ストレスチェック全事業所で義務化の動き。50人未満でも必須方向へ。

ストレスチェック全事業所で義務化の動き。50人未満でも必須方向へ。

こんにちは産業医の角田拓実です。

今回はストレスチェックが50人未満のすべての事業所で実施義務が生じる方針を厚生労働省が決めたことに関する情報を共有させていただきます。

現在50人以上の事業所で義務化されていたストレスチェックですが全事業所に拡大ということで注意と対策が必要になってきます。

以下の読売新聞の記事も併せてご確認ください。

働く人の「ストレスチェック」、全事業所に義務拡大へ…昨年度の労災認定は過去最多の883人 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

そもそもストレスチェック制度とは?

スト絵レスチェック制度とは?

ストレスチェック制度とは従業員に対して質問用紙やPCを用いて質問を行いストレスの程度を測る検査です。

方針としてはストレスに対する1次予防という位置づけになっております。一次予防とは「早い段階でストレスに気が付いていただき症状が発生したり悪化しないように予防的に対策を行う」という意味です。

従業員がストレスを高く感じている「高ストレス者」と判断された際は「産業医」との面談を受ける機会が与えられます(この面談に関しては任意となっています。)

面談を実施することにより症状がすでに出ている方や不安が強い方に対して産業医による面談指導やアドバイスを受けることが可能です。

必要に応じて精神科や診療内科の受診をアドバイスする場合もあります。

ストレスチェック制度は義務?

今後すべての職場で実施が必要になるストレスチェックですが今まではどのように実施されていたのでしょうか?

実はすでに50人以上の従業員がいる事業所に関してはストレスチェックは義務化されています。

このストレスチェック制度は2015年より実施されておりほぼすべての企業が実施を行っている状況です。

今回見据えられた方向性としてはこの義務が全ての事業所に広がるという認識でいただければよいでしょう。

詳しい内容は労働安全衛生法という法律によって定められています。

ストレスチェック制度の目的は?うつ病の発見?

ストレスチェック制度の目的は何でしょうか?

うつ病の早期発見が目的だと考える事業者の方もいるかもしれません。

しかし、ストレスチェックの目的はうつ病などの精神疾患の発見ではありません。(もちろん副次的に精神疾患が発見されるケースも存在しています。)

本来の目的はストレスによる精神疾患の「一次予防」となっています。

一次予防という言葉は聞きなれないという方が多いかと考えます。

記事の導入でも紹介したように一次予防とは「早い段階でストレスに気が付いていただき症状が発生したり悪化しないように予防的に対策を行う」という意味です。

従業員自身にストレスの程度を把握してもらい自分自身で対策を実施する必要があるという調査なのです。

高ストレス者には産業医との面談を準備しなければならない?

ストレスチェック制度の中では産業医(医師)との面談が必要になる場合があります。

産業医との面談が必要になるケースは「高ストレス者かつ医師が面談を必要と認めた場合で本人より面談の申し出があった場合」とされています。

高ストレス者であれば医師は面談が必要と判断と基本的には判断しておりますので、高ストレス者が面談を申し込んできた場合は会社として医師との面談を準備する必要があります。

産業医との面談を行うことによってストレスに対する対処方法・体調がすでに悪い場合は場合によっては病院への受診を勧められる場合もあります。

この産業医との面談は高ストレス者へのセーフティーネットとして存在しています。

高ストレス者の希望を無視して面談を実施しないことはトラブルの原因になる可能性があります。

面談を行う産業医ってどんな仕事?

産業医は産業医の資格を持った医師です。

職場の健康管理や職場環境の改善を主な仕事としています。

産業医に関してもストレスチェックが必須であった50人以上の事業所では必須の存在です。

1か月~2カ月に1回は職場の訪問を行い健康管理や健康問題に関する面談を実施します。

ストレスチェックでの高ストレス者の面談も仕事の一つです。

ストレスチェック制度の運営は大変?

従業員のメンタルを扱うストレスチェック制度の義務化に伴い何となく気が重くなってしまった担当者の方もいらっしゃるでしょう。

ストレスに対して対応できるのか?プライバシー問題はどうする?誰が担当する?時間は取られるのか?費用は?

このような悩みがおそらく発生してくると考えます。この問題は2015年のストレスチェック義務化時も多く発生していました。

しかしながら、この9年で多くの会社がノウハウを蓄積して問題無く実施できていることがほとんどです。ストレスチェック支援企業も増えており業務を委託すれば運営の負担感としてはかなり低減できるでしょう。

ストレスチェックはどのようにして行う?

ストレスチェックは紙やパソコンの質問用紙に回答することによってストレスの程度を把握します。

主に57~80問の解答を行いコンピューター上で処理を行い結果を作成します。

厚生労働省のプログラムを使って自社で行うことも可能です。現在ではストレスチェック支援企業に外部委託をするケースがかなり多くなっていることが実情です。

実施者として医師、保健師、精神保健福祉士等の専門家が必要になってきますが、基本的にはストレスチェック支援企業が実施者を選出してくれることが多いです。

したがってプライバシー問題に十分配慮しながら産業医や産業保健師そして支援企業と二人三脚で進めることが重要です。

参考:厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム

義務化拡大の背景は?

ストレスチェック義務化の背景としては精神疾病による労働災害の認定件数が増加している背景があります。

全国的に職場での精神不調が増加しています。産業医として職場で仕事をしている際にも労働災害にいたらなくても職場要因が多分にあるメンタル不調に遭遇するケースは多いです。

実際に国が労働災害として認定した極めて重いケースの精神不調に関しても右肩上がりの状態です。令和5年は約900人もの認定がありました。

またカスタマーハラスメントも原因として含めていくなど新たな試みも行われています。

参考:厚生労働省精神障害の労災補償について

まとめ

カスタマーハラスメントや職場内でのストレスにより精神疾患の労災認定数は急増しています。

今回厚生労働省は新たにストレスチェックの全事業所での義務化の方向へと進み始めました。

大きく変化する職場のストレスチェック環境に関して早めに情報収集を行い対処を進めていきましょう。

さんぽちゃーとでは引き続き産業保健分野の情報を発信していきますので引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

さんぽちゃーと編集長 産業医 角田拓実

参考:読売新聞働く人の「ストレスチェック」、全事業所に義務拡大へ…昨年度の労災認定は過去最多の883人 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)