産業医職場巡視の注意点は?現場に行かないと法令違反?

産業医職場巡視の注意点は?現場に行かないと法令違反?

会社で働く人たちの健康を守るのが、産業医の仕事です。 その重要な業務の一つに、「職場巡視」があります。

法律で定められたこの巡視は、従業員が安全に働ける環境かどうかを確認するだけでなく、働きやすい職場環境づくりにも役立ちます。

この記事では、産業医による職場巡視の目的や重要性、チェックポイント、報告書作成について詳しく解説していきます。 従業員の健康を守るため、そして、より良い職場環境を作るためにぜひ最後まで読んでみてください。

法令で定められた産業医の巡視義務

職場巡視の義務と2月に1回でも可の条件

産業医の職場巡視は労働安全衛生法で定められた義務となっています。

法令上は基本的には1月に1回以上の職場巡視が実地にて求められています。

平成29年より産業医の業務の多様化に対応するという目的で条件を満たした場合は2月に1回でも可ということになりました。

この場合の条件とは①残業時間などの職場の衛生管理状況を産業医に報告すること②週1回行われる衛生管理者の巡視内容を産業医に報告することとなっております。やみくもに2月に1回で大丈夫という訳ではないので注意が必要です。

またオンラインでの職場巡視が注目を集めていますが、現行の法律では必ず実施で現場を確認するよう定められています。

現状ではあくまでオンラインはオプションの扱いで理解していただくことが大切です。

産業医の職場巡視の目的と重要性とは

産業医の職場巡視の目的と重要性に関する画像

職場巡視が健康と安全に与える影響

産業医の大切な仕事の一つが「職場巡視」です。

例えば、工場だと大きな機械の音で耳が痛くなったり危険な薬品を使ったりするかもしれません。オフィスワークでも長時間同じ姿勢でパソコン作業をすることで肩や腰を痛めてしまうこともあります。

職場巡視ではそうした危険な場所や作業がないか従業員のみなさんが安全に働ける環境が整っているかをチェックします

オフィス内でも危険は潜んでいます。例えば、デスクワーク中心の職場でも、配線が乱雑になっていたり、書類が山積みになっていたりすると、つまずいたり、物が落下して怪我をしてしまうリスクがあります。また、空調の効きが悪かったり、換気が不十分だったりすると、従業員の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。産業医は、そうしたオフィス内に潜む危険性も見逃さずにチェックします。

チェック項目例チェック内容例具体的な場面
機械の安全性機械に適切な安全装置がついているか、定期的に点検されているかプレス機に安全カバーが設置されているか、稼働状況やメンテナンス記録を確認する。
化学物質の使用状況危険な化学物質は適切に保管されているか、使用する際に適切な保護具が着用されているか薬品庫が施錠されているか、ラベル表示や換気設備を確認する。従業員が適切なマスクや手袋を着用しているか確認する。
作業環境(騒音、温度、湿度など)騒音や温度、湿度などが適切な範囲に保たれているか騒音計を用いて作業場の騒音レベルを測定する。温度計や湿度計を設置し、適切な温度・湿度が保たれているか確認する。必要があれば、休憩場所の設置を会社に提案する。
作業姿勢や動作無理な姿勢や動作を長時間続けていないか、適切な休憩時間が設けられているかフォークリフト作業員の姿勢をチェックし、腰への負担を軽減するためのサポートベルトの着用を推奨する。
照明や換気照明は十分に明るいですか?換気は適切に行われていますか?事務所の照度を測定し、適切な明るさであるか確認する。窓を開けて換気を促したり、換気扇の設置状況を確認したりする。
精神的なストレス要因長時間労働やハラスメントなど、従業員の精神的なストレスとなる要因がないかをチェックします。長時間労働が発生している部署がないか、従業員への聞き取りを通してハラスメントの有無を確認する。メンタルヘルスの相談窓口の設置状況や利用状況を確認する。
緊急時対応火災や地震などの緊急事態が発生した場合の避難経路は確保されているか、従業員への周知は徹底されているか避難経路に物が置かれていないか、非常口の設置場所や避難経路を記した図面が分かりやすく掲示されているかを確認する。消火器やスプリンクラーなどの設備の設置状況や点検記録を確認する。
健康管理体制健康診断の結果や従業員からの健康相談の内容を踏まえ、健康管理体制に改善すべき点がないかをチェックします。健康診断の受診率が低い場合は、受診を促すための啓発活動や、受診しやすい環境づくりを会社に提案する。従業員からの健康相談の内容を分析し、必要があれば、専門医への受診を勧める。

このように、職場巡視では様々な項目をチェックすることで、従業員が健康で安全に働ける職場環境づくりを目指します。

産業医の役割と職場巡視の意義

産業医の役割と職場巡視の意義

産業医は、会社で働く人たちの健康を守ることが仕事です。病院に行くほどではないけれど、仕事中に体調が悪くなったり、仕事とプライベートのバランスで悩んだりする従業員さんもいるかもしれません。産業医は、そうした従業員さんの相談に乗り、適切なアドバイスや治療を受けることができるようサポートします。

例えば、ある従業員から「最近、頭痛がひどくて仕事に集中できない」という相談を受けた場合、産業医は、その従業員の業務内容や労働時間、職場環境などを詳しく聞き取ります。そして、長時間労働や強いストレスが原因で頭痛が起きていると判断した場合には、会社側に労働時間の短縮や業務内容の見直しなどを提案します。

また、職場巡視を通じて得られた情報をもとに、会社に対して、職場環境の改善や健康増進のための取り組みを提案することも重要な役割です。

例えば、従業員の健康状態や仕事の内容を分析し、健康リスクが高いと判断された場合は、会社に対して、作業環境の改善や労働時間の短縮などを提案します。具体的には、職場巡視で、ある部署の従業員に腰痛が多いことが分かったとします。産業医は、その原因を探るために、従業員の作業姿勢や作業環境を観察したり、聞き取り調査を行ったりします。その結果、長時間の中腰作業や重い物を持ち上げる作業が腰痛の原因だと判明した場合には、会社側に作業台の高さを調整したり、補助器具を導入したりするなどの改善策を提案します。

従業員とのコミュニケーションの重要性

従業員とのコミュニケーションの重要性

職場巡視では、従業員と直接コミュニケーションをとることで、健康状態や職場環境に関する悩みや不安を直接聞き取ることができます。

例えば、工場の作業員の方から「最近、大きな機械の音で耳鳴りがする」という相談を受けた場合、産業医は耳栓の使用を勧めたり会社に対して防音対策を検討するように提案したりします。

また、従業員が安心して健康相談や仕事の悩みを相談できる雰囲気を作ることも大切です。職場巡視の際に従業員に声をかけたり笑顔を見せることで親近感を持ってもらい気軽に相談しやすい関係性を築くことができます。

このように、職場巡視は、従業員と会社、そして産業医が協力して、より良い職場環境を作っていくための大切な機会と言えるでしょう。

職場巡視で確認すべきチェックポイント

産業医の職場巡視では、従業員が健康で安全に働くことができる環境が整っているかどうかの確認が重要です。ここでは、具体的なチェックポイントとして、労働環境の安全性、衛生状態、働きやすい職場環境という3つの視点から解説していきます。

労働環境の安全性の評価

労働環境の安全性の評価例

労働環境の安全性を評価する際には、オフィス内でも危険な場所がないか注意深く確認することが大切です。オフィスは一見安全そうに見えても、実は危険な場所になりえます。

例えば、通路は従業員が頻繁に通行する場所ですが、幅員が狭かったり、段差があったりすると、つまずきやすくなり転倒のリスクが高まります。

実際に、私が以前に職場巡視をした際に通路に段差があり従業員の方がつまずきそうになっていた場面に遭遇したことがあります。幸い大事には至りませんでしたが転倒して骨折などにつながる可能性もあるため早急な改善が必要です。また書類が山積みになっていたり備品が整理整頓されずに置かれていたりすると落下や崩落の危険性があります。頭上からの落下物は予期せぬタイミングで発生するため重大な事故につながる可能性もあります。

電気配線も重要なチェックポイントです。電気配線がむき出しになっていたり、タコ足配線、古い配線などは火災の原因となる可能性があります。電気系統のトラブルは業務に支障をきたすだけでなく従業員の生命にも関わる重大な事故を引き起こす可能性があります。

また直近では化学物質への規制が強まっておりその点でも注意が必要です。

チェック項目具体的な内容
通路段差や障害物がないか、十分な幅員が確保されているか、照明は適切か
照明作業場全体が明るく、かつ、まぶしさがないようになっているか、窓からの自然光を有効に活用できているか
書類整理書類が整理整頓され、落下や散乱の危険性がないか、書類保管棚は安定しているか
電気配線電気配線がむき出しになっていないか、タコ足配線や古い配線はないか
温度・湿度室温は適切に管理されているか、湿度は適切な範囲内であるか
換気十分な換気が行われているか、窓の開閉は容易にできるか、換気扇は正常に作動しているか
避難経路避難経路は確保されているか、非常口や通路は明確に表示されているか、避難設備は正常に作動するか
消火設備消火器は設置場所や使用方法が適切か、スプリンクラー設備は正常に作動するか
救急箱救急箱は設置場所や内容が適切か、使用期限内の薬品が揃っているか
その他床が滑りやすく転倒の危険性がないか、整理整頓は行き届いているか、休憩スペースは確保されているか

工場など機械を使用する職場では機械の操作方法や安全装置の設置状況、騒音や振動のレベルなども重要なチェックポイントになります。

大きな機械の稼働音は、騒音性難聴を引き起こす可能性があります。また機械の振動は手足のしびれや感覚障害を引き起こす可能性があります。

衛生状態の確認とリスク評価

衛生状態の確認ではトイレや休憩室など従業員が共同で利用する場所を中心に清潔に保たれているか感染症のリスクがないかなどを確認します。

チェック項目具体的な内容
トイレ便器や洗面台は清潔に保たれているか、石鹸や消毒液は設置されているか、換気は適切か
休憩室机や椅子は清潔に保たれているか、ゴミ箱は設置され、適切に処理されているか、換気は適切か
給湯室給湯設備は清潔に保たれているか、食器は清潔に洗浄されているか、食品の保管状態は適切か
空調設備フィルターは定期的に清掃されているか、空調設備から異臭は発生していないか
ゴミ処理ゴミは分別され、適切に処理されているか、ゴミ置き場は清潔に保たれているか
その他害虫やねずみなどの発生はないか、手洗い場は設置場所や使用方法が適切か、消毒液は設置されているか

トイレの清掃が不十分で、便器や洗面台が汚れている場合は細菌やウイルスが繁殖しやすくなり感染症のリスクが高まります。また、石鹸や消毒液が設置されていない場合は手洗いが不十分になり感染症の予防効果が期待できません。休憩室は従業員が食事や休憩をとる場所であるため、食品残渣などが残っていると食中毒の原因となる細菌や害虫が発生する可能性があります。

働きやすい職場環境づくりのための要素

働きやすい職場環境づくりの要素

職場環境において、従業員の健康状態に影響を与える要素は多岐に渡ります。そのため、職場巡視では、以下の項目を参考に、従業員にとって働きやすい環境が整っているかを総合的に判断することが求められます。それぞれの評価は3管理(作業環境管理、作業管理、健康管理)をベースに検討を行います。

1. 身体的負荷

重労働や長時間労働、単調作業など、身体への負担が大きい作業は腰痛や肩こりなどの身体的な問題を引き起こす可能性があります。例えば、倉庫作業員の方で重い荷物を持ち上げる作業を繰り返していたため慢性的な腰痛に悩まされているケースがありました。職場巡視では作業内容や作業姿勢、作業時間などを確認し必要に応じて作業環境の改善や作業方法の見直しなどを提案します。

2. 精神的負荷

仕事量が多すぎる、納期に追われている、責任が重すぎる、人間関係が悪いなどの精神的なストレスは、うつ病などの精神疾患を引き起こす可能性があります。職場巡視では面談などで体調のすぐれない従業員の精神的なストレスの状況を把握し、必要に応じて業務量の調整や休暇の取得を促すなどの対策を検討します。

3. 作業環境

 騒音、振動、照明、温度、湿度などが適切でない作業環境は従業員の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。職場巡視では実際の状況を産業医自身が確認して必要に応じて改善策を提案します。

これらの要素を総合的に判断し従業員が健康で快適に働くことができる職場環境づくりを目指します。

法律に基づく職場巡視のルールと頻度

職場巡視は、労働安全衛生法という法律で定められた、従業員の健康と安全を守るための重要な義務です。職場巡視を怠ると、法律違反に問われる可能性もあります。

「従業員の安全のために、良かれと思ってやっていたことが、実は法律違反だった」なんてことにならないように、職場巡視の頻度や方法について、法律の観点から詳しく見ていきましょう。

オンライン巡視の現状と今後の見込み

オンライン巡視のデメリット

近年、オンライン会議システムやウェアラブル端末を活用した「オンライン巡視」を導入する企業も増えてきました。

オンライン巡視は、従来の対面式の巡視に比べて、時間や場所の制約を受けにくいというメリットがあります。

例えば、遠隔地の事業場や、複数の事業場を巡回する必要がある場合でも、移動時間やコストを削減できます。

しかし、現状ではオンライン巡視は対面式の職場巡視の代替手段としては認められていません。

「オンライン巡視はあくまで対面式の職場巡視を補完するものとして位置づけられるべきである」と認識しておきましょう。

オンライン巡視だけでは、従業員の健康状態や作業環境の実態を正確に把握できない可能性があるからです。

例えば、従業員の顔色や表情、疲労度合いなどは画面越しでは判断が難しい場合があります。また、職場環境における温度、湿度、臭いなどもオンラインでは正確に把握できません。

ただし、オンライン巡視は、対面式の職場巡視を補完する手段としては有効です。

例えば、オンラインで定期的に従業員とコミュニケーションを取り健康状態や職場環境に関する情報を収集することができます。

今後、オンライン巡視に関する法制度の整備や技術革新が進みより安全で効果的な職場巡視の方法が確立されることが期待されます。

法律違反のリスクとその対策

職場巡視違反のリスクとその対策

職場巡視を怠ったり、適切な内容で実施しなかったりすると、労働安全衛生法違反に問われる可能性があります。

企業は、罰金刑や業務停止命令などの行政処分を受けるだけでなく、企業イメージの低下や従業員のモチベーション低下など、深刻な影響が生じる可能性もあります。

過去には、職場巡視を怠った結果、従業員が重度の熱中症で倒れ、その後遺症が残ってしまったケースや適切な安全対策を講じていなかったため機械に巻き込まれる事故が発生し会社が業務停止命令を受けたケースなどがありました。

職場巡視における法令違反を防止するためには、以下の対策が重要です。

  • 職場巡視に関する法令やガイドラインの内容を正しく理解する
  • 職場巡視の計画をしっかりと立て、実施状況を記録する
  • 職場巡視で発見した問題点については、速やかに改善措置を講じる
  • 従業員に対して、職場巡視の重要性や内容について、定期的に教育を実施する

職場巡視は、従業員の健康と安全を守るための重要な取り組みです。企業は法令遵守を徹底し安全で働きやすい職場環境づくりに積極的に取り組んでいく必要があります。

職場巡視の報告書作成と必要な書類

職場巡視では実際に現場を見て五感を研ぎ澄まし従業員の方々とコミュニケーションをとることで様々な問題点や改善のヒントが見えてきます。しかし、巡視で見つけた課題やその後の対応は記録として残しておかなければせっかくの取り組みも風化してしまいます。そこで重要なのが職場巡視の報告書です。

報告書に必要な情報とフォーマット

報告書は、巡視で見聞きした情報やそこから導き出された課題、具体的な改善策などを関係者間で共有するための重要なツールです。そのため誰が見ても理解できるよう簡潔で分かりやすく具体的な内容を盛り込む必要があります。

具体的には、以下の様な項目を盛り込むことが一般的です。

  • 職場巡視の基本情報
    • 実施日:いつ行われたのかが明確になるように、年月日を記載します。
    • 時間:始業時間と終業時間を記録します。
    • 場所:本社工場、A工場など、巡視場所を具体的に特定します。
    • 参加者:産業医の氏名だけでなく、事業者側の参加者(所属部署・役職・氏名)も記録しておきましょう。特に、安全衛生管理責任者や産業保健スタッフが同行した場合には、その旨を明記します。
    • 目的:今回の職場巡視の目的を明確に示します。例えば、「定期巡視」「特定の部署におけるメンタルヘルス不調者発生に伴う緊急巡視」「長時間労働者への対応状況確認」など、具体的に記載します。
  • 職場巡視の内容
    • 巡視箇所:事務所、工場、倉庫など、具体的にどの場所を巡視したのかを記載します。
    • 確認事項:照明、換気、温度、整理整頓、機械設備、安全装置、化学物質管理、作業姿勢など、実際に確認した項目を具体的に列挙します。
  • 法令違反やリスクの高い箇所の指摘
    • 問題箇所:具体的にどの場所の、何が問題なのかを明確に記述します。例えば、「製造ライン脇の通路において、資材が積み重ねられている」、「事務所内の通路に段差があり、つまずきそうになった」など、具体的な状況を記述することで、問題の緊急性や重要性を関係者間で共有することができます。
    • 問題点:法令違反に該当する場合は、違反条項を明記します。そうでない場合でも、どのようなリスクが想定されるのかを具体的に示します。例えば、「通路に物が置かれていると、転倒による怪我に繋がる可能性がある」、「デスク周りが整理整頓されていないと、業務効率が低下するだけでなく、書類紛失や情報漏洩のリスクも高まる可能性がある」など、具体的なリスクを指摘することで、改善の必要性をより明確に伝えることができます。
    • 写真・動画:問題箇所を写真や動画で記録しておくことで、状況をより明確に伝えることができます。撮影日時や場所も記録しておきましょう。
  • 改善提案
    • 具体的な改善策:問題点に対して、どのように改善すべきかを具体的に提案します。例えば、「通路に置かれている資材は、所定の保管場所へ移動する」「通路の段差を解消するために、スロープを設置する」「デスクの広さを確保するために、レイアウトを見直す」「書類整理のための収納棚を増設する」「従業員に対して、整理整頓の重要性についての教育を実施する」など、具体的な改善策を示すことで、会社側が実行に移しやすくなります。
    • 必要性・緊急性:改善策の実施が必要な理由と、その緊急性を具体的に示します。緊急性の高いものから優先的に対応できるよう、重要度に応じて分類するのも有効です。
    • 法的根拠:必要に応じて、関連する法令やガイドラインを明記します。
  • 職場巡視後の対応
    • 担当者:改善策の実行責任者を明確に決めておくことで、責任を持って対応が進められるようになります。
    • 期限:いつまでに改善を行うのか、具体的な期限を設定することで、対応が遅延することを防ぎます。
    • 改善状況の確認方法:改善策が適切に実施されたかどうかを確認するために、どのような方法で評価を行うのかをあらかじめ決めておきます。
  • その他
    • 従業員からの意見:職場巡視中に従業員から直接意見を聞いた場合は、その内容を具体的に記録しておきます。
    • 産業医としての意見・所見:職場巡視全体を通しての所見や、従業員の健康管理に関する意見などを記載します。

報告書のフォーマットは、法律で定められたものはありません。WordやExcelで作成したり、専用の報告システムを利用したりと、会社や産業医の先生ごとに使いやすいフォーマットを用いることが多いです。

重要なのは、報告書の内容が関係者間で適切に共有され、職場環境の改善に繋がるようにすることです。

巡視後のフォローアップが大切

職場巡視は、問題点を見つけ出すことがゴールではありません。真の目的は従業員の健康と安全を守りより良い職場環境を実現することです。そのためには、巡視で見つかった問題点に対してはフォローアップが必要です。

職場巡視は、問題点の発見から改善、効果の測定までを一連の流れとして捉え、PDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)を回していくことが重要です。産業医と事業者が協力し、継続的な改善活動を通して、従業員の方が健康で快適に働ける、より良い職場環境を目指しましょう。

まとめ

産業医は労働安全衛生法に基づき従業員の健康と安全を守るために職場巡視を行うことが義務付けられています。職場巡視では、労働環境の安全性、衛生状態、働きやすい職場環境の3つの視点からチェックを行い問題点があれば改善策を提案します。

職場巡視は、法律で定められた最低限の頻度に加え、職場の規模や業種、従業員の健康状態などを考慮して、より頻繁に行う場合もあります。。オンライン巡視は、従来の対面式巡視を補完する手段として活用できますが、現状では法的に認められていません。

職場巡視では、報告書を作成し、チェックリスト、写真、アンケート結果などの関連書類を管理することが重要です。巡視後のフォローアップとして、改善策の実施状況を確認し、効果を測定することで、従業員の健康と安全を確保し、より良い職場環境を実現します。