結論から言うと、労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格した医師は、その合格証だけで産業医に選任できます。日本医師会の認定証は要りません。産業医の要件を定めた労働安全衛生規則 第14条第2項に、日本医師会の研修の修了と並んで、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の合格がはっきり書かれているからです。
選任報告(様式第3号)では、「産業医の場合は医籍番号等」欄の種別に「3」と書き、医師免許証と合格証の写しを添えます。2025年1月1日からは、産業医の選任報告は電子申請が義務になりました。
私自身も、日本医師会認定産業医と労働衛生コンサルタントの両方を持っています。人事の方からよく受ける「先生から合格証しか出てこなかったけど、大丈夫?」という質問に、条文と様式の実物で答えます。
労働衛生コンサルタントの合格証だけで産業医になれる?——なれる。医師会の認定証は要らない

産業医になれるのは、労働安全衛生規則 第14条第2項の要件のどれか1つを満たす医師です。日本医師会認定産業医(指定の研修の修了)も、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の合格も、同じ条文に並ぶ別々の要件です。どちらが上ということはありません。
労働衛生コンサルタントには更新の制度がありません。5年ごとに更新がある日本医師会の認定と違い、一度合格すれば、ずっと産業医の要件として使えます。
ただ、私のまわりでは、労働衛生コンサルタントを持っていても日本医師会の認定を更新し続けている先生がほとんどです。会社の手元に古い認定証の写しがあると、「なんで更新しないんですか」と聞かれてしまうからです。認定が切れたときの扱いは産業医の認定を更新しないとどうなる?にまとめています。
産業医になれる7つのルート——労働衛生コンサルタントは種別コード3

産業医の要件は、労働安全衛生法 第13条第2項と、労働安全衛生規則 第14条第2項で決まっています。規則の5つと、経過措置の2つを合わせて7つです。選任報告では、先生がどれに当たるかを種別コード(1〜7)で書き、それを証する書面の写しを添えます。
| 種別コード | 要件 | 添える書面の例(医師免許証の写しに加えて) |
|---|---|---|
| 1 | 厚生労働大臣が指定する研修を修了(日本医師会認定産業医など) | 研修の修了証・認定証 |
| 2 | 産業医科大学など指定の大学で産業医の課程を修めて卒業し、実習を履修 | 履修の証明書・卒業証書など |
| 3 | 労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格 | 合格証 |
| 4 | 大学で労働衛生の科目を担当する教授・准教授・常勤の講師(元職も) | 在職の証明書など |
| 5 | そのほか厚生労働大臣が定める者 | それに当たることを証する書面 |
| 6 | 平成8年10月1日以前に定められた研修を始めて修了(経過措置) | 研修の修了証など |
| 7 | 平成10年9月30日の時点で産業医の経験が3年以上(経過措置) | 経験を証する書面など |
条文の全文はe-Gov 法令検索の労働安全衛生規則(第14条第2項)で確かめられます。
労働衛生コンサルタントはどんな試験?
医師が受けるときは、筆記試験の一部(指定の講習を修了すれば全部)が免除されますが、口述試験は必ず受けます。私も受けましたが、労働衛生コンサルタントは、口述試験も含めて、労働衛生への深い理解とコンサルティングの力がないと受からない試験です。そこをしっかり学習して、力をつけることが必要な試験だったと思います。試験の中身と、産業医との違いは労働衛生コンサルタントと産業医の違いは?で解説しています。
選任報告(様式第3号)はどう書く?——種別に「3」、合格証の写しを添える
産業医を選任したら、遅滞なく所轄の労働基準監督署長に選任報告を出します(労働安全衛生規則 第13条第2項)。添えるのは、医師免許証の写しと、要件に当たることを証する書面の写しです。労働衛生コンサルタントなら、合格証の写しです。

様式の裏面の別表で、労働衛生コンサルタント(保健衛生)はコード3と決まっているためです。日本医師会認定産業医ならコード1です。

引用:総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
2025年1月1日からは、産業医の選任報告は電子申請が義務になりました(厚生労働省 安全衛生関係主要様式)。入力する項目は紙の様式と同じで、種別には同じく「3」を入れ、合格証などの写しを添付します。
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まとめ
- 労働衛生コンサルタント(保健衛生)の合格証だけで産業医に選任できる。日本医師会の認定証は要らない
- 根拠は労働安全衛生規則 第14条第2項第3号。7つのルートに資格の優劣はない
- 選任報告(様式第3号)は「医籍番号等」欄の種別に「3」。医師免許証と合格証の写しを添える
- 2025年1月1日から、産業医の選任報告は電子申請が義務
- 労働衛生コンサルタントに更新はない。ただし日本医師会の認定も維持している先生がほとんど
日本医師会認定産業医など、ほかの資格の先生のときに書く種別コード(1〜7)と添える書類、提出前のチェックメモは、無料PDF『産業医選任 資格確認・手続きハンドブック』にまとめています。
よくある質問
Q. 労働衛生コンサルタントの合格証で産業医に選任できますか?
はい、できます。労働安全衛生規則第14条第2項により、労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格した医師は産業医の資格要件を満たします。日本医師会認定産業医の資格がなくても、合格証と医師免許があれば選任届が受理されます。
Q. 産業医の資格要件にはどのようなものがありますか?
労働安全衛生規則 第14条第2項の5つ(①厚生労働大臣が指定する研修の修了(日本医師会認定産業医など)、②産業医科大学など指定の大学で産業医の課程を修めた卒業、③労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)の合格、④大学で労働衛生を担当する教授・准教授・常勤の講師(元職も)、⑤そのほか厚生労働大臣が定める者)と、経過措置の2つの、合わせて7つです。どれか1つを満たせば選任できます。
Q. 産業医選任届の提出時に何を用意すればよいですか?
申請書・医師免許・資格証明書が必要です。労働衛生コンサルタントの場合は、選任報告(様式第3号)の「医籍番号等」欄の種別に「3」と記入し、合格証を添付します。所轄の労働基準監督署へ提出します。
Q. 日本医師会認定産業医と労働衛生コンサルタントは更新が必要ですか?
日本医師会認定産業医は5年ごとの更新(単位取得)が必要です。一方、労働衛生コンサルタントは更新制度がなく永続的に有効です。ただし日本医師会認定産業医が期限切れになっても、元々持っている産業医資格(要件を満たした事実)は失われません。
Q. 産業医として優秀な医師を見分けるポイントはありますか?
資格の種類よりも、メンタルヘルス対応経験・職場巡視の質・コミュニケーション能力・業種への理解度が重要です。労働衛生コンサルタントは一定の知識レベルが担保されていますが、それだけで産業医としての実務能力を保証するものではありません。
Q. 労働衛生コンサルタントの合格証があれば、日本医師会の認定は更新しなくていいですか?
産業医の要件としては、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の合格だけで満たします。ただ、会社の手元に古い認定証の写しがあると「なぜ更新しないのか」と聞かれることがあるため、両方を維持している先生がほとんどです。



