリットを解説します。

従業員の健康を支える産業医ですが、近年、フリーランスとして活躍するケースが増加傾向にあります。

従来の企業専属とは異なり、複数の企業と契約し、柔軟な働き方を実現するフリーランス産業医。

メリットとしては専門性の専門性の高い医師に依頼できる、企業のニーズに合わせたサービスを受けられるなど、様々な利点があるのです。

では、フリーランス産業医の探し方や契約方法とは? 実際に依頼する際に注意すべき点とは?

本記事では、フリーランス産業医という選択肢が、企業と従業員双方にとってのより良い未来を創造する可能性について、詳しく解説していきます。

産業医とはどんな仕事?法令、実務、活用方法に関して徹底解説。

フリーランスの産業医とは? 従来の産業医との違いやメリット・デメリットを解説

「産業医」とは 会社で働く人たちが、毎日元気に、そして安全に仕事ができるように、健康面をサポートするお医者さんのことです。。

最近は、病院やクリニックから出向してくる医師だけでなく、フリーランスとして活躍する産業医も増えてきています。従来の産業医とは働き方が大きく異なるため、今回はフリーランスの産業医に焦点を当てて解説していきます。

従来の産業医との働き方の違い

従来型産業医とフリーランス産業医の違い

従来の産業医は、多くが病院やクリニックの医師が依頼を受け、産業医として選任され企業に訪問するケースがほとんどでした。

一方、フリーランスの産業医として産業医を専業とする医師が増えています。複数の会社と業務委託契約を結び、それぞれの会社で産業医活動を行います。自分のペースで仕事を進められるため、時間や場所に縛られずに働きたいという医師にとって魅力的な選択肢となっています。

例えば、午前中はA社の健康相談、午後はB社の職場巡視、そして夕方は自宅で資料作成など、病院業務とは異なる働き方が多いです。

複数の会社の健康を同時に見守る「巡回保健医」のようなイメージと言えるかもしれません。弁護士や税理士に近いイメージでとらえる方もいます。

フリーランス産業医のメリット

フリーランス産業医のメリットは、何と言ってもその自由度の高さにあります。自分で仕事量やスケジュールを調整できるため、企業によって時間を多く依頼したい、訪問頻度を増やしたいときなどに有効です。

従来の勤務医として働く場合、病院の都合で休日出勤や夜勤が発生することも少なくありません。産業医が専業であれば仕事を依頼する際病院の急患などを考慮せず安心して仕事を依頼できます。

従来の勤務医として働く場合、病院の都合で休日出勤や夜勤が発生することも少なくありません。産業医が専業であれば仕事を依頼する際病院の業務への配慮事項が減り相談対応がしやすくなるケースも多いです

また、複数の企業と契約することで、様々な業界や規模の企業に関わってきた産業医が存在していることも魅力です。多様な働き方や企業文化に触れることで、産業医としての視野を広げているので困った事例の相談対応も心強いです。

企業がフリーランス産業医を選ぶメリット

企業がフリーランス産業医を選ぶメリット

企業にとって、従業員の健康は必要不可欠です。

健康な従業員がいるからこそ、企業は生産性を高く保ち、成長を続けることができます。 その従業員の健康管理を専門的にサポートしてくれるのが産業医ですが、近年では、従来のように病院からの派遣だけでなく、フリーランスとして活躍する産業医も増えています。

フリーランスの産業医を選ぶことは、企業にとって様々なメリットがあり、これから紹介するように魅力的な選択肢となり得ます。

専門性の高い医師に依頼できる

フリーランスの産業医は、特定の分野に特化した専門知識や豊富な経験を持っている場合があります。

例えば、メンタルヘルス対策、健康診断対応、職場環境改善、健康経営など、企業のニーズに合わせて、産業医の専門性の高い医師を選ぶことができます。

企業は、自社の抱える課題や、課題解決に繋がる専門知識を持つフリーランス産業医を探すことで、より効果的な健康管理を実践することが可能になるケースも多いです。

産業医は基本的にオールラウンダーであることが多いですが、経歴や実績をベースに判断することが会社への大きなメリットになります。

企業のニーズに合ったサービスを受けられる

フリーランスの産業医は、企業の規模や業種、抱えている課題に合わせて、柔軟に対応したサービスを提供してくれます。

例えば、定期的な健康相談、ストレスチェックの実施、職場環境の評価、健康教育の実施など、企業のニーズに合わせて、必要なサービスを組み合わせることができます。

また、産業医活動記録票を用いた実態調査によると、第三次産業や100人以下の小規模事業場では、十分な産業医活動が実施されていない可能性が示唆されています。参考:産業医活動記録票を用いた嘱託産業医活動の実態調査 (jst.go.jp)

産業医経験が多い産業医であれば、このような産業医活動が不足しがちな規模や業種の企業に対しても、きめ細やかなサービスを提供することができます。

柔軟な契約形態

フリーランスの産業医との契約は、企業のニーズに合わせて、柔軟に設定することができます。

例えば、週に数時間、月に数回など、必要な時間で契約することができます。 また、特定のプロジェクトが発生した場合にのみ、短期的に契約することも可能な産業医も存在しています。

従来の専属産業医のように、病院の隙間時間に産業医として対応ではなく、しっかりと時間を作って対応してくれる点は非常に大きなメリットでしょう。

このように、フリーランス産業医は、専門性の高さ、柔軟なサービス提供、そして契約形態の柔軟性など、企業にとって多くのメリットを提供してくれます。 企業は、これらのメリットを最大限に活用することで、従業員の健康管理をより効果的に行い、企業の成長につなげることができるでしょう。

フリーランス産業医の探し方と依頼の仕方

フリーランスの産業医って?どうやって探せばいいの?料金は?契約はちゃんとできるか不安…

このような疑問をお持ちの企業担当者様も多いのではないでしょうか。 特に、初めてフリーランスの産業医と契約する場合は、分からないことだらけで当然です。

そこで、ここではフリーランス産業医の探し方と依頼の仕方について、具体的な方法や注意点などを分かりやすく解説していきます。

相談窓口、紹介サービス

いざフリーランスの産業医を探そうと思っても、どこで探せばいいのか迷ってしまうかもしれません。

これは、例えば、腕のいい歯医者さんを探そうと思っても、インターネットで検索したり、友人から紹介してもらったりと、色々な探し方があるのと似ています。

フリーランス産業医を探す場合も、いくつかの方法があります。

代表的なものとしては、

フリーランス産業医の探し方
  • 産業医を紹介してくれるサービスを利用する方法
  • 専門性の高い医師を紹介するサイトを利用する方法
  • 産業医事務所などで開業している医師に相談をする方法

などがあります。

ウェブサイトを活用する方法もあります。

その他、知り合いの医師や弁護士、税理士などに紹介してもらうのも良いでしょう。

士業は独自のネットワークを持っており優秀な人材にたどり着くことが出来るケースが多いです。

信頼できる人からの紹介であれば、安心して任せることができます。

契約方法、料金の支払い方法

フリーランス産業医と契約する際には、契約方法や料金の支払い方法について、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。

曖昧なままで契約してしまうと、後々トラブルに発展する可能性があります。後から思わぬ追加費用が発生したり、完成イメージと違っていたりするトラブルが起こりうるのと似ています。

フリーランス産業医との契約方法は、一般的には「顧問契約」と「スポット契約」の二つがあります。

  • 顧問契約: 毎月一定の報酬を支払うことで、継続的に産業医業務を依頼する契約
  • スポット契約: 特定の業務を依頼する場合に、その都度報酬を支払う契約

顧問契約は、継続的に産業医にサポートを受けたい場合に適しています。 一方、スポット契約は、特定の業務についてのみ産業医のサポートを受けたい場合に適しています。

産業医として選任を行う際は一般的には顧問契約となります。

一方で専門性の高い業務を依頼したい際はすでに産業医がいたとしてもスポット契約で対応を相談するケースも増えてきています。

料金の支払い方法は、時間制、案件制、成果報酬制など、さまざまな方法があります。

  • 時間制: 産業医が業務に携わった時間に応じて報酬を支払う方法
  • 案件制: 業務の成果物に対して報酬を支払う方法
  • 成果報酬制: あらかじめ設定した目標の達成度に応じて報酬を支払う方法

料金体系は、産業医によって異なりますので、事前に確認が必要です。

契約を結ぶ前に、業務範囲や報酬、契約期間などを明確にしておくことが大切です。 また、契約書は必ず書面で作成し、双方が内容を確認した上で署名・捺印するようにしましょう。

トラブル事例と回避策

フリーランス産業医との間で起こるトラブルとしては、

  • 報酬の未払い
  • 業務範囲のあいまいさ
  • コミュニケーション不足

などが挙げられます。

報酬の未払いを避けるためには、契約前に報酬の支払い方法や時期を明確にしておくことが重要です。 口約束ではなく、書面に残すようにしましょう。

業務範囲のあいまいさを避けるためには、契約前に業務範囲を明確に定義しておくことが重要です。 「〇〇は含まれる」「〇〇は含まれない」など、具体的に明記することで、後々のトラブルを防ぐことができます。

コミュニケーション不足を避けるためには、定期的に産業医と面談を行い、業務の進捗状況や課題などを共有することが重要です。

まとめ

フリーランスの産業医は、企業にとって、専門性の高い医師への依頼、柔軟なサービス、柔軟な契約形態といったメリットがあります。

企業は、フリーランス産業医を探す際には、紹介サービス、専門サイト、開業産業医、士業人脈などを活用し、契約時には報酬や業務範囲などを明確にすることが重要です。

また、産業医と良好な関係を築き、コミュニケーションを密にすることで、より効果的な健康管理体制を構築できるでしょう。

参考文献

  1. 池上 和範, 野澤 弘樹, 道井 聡史, 菅野 良介, 安藤 肇, 長谷川 将之, 喜多村 紘子, 大神 明. 産業医活動記録票を用いた嘱託産業医活動の実態調査. 産業衛生学雑誌 2016;58(6):251-259. DOI: 10.1539/sangyoeisei.E15004