「メンタル不調で1ヶ月休職した社員が、主治医から復職許可の診断書をもらってきました。本人もやる気はあるようです。復帰させても大丈夫でしょうか?」
人事担当者の方からよくいただくご相談です。そして、ここで判断を誤ると、再休職という最悪の結果を招きます。
私は7年ほど現役の産業医として、数多くのメンタル復職判定に立ち会ってきました。その経験から断言できるのは、復職判定は「個別ケースの判断」ではなく「企業の仕組み」として運用すべきだということです。
本記事では、復職判定で陥りがちな3つの罠と、再休職を防ぐ「仕組み化」のポイントを解説します。
休復職プロトコルの整備、産業医面談の実施、保健師による伴走支援まで、現役産業医チームがご提案します。
罠その1:主治医診断書の絶対視

最も多いのがこの罠です。「主治医が大丈夫と言っているから、復帰させていい」と判断してしまうケース。
主治医の役割と限界
主治医の診断は、基本的に本人との面談内容に基づいています。職場の具体的な業務内容や負荷を検証するプロセスは、主治医面談には含まれません。
つまり主治医は、
- 「治療の専門家」であり、就業判定の専門家ではない
- 患者本人(従業員)の言葉でしか職場を理解していない
- 業務遂行能力を客観的に評価する場面がない
という前提で診断書を発行しているのです。
「もう大丈夫」の罠
さらに難しいのは、従業員自身の意欲が判断を歪めることです。
休職が長引けば長引くほど、本人は経済的・心理的に焦ります。「早く復職したい」「迷惑をかけたくない」「自分は治った」――こう主治医に強く訴えかけることで、主治医が本人の挑戦意欲を尊重し、実際には回復が不十分な状態でも復職許可の診断書を発行してしまうケースが少なくありません。
このような検証不在のプロセスは、時期尚早な復職を招く重大なリスクをはらんでいます。
◎ 仕組みとしての解決:主治医診断書の位置づけを明文化
その都度「主治医診断書をどう扱うか」を判断するのではなく、社内ルールとして位置づけを明文化します。
- 主治医診断書は「復職を許可する絶対的な証明」ではない
- 「体調がある程度回復したサイン」として扱う
- その上で、必ず産業医による独自評価を実施する
これを全ケースで同じ手順として運用することで、判断のばらつきを防ぎます。
罠その2:業務遂行能力の確認不足

「会いに行ったら元気そうだった」「明るい表情で受け答えできた」――これは復職判定の根拠になりません。
産業医面談で確認すべき4つの指標
私が産業医面談で確認しているのは、以下の4つの観点です。これらを「印象」ではなく「項目」として全ケース共通で評価します。
- 生活リズムの安定度(起床・就寝時間が一定か、1日3食を規則的に摂れているか、睡眠の質)
- 業務に必要な集中力(2-3時間の継続作業に耐えられるか、読書・執筆など知的作業がどれくらいできるか)
- 体力の回復度(通勤の負荷に耐えられるか、1日8時間の活動を週5日続けられる体力があるか)
- ストレス対処能力(休職に至った原因への自覚があるか、再発予防のための具体的な対策を本人が持っているか)
これらは短時間の面談では測れません。本人の生活記録(休職中の活動状況)を事前に提出してもらい、面談で深掘りする必要があります。
復職判定シートの整備、ご相談ください 評価項目・面談シート・記録テンプレートまで、企業ごとに再現性のある運用をご提案 無料で相談◎ 仕組みとしての解決:全ケース共通の評価シート
サンポチャートが支援する企業では、上記4指標を復職判定シートなどを制作し書面化することを推奨しています。
これにより、「Aさんはこの基準で復職許可、Bさんは別の基準で…」という属人的判断を防ぎ、本人・上司・人事・産業医の4者が同じ情報を見て合意形成できます。
罠その3:復職判定を「その都度の判断」で運用している

3つ目の罠は、最も根本的な問題です。それは、復職判定を「個別ケースごとの判断」で運用していることです。
「Aさんは半分の体力でも復帰させよう、Bさんはフルタイムで…」
このように、ケースごとに違う基準で運用すると、以下の問題が頻発します。
- 判断のばらつき:担当者(産業医・人事)によって結論が変わる
- 本人・上司の不公平感:「なぜあの人は半日勤務でいいのに、私は…」
- 産業医交代時の引き継ぎ困難:過去の判断が再現できない
- 再休職時の責任所在が曖昧:「あの判断は誰がしたのか」
◎ 仕組みとしての解決:復職基準を明文化する
復職判定は「ケースごとの判断」ではなく、「企業の仕組み」として運用すべきです。
サンポチャートが支援する企業では、以下の3つを必ず仕組み化します。
1. 復職基準の明文化
「復職とは、8時間フルタイム勤務に耐えられる状態」を社内ルールとして文書化します。個別事情で例外を作らない。これにより、本人・上司・人事の認識を揃えます。
2. 復職判定プロセスの標準化
主治医情報の確認 → 本人の生活記録レビュー → 産業医面談(評価項目固定)。この流れを全ケースで同一に運用します。
3. 必要に応じた「試し出勤」の設計
フルタイム復職の判定前に、職場への耐性を確認する「試し出勤」(短時間の出社、人と会ってみる、書類整理などをやってみる)を組み込むこともあります。これは復職判定の前段階として位置づけ、ケースごとに「試し出勤するかどうか」をその場で悩まない設計にします。
「この人をどうしよう」と毎回悩むのではなく、「うちの会社はこういう手順で復職判定する」と決まっている状態を作る。これが再休職を防ぐ最大の打ち手です。
復職判定の仕組み化を、現役産業医チームと一緒に
復職基準の明文化、判定シートの設計、プロセスの標準化まで。労働衛生コンサルタント取得・取得目標の現役医師チームが、貴社に最適な仕組みをご提案します。
無料で相談する 通常24時間以内に返信「仕組み化3点セット」で再休職率を激減させる
個別判断に頼った復職運用から、仕組みに基づいた運用へ。私が長年の経験から確信しているのは、以下の3点セットを徹底すれば、再休職率は大きく下げられるということです。
仕組み化 = ① 復職基準の明文化 + ② 評価項目の標準化 + ③ プロセスの可視化
- ① 復職基準の明文化:8時間フルタイム勤務に耐えられる状態が原則
- ② 評価項目の標準化:全ケース共通の判定シート(生活リズム・集中力・体力・対処能力)
- ③ プロセスの可視化:主治医→産業医→人事→本人の合意形成
これら3つを書面化し、全社ルールとして運用します。
「相談件数が増える」のは健全な状態
最後にお伝えしたい大事なポイントがあります。
適切な復職判定の仕組みを導入した直後、社内からの健康相談件数が一時的に増える現象が起きます。
それまで「これは産業医に相談していい話だっけ?」と迷っていた事案が、信頼できる体制が整うことで自然と相談に上がってきます。
最初は「逆に大変になった」と感じるかもしれません。しかし、
- 早期に問題を把握できる
- 重症化する前に対応できる
- 結果として、深刻なメンタル不調や労務トラブルの発生件数が減る
長期的にはトラブル件数が確実に減ります。これが、適切な復職判定の仕組み化の本当の効果です。
まとめ:復職判定は「個別判断」から「仕組み」へ
メンタル休職者の復職判定で、人事担当者が陥りがちな3つの罠は:
主治医診断書の絶対視(検証不在で復帰許可)
業務遂行能力の確認不足(印象で判断)
復職判定をその都度の判断で運用(仕組み化されていない)
これらを避けるためには、「個別判断」を「企業の仕組み」に置き換えることが本質です。
- 復職基準を明文化(8時間フルタイム原則)
- 評価項目を標準化(全ケース共通の判定シート)
- プロセスを可視化(主治医→産業医→人事→本人の合意形成)
サンポチャートでは、復職判定の仕組み化、産業医面談の標準化、運用ルールの整備まで、メンタル対応体制を一気通貫でご支援します。
復職判定の仕組み化を、現役産業医チームと
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