産業医の来社頻度はどう設定する?現役産業医が解説します。

産業医の来社頻度はどう設定する?現役産業医が解説します。

会社の健康を守る産業医ですが、どれくらいの頻度で来てもらうのが適切なのか迷っている方も多いのではないでしょうか?

法律では、従業員数に応じて最低限の来社頻度が定められていますが、実際には会社の規模や業種、従業員の健康状態などによって、最適な頻度は異なります。

この記事では、産業医の来社頻度設定の基準や、労働者の規模や業種別の推奨頻度、コストとの関係について解説します。さらに、産業医の役割や評価、よくある質問について詳しく解説することで、会社にとって最適な産業医の来社頻度を見つけるためのヒントを提供します。

産業医の来社頻度を設定するための基準と根拠

会社の健康を守る産業医。でも、どれくらいの頻度で来てもらうのが適切なのか、迷うことはありませんか?

実は、法律で定められた来社頻度は、あくまで最低限の基準なんです。

例えば、会社の規模が大きくなればなるほど、産業医の負担も大きくなります。

法令で定められた産業医の来社頻度とは

では、法律ではどのように定められているのでしょうか?

労働安全衛生法では、労働者数が50人以上の会社は、必ず産業医を選任し、定期的に来社してもらうことが義務付けられています。

具体的には、

  • 労働者数が50人以上の会社:月に1回以上
  • 労働者数が50人以上の会社が条件を満たした場合:2カ月に1回以上
  • 従業員数が1000人以上の事業所:原則常駐

となっています。

労働者の規模や業種別の推奨頻度

しかし、実際には、会社の規模や業種によって、産業医の来社頻度は異なってきます。

例えば、建設現場のように、ケガのリスクが高い職場では、産業医に週に1回は来てもらい、安全対策を徹底する必要があるかもしれません。

一方、オフィスワークが中心の会社であれば、2月に1回の来社でも十分かもしれません。(オンライン等を活用して定期的なコミュニケーションが望ましい)

また、中小企業の場合、安全衛生に関する専門的な知識や経験が不足しているケースが多いです。

このような場合は、産業医のアドバイスを受けることで、健康リスクを減らし、健康管理体制を強化することができます。

反対に、大企業では、産業医が担当する労働者数も多くなるため、産業保健スタッフと連携し、効率的な健康管理体制を構築する必要があります。

コストと産業医の来社頻度の関係

産業医の費用は、来社頻度や業務内容によって異なりますが、一般的には、月に1回の訪問で数万円から十数万円が相場となります。

費用を抑えるために、来社頻度を減らすことも可能ですが、その場合は、電話やメールでの相談などを活用し、産業医と密にコミュニケーションを取るように心がけましょう。

産業医の費用は、決して無駄な費用ではありません。

労働者の健康を守るための投資と考えれば、むしろ安いものと言えるでしょう。

産業医の専門的な知識や経験を活かすことで、労働災害や健康問題を未然に防ぎ、結果的に会社全体の生産性向上やコスト削減に繋がる可能性があります。

産業医の来社頻度は、会社と産業医との間でよく相談して決めることが大切です。

産業医の来社頻度調整に関するよくある質問

産業医は原則毎月職場に巡視を行うものです。一方で、会社の事情で(コスト面、必要性を感じない等)、なかなか毎月来てもらうのが難しい場合もあるかもしれません。

そこでここからはは、産業医の来社頻度に関する疑問について、詳しく解説していきます。

産業医の来社頻度は変更可能か?

結論から言うと、産業医の来社頻度は変更可能です。

法律では、産業医は「少なくとも毎月一回」は職場を巡視することと定められています(労働安全衛生規則第15条)。これは、会社の規模に関わらず、すべての会社に適用されます。

しかし、これはあくまでも最低限の頻度です。会社と産業医の先生との間で、より高い頻度(例えば、月2回、毎週1回など)を設定することもできますし、逆に、状況によっては来社頻度を減らすことも条件を満たした場合は可能です。

例えば、会社の業種や規模、従業員の健康状態などを考慮して、産業医の先生と相談の上で、最適な来社頻度を決めることができます。

平成29年の法改正により、産業医の先生へ毎月所定の情報が提供される場合、事業者の同意があれば、来社頻度を2ヶ月に1回にすることができるようになりました。

来社頻度を減らす際の注意点

来社頻度を減らす場合は、いくつか注意すべき点があります。

  1. 従業員の健康管理に支障がないか:
    来社頻度を減らしても、従業員の健康管理に支障がないよう、注意深く検討する必要があります。例えば、従業員数が多かったり、心身の健康上の問題を抱える従業員が多い場合は、来社頻度を減らすことで、健康上の問題を見逃してしまうリスクが高まります。これは、病院の定期健診の頻度と似ています。健康上の不安要素が多い人ほど、定期健診をこまめに行う必要があるように、従業員の健康状態に合わせて、産業医の先生の訪問頻度も調整する必要があるのです。
  2. 産業医の先生との十分なコミュニケーション:
    来社頻度を減らす場合は、産業医の先生と十分にコミュニケーションをとり、合意形成することが重要です。具体的には、来社頻度を減らす理由や、その間の対応方法などを丁寧に説明し、産業医の先生の理解と協力を得るようにしましょう。また、来社頻度を減らした後も、定期的に産業医の先生と連絡を取り合い、職場環境や従業員の健康状態に関する情報を共有することが大切です。特に、従業員から健康に関する相談があった場合や、職場環境に変化があった場合は、速やかに産業医の先生に報告し、指示を仰ぐようにしましょう。
  3. 衛生委員会での審議:
    来社頻度を変更する際は、衛生委員会で審議し、議事録を作成しておく必要があります。衛生委員会では、来社頻度変更の必要性や具体的な方法について、事業者と労働者が十分に意見交換することが重要です。これらの手続きを踏まえることで、後々のトラブルを避けることができます。

また来社頻度を落とす条件としては労働時間に関する情報・労働災害に関わる情報・衛生管理者による週1回の巡視状況を共有する必要があります。

条件を確認しないまま訪問頻度を二月に一回に落としているケースもあるので注意してください。

産業医とのコミュニケーションを円滑にする方法

産業医の先生と会社の間で、スムーズに連携していくためには、日頃からのコミュニケーションが大切です。

  1. 定期的な面談:
    定期的な面談の機会を設け、職場環境や従業員の健康状態に関する情報を共有しましょう。その際、会社としてどのような点で産業医の先生のサポートを必要としているのかを具体的に伝えることが重要です。産業医の先生も、会社の状況を理解した上で、より適切なアドバイスをしてくれるでしょう。例えば、「最近、従業員の間で、精神的なストレスを抱えている人が増えているようだ。産業医の先生には、メンタルヘルス対策について、アドバイスが欲しい」といった具合です。
  2. 相談しやすい雰囲気作り:
    産業医の先生は、会社の味方であると同時に、従業員の健康を守る専門家でもあります。何か困ったことがあれば、遠慮なく相談できる雰囲気作りを心がけましょう。例えば、産業医の先生に、気軽に話しかけられる雰囲気を作ったり、相談しやすい時間帯を設けたりするなどの工夫が考えられます。
  3. ITツールの活用:
    近年では、オンライン面談やチャットツールなど、ITツールを活用したコミュニケーションも普及しています。これらのツールを導入することで、産業医の先生とのやり取りがスムーズになり、より効率的な連携体制を築くことができます。

産業医の先生との信頼関係を築き、より良い職場環境を作っていきましょう。

まとめ

産業医の来社頻度は、法律で定められた最低限の基準を満たすだけでなく、会社の規模や業種、従業員の健康状態などを考慮して、柔軟対応することが大切です。

法律では、労働者数が50人以上の会社は、月に1回以上の来社が義務付けられていますが、実際には、より高い頻度や、状況に応じて減らすことも可能です。

来社頻度を減らす場合は、従業員の健康管理に支障がないか、産業医との十分なコミュニケーション、衛生委員会での審議などを踏まえ、慎重に検討する必要があります。

産業医とのコミュニケーションを円滑にするために、定期的な面談、相談しやすい雰囲気作り、ITツールの活用などを積極的に行うことが重要です。

参考文献