企業の健康経営において、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防が課題の一つとなっています。
従業員の健康を守るためにも、特定保健指導の実施は非常に重要であり、生活習慣改善のためには必要な支援です。そこで、多くの企業では産業保健師による特定保健指導が実施されています。
この記事では、産業保健師による特定保健指導の具体的な支援内容、企業における効果的な取り組み方について詳しく解説していきます。これから産業保健師の配置を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
産業保健師による特定保健指導とは?
特定保健指導とは、特定健診を受けた結果、メタボリックシンドロームのリスクがある40歳から74歳を対象とした支援です。
産業保健師は、専門的な知識と経験を踏まえ、従業員の生活習慣や健康状態に応じた個別的なサポートを提供します。
具体的には、以下のような支援があります。
- 健康診断結果の分析と説明
- 生活習慣の問題点の把握と改善目標の設定
- 具体的な行動計画の作成支援
- 定期的な面談によるフォローアップ
- 改善状況の確認と目標の見直し
産業保健師による支援により、従業員の健康意識の向上と生活習慣の改善を促進することを目指します。
その結果、企業全体の健康レベルの向上が期待できるでしょう。
特定保健指導の実施は保険者の義務
平成20年度から施行された特定健康診査・特定保健指導制度により、医療保険者には40歳以上75歳未満の加入者に対して、特定健康診査(メタボ健診)と特定保健指導を実施する義務が課されています。
主な目的としては、以下の通りです。
- 生活習慣病の予防
- 医療費の適正化
- 国民の健康寿命の延伸
保険者は、特定健康診査の結果に基づき、リスクの程度に応じて対象者を選定し、適切な保健指導を提供する必要があります。
実施率が低い場合、高齢者支援金の加算・減額対策の対象となる可能性もあるため、企業としても積極的な取り組みが求められているのです。
特定保健指導の支援内容は3種類
特定保健指導でおこなう支援は、大まかに3種類にわけられます。
- 情報提供
- 動機づけ支援
- 積極的支援
それぞれ詳しく解説します。
情報提供
特定健康診査を受けた方全員に対して行われる、基本的な支援です。健康診断の結果や生活習慣の改善に関する基礎的な情報を提供します。
メタボリックシンドロームを予防し、健康を維持・増進するために、どのような生活習慣を続けたらいいかを正しく理解するための情報などが主な内容です。
- 健康診断結果の見方
- 生活習慣病のリスク
- 正しい食事や運動の方法
- 禁煙支援に関する情報
これらの情報は、健康診断の結果と一緒に配布され、健康的な生活を送るための生活習慣の見直し・改善のきっかけを期待します。
動機づけ支援
特定健康診査の結果で、メタボリックシンドローム予備軍を対象とした支援です。原則1回の面談を実施する必要があります。
指導内容は、主に以下のとおりです。
- 生活習慣の振り返り
- 健康状態の確認
- 行動目標の設定
- 実践的なアドバイスの提供
面談では、自らの健康状態について把握し、意識と行動を変える必要性をしっかりと説明します。また、体重減少の具体的な数値を設定し、6ヶ月後の評価日に体重や腹囲、生活習慣の状況などの継続状況を確認するといった支援内容です。
積極的支援
メタボリックシンドロームのリスクが高い方を対象とした、継続的かつ重点的な支援です。該当者は、高血圧や肥満などさまざまな項目で高い数値を出しており、さまざまな病気のリスク因子を抱えています。
そのため、リスクを抑えて数値改善するためには、長期的なサポートが必要です。
具体的な指導内容は、以下のとおりです。
- 初回面談での詳細なアセスメント
- 定期的な面談やフォローアップ(3ヶ月以上)
- 具体的な行動計画の作成と実践支援
- 生活習慣の改善状況の継続的なモニタリング
サポート期間中は、対象者の状況に応じて電話やメールによる継続的なサポートをおこないます。定期的な支援によって、健康状態を改善するための意識と行動変容につながり、対象者の健康意識を高めます。
産業保健師による特定保健指導|企業ができる取り組み
産業保健師による特定保健指導を実施する場合、企業ができる取り組みについて、主に以下の4つがあります。
- 従業員に保健指導の必要性を周知する
- 対象者への声がけをする
- 就業時間内に保健指導を受けられる体制作り
- 保健指導を受けられる場所を確保する
それぞれ詳しく解説します。
従業員に保健指導の必要性を周知する
特定保健指導の効果を最大限に引き出すためには、従業員の理解と協力が必要です。そこで、企業側は従業員に対して、保健指導の必要性について発信しましょう。
例えば、社内報や掲示物による情報発信や健康セミナーの開催、経営層からのメッセージ発信、保健指導の成功事例の共有などがあります。
自分の健康に対して無関心な方が多いため、まずは意識づけから始めることが大切です。
対象者への声がけをする
特定保健指導の対象となった従業員に対しては、適切な声がけが必要です。無理やり指導を受けさせるのではなく、従業員自身がポジティブな気持ちで参加できるように声がけをしましょう。
例えば、プライバシーに配慮して個別に案内、保健指導の恩恵や期待される効果の説明などをおこない、前向きに参加してもらいます。
就業時間内に保健指導を受けられる体制作り
従業員が負担なく保健指導を受けるためには、企業側で環境整備や体制作りが必要です。
具体的には、就業時間内での保健指導時間の確保、上司や同僚の理解促進、スケジュール調整のサポート、業務との両立サポートなどがあります。
本人が周りの同僚に知られたくない場合はプライバシーに配慮して時間を調整することも、ポジティブに指導を受けるために大切な支援になるでしょう。
保健指導を受けられる場所を確保する
保健指導を受ける際、自分の健康状態や家庭の情報など、さまざまな話をします。そのため、プライバシーに配慮した適切な場所を確保することも大切です。
例えば、個室や相談室の確保、オンライン通話に必要なインターネットの環境整備などがあげられます。
リラックスした状態で保健指導が受けられるように、企業側は対象者を配慮して環境を整える必要があるでしょう。
産業保健師による特定保健指導を活用し、従業員の健康を守りましょう!
特定保健指導は、従業員の健康増進と企業の生産性向上において必要なサポートです。効果的な実施のためには、企業側は以下のようなポイントを意識しましょう。
- 経営層の理解と支援
- 産業保健師との密接な連携
- 従業員の主体的な参加
- 継続的に受けられる仕組み作り
特定保健指導を単に法定義務としてではなく、従業員の健康づくりの重要な機会として捉え、積極的に活用していくことが大切です。
産業保健師による専門的なサポートを受けることで、従業員が自分の健康状態を正しく理解し、より良い生活習慣を築くことができるでしょう。その結果、企業全体の健康経営の推進にもつながっていきます。
特定保健指導の効果を最大限に引き出すためには、企業と従業員が一体となって取り組むことがポイントです。この記事を参考に、従業員の健康づくりを支援していきましょう。