地元千葉で産業医活動に取り組む理由は?「産業医の横顔」Vol.3工藤知紀先生

Profile:千葉くどう産業医事務所株式会社代表取締役。日本医師会産業医、健康経営エキスパートアドバイザー、産業保健法務主任者。札幌医科大学を卒業後、製鉄所関連の病院に勤務。業務中にケガをし搬送された患者さんの治療を多数経験したことで、職場の健康管理に携わりたいと産業医活動を開始。現在は地元千葉県で多職種の担当事業所に対して産業医業務・健康経営支援事業を展開している。

ーー本日は千葉県で産業医事務所を開設し活動を行っている工藤先生にお越しいただきました。担当のさんぽちゃーと編集部です。本日はインタビューよろしくお願いします。

工藤先生:お招きいただきありがとうございます。本日はよろしくお願いします。

ーー製鉄所関連の病院勤務している中で産業医を志したということですが、どんなきっかけがあったのですか?

工藤先生:もともとは勤務医として製鉄所関連の病院に務めていました。工場ですのでやはり怪我は完全には無くなりません。救急車で運ばれてきた火傷や外傷の治療等を行っていました。そのなかでも酸欠事故を経験したことが産業医になる大きなきっかけでした。

ーー専属産業医も経験されたとのことで進路として考えた際に大きな決断だったと思われます。産業医の世界に入ってくることに不安などはありませんでしたか?

工藤先生:務めていた病院OBに産業医科大学卒(※)の専属産業医がいました。「まずは産業医の世界に飛び込んでみることが大切。仕事をして始めて分かることが多い。」と背中を押されたため、『まずはやってみようという思いで不安を拭って臨みました。』

※産業医科大学:福岡の医科大学。主に産業医育成のために設立された目的別医科大学。多数の産業医を輩出している。

ーー仕事を始めてみてわかることは多いですよね。実際のイメージはどうでしたか?

工藤先生:実は産業医になる前は「産業医って会社にいて何をしているか?検診をしているのか?」など完全にはわかっていない部分も多かったです(笑)。ただ実際に始めてみると勤務医とは全く異なる世界でした。病院では患者さんと家族に対してコミットすればよかったですが、職場では会社・人事・上司など多くの方の立場を踏まえて仕事をする必要があると気が付きました。

ーー産業保健活動の基本である「仕事と人との適合」という意味では周囲のキーパーソンの存在とどう関わっていくかは非常に重要な問題ですね。

工藤先生:関わり方は大切です。ただし正解は正直なところありません。産業医としての軸を持ちながらケースごとに対応していくようにしています。

ーー問題解決の糸口を探す際はどんな点を意識していますか?

工藤先生:判断を一人ですることはできるだけ避けるようにしています。産業保健スタッフ・人事担当者・職場上司としっかりと情報を交換し最終的に方向性を決めていくようにしています。この調整能力が産業医業務にとって大切です。

ーー職場で良好なコミュニケーションができるように心がけていることはありますか?

工藤先生一回一回の職場巡視や衛生委員会の時間を大切にするようにしています。業務を確実に行うことで信頼関係をしっかり作ることができるよう意識しています。

ーー産業医業務をする際にやりがいを感じる時はどんな時ですか教えてください。

工藤先生:最近は両立支援(※)にやりがいを感じています。従来であれば癌などの重度な疾病にかかってしまった際は退職を余儀なくされるケースが多かったですが、徐々に状況が変わってきています。職場と本人をサポートできている実感があるのでやりがいを感じますね。

※両立支援:病気の治療と仕事を両立させて、仕事を続けていくという考え方。

ーー産業医の業務として基本の部分になりますが職場巡視で意識していることはありますか?

企業内で注目度が高い事例があった際は「その月の注目ポイント」として予め巡視メンバーに共有した上で巡視を行う時があります。テーマを決めると普段見えてこない部分が見えることもありますよ。メンバーの巡視中の気付きも増えます。

ーー地元千葉で産業医事務所を設立して活動している理由を教えてください?

工藤先生産業医としてなるべく医師不足で産業保健が届いていない地域に提供していきたいと考えたことが地元で働くことを決めた大きな理由です。千葉は医師の数が日本で3本の指に入るほど少ないといわれています。企業が産業医を求めても足りない状況になっています。

ーー人事担当者へ産業医とうまく仕事をしていくためのアドバイスはありますか?

産業医の経歴によりますが「先生の得意な分野を把握してみる」ことが大切かと考えています。例えば呼吸器内科が専門であれば「塵肺や喫煙など肺に関連する分野」に関して衛生講話をお願いするとか。専門が全てではありませんが強みを生かしていただくのは大切だと考えます。

ーー最後にこれから産業医を始める先生方にメッセージをお願いします。

工藤先生:産業医のイメージが分かりずらい方もいるかもしれませんが、やはり始めてみて初めて分かることが多いです。産業医になった後は学会やコミュニティ等で相談できる産業医仲間を作ることも大切です。ぜひ思い切って産業医の世界に飛び込んでみてください。

ーー工藤先生本日はインタビューに応じて頂き大変ありがとうございました。工藤先生に産業医の業務を依頼したい際は下記ホームページからお問い合わせください。