工藤知紀先生 プロフィール:千葉くどう産業医事務所株式会社代表取締役・産業医。札幌医科大学卒業後、製鉄所関連の病院での勤務を経て、労働衛生に関心を持ち産業医の道へ。現在は東京・千葉を中心に、健康相談、メンタル対応、健康診断後の面談、健康経営支援など幅広く企業を支援している。SNSやポッドキャスト、noteでの情報発信にも力を入れている。
2年間で広がった産業医としての関わり方
――前回のインタビューから約2年が経ちました。この2年間で、ご自身の中で大きく変わったことを教えてください。
工藤先生:大きく2つあります。
1つ目は、情報発信を始めたことです。ポッドキャストのような音声配信を週1回ほど続けており、1年ほど継続しています。ほかにもnoteの記事など、発信の場が増えました。
2つ目は、企業との関わり方です。以前は、産業医として月1回や隔月で訪問する、いわゆる法令に基づいた産業医業務が中心でした。
最近はそれに加えて、統括的な立場で関わる機会が増えています。複数拠点を持つ企業では、拠点ごとに労働衛生の体制がばらばらだったり、どの拠点がどこまで対応できているのか把握できていなかったりすることがあります。
そうした企業に対して、労働衛生の体制を立て直すプロジェクトに関わることが増えました。衛生管理の仕組みや役割分担、運営方法を一緒に整えていく。通常の産業医業務を超えて、会社全体の健康管理体制を支える関わり方が増えたことは大きな変化です。
情報発信は産業医の“人となり”を伝える手段

――SNSやポッドキャストなどで情報発信を続けている理由を教えてください。
工藤先生:産業医として企業を訪問していると、担当者の方とは基本的に業務の話が中心になります。ただ、その背景にどんな考えがあるのか、どんな人間なのかというところまでは、なかなか伝わりにくいと感じていました。
同じオフィスで毎日顔を合わせる関係であれば、プライベートな話や人柄も自然と伝わります。でも産業医の場合、月1回の訪問や限られた面談の中では、人間味のような部分が見えにくい。
そこで、ポッドキャストなどで自分の考えや日々感じていることを話すことで、「こういう人なんだ」と知ってもらえる機会になればと思っています。1年ほど続けていると、自分の考え方の変化も経時的に残っていきます。それも発信を続ける意味の一つだと思っています。
事前に知ってもらうことで産業保健は動き出しやすくなる
――実際に情報発信を続ける中で、企業からの反応はいかがですか。
工藤先生:産業保健や労働衛生をあまり知らない企業様、特に初めて産業医を導入する企業様には、事前にポッドキャストやnoteを見ていただくことがあります。
そうすると、「先生のnoteにこう書いてありましたが、うちではこうすればいいですか」といった形で、企業側が事前に学習してくださることがあります。その結果、業務に入るときもスムーズになりやすいと感じています。
健診後フォローに残る「分断」という課題
――健診後のフォローも含めて、産業保健業務を一気通貫で支援できる体制が理想だとお話しされていました。現在の企業の健康管理では、どの部分が分断されていると感じますか。
工藤先生:企業の担当者様目線で見ると、健康診断を受けるための病院とのやり取り、結果の受領、就業判定、本人への結果返却、その後の対応など、それぞれの窓口がばらばらになっていることがあります。
その分、担当者様の工数が増えますし、就業判定までスムーズに流れにくいこともあります。システムで管理できている企業はよいのですが、属人的な運用になっている場合、対応が漏れてしまうこともあります。
健康診断を受けて、結果を受け取って、その後にどう対応するか。この一連の工程が分断されていることが、企業の健康管理上の課題だと感じています。
一気通貫の支援が企業・従業員・産業医の三者にメリットをもたらす

―― 一気通貫で支援できるようになると、企業や従業員にはどのようなメリットがありますか。
工藤先生:企業にとっては、まず担当者様の工数を減らせることが大きいと思います。また、健康診断後の就業判定まで確実につなげやすくなり、その後の就業上の措置や受診勧奨もスムーズになります。
従業員にとっても、就業判定の基準が統一されやすいというメリットがあります。窓口が一つになることで、「この数値であれば通常勤務」「この業務内容であれば就業制限が必要」といった判断のばらつきを減らすことができます。
その後の面談や受診勧奨の流れもスムーズになります。企業、従業員、産業医の三者にとってメリットがある体制だと考えています。
複数拠点の企業に求められる本社集約型の健康管理体制
――これからの産業保健では、どのような体制が必要になっていくと思いますか。
工藤先生:地方まで複数拠点を持つ企業では、今後ますます体制づくりが重要になると思います。人口減少や医師の偏在もあり、すべての拠点で十分な産業医体制を整えることが難しいケースも出てくるはずです。
そのため、各拠点でやるべきことは最低限しっかり行いながら、本社で集約できる部分は集約する。そうした体制が必要になっていくのではないかと思います。本社で情報を集約し、一気通貫でサービスを提供することで、会社として法令を遵守しながら、一定のクオリティで健康管理を回せる体制を整えることができます。
近い将来、そうした仕組みづくりのニーズはさらに高まるのではないかと感じています。
産業医を紹介して終わりではなく質を担保する仕組みをつくる
――複数の産業医が関わる場合、サービスの質をどのように担保していくことが重要だと考えていますか。
工藤先生:産業医の先生方にもさまざまな方がいます。未経験だけれど、これから頑張っていきたいという方もいれば、これまでの経験をもとに関わっている先生もいます。
未経験から取り組む先生には、訪問の仕方や報告書の書き方、面談の進め方などをフィードバックすることで、クオリティを高めていけると考えています。
一方で、お客様に対しては、初動のクオリティが非常に重要です。最終的な提出物をチェックしたり、訪問時の会話内容をヒアリングしたり、必要に応じて担当者様へフォローを入れたりすることで、サービスの質をこちらでコントロールするようにしています。
産業医を紹介して終わりではなく、企業にとって「ちゃんと機能する産業医」を届ける仕組みが必要だと思っています。
産業保健は企業全体をより良くできる面白い分野

――産業医として4年目を迎えられた今、若手の産業医やこれから産業保健に関わる人へ伝えたいことはありますか。
工藤先生:僕は、産業保健はとても面白い分野だと思っています。産業医の関わり方は、やり方によってかなり広がりがあります。
臨床医の場合は、患者さんと向き合い、病気の検査や治療をすることが中心になります。
一方で産業医は、企業や働く人を相手に、もっと幅広く関わることができます。産業医という資格を活かしながら、企業全体をより良くしたい、働く人を支えたいと考える人には、とても合っている分野だと思います。
まずは専属産業医や産業医業務を経験してみて、自分に合っているかどうかを一度通ってみるのもよいのではないかと思います。
会社の健康管理体制を一緒につくる産業医へ
――最後に、工藤先生がこれから実現していきたい産業保健の姿を教えてください。
工藤先生:企業が健康管理で困ったときに、必要な支援へスムーズにつながる体制をつくっていきたいです。
健康診断、就業判定、休復職対応、メンタル不調者支援、衛生管理体制の整備は、それぞれ別の課題に見えて、実は一つの流れの中にあります。それらを分断せず、企業がきちんと回る仕組みとして整えていくことが、これからの産業保健には必要だと思っています。
産業医が「ただ訪問する人」ではなく、会社の健康管理体制を一緒につくる存在になること。そうした産業保健を広げていきたいです。
工藤先生へのご相談・お問い合わせ

| 会社名 | 千葉くどう産業医事務所株式会社 |
| 所在地 | 〒260-0015 千葉県千葉市中央区富士見2-21-12 アッシュビル607 |
| 電話番号 | 043-400-3371 |
| 営業時間 | 平日9:00-18:00 |
工藤先生の情報発信

インタビューでもお話しいただいたように、工藤先生は「産業医の人となりや考え方を知ってもらいたい」という想いから、さまざまな媒体で情報発信を続けられています。記事では伝えきれない産業保健への考え方や日々の気づきも発信されていますので、ぜひあわせてご覧ください。

