職場における二酸化炭素濃度の影響と基準値
こんにちは。産業医の角田拓実です。
今回は職場で計測することも増えてきている二酸化炭素濃度に関して説明を行っていきます。
「測ってはいるものの単位もppmであまりピンときません。」と相談を受けることも多いです。
職場の健康管理の目線で二酸化炭素の影響や基準値に関して説明をしていきます。
二酸化炭素濃度が高くなるとどうなる?
二酸化炭素に関してどのようなイメージを持たれるでしょうか?
二酸化炭素があまりに多すぎると命に係わることは想像できる方も非常に多いと思います。
とはいえ実際にオフィス環境では命を落としたり大きな障害を残すレベルに二酸化炭素濃度が上昇することはまれでしょう。(工場などの現場は今回の話では除外して解説します。)
オフィス環境下での二酸化炭素は気が付かないうちに生産性を低下させる働きがあります。
また、二酸化炭素濃度を計測することで換気が十分に行われているか確認することも可能であるため感染症の流行っている環境では換気の一つの指標にもなります。
集中力低下や不調の原因に?
二酸化炭素濃度の上昇は集中力の低下や不調の原因になるとされています。
値が1000ppmを超えると人間に対する有害な影響(倦怠感・頭痛・耳鳴り・息苦しさ)が見られ,また疲労度が高くなることが過去の研究成果からわかっています。
二酸化炭素の濃度の高まりは感覚的な不快感にとどまらず仕事の効率を低下させてしまします。人の密度が高く煩雑な作業に集中することが多いオフィス環境では思わぬ影響を与えてしまいます。
換気の基準にもなる?
二酸化炭素濃度は換気の一つの基準になります。たくさんの人数がいる密集した部屋で換気を行わずに測定を行うとみるみる二酸化炭素濃度が上がっていくことが分かります。
一方で換気を行うとしばらくするときちんと下がっていくことが分かると思います。
感染症が気になる昨今ですので二酸化炭素濃度を基準に確認を行ってみることも環境管理に重要です。
法律やガイドラインで定められた基準値は?
二酸化炭素濃度の指標はいくつか存在しています。
代表的なものとしてはビル管理法における二酸化炭素濃度の基準値です。これは1000ppm以下が推奨値とされています。
先ほどの人体に影響を与え始める濃度を参考にしているとされています。
CO2濃度のもう1つの基準値として,学校保健法の学校環境衛生基準による1,500 ppmも存在しています。
さらに労働安全衛生法においては5000ppm(換気装置がある場合は1000ppm)とされています。
いずれにせよ、1000ppm以下に保つとがが合理的な対応と考えられるのでしっかりと対策をしていきたいですね。
二酸化炭素濃度測定器の種類と選び方
二酸化炭素の濃度測定は従来「検知管」と呼ばれる機材で測定を行うことになっていました。
下記にリンクを記載しますが専門家であれば上手に使えますが、経験のない方にはなかなか使いにくい形式でした。
気体検知管(各部の名称・使い方・実験の注意・実験結果)|shun_ei (note.com)
しかしながら、労働安全衛生法の改正もありNDAR方式と呼ばれる赤外線を用いた測定方法も有効で法律上も認めますということになりました。
NDAR方式はすでに様々な職場で活用されており「よくみる形だね」と考えるかたも多いのではないでしょうか?
デジタル式のものも多く、常時起動できるものも多いので職場の環境モニタリングとしては非常に簡易になったと言えます。
産業医に相談するメリット
二酸化炭素濃度に関して産業医に相談することはメリットがあるでしょうか?
答えはメリットがあると言えます。
二酸化炭素の濃度を計測していたとしても「知識がおぼろげで心配だな」と感じる担当者も多いかもしれません。
また、濃度は関係「何となくこもっている感じがする」「匂いや湿度が気になる」といった質問にも回答いただけることがあるでしょう。
職場の産業医をぜひ活用いただければ幸いです。
快適な職場環境作りのためのポイント
快適な職場作りのために大切なことは「少しずつでも職場の環境を気にかけて、少しずつ改善していくこと」です。
一気に対策をしようとすると担当者や職員も疲弊してしまうことも少なくありません。ぜひ少しづつでもよいので対策をしていただければ幸いです。
産業医/労働衛生コンサルタント 角田拓実