こんにちは。管理栄養士の内海弥生です。
今回は、なぜ健康経営に栄養管理が欠かせないかをご紹介していきます。
多くの企業が「健康経営」を経営戦略の一環として取り入れ始めています。
健康経営とは、従業員の健康を企業の重要な資源と捉え、健康管理を積極的に推進する取り組みです。
この概念は、企業が従業員の健康を守ることで、生産性向上やコスト削減、さらには企業イメージの向上を図るという目的を持っています。
その中でも「栄養」は、従業員の健康維持やパフォーマンス向上に大きな影響を与える要素として、特に注目されています。
本記事では、健康経営における栄養の役割と、その実践方法について詳しく解説します。
健康経営と栄養の関係
健康経営において、栄養は従業員の健康を支える基盤となる要素です。
適切な栄養を摂ることは、エネルギーを維持し、集中力や業務効率を高めるために不可欠です。
デスクワーク中心の生活で栄養バランスも乱れやすい
特に現代においては、デスクワークが中心となるケースが多く、運動不足やストレスが溜まりやすい状況にあります。
このような環境では、栄養が従業員の健康に与える影響が一層大きくなります。
必要な栄養が不足したり、偏ったりすることで、慢性的な疲労感やストレスの増加、さらには生活習慣病のリスクが高まる可能性があります。
逆に、栄養バランスが整っていると、従業員はエネルギッシュに業務をこなせるだけでなく、病気にかかりにくくなり、長期的な健康を維持できるようになります。
例えば、長時間のデスクワークに従事する従業員が多い企業では、野菜摂取量が減り、エネルギー供給のために炭水化物や脂肪の摂取が増えがちです。
しかし、これだけでは十分な栄養を確保できません。
栄養バランスを考慮し、個々の健康を支えることが重要
ビタミンやミネラル、食物繊維といった栄養素のバランスを考慮することが、従業員の体調を整え、パフォーマンスを最大化するために必要です。
また、栄養は単に個々の健康を支えるだけでなく、企業全体の健康文化をつくる上でも重要な役割を果たします。
栄養の具体的な役割
- エネルギー供給と業務効率の向上
- 免疫力の維持と病気の予防
- メンタルヘルスのサポート
エネルギー供給と業務効率の向上
栄養は、日々の業務をこなすためのエネルギー源です。
特に、脳を活発に働かせるためには、炭水化物が必要不可欠です。
しかし、砂糖やスナック菓子などの糖類に偏ると、一時的に血糖値が上昇し、高血糖の状態となってしまいます。
この高血糖の状態を「なんとかせねば」と体がインスリンという血糖値を下げるホルモンを分泌します。
結果として、集中力の低下や眠気が出現するといった負のサイクルが起こりやすくなります。
これを防ぐためには、精製していない玄米などの全粒穀物やオクラやごぼうなどの野菜に多く含まれる食物繊維を適切に摂取することが重要です。
さらに、適切な量のタンパク質を摂取することも重要です。
タンパク質は、筋肉や組織の修復、免疫機能の維持に必要であり、日常的にストレスや身体的な負荷がかかる環境で働く従業員にとっては、特に欠かせない栄養素です。
良質なタンパク質源として、魚、鶏肉、豆類を摂ることがお勧めです。
高血糖状態となり、集中力の低下や眠気などを出現させないために、砂糖やスナック菓子などの糖類に偏った食事や間食は控えることが大切です。
高血糖状態を防ぐためには、精製していない玄米などの全粒穀物やオクラやごぼうなどの野菜に多く含まれる食物繊維を適切に摂取することが重要です。
筋肉や組織の修復、免疫機能の維持に欠かせないタンパク質である、魚、鶏肉、豆類を積極的に摂ることがお勧めです。
免疫力の維持と病気の予防
栄養は、免疫力を支える重要な要素でもあります。
ビタミンCやビタミンD、亜鉛などの栄養素は、免疫機能を強化し、風邪やインフルエンザなどの病気にかかりにくくする効果があります。
これらの栄養素を豊富に含む食品を日常的に摂取することが、従業員の健康を守る上で大切です。
従業員が健康でいることは、欠勤率の低下や生産性の向上に直結します。
メンタルヘルスのサポート
現代社会では、ストレスや精神的な疲労が大きな課題となっています。
特に、オメガ3脂肪酸やビタミンB群は、脳の健康をサポートし、ストレスやうつ病の予防に役立つとされています。
これらの栄養素を豊富に含む青魚やナッツなどを日常的に摂取することが、メンタルヘルスの維持に欠かせません。
メンタルヘルスに関連する栄養素としては、マグネシウムも重要です。
マグネシウムは、ストレス反応を緩和し、リラックス効果をもたらすことで知られています。
これを含む食品には、海藻類、ナッツ類、ほうれん草などがあります。
また、精製塩から天然塩に塩の種類を変更することもマグネシウムを上手に摂るコツとしてはお勧めです。
これらの食品を積極的に摂ることで、精神的な疲労を軽減し、リラックスした状態で業務に臨むことができます。
企業が取り組むべき栄養サポートの方法
企業は、従業員が適切な栄養を摂取できる環境を整えることで、健康経営を推進することができます。
以下に、企業が実施できる具体的な栄養サポートの方法をご紹介します。
- 栄養バランスが取れた食事を社内食堂や弁当で提供
- 栄養教育の実施
- 健康的な軽食やスナックの提供
- 健康診断と連動した栄養指導
栄養バランスが取れた食事を社内食堂や弁当で提供
社内食堂で提供される食事の質を向上させることは、従業員の健康に大きな影響を与えます。
栄養バランスの取れたメニューを提供し、必要な栄養素を摂るようにすることが重要です。
また、食事の際に栄養情報を提示することで、従業員が自分に合った食事を選択できるようサポートします。
例えば、食堂のメニューにカロリー表示や栄養素の情報を付加することで、従業員がより健康的な選択をしやすくなります。
また、季節に応じた食材を活用し、栄養価の高い食事を提供することも重要です。
これにより、従業員は日常の業務をこなしながら、自然と健康的な食生活を送ることができます。
社内食堂がない場合は、栄養情報を提示した弁当やヘルシー弁当などを提供することも従業員が自分に合った食事を選択できるようにサポートしていく要素として重要となります。
栄養教育の実施
定期的な栄養セミナーやワークショップを開催し、従業員に栄養に関する正しい知識を提供します。
栄養に関する理解が深まることで、日常的な食事の選択が変わり、健康状態の改善が期待できます。
また、健康的なレシピや食事プランの提供も効果的です。
栄養教育の一環として、従業員に栄養バランスの重要性や、栄養がどのように体に影響を与えるかを理解してもらうことできます。
健康的な軽食やスナックの提供
従業員が仕事中に手軽に摂取できる軽食やスナックを、栄養価の高いものに変更することも有効です。
糖分や塩分が多いスナックではなく、ナッツやフルーツ、全粒粉のクラッカーなど、エネルギー補給に適した健康的な選択肢を提供することで、従業員の集中力や作業効率を維持できます。
健康診断と連動した栄養指導
健康診断の結果に基づいて、個別に栄養指導を行うことも有効です。
従業員の健康状態に応じた食事改善のアドバイスを提供し、生活習慣病のリスクを減らすサポートを行います。
これにより、個々の健康課題に対応した栄養サポートが可能になります。
例えば、コレステロール値が高い従業員には、脂質を控えめにし、食物繊維や抗酸化物質を多く含む食事を提案します。
このように、個々のニーズに応じた栄養指導を行うことで、従業員の健康改善を効果的にサポートできます。
事例の紹介
炭水化物がメインの外食が多かった方は、炭水化物に偏る食事でなく、タンパク質やビタミン・ミネラルが摂れる野菜や果物を食事に取り入れることで、食後の眠気はなくなり、集中力の低下も感じにくくなった事例があります。
健康経営において「栄養」は、従業員の健康を支える重要な要素です。
適切な栄養サポートを提供することで、従業員の健康維持と業務効率の向上が期待でき、企業全体の生産性向上にも寄与します。
今後、さらに多くの企業が栄養サポートを取り入れ、従業員の健康を守る取り組みを進めていくことが重要です。
これにより、企業は持続可能な成長を実現し、競争力を高めることができるでしょう。
まとめ
栄養は、単に食事の問題として捉えるのではなく、企業全体の戦略として考えるべき重要な要素です。
従業員の健康を守り、企業の発展を支えるためにも、栄養に対する積極的な取り組みが求められています。