【産業保健師の復職支援】メンタルヘルスの不調で休業した労働者への支援とは
メンタルヘルスの不調で休業した労働者が職場復帰する場合、復職支援が必要です。本人と面談し、状況や環境の把握、職場復帰できるかどうかを判断します。
そこで活躍できるのが産業保健師であり、個々に合わせた復職支援を行う役割を担っています。
この記事では、メンタルヘルスの不調で休業した労働者に対する産業保健師の復職支援、職場復帰の支援ステップ、チェックポイントなどを解説します。
企業の産業保健を担当されている方は、ぜひ参考にしてください。
産業保健師の復職支援とは?
産業保健師の復職支援とは、メンタルヘルス不調により休業した労働者が、適宜職場に復帰できるよう支援活動することです。
休業者の状況確認を実施し、個別に職場復帰支援計画を作成する必要があります。復帰後は、継続的なフォローアップで再発防止に努めます。
復職の可否については、産業医または主治医と連携しながら、労働者の復帰意思や状態、主治医の意見、職場環境など多角的な視点でアセスメントを行います。
産業保健師は医療職としての専門性を活かして、労働者と職場の橋渡し役割として、お互いの調整や支援をすることが支援の要です。
産業保健師の復職支援によって、労働者の健康と職場の生産性の両立を実現することができます。
職場復帰支援の各ステップ
職場復帰支援の各ステップは、主に以下の5段階です。
- 休業中のケア
- 主治医による職場復帰可能の判断
- 職場復帰支援プランの作成
- 最終的な職場復帰の決定
- 職場復帰後のフォローアップ
1ステップごとに解説します。
①休業中のケア
休業中のケアは、復職に向けた最初の支援として重要です。
産業保健師が定期的に労働者の状況を確認し、関係性を維持しながら、主治医と連携して治療状況を把握していきます。
休業者と定期的な面談や電話連絡をしながら、心身の状態を確認し、信頼関係を構築します。主治医と密接に連携を取り、治療の進捗状況や今後の見通しについて情報を共有することも大切です。
また、休業期間中の生活リズムの確認も重要で、規則正しい生活が送られているのか、十分な睡眠が取れないかなどをチェックします。必要に応じて職場の状況や変更点なども伝え、復職への不安を軽減する支援を行う必要もあるでしょう。
②主治医による職場復帰可能の判断
主治医による職場復帰可能性の判断は、医学的な観点から復職の準備ができているのか評価する重要なステップです。
症状の改善状況を詳細に確認しますが、特に睡眠状態、気分の安定度、集中力などの回復具合を慎重に評価します。
この情報は産業医と共有され、職場での受け入れ態勢を検討する上での重要な判断材料となるでしょう。
また、症状の改善状況を注意深く確認し、懸念に関する意見書を取得します。 複職が可能と判断された場合は、その条件を確認し、産業医と情報を共有して次のステップに行きます。
③職場復帰支援プランの作成
職場復帰支援計画の作成では、具体的な職場復帰日を設定し、管理監督者と綿密な調整を行います。その上で、業務内容や勤務時間設定、段階的な検討上の配慮事項を決めていく流れです。
この職場復帰支援計画とは、スムーズな職場復帰を実現するための道筋となります。 復職した際の配置状況を確認したり、業務内容を決めたりすることが大切です。
業務内容は段階的に増やしていくことを基本とし、最初は短時間勤務や軽作業から始めることが一般的です。
また、休憩の取り方や残業制限など、具体的いかなる配慮事項を明確にし、有利かつ協力の理解と協力を得られるよう調整します。
④最終的な職場復帰の決定
産業医による面談を実施し、復職の可否について企業による最終判断を下します。 職場との最終調整を行った後、本人に説明を行って、同意を得て復職できるよう支援する流れです。
産業医面談では、労働者の回復状態、職場環境の準備状況、支援体制の整備状況などを総合的に評価します。最終調整を行った後、本人に具体的な復職計画を説明し、正式な復職決定となるでしょう。
⑤職場復帰後のフォローアップ
職場復帰後のフォローアップは、再発防止と安定した継続のための準備です。産業保健師は定期的な面談を実施し、業務遂行状況やメンタルヘルスの状態、職場での人間関係などを丁寧に確認します。
睡眠時間や残業時間、休憩の取得状況などもチェックし、十分な休養が確保できているのか確認することも大切です。本人だけではなく、同僚とも密接に連携しながら、職場全体でサポート体制を維持します。
また、定期的な主治医への通院状況も確認し、治療と仕事の両立を支援します。
職場復帰の可否判断|復職に向けたチェックポイント
職場復帰の可否については、主に以下の5つから判断します。
- 労働者の復帰意思
- 主治医からの意見
- 労働者の状態
- 職場環境の状態
- その他
それぞれ詳しく解説します。
労働者の復帰意思
労働者本人の復職に対する前向きと準備状態は、復職の成功に大きく影響します。また、今後の働き方についての具体的なイメージや、再発予防のための自己管理能力も重要な判断材料となるでしょう。
復帰の意思が強すぎる場合は、仕事に対しての焦りや過度な期待がないかどうかも注意に確認する必要があります。
主治医からの意見
主治医からの医学的な判断は、復職の可否を決める上で最も重要な要素の一つです。症状の回復状況や安定度、投薬の状況、想定される業務の時間、業務制限などを踏まえて、今後の治療計画や通院頻度、想定されるリスクなどを確認します。
特に、何かしらの症状が残っている場合は、それが業務にどの程度影響するのかするか、どのような配慮が必要かについて、詳細な意見を得ることが重要です。
この場合は、労働者のプライバシーに十分配慮しながら、情報交換を行う必要があります。
労働者の状態
労働者の心身の状態は、実際の判断が可能かどうかを判断するために重要な指標です。また、コミュニケーション能力やストレス対処能力も必要といえます。
労働者の状態は、主に4つの視点から評価することが一般的です。
- 治療状況および病状の回復状況の確認
- 業務遂行能力についての評価
- 今後の就業に関する労働者の考え
- 家族からの情報
これらを総合的に確認したうえで、職場復帰ができるかどうかを判断していきます。
職場環境の状態
職場環境が復職を受け入れる準備が整っているのかどうかも、職場環境の状態を確認するうえで大切なポイントです。
また、復職後の業務内容や役割が明確になっており、段階的な業務負荷が増加する可能性があるか、休憩スペースの確保ができることなども重要でしょう。
職場の理解度や受け入れが不十分な場合は、事前の調整や教育が必要となります。
その他
その他にも、多角的な視点をもとに総合的に判断する必要があります。
例えば、通勤時の身体的・精神的負担、経済的な問題の所在、家族のサポート状況などが挙げられます。また、職場以外のストレス、趣味や社会活動への参加状況など、生活全般の安定性を判断する材料となるでしょう。
さらに、過去の休職歴がある場合は、その経験から得た教訓も活かす必要があります。
これらの要素を総合的に評価し、産業医や産業保健師、人事担当者が連携しながら、最終的な復職の是非を判断していきます。
職場復帰後のフォローアップ|チェックポイント
職場復帰後のフォローアップとして、以下の4つのチェックポイントに沿って進めていくことが大切です。
- 症状の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認
- 勤務状況及び業務遂行能力の評価
- 職場復帰支援プランの実施状況の確認
- 治療状況の確認
- 職場復帰支援プランの評価と見直し
メンタルヘルスの不調で休職する労働者は、さまざまな要因が複雑に重なっていることが多いため、慎重にフォローアップをする必要があります。
用意周到に復帰の準備をした場合でも、予定通りに復職できないケースや復職をしても、再度メンタルヘルスの不調をきたす恐れもあるのです。
産業保健師は、労働者が復職した後でも定期的に面談を実施し、労働者の状況を確認するために現場を視察することが大切です。
適宜、職場復帰支援プランの評価と見直しを行い、長期的な視点でフォローを続けていく必要があります。
産業保健師によるメンタルヘルス不調の休業者に対する復職支援を!
メンタルヘルスの不調による休職からの職場復帰には、慎重な判断と段階的な支援が必要です。
産業保健師は、休業中のケアから始まり、主治医との連携、職場復帰支援計画の作成を行います。また、最終的な復職の判断では、労働者の復帰意思や状態、主治医からの意見、職場環境の状態など、多角的な視点からの評価をもとに判断を進めていくことが大切です。
その中でも特に重要なのは、労働者の回復状態と職場の受け入れ体制が十分であることの確認です。
企業は産業保健師を採用し、医療職としての専門性を活かしながら、労働者と職場の橋渡し役として取り組み、休業者のスムーズな職場復帰をサポートしていきましょう。