産業医による長時間残業面談の基準は?80時間で過労死リスク大!!

産業医による長時間残業面談の基準は?80時間で過労死リスク大!!

毎日、仕事に追われていて長時間残業に疲れていませんか? 「もう限界だ」と感じている人も少なくないはずです。

1か月あたりの残業時間が80時間を超えると過労死のリスクが急上昇すると言われています。

この記事では、産業医による長時間残業面談の基準や、過労死を防ぐための対策について解説します。 自分自身の働き方を振り返り、過労死のリスクから身を守りましょう。

法律が定める長時間残業面談の基準とは?

長時間残業面談のポイント

仕事に熱中するあまり気がついたら長時間残業になっていたという経験はありませんか?

現代社会では、仕事量の増加や責任の重圧などから長時間労働を余儀なくされる状況が深刻化しています。

そんな中会社には従業員の健康を守るために産業医という医師がいます。産業医は長時間労働をしている従業員と面談を行い心身の状態をチェックしたり仕事環境の改善を提案したりします

労働時間については、労働基準法という法律で1日8時間週40時間を超える労働は原則として禁止されています。(実際には三六協定により残業を許可する特例を発令することがほとんどです)。企業は従業員が健康的に働けるように労働時間の管理や適切な休暇の取得を促す義務があるのです。 この法律があるにも関わらず、多くの企業で長時間労働が常態化し過労死や過労自殺といった悲しい出来事が後を絶ちません。

長時間労働は単に「疲れる」というレベルの問題ではありません。 体に大きな負担がかかります。 その結果心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気のリスクが高まるだけでなくうつ病や不安障害などの精神疾患を引き起こす可能性もあるのです。 長時間の労働を強制する企業は交通ルールを守らずに車を運転するようなもので重大な事故を引き起こすリスクと隣り合わせと言えるでしょう。

80時間を超える残業がもたらす影響

80時間を超える残業がもたらす影響

厚生労働省が定める「過労死ライン」は1か月あたりの残業時間が80時間を超えることです。 この80時間を超えると過労死のリスクが急激に高まると言われています。

80時間を超える残業がもたらす具体的な影響としては、以下のようなものがあります。

  • 心血管系疾患のリスク増加: 長時間労働によるストレスや睡眠不足は、血圧や心拍数を上昇させ、血管に大きな負担をかけます。その結果、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系疾患のリスクが著しく高まります。
    • 例えば、40代の男性会社員Aさんは、毎日12時間以上働き続け、1ヶ月の残業時間が100時間を超えていました。 Aさんは、仕事熱心で責任感が強く、周囲からも頼りにされていましたが、ある日突然、会社で倒れてしまいました。 病院に搬送されたAさんは、急性心筋梗塞と診断され、緊急手術を受けましたが、意識が戻らないまま帰らぬ人となりました。
  • 精神疾患のリスク増加: 過度なストレスや疲労、睡眠不足は、脳の機能を低下させ、精神状態を不安定にさせます。 その結果、うつ病や不安障害、パニック障害、睡眠障害などの精神疾患を発症するリスクが高まります。
    • 例えば、30代の女性会社員Bさんは、残業や休日出勤が続き、毎日深夜まで仕事をしていました。 Bさんは、もともと真面目で完璧主義な性格でしたが、次第に仕事に対する意欲を失い、集中力や判断力が低下していきました。 ある朝、Bさんは出社することができず、会社に連絡すると、「会社に行きたくない。もう限界だ」と泣き崩れてしまいました。 その後、Bさんはうつ病と診断され、休職を余儀なくされました。
  • 生活習慣病のリスク増加: 長時間労働は、運動不足や不規則な食生活、睡眠不足、喫煙、飲酒などの生活習慣の乱れにつながりやすいです。これらの生活習慣は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高めます。
    • 例えば、50代の男性会社員Cさんは、20年以上、管理職として長時間労働を続けてきました。 Cさんは、仕事中心の生活で、運動する時間もなく、食事も不規則で、お酒やタバコの量も増えていました。 ある日、Cさんは健康診断で高血圧、糖尿病、脂質異常症を指摘され、医師から生活習慣の改善を強く勧められました。
  • その他: 長時間労働は、免疫力の低下、消化不良、頭痛、肩こり、腰痛、眼精疲労などの身体症状を引き起こすこともあります。 また、家族や友人との時間や趣味に費やす時間が減ることで、孤独感や疎外感を抱きやすくなることもあります。

法的根拠と企業の責任

前述したように、労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える労働は原則として禁止されています。 企業はこの法律を遵守し従業員が健康的に働ける労働環境を提供する義務があります。

実際は三六協定を結ぶことにより月45時間までの残業を行う特例を発令していることが一般的です。しかしながら中には過労死ラインである80時間を超える残業を実施する企業も少なくありません。

具体的には、企業は以下の取り組みを行う必要があります。

長時間労働を避けるための対策
  • 労働時間の適正な把握と管理: 従業員の労働時間を正確に把握し、時間外労働や休日労働を適切に管理する必要があります。 そのためには、タイムカードやICカードリーダー等の客観的な記録システムを導入したり、労働時間の自己申告制度を導入するなど、適切な方法を選択する必要があります。 また、管理職による労働時間の適切な管理も重要です。
  • 年次有給休暇の取得促進: 従業員が心身のリフレッシュを図り健康を維持するためには年次有給休暇を取得することが重要です。 企業は年次有給休暇の取得を促進し従業員が休暇を取得しやすい職場環境を整える必要があります。
  • 労働環境の改善: 長時間労働の原因となる業務量の削減や業務効率化、人員配置の見直しなどを積極的に行う必要があります。 また、ハラスメント防止対策やメンタルヘルスケア体制の整備など、従業員が安心して働ける職場環境づくりも重要です。

会社が長時間労働を強要し、従業員が健康を害した場合、会社は法律に基づいて責任を問われる可能性があります。

産業医面談に求められる判断基準

長時間労働において産業医に求められる判断基準

産業医は、面談を通して、従業員の健康状態や労働環境を総合的に判断します。

具体的には、以下の3つの観点から判断します。

  1. 労働時間: 1か月あたりの残業時間、休日出勤日数、深夜勤務の頻度などを確認します。
    • 例えば、1か月あたりの残業時間が80時間を超えている場合は、過労死ラインを超えているため、特に注意が必要です。 また、休日出勤が月に2回以上ある場合や、深夜勤務が週に2回以上ある場合も、体に負担がかかりやすいため、注意が必要です。
  2. 労働内容: 精神的・肉体的負担の程度、ストレスの有無、職務内容の変化、人間関係などを評価します。
    • 例えば、常に高い集中力や注意力が必要な仕事や、重い物を持ち上げるなどの肉体的にきつい仕事は、心身に大きな負担がかかります。 また、上司や同僚との人間関係が悪化したり、パワハラを受けている場合は、強いストレスを感じ、心身に悪影響を及ぼす可能性があります。
  3. 健康状態: 睡眠時間、疲労度、食欲、体重変化、飲酒量、喫煙習慣、メンタルヘルスなどを把握します。
    • 例えば、睡眠時間が6時間未満、あるいは日中に強い眠気を感じることが多い場合は、睡眠不足の可能性があります。 また、食欲不振や体重減少、過度の飲酒や喫煙は、ストレスや心身の不調のサインである可能性があります。

これらの情報をもとに、産業医は、従業員が過労状態に陥っているかどうか、今後、健康上の問題が発生する可能性があるかどうかなどを判断します。 そして、必要に応じて、労働時間の短縮や休暇の取得、労働内容の変更、医療機関への受診などを勧めます。

長時間残業面談の流れと具体的な内容

残業時間が増え不安を感じている方もいるかもしれません。 産業医面談はこうした不安や悩みを打ち明け、専門家のアドバイスを受ける貴重な機会です。 面談では現在の勤務状況や健康状態について詳しくお話いただき会社全体も含めて一緒に解決策を探していきます。

事前に準備すべき資料とは

長時間残業面談の事前に準備すべき資料

面談をスムーズに進めるために、いくつか準備しておくと良い資料があります。

  • 直近数か月間の労働時間の記録: 具体的な残業時間数を把握しておくこと、産業医に現状をより正確に伝えることができます。タイムカードや業務日報などを活用しましょう。残業時間の記録は自分が思っている以上に残業時間が多かったり、逆に少なかったりする可能性に気づくきっかけになります。
    • 例えば、毎日2時間程度の残業だと思っていた方が記録をつけてみると実際には3時間以上残業していた、というケースも少なくありません。
  • 健康状態に関する記録: 睡眠時間や食事内容、最近感じている体の不調などをメモしておきましょう。例えば、「最近、疲れてなかなか眠りにつけない」「以前は趣味を楽しめていたのに、最近はやる気が起きない」といった変化も、産業医は重要な情報として受け止めます。
    • 産業医も医師ですがもちろん普通の人間です。きちんと思っていることを伝えなければ気持ちや考えを伝えることは難しいです。思っていることはしっかり話していきましょう。
  • 仕事内容や職場環境に関するメモ: 残業が多い原因や、仕事で特に負担に感じていることなどを具体的に書き出しておくと、面談でスムーズに伝えやすくなります。職場で起きた出来事や、人間関係で困っていることなども、遠慮なく伝えましょう。
    • 特に、上司や同僚からのパワハラや、過度なプレッシャーなど、精神的な負担が大きい場合は、必ず産業医に伝えましょう。

面談で話し合うべきポイント

面談では、以下のポイントについて産業医とじっくり話し合いましょう。

  • 長時間残業の現状と原因: 具体的にどの業務にどれくらい残業時間がかかっているのか、残業が発生する原因は何かなどを産業医と一緒に整理します。
    • 例えば、「毎日、どの業務にどれくらい時間がかかっているのか」を記録し、その記録をもとに、残業が多い原因を分析します。
  • 心身への影響: 睡眠不足や疲労、ストレス、不安感など、長時間残業によって心身にどのような影響が出ているのかを具体的に伝えましょう。
    • 例えば、「以前はよく眠れていたのに、最近はなかなか眠りにつけない」、「集中力が続かず、ミスが増えてきた」、「イライラしやすくなった」など、具体的な症状を伝えましょう。
  • 改善策: 労働時間の短縮や休暇取得の促進、業務分担の見直し、職場環境の改善など、状況に応じた具体的な対策を産業医と一緒に考えます。
    • 例えば、残業時間を減らすために、業務の優先順位を見直したり、効率的な仕事の進め方を検討したりします。 また、休暇を取得しやすくするために、上司や同僚に相談したり、休暇を取得しやすい雰囲気づくりをしたりします。
  • 相談したいこと: 仕事や健康に関する悩み、不安など、何でも相談しましょう。産業医は、業務上大きな支障をきたさない範囲で守秘義務を守りながら、親身になって話を聞いてくれます。
    • 例えば、「仕事で大きなミスをしてしまい、不安で仕方がない」、「上司との関係が悪化し、ストレスで体調を崩している」など、どんなことでも相談してみましょう。

産業医が行う具体的な評価方法

産業医による過労死リスクの評価方法

産業医は、面談での聞き取りや資料をもとに、あなたの過労死リスクを評価します。 具体的な評価方法は以下の通りです。

  • 労働時間の確認: 過去の残業時間や休日出勤の状況などを確認し、労働基準法に違反する長時間労働が行われていないかなどをチェックします。厚生労働省が発表した「脳・心臓疾患の労災認定基準」では、発症前1か月間に100時間、または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性が強いと評価できることが示されています。
    • 厚生労働省では、「脳・心臓疾患の労災認定基準」を定めており、長時間労働と脳・心臓疾患との関連性を科学的に分析しています。 この基準は、過労死の防止に重要な役割を果たしています。 近年、この基準が見直され、労働時間以外の負荷要因も考慮されるようになりました。 これは、長時間労働だけが過労死の原因ではなく、勤務時間の不規則性や、精神的な負荷なども、過労死のリスクを高めることが明らかになってきたためです。
  • 労働時間以外の負荷要因の確認: 労働時間に加えて、勤務時間の不規則性や休日が少ない、心理的な負荷が大きい仕事内容、職場での人間関係のトラブルなど、労働時間以外の要因も総合的に判断します。
    • 例えば、夜勤が多い、休日出勤が多い、仕事のノルマがきつい、責任が重い、上司や同僚との関係が悪い、ハラスメントを受けているなど、様々な要因が過労死リスクを高めます。
  • 健康状態の確認: 疲労の蓄積や睡眠不足、ストレス症状、高血圧などの生活習慣病の有無などを確認します。
    • 例えば、高血圧・脂質異常症・糖尿病などが基礎疾患である場合は脳血管疾患・心血管疾患のリスクが高く。より注意が必要な状態と言えるでしょう。
  • 必要に応じた検査: 血液検査や心電図検査など、必要に応じて検査を行い、健康状態を詳しく調べます。
    • 例えば、問診や診察の結果、うつ病や不安障害などの精神疾患が疑われる場合は、専門医への受診を勧められることがあります。

産業医は、これらの評価結果に基づいて、あなたに適切なアドバイスや指導を行います。必要に応じて、会社に対して労働環境の改善や休養の勧告などを行うこともあります。

過労死リスクを測る指標とその理由

長時間労働は、まるで身体に鞭打って働き続けるようなもので、心身に深刻なダメージを与えます。 働きすぎは単に「疲れる」というレベルの問題を超え、命に関わる危険性も孕んでいるのです。 では、どの程度の労働時間が危険と判断されるのでしょうか?

労働時間以外の影響要因

過労死リスクを測る上で、労働時間の長さは重要な指標の一つですが、それだけをみて判断することはできません。 長時間労働がすべての人に同じ影響を及ぼすわけではなく、人によって過労への耐性は異なるからです。

労働時間以外の影響要因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 仕事の内容: 常に高い集中力や緊張を強いられる仕事、重い責任を伴う仕事、複雑な判断を必要とする仕事などは、同じ時間働いていても、肉体的、精神的な疲労が大きくなりやすい傾向があります。
    • 例えば、営業職で厳しいノルマを課せられている人や、医療現場で命と向き合っている医師などは、常に高いストレスにさらされているため、過労死リスクが高いと言えます。
  • 職場環境: 職場の人間関係が悪い、ハラスメントやいじめがある、温度や湿度、騒音などの職場環境が悪い場合は、ストレスが増大し、心身に悪影響を及ぼします。
    • 職場でのいじめやパワハラによって、うつ病を発症し、自殺に至るケースも少なくありません。
    • また、空調設備が整っていない職場や、騒音の激しい工場などで働く人は、身体的なストレスも大きいため、注意が必要です。
  • 個人の体質や性格: 体力や睡眠時間、ストレス耐性などは個人差が大きく、生まれ持った体質や性格も過労死リスクに影響を与えます。
    • 例えば、睡眠時間が短くても平気な人や、ストレスをため込みやすい人、真面目すぎる人などは、過労死のリスクが高くなる傾向があります。

このように、過労死リスクは、労働時間の長さだけでなく、様々な要因が複雑に絡み合って決まります。

現在の過労死リスク評価方法

過労死のリスク評価法

日本では、過労死等の防止のために、「過労死等防止対策推進法」が制定されました。 この法律では、過労死を「業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡」または「業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡」と定義しています。 つまり、仕事が原因で亡くなった場合、それが脳卒中や心筋梗塞といった体の病気によるものであっても、うつ病などの心の病気によるものであっても、過労死と認められる可能性があるということです。

そして、過労死のリスクを評価するために、厚生労働省は「脳・心臓疾患の労災認定基準」を定めています。 この基準では、「発症前1か月間に100時間」または「2~6か月間の平均で月80時間を超える時間外労働」がある場合に、業務と発症との関連性が強いと評価されます。 この「月80時間」という数字は、一般的に「過労死ライン」と呼ばれています。

さらに、近年では、労働時間以外の負荷要因も考慮されるようになり、勤務時間の不規則性や、精神的な負荷なども、過労死のリスクを高めることが明らかになってきました。 具体的には、以下のような要因が挙げられます。

  • 勤務時間の不規則性: 交代制勤務や深夜勤務など、睡眠や生活のリズムが不規則になるような働き方は、体内時計を乱し、自律神経のバランスを崩すことで、心身に大きな負担をかけます。
    • 例えば、看護師やタクシー運転手、工場勤務者などは、不規則な勤務体系のために、睡眠不足や生活リズムの乱れに悩まされやすく、過労死リスクが高いと言われています。
  • 拘束時間の長い勤務: 拘束時間が長いということは、それだけ自由な時間が減り、心身の休息やリフレッシュが難しくなることを意味します。
    • 例えば、長時間労働に加えて、通勤時間が片道2時間かかるような場合は、拘束時間が非常に長くなり、心身に大きな負担がかかります。
  • 休日のない連続勤務: 休日を取らずに働き続けると、疲労が蓄積し、心身ともに休養することができません。
    • 週に1日も休まずに働き続けるような生活は、まるで休むことを知らないロボットのようです。
    • しかし、人間は機械ではありません。
    • 十分な休養を取らずに働き続けると、心身に限界がきて、やがては倒れてしまうでしょう。
  • 勤務間インターバルが短い勤務: 終業時刻と次の始業時刻の間隔が短い勤務も、十分な休養時間を確保することが難しく、疲労が蓄積しやすくなります。
    • 例えば、夜勤明けに数時間しか睡眠をとらずに、再び日勤に出勤するような働き方では、慢性的な睡眠不足に陥り、心身に悪影響を及ぼします。
  • 深夜勤務: 深夜に働くことは、体内時計を乱し、睡眠ホルモンの分泌を抑制するなど、心身に様々な悪影響を及ぼします。
    • 深夜勤務が続くことで、うつ病や睡眠障害、生活習慣病などのリスクが高まると言われています。
  • 出張の多い業務: 出張が多いと、移動時間や環境の変化によるストレスが大きくなり、疲労が蓄積しやすくなります。
    • また、慣れない土地での仕事や、時差ボケなども、心身に負担をかけます。
  • 心理的負荷を伴う業務: ストレスの多い仕事や、責任の重い仕事、人間関係に悩む仕事などは、心理的な負担が大きく、心身に悪影響を及ぼします。
    • 例えば、顧客対応や営業職、管理職などは、常に高いプレッシャー altında 仕事をしなければならず、精神的な疲労が大きくなりやすいと言われています。
  • 身体的負荷を伴う業務: 重い物を持ち上げる、同じ姿勢を長時間続ける、立ち仕事や歩き回るなど、身体的な負担が大きい仕事も、過労死リスクを高めます。
    • 例えば、建設作業員や看護師、介護職などは、肉体的にハードな仕事に従事することが多く、腰痛や肩こり、膝の痛みなどに悩まされやすい傾向があります。
  • 温度環境、騒音など: 暑さや寒さ、騒音などの悪い職場環境も、心身にストレスを与え、過労死リスクを高めます。
    • 例えば、真夏の炎天下で建設作業をする、冷房の効かないオフィスで長時間働く、騒音の激しい工場で働くなどは、身体的な負担が大きくなります。

参考:脳・心臓疾患に労災認定基準改正に関する4つのポイント

過労死を防ぐための対策と相談窓口

長時間労働が続くと、体や心の健康を損ない、最悪の場合、過労死に至るケースもあります。

大切なのは、過労死のリスクを正しく理解し、自分自身で予防対策を講じること、そして、困ったときに頼れる相談窓口を知っておくことです。

労働環境の改善に向けた取り組み

長時間労働を減らすためには、まず、職場全体の労働環境を見直すことが重要です。

  • 業務の効率化・改善
  • 残業時間の削減
  • 休暇取得の促進
  • 勤務間インターバル制度の導入

相談窓口と利用方法

仕事で悩みや不安を抱えている、心身の状態が良くないなど、一人で抱え込まずに、相談できる窓口を知っておくことも大切です。

  • 産業医: 会社に産業医がいる場合は、気軽に相談してみましょう。 産業医は、労働者の健康を守るための専門家です。労働時間や職場環境など、仕事に関する健康上の悩みについて、専門的なアドバイスを受けることができます。 定期的な面談や健康診断などの機会を活用して、相談するようにしましょう。例えば、「最近、残業が多くて疲れている」「仕事でミスが増えてきた」「上司との関係が悪化して、仕事に行くのがつらい」など、どんなことでも相談できます。
  • 労働基準監督署: 労働基準法などの法律に基づき、労働条件の改善や労働者の保護を行っている国の機関です。 長時間労働や賃金未払いなど、労働に関するトラブルについて相談することができます。電話相談や窓口相談のほか、インターネットで情報を得ることもできます。例えば、残業代が正しく支払われていないと感じた場合や、ハラスメントを受けている場合は、労働基準監督署に相談することで、適切なアドバイスや指導を受けることができます。
  • 都道府県労働局: 労働に関する様々な相談窓口を設置しており、労働条件や雇用契約、ハラスメントなど、幅広い相談に対応しています。 専門の相談員が、相談者の状況に応じて、適切なアドバイスや情報提供を行ってくれます。例えば、転職を考えている場合や、職場でのトラブルに悩んでいる場合などに、相談することができます。
  • 労働組合: 会社に労働組合がある場合は、組合に相談することもできます。 労働組合は、労働者の権利を守るために活動しており、労働条件の改善や労働問題の解決に力を入れています。 組合員であれば、無料で相談することができます。例えば、賃金や労働時間、休暇などの労働条件について、会社と交渉したい場合や、不当な扱いを受けた場合などに、労働組合に相談することで、サポートを受けることができます。
  • 心の悩み相談窓口: 精神的なストレスや悩みを抱えている場合は、専門の相談窓口に相談することも有効です。 各都道府県や市町村に、こころの健康相談窓口が設置されています。電話相談や面談相談など、様々な相談方法があります。「最近、よく眠れない」「イライラすることが多くなった」「仕事が手につかない」など、一人で抱え込まずに、専門家に相談してみましょう。

企業に求められるサポート内容

過労死を防ぐためには、企業側の積極的な取り組みも不可欠です。 従業員の健康を守り、安心して働ける職場環境を作ることは、企業の社会的責任と言えるでしょう。

  • 労働時間管理の徹底: 労働時間管理システムを導入するなどして、従業員の労働時間を正確に把握し、適切な労働時間管理を行う必要があります。残業時間の多い従業員には、面談を行い、業務量や労働時間の調整について話し合うなど、個別にケアすることも重要です。例えば、従業員にタイムカードを正確に打刻させるように指導したり、残業時間の上限を設定したりするなど、具体的な対策を講じる必要があります。 また、上司が残業を美徳とするような言動を慎み、定時退勤を促すような職場風土を醸成することも重要です。
  • 休暇取得の促進: 年次休暇の取得率を向上させるため、取得しやすい雰囲気づくりや制度の見直しを行う必要があります。 長期休暇を取得しやすいように、業務の調整や代行者を配置するなどのサポート体制を整えることも重要です。例えば、上司が率先して休暇を取得する、休暇を取得しやすいように業務を分担する、休暇中の連絡を控えるなど、従業員が休暇を取得しやすい環境を作る必要があります。
  • 健康的な職場環境づくり: ストレスチェックの実施やメンタルヘルス対策など、従業員の心身の健康をサポートする必要があります。 職場でのコミュニケーションを円滑にするための取り組みや、働きがいを感じられるような職場環境づくりも重要です。例えば、定期的にストレスチェックを実施し、結果に応じて、休養を勧めたり、産業医の面談を受けさせたりする必要があります。 また、従業員同士のコミュニケーションを促進するために、レクリエーションや懇親会などを開催するのも効果的です。
  • 相談しやすい環境づくり: 従業員が悩みや不安を相談しやすい環境をつくることが重要です。 相談窓口の設置や、上司や同僚への相談をしやすい雰囲気づくりを心がける必要があります。 相談を受けた際には、真摯に対応し、適切なサポートを行う必要があります。例えば、相談窓口の担当者を決め、従業員に周知する、相談しやすいように個室を設ける、相談内容を外部に漏らさないことを徹底するなど、具体的な対策を講じる必要があります。

企業は、従業員の健康を最優先し、過労死を防ぐために、積極的に対策に取り組む必要があります。

まとめ

この記事では、産業医による長時間残業面談の基準や過労死リスクについて解説しています。1か月あたりの残業時間が80時間を超えると、過労死のリスクが急激に高まることが、厚生労働省が定める「過労死ライン」で示されています。しかし、過労死のリスクは労働時間だけでなく、仕事の負荷や職場環境、個人の体質など、様々な要因が複雑に絡み合って決まります。過労死を防ぐためには、労働時間管理の徹底や休暇取得の促進など、企業側の積極的な取り組みが不可欠です。従業員の健康を守り、安心して働ける職場環境を作ることは、企業の社会的責任です。