タイミングを見極め行動変容を狙う「産業医の横顔」vol.6原達彦先生

Profile:株式会社アダプテーション原産業医事務所代表産業医/梅田北オンラインクリニック院長。産業医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本産業衛生学会指導医/社会医学系専門医協会指導医。産業医科大学卒業後、済生会八幡総合病院にて救急医として勤務。西日本産業医衛生会で嘱託産業医として多様な業種で活躍。株式会社小松製作所専属産業医を経験した後、原産業医事務所開業。2023年には梅田北オンラインクリニック開業。

ーー今回の産業医インタビューは大阪で産業医事務所を運営している原達彦先生にインタビューをさせていただきます。よろしくおねがいします。

原先生:こんにちは。産業医の原達彦です。よろしくお願いします。

ーー産業医を育てる大学である産業医科大学のご卒業なんですね。やはり医学生時代から産業医を志していたのですか?

原先生:年代によりますが産業医大を卒業後すぐに産業医になる方は40%ぐらいになると言われています。当時は6年生で進む道を決めることが普通でした。臨床医になるコースか産業医になるコースを選べます。途中で産業医に転向する方も多く最終的には50%から60%くらいの先生が産業医になることもあります。私は当初は救急医学を志し病院で働いていました。救急医として働く中で思うことがあり産業医の道に進みました。

ーー産業医科大学でも臨床の道に進む先生もいらっしゃるのですね。先生が産業医の道に進んだ転機はなんだったのですか?

原先生:救急医を続けるうちに臨床でできることの限界を感じ始めました。救急科で働いている際に受診されたり救急車で運ばれた段階ですでに重症になっている患者さんを多く診察してきました。他にも治療が遅れて対応が難しくなっている状況にも出会うことが多かったです。例えばアルコール性の肝障害であれば救急車で運ばれてきてももうお腹の水を抜くなど対処療法しかできません。重症化する前のタイミングで対応できればという想いが強くなりました。予防医学として働いている年代の人へのアプローチに可能性を感じました。

ーー実際に産業医として職場に入っていく際の苦労はありましたか?

原先生:大学のカリキュラムに助けられたこともあり私は案外苦労は感じませんでした。産業医としての同期からの支援に支えられることが多かったです。職場・会社の方も多くのことを教えていただけました。社会人としてのマナーも職場の中で身に付けさせていただいたと思っています。

ーー労働衛生機関(※)や専属産業医での多様な経験をお持ちですが印象的な業界はありましたか?

原先生:当時は北九州市で働いていました。北九州市は製造業が多い炭鉱の町です。今働いている大阪とは異なり有害な業務は多かった印象です。様々な健康障害に対応する経験をしました。

※労働衛生機関:健診や保健指導などを実施する機関。産業医業務を担うことも多い

ーー産業医として意識していることはありますか?

原先生:担当している会社には施策などを無理やり行わせることはしないように意識しています。会社に産業医としての理想は押し付けません。会社が「やってみたい」と言い出すタイミングを待つようにしています。「会社のやってみたい」には全力でサポートをしています。例えば衛生委員会で「当社の喫煙対策は・・・」という話が出た時などですね。

ーーチャンスを待つのですね。会社をやる気にさせるために働きかけなどはするのですか?

原先生行動変容(※)が起こる種まきはするように意識しています。例えば「健康新聞」ということで衛生講話を行い新しいトピックスを日々提供するようにしています。

※行動変容:身に付けた習慣が変わっていくプロセス

ーー「健康新聞」のお取り組みは面白いですね。ポイントはなんですか?

原先生:とにかく具体的にわかりやすく伝えることがポイントです。例えば夏の発熱がテーマであれば病気の種類だけでなく「薬局の薬の話」など聞いてくれる方の日常生活レベルまで説明を行うこともあります。実践的な話じゃないとちゃんと伝わっていかないと思います。

ーー伝わりやすい情報の提供をしていくのがコツなのですね。

原生:押し付けることはせず、さりげなくお伝えしていくことが大切だと感じています。種火が燃えたらうれしいです(笑)

――産業医事務所を開業した理由を教えてください?

原先生:働き始めてある程度の段階で事務所の開業は意識していました。専属産業医だと1社で1人での活動になりますし、関わる人数が少なくなる。沢山の人によりよい産業保健を届けるためには産業医事務所という形にすることがよいと考えています。多くの方を巻き込みながらアプローチできる点がメリットです。

――オンラインクリニック開業も産業保健と関連がありますか?

原先生:オンライン診療を産業医とコラボさせると生活習慣病も一気に解決できる可能性があります。職場での問題点をオンライン診療に上手に引き継ぐことができるのが強みです。行動変容が起こる際にオンラインであれば受診できる方もいらっしゃいます。

――行動変容が大切なんですね?

原先生私もたくさんの人を見てきましたので経験上でなかなか人は変わらないということを知っています。産業医という枠組みだけでなく様々な手法を交えることが大切だと考えています。場合によってはカウンセリングのような手法を用いて対応することもありますね。

――これから産業医をやる先生に向けて何かメッセージはありますか?

原先生:産業医の世界は臨床医ほど知られていないので不安を持っている方も多いと思います。いざ飛び込むと国の中でもシステムもしっかりしていますし法律で決まっていることも多く明確です。企業の担当者・人事の方から学ぶことも多く楽しく働けると思います。興味があればまずは案件を取って経験してみることが大切です。

――職場の健康管理担当者向けに産業医とうまく働くコツはありますか?

原先生:何かしたいなということがあったら産業医にとりあえず相談ください。産業医自体も企業の方が相談をしてくれることを待っている時もあります。「会社の問題は相談しても仕方ないかな?」と思ってしまうこともあるかと思いますが気軽に相談してください。些細な問題でも課題を共有していただくことが大切です。日々の業務の中に新しい風を入れていくことが新しい対策に繋がっていきます。

――原先生今回は貴重なインタビューを大変ありがとうございました。行動変容のタイミングをしっかり待ってしっかりと対応することが大切ですね。原産業医事務所に産業医の依頼をする際はぜひ下記のホームページからご相談ください。

原産業医事務所のホームページはこちら