「産業医に情報の管理を頼んでいるのに、なぜ運用がなかなか定着しないのか」——こんな悩みを抱える人事担当者は少なくありません。
健康情報を産業医・人事・職場の3段階に分けて管理する「2枚運用(3段階管理)」は運用上合理的な運用方法です。しかし実際には、この運用を継続できない産業医が多く存在します。理由は悪意ではなく、圧倒的な工数の問題です。
この記事では、2枚運用がなぜ難しいのか、そして情報分離を怠った場合に何が起きるのかを現役産業医の視点で解説します。
情報管理ルールの整備から、産業医との連携フロー構築まで、現役産業医チームがサポートします。
本来、産業医は3種類の記録を作らなければならない

情報管理の大原則に従えば、産業医は1回の面談から3種類の異なる記録を作成する必要があります。
- 生記録(産業医保存用):面談で話されたすべての情報。病名・本人の悩み・人間関係・プライベートな事情まで含む詳細な記録
- 人事向け加工版:就業制限の根拠と内容に絞った情報。必要に応じて病名の記載を含む
- 職場向け配慮事項:「この人にはこの配慮が必要」という制限内容のみ。病名・詳細な経緯は除く
医療情報の取り扱いの大原則として、「情報を職場で活用・共有するときは、加工して渡しなさい」というルールがあります。これは医療従事者・産業保健職・人事担当者すべてに当てはまる考え方です。
これが、めちゃくちゃ工数がかかる
正しいとわかっていても、3種類の記録を毎回作ることは産業医にとって非常に大きな負担です。
産業医の実稼働時間は限られています。嘱託産業医であれば月1〜2回の訪問が基本であり、その時間内に面談・巡視・衛生委員会への参加をこなします。面談が複数件入る日には、1件ごとに3種類の記録を作ることは現実的に難しい状況になります。
帰宅後・週末に処理するとしても、産業医業務は委託業務であり「いつまでに完成させるか」という締め切りがある。結果として、3種類の加工を省略してしまう産業医が出てくるのが現実です。
情報分離をしないと何が起きるか

工数の問題で情報加工を省略した場合、最悪のケースとして生記録がそのまま職場に届くという事態が起こりえます。
本人が知られたくない情報が職場に流れる
産業医の生記録には、面談で話された個人的な情報が含まれています。
- プライベートの悩み(家族関係・経済状況・恋愛など)
- 職場の人間関係(特定の同僚・上司への不満など)
- 病名・治療の詳細・予後
こうした情報は、職場の上司が知ることで就業配慮が改善されるわけではありません。むしろ「知られたくなかった情報が職場に出回った」という事実が、深刻な問題を引き起こします。
信頼が壊れると、相談が二度と来なくなる
従業員がプライベートな情報を上司に知られたと気づいた場合、その職場への信頼は大きく損なわれます。「あの職場は、言ってはいけないことを漏らす」という認識が広まると、その後、同じ職場の誰も産業医・人事に相談しなくなります。
なぜ「プライベートな情報」が配慮と無関係なのか

面談では「家族との関係が職場ストレスの遠因になっている」「経済的な不安が眠れない原因になっている」といった話が出ることがあります。こうした情報は、産業医が状況を把握するうえで重要ですが、職場が就業配慮を実施するうえでは不要な情報です。
職場に必要なのは「この人の残業を月20時間以内にしてください」という制限の事実であり、「なぜその制限が必要なのか」という医学的・個人的な背景ではありません。情報が多すぎることは、かえって職場での偏見や差別的な扱いにつながるリスクがあります。
工数問題を解決する方向性

「正しいとわかっているが工数がかかりすぎて続けられない」——この問題を解決するには、仕組み(システム)で情報加工を自動化することが有効です。
健康管理システム・産業医向けカルテの中には、面談記録を入力する過程で、自動的に人事向け・職場向けのアウトプットを分けて生成できるものがあります。一度入力すれば3種類の出力が揃う仕組みができれば、産業医の追加工数はゼロに近くなります。
システムを使った面談記録・意見書管理の詳細は産業医の面談記録・意見書をシステム化する方法をご覧ください。
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- 2枚運用(3段階管理)は正しい方法だが、産業医に工数がかかりすぎて継続できないケースが多い
- 本来は面談1件ごとに「生記録・人事向け・職場向け」の3種類を作る必要がある
- 情報分離を怠ると、プライベートな情報が職場に流れ、信頼が崩壊する
- 一度失われた信頼は取り戻しにくく、職場全体の相談機能が失われる
- 工数問題はシステム化で解決できる——仕組みで情報加工を自動化することが現実的な解決策
「やるべきとわかっているが、できていない」状態を放置すると、情報漏洩という形で表面化します。産業医・企業が一緒に仕組みを整えることが、この問題の唯一の解決策です。
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