「A事業所では『夜勤×・残業×』の就業制限が出ているのに、同じ症状の従業員がB事業所では『通常勤務OK』になっている」
多拠点で展開している企業の人事担当者の方から、最近本当によくいただくご相談です。そして、これを「拠点の産業医がそれぞれ判断するから仕方ないですよね」と諦めている会社が大半です。
しかし諦めて運用を続けると、本人の不公平感、上司の管理困難、産業医交代時の引き継ぎ崩壊、そして万が一の労務トラブル時に「あの判断は誰が、どの基準でしたのか」が説明できないという重大なリスクに直結します。
拠点ごとの判定軸の統一、共通判定シートの設計、産業医チームの統括体制まで、サンポチャートが伴走支援します。
「A事業所で制限、B事業所で許可」が起こす実害

就業制限の運用が拠点ごとにバラバラだと、目に見える形で4つの問題が起きます。
- 本人・上司の不公平感:「なぜあの拠点の人は半日勤務でいいのに、私は…」「うちの拠点だけ厳しいのでは」という不満が水面下で広がる
- 異動・転勤時の判断混乱:本人がA事業所からB事業所に異動した瞬間、就業制限が変わる(or 維持されない)というおかしな事態が発生
- 産業医交代時の引き継ぎ困難:過去の判断が「誰が・どの基準で」決めたか追えないため、新任の先生が同じケースを再現できない
- 労務トラブル発生時の説明責任:再休職や労災発生時、「なぜAさんは制限なしと判断したのか」を会社として説明できない
特に4つ目は深刻です。判断の根拠が記録に残っていない・全社で統一されていない状態は、訴訟リスクとして年々重くなっています。「現場の産業医に任せています」では、もう守れません。
「現場任せの個別判断」が生む見えないコスト
表面的なクレームだけでなく、現場で見えないコストが積み上がっていきます。たとえば本社の人事担当者が拠点ごとの就業制限案件を整理しようとしたとき、共通フォーマットの記録がないため、Excel に手で転記し直すといった非効率が常態化します。
また、本社の経営層・労務役員に「全社の休復職状況」を報告しようとすると、拠点ごとに判定基準が違うためそもそも数字を横並びで比較できない。これが続くと、健康投資の意思決定そのものが鈍化していきます。
なぜバラバラになるのか — 構造的な3つの理由

「ちゃんとやろうとしていないからバラバラ」ではありません。多くの場合、構造的にバラバラになる仕組みになっています。主な理由は3つです。
理由1:拠点ごとに違う産業医が判断している
多拠点企業では、各拠点に別の産業医事務所・別の医師がついていることがほとんどです。地域性・距離・契約形態の都合で、そもそも同じ先生が全社を見るのは物理的に難しいのが実情です。
理由2:判定軸が言語化されていない
多くの企業では、「うちの会社は就業制限をどういう基準で出すか」が文書化されていません。あるのは厚労省ガイドラインや一般論のみで、自社の業務特性に合わせた判定軸がない。
判定軸が言語化されていないと、各先生は自分の経験と感覚で判断するしかない。経験は人それぞれですから、結論も人それぞれになります。これがバラつきの最大の根本原因です。
理由3:判定書面が拠点間で共有されていない
面談記録や産業医意見書が、拠点別のキャビネット・拠点別のサーバーに保管されていて、本社や他拠点から参照できない状態。これでは「過去にA事業所で同じケースをどう判断したか」を踏まえて判断することすらできません。
「過去のあの判断、参考にしたいんだけど…どこにあるんだっけ?」
これが日常になっている会社は、間違いなく次の3ステップで仕組み化が必要です。
標準化ステップ① 全拠点共通の「判定軸」を本社主導で作る
第一歩は、本社人事と統括産業医が連携して、「うちの会社の就業制限判定軸」を文書化することです。
- 診断名ベースではなく機能評価ベースで判定する原則を明記(「うつ病だから制限」ではなく「8時間集中して業務遂行できる状態か」で判定)
- 制限項目を一覧化(夜勤・深夜勤務・残業・出張・重量物・運転業務・対人接客 など、自社業務に合わせて)
- 各制限を「いつ外すか」の基準を書面化(例:「残業制限は復帰後3ヶ月+産業医面談で集中力指標が回復確認後」)
- 例外運用の判断権者と手順も明記(本社産業医 → 拠点産業医のコンサル経路など)
大事なのは「この文書を見れば、どの先生が判定しても同じ結論になる」状態を目指すことです。完璧でなくていい、まず叩き台を作って運用しながら磨いていけばよいのです。
ポイント:この判定軸の文書化を「拠点産業医に任せる」と、結局バラバラのまま進みません。本社人事 + 統括産業医がイニシアチブを取るのが鉄則です。
標準化ステップ② 全ケース共通の「就業制限判定シート」で運用する
判定軸を文書化したら、その判定軸を1枚のシートに落とし込み、全ケースで同じシートを使って判定する運用に切り替えます。
判定シートに必須の5要素
- 主治医情報欄:診断名、治療経過、復職可否の主治医意見
- 業務遂行能力チェック欄:生活リズム / 集中力 / 体力 / ストレス対処能力 の4観点で評価
- 制限項目チェックリスト:夜勤 / 深夜 / 残業 / 出張 / 重量物 / 運転 など、各項目を「制限あり/なし/段階的解除」で記録
- 段階的復職プラン:Week 1-2(半日)、Week 3-4(6時間)、Week 5- (フルタイム) など、解除タイミングを明記
- 本人・上司・産業医・人事の4者署名欄:全員の合意形成を可視化
このシートを全拠点で同一フォーマットで使うことで、判定の根拠が「印象」から「項目」に変わります。後から見ても「なぜこの判定をしたか」が追跡可能になり、産業医交代時の引き継ぎも一瞬で済むようになります。
貴社向けの就業制限判定シート、設計支援します 業種・業務特性に合わせて、判定軸の言語化からシート設計、運用ルール策定までセットでご提案します 詳しく聞く運用上のコツ:本社で集約して可視化する
シートを作るだけでは効果は半減します。各拠点で記入されたシートを本社で集約し、月次・四半期で全社の状況を可視化するところまでがセットです。
これにより、「拠点別の就業制限件数」「業種別の傾向」「制限解除までの平均期間」といった指標が出せるようになり、健康投資の意思決定の精度が一段上がります。
標準化ステップ③ 産業医チームを束ねる体制を作る
判定軸とシートが揃っても、運用する産業医同士の連携経路がないと標準化は維持できません。そこで3つ目のステップは、産業医チームを束ねる体制を作ることです。
推奨体制:本社統括産業医 + 拠点産業医 + 月1ケース共有会
- 本社統括産業医:全社の判定軸の管理者。判定軸の改定、難しいケースの方針判断、拠点産業医のコンサル窓口を担当
- 拠点産業医:現場での実行責任者。判定シートに沿って判定し、迷ったときは統括産業医に相談
- 月1のケース共有会:全産業医がオンラインで集まり、その月の難ケースを匿名で共有・議論。判定軸の改定ポイントもここで議論
これは大企業向けの仕組みのように見えますが、実は3拠点以上の中堅企業から十分メリットが出ます。月1の共有会を設けるだけで、各先生の判定の精度と一貫性が劇的に上がります。
産業医チーム体制の設計、サンポチャートが伴走します
統括産業医の選任、拠点産業医のスカウト、判定軸とシートの設計、ケース共有会の運用まで、現役産業医チームが一気通貫でご支援します。労働衛生コンサルタント取得・取得目標の医師ネットワークが、貴社に最適な体制をご提案します。
無料で相談する 通常24時間以内に返信標準化のゴール — 属人判断から「企業の仕組み」へ

3ステップの標準化が回り始めると、就業制限の運用は個別判断から「企業の仕組み」に変わります。
- 判断のばらつきが消え、本人・上司の不公平感が消える
- 異動・転勤時も判定が継承され、混乱が消える
- 産業医交代時の引き継ぎが「シート1枚」で完結する
- 労務トラブル発生時、「なぜこの判断をしたか」を会社として説明できる
- 本社で全社の状況が可視化され、健康投資の意思決定が回る
まとめ — 産業医側がイニシアチブを取って整備する
多拠点企業で就業制限がバラバラになるのは、各先生のせいでも、人事担当者のせいでもありません。運用設計の不在が原因です。
これを解決するには、本社人事 + 統括産業医がイニシアチブを取って、以下の3ステップを進めるのが最短ルートです。
標準化 = ① 共通の判定軸の言語化 + ② 全ケース共通の判定シート + ③ 産業医チームを束ねる体制
「うちは規模が小さいから関係ない」と思われた方も、3拠点以上ある時点で標準化を始める価値は十分あります。むしろ拠点が増える前に始めるほうが、移行コストが少なくて済みます。
サンポチャートでは、判定軸の言語化、判定シートの設計、産業医チームの統括体制構築まで、多拠点企業向けの運用設計を一気通貫でご支援しています。
多拠点の就業制限運用を、現役産業医チームと
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現役産業医・保健師チームが、判定軸・判定シート・産業医チーム体制までトータル設計。労働衛生コンサルタント取得・取得目標の医師ネットワークが、貴社の多拠点運用を強くします。
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