産業医はオンライン職場巡視でも問題ない?メリットとデメリットを解説します。

産業医はオンライン職場巡視でも問題ない?現役産業医が解説します。

「オンライン職場巡視で巡視すればいいのでは?」

近年、働き方の変化とともに注目されているオンライン職場巡視。パソコン画面を通して従業員の働く様子や職場環境を確認できる画期的な方法として検討が進められています。しかし、法律的に問題ないのか、従来の職場巡視と比べて本当に有効なのか、疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?

この記事では、オンライン職場巡視の法的根拠やメリット・デメリット、そして導入手順、注意点などを詳しく解説します。

経団連やデジタル庁の検討や提言により少しずつ動きだしてきたオンラインでの職場巡視ですが、現段階の法令ではオンラインは職場巡視として認められていません。

オンライン職場巡視は、コスト削減や時間効率の向上など、従来の職場巡視にはないメリットがある可能性が高いですが、セキュリティ対策や従業員の環境暴露への影響など、注意すべき点も存在します。

この記事を読めば、オンライン職場巡視導入のメリットとリスク、そして効果的な実施方法が理解できるはずです。

オンライン巡視のメリット・デメリットは?

オンライン巡視のメリットとデメリットに関する画像

オンライン職場巡視は、従来の職場巡視と比べて、時間や場所の制約が少なく、効率的に実施できるなどのメリットから注目され始めています。

しかし、一方で「本当にオンラインだけで職場巡視を行っても法律的に問題ないの?」「オンラインだと、従業員の健康状態をきちんと把握できるか不安だ…」といった疑問を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ここでは、オンライン職場巡視は法律で認められているのか、そして、従来の職場巡視と比べて本当に有効なのかどうか、詳しく解説していきます。

オンライン職場巡視が法律で認められているか

現段階ではオンライン職場巡視は法律で認められていません。

2024年現段階では、産業医が職場巡視を行う際、労働安全衛生法に基づき、事業場に必ず訪問することが原則です。

一方で、政府が発表した「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」という計画の中で、オンライン会議システムなどを活用した規制緩和が打ち出されていますが議論あるところであり、将来的にはオンライン巡視が行われるようになるかもしれません。参考:デジタル庁デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン (digital.go.jp)

少しずつ、産業医は必ずしも事業場に物理的にいる必要はなくなり、オンライン会議システムなどを活用した職場巡視も法的に認められるようになっていくと予想されます。

労働安全衛生基準との関係

オンライン職場巡視は、労働安全衛生法の目的である「安全衛生水準の確保」を達成するための有効な手段となりえます。

労働安全衛生法とは、職場における労働災害や病気から労働者を守るための法律です。この法律では、事業者が労働者の安全と健康を守るために、様々な措置を講じなければならないと定めています。

その中でも、職場巡視は、実際に職場を自分の目で見て、危険な場所や健康を害する可能性のあるものを早期に発見し、改善するために重要な役割を担っています。

オンライン職場巡視は、従来の対面方式の職場巡視と比較して、時間や場所の制約を受けにくいという利点があります。

さらに、オンライン職場巡視は、記録を残しやすく、過去の記録との比較も容易であるため、職場環境の改善状況を継続的に把握し、より効果的な対策を立てることが可能になります。

一方で、実際の現場に赴かなければわからない職場の危険性や温度感・湿度間や化学物質のにおいなど専門家によって発覚する問題も多いです。この点は慎重に検討が進むことを祈るばかりです。

オンライン職場巡視のメリットとデメリット

オンライン職場巡視には、従来の職場巡視と比べて、メリット・デメリットがあります。

メリットデメリット
時間と場所の制約が少ない従業員の細かな表情や変化に気づきにくい
コスト削減通信環境や設備が必要
記録の保存と管理が容易緊急時の対応が難しい
編集を行うと多くの場所を巡視できるにおいや温度など五感による異常が分からない

オンライン職場巡視はコスト削減につながります。また、記録を残しやすく、過去の記録と簡単に比較できるため、職場環境の改善状況を継続的に把握することができます。

一方で、オンライン職場巡視には、従業員のわずかな表情の変化や体調不良を見逃してしまう可能性や、安定した通信環境や設備が必要になるといったデメリットも存在します。

オンライン職場巡視を導入する際には、これらのメリットとデメリットを比較検討し、自社の状況に合わせて導入を検討する必要があります。

オンライン職場巡視を仮に行うのであれば

オンライン巡視を仮に導入するとすると、現段階では実地での職場巡視の補助という形態にならざるを得ません。

進んだ事業所ではオンラインも補助に置くことでより有用な職場巡視を取り入れようとするかもしれません。

オンライン職場巡視は離れた場所からでも職場の様子を覗き見ることができる便利なツールです。しかし、便利な半面、注意すべき点もいくつかあります。

セキュリティ対策の重要性

オンライン職場巡視では、インターネットという広大な世界を情報が行き交います。もし、セキュリティ対策が不十分だと、会社の重要な情報や従業員の個人情報が危険にさらされてしまう可能性があります。

このような事態を防ぐためには、オンライン職場巡視に使うシステムを選ぶ際に、セキュリティ対策がしっかりとしていることは非常に重要でしょう。

従業員のメンタルヘルスへの影響

オンライン職場巡視は、従業員の心身にも影響を与える可能性があります。

例えば、常にカメラで監視されているような感覚に陥り、息苦しさを感じてしまう従業員もいるかもしれません。

また、オンラインでの巡視では、従業員の表情や働く様子が分かりづらく、誤解が生じやすいという側面もあります。

このような問題を防ぐためには、オンライン職場巡視を行う目的や方法について、事前に従業員にしっかりと説明することが重要です。

また、従業員が安心して働けるよう、プライバシーに配慮することも大切です。

従来の職場巡視の意義

従来の職場巡視は、産業医が実際に職場を訪れ、五感をフル活用して、その場の雰囲気や従業員の健康状態を直接確認していました。

例えば、工場の騒音レベルや、オフィス内の照明の明るさなど、オンライン上では分かりにくい情報も、直接職場を訪れることで、より正確に把握することができます。

また、従業員と直接顔を合わせて会話することで、表情や声色など、言葉以外の情報からも、従業員の健康状態を把握することができます。

一方で、従来の職場巡視には、移動時間やコストがかかるというデメリットがありました。

その点オンライン職場巡視は、移動時間やコストを削減できるというメリットがあり、デジタル庁や経団連が推し進めようとしている背景があります。

職場巡視に関しても条件を満たせば巡視頻度を落とせるようになってきている背景の存在し変化の予兆を感じます。

今後改革が進んで行くと従来の職場巡視とオンライン職場巡視を組み合わせることで、それぞれのメリットを活かしながら、より効果的な職場巡視を実施していくようになっていくかもしれません。

まとめ

繰り返しになりますが、オンライン職場巡視は現状法令では認められていません。

一方で従来の職場巡視と比べて、時間や場所の制約がなく、コスト削減にもつながると考えられます。

しかし、現場を体感できない・セキュリティ対策・従業員のメンタルヘルスへの影響など、注意点もいくつかあります。オンラインと従来の職場巡視を組み合わせることで、それぞれのメリットを活かした、より効果的な職場巡視が行われるようになるかもしれません。

参考文献