有機則って何?産業医が会社担当者に基本を説明します。
「有機則」=有機溶剤中毒予防規則という言葉を耳にしたことはありますか? 工場や作業現場で働く人にとって、決して聞き慣れない単語ではないはずです。 しかし、具体的にどんな内容なのか、理解している人は少ないのではないでしょうか?
実は、有機則は、私たちが普段何気なく使っている塗料や接着剤などに含まれる「有機溶剤」によって、働く人が病気にならないように守るための、非常に重要なルールなのです。
2022年4月には、労働安全衛生法が改正され、今後数年の間位に有機溶剤を含む約2,000物質近くが「化学物質のリスクアセスメント」の対象となりました。 これは、有機溶剤の危険性を改めて認識し、より安全な職場環境を作るための重要な一歩と言えるでしょう。
この記事では、有機則の基本的な内容から、具体的な対策、そして改正法による影響まで、わかりやすく解説していきます。 ぜひ、最後まで読んで、有機則について理解を深めてください。
有機則は労働安全衛生法に所属する?
有機溶剤中毒予防規則は法令上のどの立場に属するでしょうか。実は有機則は労働安全衛生法の特別則として規定されています。このサイトでも紹介していますが、労働安全衛生法にはより細かい分野を規定した特別則というものが存在しています。
特別則には有機則の他「特定化学物質障害防止規則」「鉛中防止則」「電離放射線障害防止規則」など様々な特別則が存在しています。
有機則の基本とは?その定義と目的を理解する
有機則は、工場などで働く人たちが、塗料や接着剤などに含まれる「有機溶剤」で病気にならないように、国が作ったルールなんです。
私たちの身の回りには、たくさんの化学物質が存在しています。その中でも、シンナーやトルエン、キシレンといった「有機溶剤」と呼ばれるものは、塗料、接着剤、洗浄剤など、様々な用途で使われています。これらの有機溶剤は私たちの生活を便利にしています。しかし、これらの有機溶剤は、使い方を間違えると、健康に悪影響を及ぼす可能性があることを忘れてはいけません。
例えば、ペンキ塗りの仕事をしている人を想像してみてください。ペンキにはシンナーなどの有機溶剤が含まれており、毎日長時間ペンキを扱うことで、有機溶剤を吸い込んでしまう可能性があります。そして、頭痛や吐き気、めまいといった症状を引き起こすことがあります。さらに、長期間にわたって有機溶剤にさらされると、意識障害や手足のしびれといった深刻な健康被害を引き起こす可能性もあるのです。
有機則が目指す労働者の健康と安全
有機溶剤は空気に溶け込み、それを吸い込んだり皮膚から吸収することで体の中に少しずつ蓄積していきます。 例えば、シンナーの臭いを長い間嗅いでいると、頭が痛くなったり、気分が悪くなったりすることがありますよね?
これらはシンナーに含まれる有機溶剤が原因の一つです。このようなことが起きないように、有機則では、工場などで働く人たちが有機溶剤を扱う時に、換気をしっかり行ったり、マスクや手袋を着用したりすることが決められています。
有機則の具体的な内容と項目
大まかに言って規制の対象になる特に有害度の高い第1種、第2種の有機溶剤には換気・作業環境測定・特殊健康診断の実施の義務があります。
- 換気をしっかり行うこと
第1種・第2種の有機溶剤を使用する場所では局所型換気装置やプッシュプル型換気装置といった大掛かりな換気装置の設置が求められます。それだけ悪性度が高いということです。これらの換気装置も定期的に点検を行いきちんと動いているか確認をしていく必要があります。第3種では全体換気装置でもよいとされています。
- 作業環境の測定
有機溶剤を使用した際の濃度を測るために作業環境測定と呼ばれる検査を定期的に行う必要があります。汚染が強い場合はすみやかに対策を行い、働きやすい職場環境を作っていく必要あります。対策方法が分からない場合は作業環境測定士・産業医・労働衛生コンサルタントなどに相談してみるとよいでしょう。
- 保護具の着用
有機溶剤を取り扱う際には、有機溶剤が体内に入るのを防ぐために、マスク、手袋、保護メガネなどの適切な保護具を必ず着用しなければなりません。原稿の法令ではタンクの中など限定的な状況でしかマスクの着用義務はありませんが、経費九州などを考えると適切な手袋の着用が求められるでしょう。
- 健康診断の実施
有機溶剤を取り扱う作業員に対しては、有機溶剤による健康への影響を早期に発見するために、定期的に健康診断を実施することが義務付けられています。 健康診断では、血液検査や尿検査などを行い、有機溶剤による健康への影響がないかどうかを調べます。 もし、健康診断で異常が見つかった場合は、医師の指示に従って、適切な措置を受けるようにしなければなりません。
届け出関連
有機溶剤に関する特殊健康診断の結果は集計したうえで労基署に届け出る必要があります。
一般健康診断の提出が求められるのは従業員数が50人以上の場合ですが、特殊健康診断は50人未満の場合でも届け出義務があるので注意が必要です。
まとめ
有機則は身近な化学物質である有機溶剤の使い方を規定した法律です。有機則は最低限の管理に関して記載されており、最低限が守れていない場合労基署から指導を受けるほか、従業員に重大な健康障害が発生する可能性があります。
化学物質の自律的管理の法令改正に伴い今後さらに対応が難しくなる可能性があります。
今後も当サイトでは最新情報を提供していきます。
参考文献
- 日本の労働災害事例から見た化学物質の健康有害性による重大災害の原因とリスク低減措置(2023年)
- 産業中毒と生物学的モニタリング(2024年)