産業医は病院の紹介で選んで大丈夫?現役産業医が解説します。
こんにちは。産業医の角田拓実です。
今回は相談で受けることが多い「産業医は病院の紹介で選んで大丈夫?」という質問に回答していきます。
結論から言うと相性と条件がとても大切です。
また病院に務めている先生特有の事情がありますので本記事を読んでメリット・デメリットを確認した上で選任するかどうか?を考えていただければと思います。
病院で紹介してもらうのはメリットは?
病院で産業医を紹介してもらうことは医師会に紹介してもらうことと同様にスタンダードな選任の方法です。
一定規模の病院であれば医師の層も厚く、幅広い経験を積んだ医師を紹介してもらえることが多いです。
実力派の先生に職場に来てもらうことができれば大きなメリットと言えるでしょう。
地域の病院とのコネクションにもなり、困った際に相談できる可能性もあります。
病院で産業医を紹介してもらうデメリットは?
一方で病院に務める医師を選任することにはデメリットも存在しています。
それは、何と言っても「病院の業務により非常に多忙なケースが多い」ことでしょう。
病院ではどうしても外来・病棟・手術といった医師として「対応しなければ命を落としてしまう方」への対応が多いです。
忙しすぎる医師は時に「ある程度健康が保たれており、すぐに命に関わる状態ではない企業」の優先順位を下げざるを得ない状況に置かれがちです。
このような状況にあると職場の健康問題に関して定期的に相談をしたくても「なかなか職場に来ることができない」状態になってしまうことがあります。このような名義貸し状態になってしまったケースは私もしばしば確認しており、職場としても困ってしまったというケースが少なくありません。
職場巡視できないことは法令違反で望ましくない
それでも、「困ったときに相談できればいいか」と思う担当者の方も多いかと思います。
第十五条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 第十一条第一項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果
二 前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であつて、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
労働安全衛生規則より引用
しかしながら、産業医は法令上1か月に1回以上(条件を満たした場合には2カ月に1回以上)の職場巡視を訪問して現地で行わなければならないことになっています。
せっかく実力のある病院の産業医を選任したとしても労基署に指摘されるリスクを抱えたままになります。(2019年の働き方改革以降労基署の指摘は厳しくなってきています。)
なかなか訪問できない医師を変更するにも一苦労
地域の病院から紹介された手前なかなか変更することに苦労するケースもしばしば耳にします。(医師会でも同様のケースが聞かれますが。)
地域の病院も医師会も組織として非常に強固であるため変更の相談をすると大きなデメリットを負ってしまうのではないかと感じる方が多いからです。
もちろん病院も医師会もそのような対応はしませんが、担当者や企業の代表がそのように感じてしまうことも無理はありません。
産業医選任の前にきちんと条件を確認することが大切になってきます。
病院から訪問する産業医はどんな点に注意すればよい?
大切なことはまずは「法律で定められた職務である訪問・巡視」が可能かどうか?は予め確認しておく必要があるでしょう。
選任をしたのに訪問が無ければ本末転倒です。
また、しっかりと面談を予め行い「この産業医であれば職場をいっしょに改善していくことが出来そうだ」という確認を行うことが大切です。
産業医と一緒に職場改善を行っていく際には比較的長い時間がかかります。しっかりとお付き合いできる産業医を探すことが望まれるでしょう。
まとめ
病院から紹介された産業医を選ぶ場合はすぐに決めてしまうのではなく、条件や状況をしっかりとヒアリングした上で納得の上選任を行うことが望ましいです。
産業医を選ぶ方法は医師会や紹介会社や産業医事務所など様々な手段があります。情報を集めたうえで決定していただければと考えます。
産業医/健康経営エキスパートアドバイザー 角田拓実