産業医に複数事業所担当させて大丈夫?産業医が解説します。

産業医に複数事業所担当させて大丈夫?産業医が解説します。

こんにちは。産業医の角田拓実です。

今回は質もされることが多い「複数の事業所を一人の産業医に担当させて良いのか?」という質問に答えていきます。

回答は「問題はないが、巡視義務はそれぞれの事業所に存在するため巡視は必須」です。

内容を確認していただき労基署の指摘を受けないように運営していただければと考えます。

産業医を複数の事業所で一人に選任しても大丈夫?

一人の産業医に複数事業所を担当させると労基署に指摘されるのではないかという質問を受けることが時々あります。

結論から説明すると非常勤の嘱託産業医が複数の事業所を担当することは法令上の規制が無いため問題ありません。(労働安全衛生法)

嘱託産業医自体は他業種で複数事業所を担当することは多いですし、同一法人でも複数事業所を担当することは一般的です。

一方で、専属の産業医に関しては同一グループ内での担当が望ましいなど制約がありますが、一つの事業所が1000人以上の大工場などでの適応ですので、あまり配慮しなくてもよいでしょう。

複数事業所に一人の産業医を選任する際の注意点は?

複数の事業所に一人の産業医を選任した際の注意点に関して説明を行います。

産業は基本的には一つの場所にある事業所に関して選任を受ける存在です。(法人全体での選任ではない。)

したがって、法人全体を一人の産業医が担当していたとしても一つ一つの事業所に対する巡視の義務に変わりは有りません。

つまり、一つ一つの事業所を1カ月以内毎に1回(あるいは2か月以内ごとに1回)巡視をする必要があります。

法人全体を見てもらっているからひと月毎に順番に巡視を行っていけばよいわけではないのです。

この点の認識の間違いで労基署から指摘を受ける事業所はしばしばありますのでしっかりと理解しておく必要があります。

複数の事業所を一人の産業医に任せるメリットは?

複数の事業所を一人の産業医に依頼するメリットは何でしょうか?

信頼できる先生に法人内の複数のオフィスや工場を任せたいと思うことは少なくありません。

実際に職場の状況をよく理解している産業医に全体を見てもらうことで業務が効率化されたり判断の基準が一定に保たれるなどメリットが存在しています。

特に、化学物質の管理など難易度の高い業務が多い場合などには担当の産業医が標準化して担当することは合理的でしょう。

全国に支店が存在する場合は統括産業医を設置することも

統括産業医という言葉をご存じでしょうか?

統括産業医とは全国に複数の事業所が存在している場合に業務の均一化や健康施策を実施する頭脳となるような産業医です。

今回の記事のように一人の産業医に複数の事業所を担当してもらいたいが、あまりに事業所が遠方にある場合に依頼するケースが多いです。

優秀で実績のある産業医を統括産業医として設置することは社内全体の衛生水準の向上につながります。

人の産業医が全体を巡視することが時間的・距離的に難しい場合にも活用されます。

なお、統括産業医という言葉は法令上の言葉ではなく、通例で呼ばれている用語です。

まとめ

嘱託産業医であれば同じ産業医に複数の事業所を担当させても問題ありません。

一方で、産業医の選任は法人単位でなく1事業所ごとに選任届を提出する必要があります。

また、巡視の義務に関しても法人全体で課されるのではなく、事業所ひとつひとつに課されることになります。

複数事業所を一人の産業医に依頼する場合は注意して選任を行っていきましょう。

産業医/健康経営エキスパートアドバイザー 角田拓実