産業医のストレスチェック面談は意味ない?高ストレス者が面談すべき理由3選

産業医のストレスチェック面談は意味ない?高ストレス者が面談すべき理由3選

「ストレスチェックで高ストレスと判定されたけど、産業医との面談って意味あるの?」

あなたはそう思っていませんか? 実は、産業医との面談は、単なる会社の義務ではありません。 高ストレス者こそ、産業医との面談を積極的に活用することで、多くのメリットを得られる のです。

2015年から義務化されたストレスチェック制度は、従業員の心身の健康を守るための取り組みですが、実際には形式的な手続きとして捉えられているケースも多く、有効性を感じられない方もいるかもしれません。 しかし、産業医は、あなたのストレスの原因を医学的な見地から分析し、仕事のパフォーマンス向上や職場環境の改善につながる具体的なアドバイスを提供してくれるのです。

この記事では、産業医のストレスチェック面談が、高ストレス者にとってどのような意味を持つのか、具体的に解説していきます。 あなたが抱えるストレスの解消に向けた第一歩となるよう、ぜひ読み進めてみてください。

産業医によるストレスチェック面談の役割と重要性

現代社会において、仕事上のストレスは避けて通れない問題です。毎日仕事に追われる中で、「最近、なんだか疲れが取れない」「以前は楽しかった仕事に集中できない」と感じている方もいるのではないでしょうか?ストレスをため込みすぎると、心身に不調をきたし、仕事のパフォーマンスが低下するだけでなく、日常生活にも支障をきたす可能性があります。

このような事態を防ぎ、従業員の心身の健康を守るための取り組みとして、2015年12月から義務化されたのがストレスチェック制度です。ストレスチェック制度では、従業員が自分のストレスに気づくためのアンケート調査と、高ストレス者に対して産業医との面談が設けられています。

ストレスチェック面談が意味することとは

ストレスチェック面談は、単なる会社の義務として行われるものではありません。従業員一人ひとりが日々の仕事のストレスと向き合い、心身の健康を保ちながら、より快適に働くためのサポート体制として重要な役割を担っています。

ストレスチェックのアンケートでは、あらかじめ用意された質問に対して「はい」「いいえ」を選ぶだけなので、自分の置かれている状況や気持ちをうまく伝えきれない場合もあるかもしれません。例えば、「仕事の量が多くて毎日残業続きで疲れている…」と感じていても、「残業時間はどれくらいですか?」という質問に対して具体的な時間を選ぶ形式になっていると、自分の感覚と少しずれてしまう場合もあるでしょう。

しかし、産業医との面談では、アンケートでは伝えきれなかった不安や悩みを直接伝えることができます。「仕事の量が多いと感じている」という漠然とした悩みでも、産業医と直接話すことで、「どんな時に仕事量が多いと感じるのか」「具体的にどのような仕事内容に負担を感じているのか」といったことを整理し、自分自身でも気づいていなかったストレスの原因を明確化できるのです。

面談で得られる具体的な情報

面談では、産業医が個別に話を聞くことで、アンケートだけでは読み取れない、従業員一人ひとりの背景や状況を深く理解することができます。

例えば、「仕事の量が多くて毎日残業続きで疲れている…」という悩みを抱えているAさんがいるとします。ストレスチェックのアンケート結果では、「ストレスが高い」という結果が出たとしても、その原因や具体的な解決策まではわかりません。

しかし、面談で産業医が詳しく話を聞くことで、「Aさんは新しい業務を担当することになり、慣れない作業や残業で疲弊している」「責任感が強く、周りの人に頼ることが苦手で、一人で抱え込んでしまいがちである」といったことが明らかになるかもしれません。

これらの情報に基づいて、産業医は、「仕事の優先順位を見直してみましょう」「上司に相談して業務量を調整してもらいましょう」「周りの人に相談したり、協力を求めたりすることは決して恥ずかしいことではありません。一人で抱え込まずに、頼れるところは頼ってみましょう」といった具体的なアドバイスをすることができます。

また、「最近、よく眠れない」「イライラすることが増えた」といった具体的な症状を伝えることで、医師から適切なアドバイスをもらえたり、必要があれば専門医療機関への受診を勧められたりすることもあります。

ストレス対策としての産業医の役割

ストレスチェック制度における産業医の役割は、労働者の心身の健康を守るための相談役です。面談では、労働者一人ひとりの状況を把握し、ストレスの原因やその程度、現在の心身の状態などを詳しく聞き取ります。その上で、ストレスを軽減するための具体的なアドバイスや、職場環境の改善に関する提案などを行います。ストレスチェック制度の実施を通じて、労働者のメンタルヘルス不調を予防し、健康で働きやすい職場環境づくりを目指しています。

例えば、多くの企業では、産業医が職場巡視を行い、従業員のいるオフィス環境や作業環境を実際に見て回ることで、職場環境に潜む潜在的なリスクを洗い出す取り組みを行っています。また、管理監督者向けの研修を実施し、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性や、部下のストレスサインに気づくためのポイントなどを指導しています。

産業医は、従業員と会社、双方の立場を理解した上で、両者をつなぐ架け橋として、より働きやすい職場環境を作るために尽力しています。

産業医のストレスチェック面談は意味ない?高ストレス者が面談すべき理由3選

高ストレス者面談を受ける理由に関する画像

ストレスチェックで高ストレス者と判定されたあなたは、きっと不安な気持ちや、面談を受けるべきか迷っているかもしれません。しかし、高ストレス者こそ、産業医との面談を積極的に活用することで、多くのメリットを得ることができるのです。

メンタルヘルスの専門家によるサポート

産業医は、医師免許に加えて、労働衛生や産業保健に関する専門的な知識や経験を持つ医師です。そのため、あなたのストレスの原因を医学的な見地から分析し、適切なアドバイスやサポートを提供することができます。

例えば、あなたが仕事で強い不安や悩みを抱えているとします。同僚との関係が悪化し、それが原因で仕事に集中できず、ミスが増えてしまい、さらに上司から叱責を受ける。このような悪循環に陥り、眠れない日が続いたり、食欲不振になったり、常にイライラするようになってしまったとしましょう。

このような場合、産業医は、あなたの話をじっくりと聞き、共感しながら、ストレスの原因や症状、改善策などを一緒に考えてくれます。

具体的には、現在の状況を詳しく聞き取り、それがどれくらい辛い状況なのか、心身にどのような影響が出ているのかなどを丁寧に評価していきます。その上で、医学的な知識に基づいたアドバイスや、必要があれば、専門の医療機関への紹介、休養の提案なども行ってくれます。

仕事のパフォーマンス向上につながる

ストレスを放置しておくと、集中力や記憶力の低下、倦怠感、イライラしやすくなるなど、様々な心身の不調につながり、仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。

実際に、集中力の低下によって、普段なら簡単にこなせる業務に時間がかかったり、ケアレスミスが増えたりすることがあります。また、記憶力の低下によって、重要な会議の内容を忘れてしまったり、顧客との約束をすっぽかしてしまったりする可能性もあります。

産業医との面談を通じて、自身のストレスの原因や状態を客観的に把握することで、具体的な対策を立てることができます。ストレスを軽減し、心身の健康を取り戻すことで、仕事への集中力やモチベーションも高まり、結果的にパフォーマンス向上にもつながるでしょう。

職場環境の改善を図るための第一歩

ストレスの原因が、職場環境にある場合、産業医は、あなたの話を参考にしながら、職場環境の改善に向けた提案を行うことができます。

ストレスチェックは、職場全体のストレス状況を把握し、職場環境の改善につなげることを目的とした制度です。しかし、多くの産業医から、その有効性について疑問視する声が上がっています。それは、ストレスチェックが、労働者の健康を守るという本来の目的ではなく、単なる形式的な手続きになっているケースも少なくないからです。

高ストレス者が、産業医との面談で、勇気を持って職場での悩みや課題を伝えることは、職場環境改善の第一歩となります。産業医は、労働者個人と会社の両方の立場を理解した上で、より働きやすい職場環境の実現に向けて、会社側に働きかけてくれます。

例えば、職場でのパワーハラスメントが問題となっている場合、産業医は、会社側にハラスメント防止の研修の実施や、相談窓口の設置などを提案することができます。また、長時間労働が常態化している職場であれば、業務量の適正化や、休暇取得の推奨などを促すことができます。

産業医は、労働者の健康を守ると同時に、企業の生産性向上にも貢献できるよう、積極的に働きかけています。

ストレスチェック面談の流れと内容

ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定されると、産業医との面談が推奨されます。 「面談」と聞いて、堅苦しいイメージを持つ方もいるかもしれません。実際、私も医師になって間もない頃は、患者さんとの距離感をつかめず、うまくコミュニケーションが取れずに悩んだ時期もありました。しかし、患者さんの不安な気持ちに寄り添い、丁寧に話を聞くことの大切さを学び、今では面談を通して、患者さんが抱える不安や悩みに対し、少しでも心の支えになれればと考えています。

あなたはきっと、面談は一体どんな雰囲気で行われるのか、どんなことを聞かれるのか、気になるのではないでしょうか?ここでは、ストレスチェック面談の大まかな流れと内容について詳しく解説していきます。

面談前に準備すること

面談では、現在のあなたの状況をありのままに伝えることが大切です。ストレスチェック制度における医師面接は、労働者の勤務状況、心理的な負担状況、その他の心身の状況などを確認し、その疾病性や仕事との関連性を評価して、セルフケアに向けた保健指導を行う場です。うつ病などの精神医学的診断を必ずしも行うわけではありません。

スムーズに面談を進めるために、以下の項目を事前に整理しておきましょう。

  • ストレスチェックの結果: 自分がどの項目で高い点数だったのか、客観的に把握しておきましょう。例えば、「仕事の質・量」や「仕事の要求」など、具体的にどの項目で高得点だったのかを確認することで、自分がどのようなストレスを感じやすいのかを把握することができます。
  • 現在の症状: 眠れない、食欲がない、疲れやすい、イライラしやすいなど、心身に不調を感じている場合は、具体的にメモしておきましょう。
  • 仕事の内容や環境: 仕事内容で困っていることや、職場の人間関係で悩んでいることなどがあれば、箇条書きでまとめておくと、伝え忘れを防ぐことができます。
  • 改善したい点: 残業を減らしたい、休暇を取得しやすくしたいなど、要望があれば具体的に伝えられるようにしておきましょう。
  • 過去の経験: 過去にメンタルヘルスの問題を抱えた経験や、現在治療を受けている場合は、事前に伝えておきましょう。

実際の面談で行われる質問内容

産業医の先生は、あなたの話をじっくりと聞く姿勢を持っています。リラックスして、思っていることを率直に話してみましょう。主な質問内容は以下の通りです。

  1. ストレスチェックの結果について: 高い点数だった項目について、具体的な状況や気持ちなどを聞かれます。「仕事の量が多くて、いつも締め切りに追われていると感じています」のように、具体的なエピソードを交えて話すと、より的確なアドバイスをもらえます。
  2. 現在の心身の状況について: 睡眠時間や食欲、疲労感、気分の落ち込み、イライラしやすさなど、現在の心身の状況について具体的に聞かれます。「最近、朝起きるのが辛くて、仕事に集中できないことが多くなっています」など、率直な気持ちを伝えましょう。
  3. 仕事内容や職場環境について: 仕事内容や量、人間関係、職場の環境などについて、困っていることや悩んでいることを聞かれます。「上司からの指示が曖昧で、対応に困ることがあります」「職場の雰囲気が悪く、相談できる人がいません」など、具体的な状況を伝えるようにしましょう。
  4. 家庭環境やプライベートについて: 仕事以外のストレス要因を把握するために、家族関係やプライベートな時間の使い方などについて聞かれることもあります。「最近、家族との時間が取れず、ストレスを感じています」「趣味の時間もなく、リフレッシュできていません」など、プライベートな時間の過ごし方についても率直に話してみましょう。
  5. 今後の希望について: 仕事内容の変更や休職など、今後どのようにしたいか、希望を聞かれます。「まずは、残業時間を減らして、自分の時間を持つようにしたいです」「人間関係のストレスを減らすために、部署異動を希望したいです」など、具体的な希望を伝えるようにしましょう。

面談結果に基づく具体的な対応策

面談後、産業医の先生は、あなたの話を総合的に判断し、あなたに最適な対応策を検討します。ストレスチェック制度は、調査票により労働者のストレスの程度を点数化して個別にフィードバックするとともに、その評価結果を踏まえて高ストレス者を選定し、医師による面接指導を実施するものです。医師面接は、高ストレス者のうち、勧奨を受けて、それに応じた者が対象となります。

具体的な対応策の例

  • 就業上の措置: 休職や勤務時間の短縮、業務内容の変更など、あなたの状況に合わせて、会社に適切な措置を意見として提出します。
  • 専門医療機関への受診勧奨: うつ病などの疑いがある場合、医療機関への受診を勧められます。
  • 職場環境の改善に向けたアドバイス: 職場の上司や人事担当者に、環境改善のアドバイスがある場合は説明を行います。
  • ストレスマネジメントの指導: ストレスを軽減するための具体的な方法(リフレッシュ方法や relaxation skill など)を指導します。
  • 相談窓口の紹介: 社内外の相談窓口を紹介し、継続的なサポートを受けられるようにします。

面談は、あなたの悩みを打ち明け、よりよい方向へ進むための第一歩です。産業医の先生は、あなたの味方として、親身になって話を聞いてくれます。安心して、面談に臨んでください。

まとめ

産業医によるストレスチェック面談は、単なる形式的な手続きではなく、高ストレス者にとって多くのメリットがあります。

メンタルヘルスの専門家である産業医は、仕事上のストレスの原因を分析し、適切なアドバイスやサポートを提供することで、心身の健康改善を促します。

また、職場環境の改善に向けた提案を行うことで、より働きやすい環境作りを支援を行います。

ストレスチェックで高ストレス者と判定された場合は、面談を通して自身のストレスと向き合い、具体的な対策を立てることで、仕事のパフォーマンス向上にもつながる。

ストレスチェックや面談は意味が無いとおっしゃらずにぜひ活用いただければと思います。

参考文献

  1. 日野亜弥子, 廣尚典. ストレスチェック制度の医師面接:その考え方,あり方. 医学のあゆみ 263(3):241-245, 2017.