産業医が持つ法人と契約しても大丈夫?現役産業医が解説します
「従業員の健康管理は会社にとって重要だけど、産業医と契約するメリットって実際にあるの?」
50人以上の事業所になり産業医を導入するにあたってあなたはそう思っていませんか?
産業医との契約は、従業員の健康を守るだけでなく、会社の安定経営にも貢献する重要な決断です。
2020年には、コロナ禍の影響もあり、うつ病などの精神疾患が増加傾向にあります。従業員のメンタルヘルス対策は、もはや企業にとって避けて通れない課題です。
一方で、近年の傾向として個人の産業医が法人として産業医事務所を経営するパターンが増えてきています。
この記事では、個人の産業医が運営する法人との契約に関してメリットとデメリットを、そして報酬に関わる情報を説明をしていきます。
ぜひ、この記事を読んで、自社にとって最適な選択を検討してみてください。
個人の産業医が持つ契約のメリットとデメリット
産業医と契約するかどうかは、会社にとって難しい一面があります。産業医と契約する方法もいくつかパターンがあります。
医師会や病院に産業医を紹介してもらうパターン
産業医仲介事業者を活用するパターン
地元の産業医事務所と契約するパータン
フリーランスの産業医と契約をするパターン
上記のように多様な形態が存在しています。
どのパターンもメリットとデメリットがあるため担当者が悩んでしまうことも非常に理解できます。
個人の産業医法人と契約するメリットは
そもそも産業医が法人を立ち上げ産業医契約を行うことは問題無いのでしょうか?
一般的に医業(注射などの医行為を伴う仕事)は一般の法人としては事業として行うことができないとされています。
一方で、産業医の業務は医行為としては考えられておらず、一般の法人である株式会社や合同会社で運営をすることが可能と言われています。
実際に大手の産業医仲介事業者も株式会社として設立、運営されています。中には、上場して活躍している企業もあります。
したがって小規模な産業医事務所も株式会社・合同会社として法人で運用されていることがあります。
個人の産業医法人と契約するメリット
個人の産業医法人と契約するメリットは何でしょうか?
一つ目は産業医として独立し生計を立てている事務所ですので、産業医としての能力が高いことが特徴です。病院などの医師もそれぞれ研鑽を続けていますが、産業医に特化することによって知識・経験に差は出てくるものです。
二つ目は比較的小回りが利きやすいということです。大手仲介会社の傾向としてはやはり標準化やシステム化が進んでおり、もう少しこうして欲しいのにといった際にどうしても各現場や仲介会社担当者レベルでは変更ができないことも少なくありません。
ちょっとした変化対応を受けてくれるのは個人の産業医法人が強いイメージです。大規模にシステムを使って管理したりすることは資本力が大きい大手法人です。
小規模法人を取るか大手を取るかは、会社の規模や業種、産業医に求める役割によって異なります。費用を抑えるためには、複数の産業医事務所から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
リスクと注意点
個人の産業医事務所の欠点としては人数や代替要員が少ないことです。多くが数人の提携産業医と事務職で運営していることが多いです。
担当医師の急病などが発生するとどうしても訪問が難しくなってしまう場合があります。
一方で大手産業医紹介法人の場合は登録医師が非常に多いので交代や代打といった対応は比較的容易です。
産業医との契約方法と必要な手続き
個人が運営している産業医法人といざ産業医と契約しようとしたときに、「どんな手続きが必要なの?」「契約って難しそう…」と感じる方もいるかもしれません。この章では、産業医との契約方法を、必要な書類や契約の種類、更新時のポイントなどを踏まえてわかりやすく解説していきます。
契約の流れと必要書類
産業医との契約は、通常の仕事の契約と同様です。まずは良い取引先(産業医)を見つけて、どんなことをお願いしたいか相談し、そして契約という形にします。
大きな流れとしては下記のようになります。
- 情報収集・検討: 最初は、どんな産業医の先生が自社の会社に合うのか、インターネットや専門機関を通して情報収集し、じっくり検討します。税理士や社労士から紹介してもらうことも一つの手でしょう。会社の規模や業種、抱えている健康上の課題によって、最適な産業医は異なるからです。
- 医師との面談: 良いなと思った先生が見つかったら、実際に会って、会社の状況や課題、そして契約内容について詳しく話し合います。この面談を通して、先生との相性や、自社のニーズに合致しているかを確認することが重要です。
- 契約内容の決定・契約書の締結: 報酬や契約期間、具体的な業務内容などを決定し、双方納得した上で、正式に契約を結びます。お互いの責任や義務を明確にするための大切なプロセスです。
- 業務開始: 契約に基づき、産業医の先生による健康相談や職場環境の巡視などの業務が始まります。
契約形態はどうなる?
基本的に本サイトを見る担当者の方は産業医選任は50人~999人であることが多いと考えますので、契約形態は嘱託産業医という形態になるでしょう。
嘱託産業医とは非常勤の産業医として月に1回~数回訪問してもらうパータンです。
個人で契約するにしろ、産業医が持つ法人と契約するにしろ業務内容は全く変わりません。
異なる点があるとすると、報酬の支払い方法が変化します。個人の場合は給料として所得税を源泉徴収し、法人の場合は消費税がかかります。詳しくは下記の記事で紹介しています。
契約更新に関するポイント
産業医との契約期間は、通常1年間です。契約期間満了後は、契約を更新するか、別の産業医と契約し直すかを選択することになります。契約更新時には、以下の点に注意しましょう。
- 評価: これまでの産業医の活動内容を評価し、契約更新が適切かどうかを判断する必要があります。これは、学校の通知表のように、産業医の先生がどれだけ会社と従業員の健康に貢献してくれたかを評価するプロセスです。
- 費用: 契約更新時の費用や報酬体系について、事前に確認しておきましょう。家賃の更新料と同じように、契約を続けるにあたって発生する費用を事前に把握しておくことが大切です。
- 契約内容の見直し: 必要に応じて、契約内容の見直しを行うことも可能です。会社の状況や従業員のニーズは変化するものです。そのため、契約更新を機に、当初の契約内容を見直し、より良い産業保健体制を構築していくことが重要です。
契約更新は、単に手続きを済ませるだけでなく、産業医との信頼関係を築き、より良い産業保健体制を構築していくための重要な機会と捉えましょう。
評判や選び方に関するアドバイス
産業医の先生を選ぶ際には、費用だけで決めるのではなく、経験豊富な先生や、会社の仕事内容や規模に合った先生を選ぶことが大切です。
信頼できる産業医の先生を見つけるためのポイントをいくつかご紹介します。
- 専門分野: 会社の仕事内容や、従業員によくある健康上の悩みに詳しい先生を選びましょう。法人を持って専門的に活動している医師はしっかりと対応してくれるケースが多いです。
- 実績: 今まで、どんな会社で産業医のお仕事をしてきたのか、経験を確認しましょう。産業医が持つホームページを確認してみるとよいでしょう。
- コミュニケーション能力: 従業員が相談しやすい、優しい先生であることも大切です。従業員が安心して健康の相談をできるような、話しやすい先生を選びましょう。これは実際に商談・面談をして確認していきましょう。
産業医の先生としっかり契約して、従業員の皆さんが元気に働けるように、そして、より働きやすい職場環境を作っていきましょう。
まとめ
近年、産業医の活動も活発化し法人を持って自身の産業医事務所を運営する産業医も増えてきています。看板を背負って本格的に活動している産業医が多いため注目していきましょう。
また、個人の産業医事務所に相談するメリット・デメリットも紹介しました。しっかりと担当者・会社一丸となって検討をしていただければ幸いです。