産業医の見つけ方が分からない?探し方とメリット・デメリットを解説します。
「産業医って、どこで探せばいいの?」
職場環境の改善や従業員の健康管理は、企業にとって重要な課題です。しかし、産業医の探し方や選び方、そしてどんなメリットがあるのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか?
厚生労働省の調査によると、2020年には約8割の企業が産業医を配置していますが、その選び方や活用方法に悩んでいる企業も多いようです。この記事では、産業医の探し方から、選び方、そして具体的なメリットまで、わかりやすく解説していきます。
産業医とはどんな仕事?法令、実務、活用方法に関して徹底解説。
産業医の探し方:主な手段と特徴
職場環境の改善や従業員の健康管理は、企業にとって非常に重要です。健康で働きがいのある職場環境を作るためには、産業医のサポートが欠かせません。しかし、「いざ産業医を見つけよう!」と思っても、どこで探せばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、産業医を探す際の主な手段と、それぞれの方法の特徴について、具体的に解説していきます。
医師会を通じた産業医の見つけ方
各地域の医師会に問い合わせることで、産業医を紹介してもらえます。医師会は、地域医療の向上を目指して活動する医師の団体です。多くの医師が所属しているため、産業医を探している企業にとって、幅広い選択肢の中から最適な人材を見つけられる可能性が高いでしょう。
医師会を通じた探し方のメリットは、地域医療に精通した医師を紹介してもらえる可能性が高い点です。地域の医療機関との連携がスムーズにいく可能性もあり、従業員にとってより良い医療体制を構築できるかもしれません。
仲介会社を活用したメリットとデメリット
産業医の仲介会社を利用するのも有効な手段です。仲介会社は、企業と産業医の橋渡し役となり、契約手続きや料金交渉などを代行してくれます。そのため、企業は産業医探しにかかる手間を省き、本来の業務に集中できます。
仲介会社を利用するメリットは、専門知識を持った担当者が、企業のニーズに合った産業医を紹介してくれる点です。
産業医にも様々な専門分野があります。例えば、メンタルヘルスに強い産業医、過重労働対策に詳しい産業医、特定の疾患に精通した産業医などです。企業は、自社の課題やニーズに合わせて、最適な専門性を持った産業医を選ぶことができます。
また、契約内容に関する相談やトラブル発生時のサポートなども期待できます。産業医との契約は、報酬や業務範囲、守秘義務など、様々な項目を決定する必要があります。仲介会社は、これらの契約内容について専門的な知識を持っているため、企業にとって安心できる存在と言えるでしょう。
一方で、仲介会社に支払う手数料が発生する点がデメリットとして挙げられます。手数料は会社によって異なるため、事前に確認が必要です。近年では産業保健サービスとして職場の健康管理に関わる業務の一翼として産業医が含まれるケースも増えてきています。
病院に産業医を紹介してもらう
病院によっては、産業医を紹介する働きを提供している場合があります。病院に所属する医師が産業医として企業をサポートするケースも多く、医療機関ならではの専門性の高さが期待できます。
病院で産業医を紹介してもらう利用するメリットは、健康診断や医療相談など、産業医業務以外の医療サービスも合わせて利用できる点です。企業は、従業員の健康管理を一貫してサポートしてくれる医療機関と連携することで、より安心して業務に集中できる環境を構築できます。
例えば、定期的な健康診断の実施や、従業員からの健康相談窓口の設置など、病院と連携することで、よりきめ細やかな健康管理体制を構築できます。
独立系産業医事務所の事務所の選択肢と特徴
独立系の産業医事務所に依頼する方法もあります。独立系事務所は、特定の病院や企業に所属せず、産業医業務に特化したサービスを提供しています。専門性の高い産業医が多く、企業のニーズに合わせたきめ細やかな対応が期待できます。
独立系事務所は、複数の産業医が在籍している場合があり、企業の規模や業種に合わせて最適な人材を選任できます。また、健康に関するセミナーや研修の実施など、企業の健康経営を総合的にサポートしてくれる点が魅力です。
例えば、従業員のストレスマネジメント研修や、健康経営に関するセミナーなどを開催している事務所もあります。これらの研修やセミナーを通して、従業員の健康意識を高め、より健康的な職場環境を作ることに貢献できます。
また、独立系事務所は、企業のニーズに合わせて、柔軟なサービスを提供してくれる点も魅力です。例えば、月に数回だけの訪問診療や、オンラインでの健康相談など、企業の状況に合わせて、柔軟に対応してくれる事務所もあります。
自分の会社に合った産業医の選び方
いざ産業医を探そうと思っても、どこで見つければいいか、どんな人がいいのか迷ってしまいます。従業員の健康管理、ひいては会社全体の活力に繋がる産業医選び。最適な産業医を見つけることは、経営者や人事担当者にとって重要な任務と言えるでしょう。
この章では、産業医選びの際に特に注目すべきポイントを、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説していきます。
産業医の専門分野に注目する
産業医にも、内科、外科、精神科など、得意な分野があります。会社の業種や従業員の健康課題に合わせて、専門分野を加味して選ぶことが重要です。
例えば、デスクワーク中心の会社であれば、肩こりや腰痛、目の疲れといった症状に詳しい産業医が適任でしょう。長時間のデスクワークは、身体的な負担が大きいため、これらの症状に特化した専門知識や経験を持つ産業医であれば、より効果的な対策を講じることができるでしょう。具体的には、適切な作業姿勢や休憩時間の指導、運動機会の提供、オフィス環境の改善などを通して、従業員の健康を守ることができます。
また、IT企業のように、長時間労働やストレスを抱えやすい職場環境であれば、メンタルヘルスのケアに強い産業医を選ぶことはオススメです。うつ病やなどの精神疾患は、従業員の生産性低下や離職に繋がる可能性があります。メンタルヘルスに精通した産業医であれば、従業員のストレスチェックや相談対応、必要に応じて専門医療機関への橋渡しなどを行い、心の健康を守るためのサポート体制を構築できます。
従業員の健康状態を事前に把握し、適切な専門知識を持った産業医を選ぶことがオススメです。
とはいえ多くの産業医は産業医業務一般に精通しており多くの業務をこなせることが基本となっておりますので「参考の1つ」として考えるのも大切です。
企業の規模や業種、抱えている健康課題によって、最適な産業医の専門性は異なります。そのため、事前のヒアリングを通して、自社のニーズに合致した専門分野を持つ産業医を見つけ出すことが重要です。
職場環境に適応した産業医の探し方
産業医を探す際には、会社の規模や業種、立地などを考慮することも大切です。
従業員数が多く、事業所が複数ある大企業であれば、複数の産業医と契約し、それぞれの事業所に担当を配置する体制が必要になることもあります。各事業所の規模や業種、従業員の健康状態などを考慮し、適切な人数の産業医を配置することで、きめ細やかな健康管理体制を構築できます。
一方、中小企業であれば、1人の産業医が複数の企業を兼任することも可能です。限られたリソースの中で、効率的に産業保健サービスを提供するためには、複数の企業を担当するケースも少なくありません。
また、会社の事業内容によっては、特定の産業保健サービスに精通した産業医を選ぶ必要もでてきます。例えば、化学薬品を扱う工場であれば、労働安全衛生法に基づいた健康診断や特殊な作業環境管理の知識を持った産業医が求められます。(労働衛生コンサルタント・オキュペイショナルハイジニスト等)化学物質の有害性やリスクアセスメント、作業環境測定などの専門知識を持つ産業医であれば、従業員が安全に働くための環境作りをサポートできます。
さらに、建設業など高所作業や重機操作を伴う業種では、労働災害のリスクが高いという側面があります。そのため、労働災害の予防対策や緊急時の対応に精通した産業医を選ぶことが重要です。
地域密着型産業医の利点と注意点
地域に密着した活動を行っている産業医を選ぶのも一つの方法です。地域密着型の産業医は、その地域の医療機関や関係機関とのネットワークが強く、迅速な対応や連携が期待できます。
例えば、従業員が病気や怪我をしてしまった場合、迅速に適切な医療機関を紹介してくれたり、必要に応じて関係機関と連携してスムーズな社会復帰を支援してくれたりします。
また、地域の特性や企業風土を理解しているため、よりきめ細やかな対応をしてくれる可能性もあります。地域の気候や風土、産業構造などを理解していることで、従業員の健康リスクをより的確に把握し、効果的な予防対策を提案できます。
大規模な対応が難しい場合は、企業の規模やニーズに合わせて、柔軟に対応できる体制が整っているかを確認する必要があります。
産業医に相談するメリット
毎日仕事に追われていると、自分の健康状態や職場環境について、つい後回しにしてしまいがちです。目の前の仕事に精一杯になるのは素晴らしいことですが、心身の健康を保つことは、自分自身はもちろん、会社にとっても非常に大切です。
企業が発展していくためには、そこで働く従業員一人ひとりの健康が欠かせません。健康な従業員は、生産性や創造性の向上、離職率の低下など、企業の成長に大きく貢献します。反対に、従業員の健康状態が悪化すると、仕事の質や効率が低下するだけでなく、休職や離職に繋がる可能性もあります。
産業医は、働く人の心身の健康を守る専門家として、様々な相談に乗ってくれます。企業と従業員の双方にとって、頼りになる存在と言えるでしょう。
職場環境の改善による健康促進
産業医は、職場環境が従業員の健康に与える影響について専門的な知識を持っています。
例えば、長時間労働や夜勤が多い職場では、従業員の睡眠不足や疲労が蓄積しやすく、心身に悪影響を及ぼす可能性があります。実際に、私の患者さんの中にも、長時間労働による慢性的な睡眠不足から、集中力や判断力の低下を訴え、仕事でミスが増えてしまった方がいます。
また、職場の人間関係が悪い場合は、ストレスや不安を感じやすくなるため、メンタルヘルスの問題に発展するリスクも高まります。以前、上司からのパワハラが原因で、うつ病を発症し、休職を余儀なくされた患者さんを診療したことがあります。
産業医は、職場を訪問して従業員への聞き取り調査や職場環境の評価を行い、健康リスクの把握と改善策の提案を行います。具体的には、以下のような対策を提案します。
- 業務内容の見直しや改善: 作業効率を上げるためのツール導入や、業務分担の見直しなどを行います。例えば、同じ作業を長時間続けるのではなく、1時間ごとに異なる種類の作業を組み合わせることで、疲労を軽減できることがあります。
- 休憩時間の確保や取得しやすい雰囲気づくり: 休憩スペースの設置や、休憩時間中のコミュニケーションを促進する取り組みなどを促します。
- 長時間労働の是正: 業務の効率化や人員配置の見直しを促し、必要があれば、経営層に働きかけを行います。
- ハラスメント防止対策: 研修の実施や相談窓口の設置などを通して、ハラスメントの発生予防と早期発見・対応を促します。
- ストレスチェックの実施: 従業員のストレス状態を把握し、適切な対策を講じます。ストレスチェックは、労働安全衛生法で義務付けられているため、企業は必ず実施しなければなりません。
このように、産業医は、従業員が健康に働き続けられるよう、職場環境の改善に積極的に関わっていきます。
メンタルヘルス支援の重要性
現代社会では、仕事やプライベートでのストレスを抱える人が増えています。ストレスをため込み続けると、うつ病や不安障害などのメンタルヘルスの問題を引き起こす可能性があります。
心の病気は、身体の病気と比べて、自覚症状が現れにくく、周囲も気づきにくいという特徴があります。そのため、適切な対応が遅れてしまい、症状が悪化してしまうケースも少なくありません。
産業医は、メンタルヘルスの問題にも専門的な知識と対応経験を持っています。従業員からの相談に対応するだけでなく、必要に応じて専門医療機関への受診を勧めるなど、適切なサポートを行います。
例えば、職場での人間関係に悩んでいる従業員に対しては、個別のカウンセリングを行うことで、問題解決に向けた具体的なアドバイスやサポートを提供します。また、うつ病と診断された従業員に対しては、休職や復職に関する相談に乗り、職場復帰をスムーズに進められるよう支援します。
産業医は、従業員が安心して仕事に取り組めるよう、メンタルヘルスのサポートにも力を入れています。
職場での問題解決とスムーズなコミュニケーション
職場では、人間関係や仕事内容に関する様々な問題が発生することがあります。このような問題を一人で抱え込んでしまうと、ストレスや不安を感じやすくなり、仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼす可能性があります。
産業医は、従業員と会社の間の橋渡し役として、職場での問題解決をサポートします。例えば、従業員からハラスメントの相談を受けた場合には、事実関係を適宜確認し、会社側に適切な対応を求めます。(ハラスメント自体の判断は会社にゆだねられます。)
また、従業員と上司との間でコミュニケーションの問題が発生している場合には、双方の意見を聞き取り、円滑なコミュニケーションが取れるようアドバイスを行います。
産業医は、従業員が安心して仕事に集中できるよう、職場環境の改善や問題解決に積極的に取り組みます。
産業医を利用する際のデメリット
産業医は、職場環境の改善や従業員の健康管理において、企業にとって心強い味方です。しかし、その一方で、導入前にしっかりと理解しておくべき注意点も存在します。費用面、サービスの質、そして従業員のプライバシーに関する問題など、事前に考慮すべきポイントを具体的に見ていきましょう。
探す手間やコストの考慮
適切な産業医と契約するまでには、想像以上に時間や費用がかかる場合があります。
まず、医師会を通じて産業医を探す場合は推薦された医師に関してはなかなか「変えてくれ」と相談しにくい場合があるため、慎重に選択する必要があります。
仲介会社を利用する場合も、仲介手数料や成功報酬といった費用が発生します。会社によって料金体系は様々なので、複数の会社を比較検討し、自社にとって最適な選択をすることが重要です。最近では職場の健康管理サービス内に産業医を含む継続して手数料が発生する契約形態も増えてきています。
さらに、産業医と契約後も、定期的な訪問や衛生講話、資料作成など、継続的な費用が発生します。最近ではZOOM等による遠隔面談料が発生するケースも出てきています。
産業医と契約する際には、初期費用だけでなく、継続的な費用についても考慮する必要があるでしょう。
医療サービスの質に対する注意点
産業医の専門分野や経験年数は、医師によって大きく異なります。そのため、質の高い産業保健サービスを受けられるかどうかは、産業医の選定に大きく左右されます。
例えば、メンタルヘルス対策に力を入れている産業医もいれば、過重労働対策や労働災害予防に精通した産業医もいます。自社の課題やニーズに合致した専門知識や経験を持つ産業医を選ぶことが重要です。
過去の経験から、同じような業種や規模の企業を担当した実績がある産業医であれば、より的確なアドバイスやサポートを提供してくれる可能性が高いと言えるでしょう。
産業医の質を見極めるためには、事前に面談を行い、実績や対応力、そしてコミュニケーション能力などを確認することが重要です。企業側と従業員側の双方の意見に耳を傾け、スムーズなコミュニケーションを取ってくれる産業医であれば、安心して任せることができるでしょう。
プライバシーや信頼性の問題
産業医は、従業員の健康に関する機微な情報を取り扱うため、プライバシー保護や信頼関係の構築が非常に重要になります。
従業員が安心して健康状態や仕事上の悩みなどを相談できるような、信頼できる産業医であるかどうかを見極めることが大切です。産業医の選定段階で、過去の経験談や従業員とのコミュニケーションに対する考え方を聞くことは、信頼できる産業医を見つけるための重要な判断材料になります。
また、個人情報の取り扱いに関する方針や体制が適切であるかどうか、事前に確認することも欠かせません。特に、近年では、個人情報保護法が改正され、企業は従業員の個人情報の保護にこれまで以上に配慮する義務を負っています。産業医との契約においても、個人情報の取り扱いに関する明確なルールを定め、従業員に安心して産業保健サービスを利用してもらえるように配慮する必要があるでしょう。
さらに、産業医との面談内容や健康診断の結果は、場合によっては、企業側に報告されることがあります。そのため、産業医との面談内容や情報共有の範囲について、事前に従業員にしっかりと説明し、同意を得ておくことが重要です。
まとめ
産業医は、職場環境の改善や従業員の健康管理において、企業にとって重要な役割を担います。しかし、いざ産業医を探そうと思っても、医師会、仲介会社、病院、独立系事務所など、様々な選択肢があり、どこから探すべきか迷う方も多いでしょう。
産業医を選ぶ際は、会社の業種や従業員の健康課題、企業規模、立地などを考慮し、専門分野や経験、コミュニケーション能力などを確認することが重要です。
産業医は、職場環境改善、メンタルヘルス支援、問題解決など、従業員が安心して働ける環境を作るための様々なサポートを提供します。一方で、費用面、サービスの質、プライバシーに関する問題など、注意点も存在します。事前にしっかりと理解した上で、自社にとって最適な産業医を選びましょう。